【完結】お役御免?なら好きにしてやる!

オレンジペコ

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13.写真を撮ろう!

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ラブラブな初夜を終えた翌朝、シリウスが『もうこの勢いで今日中に式を挙げてしまおう!』と浮かれまくったテンションで言い放ち、慌てて止めたけど、気が変わらないうちにと押し通された。

勝手なことしていいのかな?
そう思ったけどシリウスは浮かれすぎてて聞いてくれない。
しょうがないから付き合ったけど、街一番の高級店に突撃していきなり『婚礼衣装が今すぐ欲しい!用意してくれ!』はないと思う。
どう考えても無理だろう。

店の人も困り果ててたから、結局『仕立てて実家に送る』ということで話をつけ、採寸してもらって生地選びやらデザインやらを決めてなんとか上手く収まった。
でもシリウスはとっても不満気だ。
帰ってから盛大に式を挙げるのは別にいいけど、待てないって感じ。

「ランスロットとだったら何度でも挙式したい!」
「え?そんなお金の無駄遣いはしない方がいいと思うけど…」
「いや。これは必要経費だ!」キリッ。

どうしよう?
シリウスが大暴走してる。
これがマリッジハイとかいうやつか?
困ったな。

戸惑ってたらどこからか侍従のニーチェがやってきて、シリウスを俺から引き剥がし距離を置いた上で耳元に何やら囁きを落とした。
それを聞いてチラリと俺を見てくるシリウス。

「…………仕方がない。一旦落ち着こう」

どうやらちょっと頭が冷えた様子。
良かった良かった。

「あ~……ランスロット。実はこの近くに写真館があるらしいんだが、そこに行ってみないか?」
「写真館?」

写真と言うのは近年広がった技術だというのは知ってるけど、聖フィオナーレ国は元々こういう技術は後から入ってくる。
だから俺は当然そんな最先端な写真を撮ったことはない。

(どんな感じなんだろう?写真館って言うからには、そこで写真を撮るってことだよな?気になる…!)

「行きたい!」

思わず顔を輝かせてそう言ったら、シリウスは笑顔で手を差し出してくれる。
指を絡めて手を繋がれてなんだか気恥ずかしいけど、『これが正しい恋人や夫婦の手の繋ぎ方』だと主張されるとそうなのかと受け入れるしかない。
両親はしてなかったんだけどな?まあいいけど。

そんな感じで写真館へとやってきた俺達。
写真を撮るにあたって衣装を色々試せるらしく、貸衣装というのが豊富に取り揃えられていた。
その中でも一番面白かったのは、各国の豊富な婚礼衣装が用意されていたこと。
国によってこんなに違うんだとびっくりしてたら、シリウスが『折角だし聖フィオナーレ国とサイヒュージ国とここヴェイガー国のを着て写真を撮ろう』って言い出した。
まあこういうのなら楽しいかもしれない。
帰ってからの土産話にもなるしと俺も快諾。

衣装に着替え小物も身に付けていざ撮影!
撮影場所はちゃんとした教会だ。
まさかの馬車での送迎付き。

結婚式さながらのシチュエーションで写真を撮れるのが人気らしく、『はい、指輪交換シーン行きます!』『今度はキスシーンです!すぐ離れないでちょっと止まってください、行きますよ!はい、3,2,1!』パシャリ。

衣装チェンジが二度もあったから凄く時間はかかったけど、全部違う感じで撮ってもらえたからメチャクチャ楽しかった。
こういうのも楽しくて良いな。
個人的にはシリウスに縦抱きにされながら笑い合う写真が一番気に入った。
だってそこに写る俺達はすっごく幸せそうで、ザ・幸せな結婚って感じに見えたから。

シリウスの一番気に入った写真はそれとは別の写真で、俺達が抱き合いながらカメラ目線で照れ臭そうに笑っているやつらしい。
光の加減が絶妙だからこれもいい写真ではある。
ちなみに撮った写真は自分達で欲しいものが選べますって言われたけど、シリウスは即答で『全部買い取ります』って言ってた。
う~ん。凄い散財だ。
でも確かにどの写真も良かったからそう言いたくなる気持ちはわからなくもない。

『ありがとうございます!』

写真館の主の嬉しそうな満面の笑みが忘れられない。
取り敢えずかなりの写真の量だし、これはこのままバーリッジ公爵家へと送っておいてもらおう。
俺達の幸せな新婚旅行はまだまだ始まったばかりだ。


***


【Side.エヴァンジェリン】

ランスロットがさっさと帰ってくることを願いながら一日また一日と過ごしていた矢先、騎士団の副団長が大怪我をしたと連絡が入って蒼白になった。
なんでも一部の貴族階級の者が平民出身の者に突っかかり、その仲裁に入った際に深手を負ってしまったのだとか。

(それくらい副団長なら上手く避けなさいよ!!)

何もこんな時にそんな大怪我を負うようなことをしないで欲しい。

「エヴァンジェリン!頼む!今すぐ治してやってくれ!」
「エヴァンジェリン様!お願いします!」
「お願いします!」

『絶対に行かないわ!』と拒否しても引きずられるように無理矢理騎士団の演習場へと連れてこられ、逃げ場を完全にふさがれてしまった。
そして王子や騎士達の視線が一斉に自分へと向けられる。
以前なら皆の期待の眼差しを心地よく受け止め胸を張って『私にお任せを』と言えたけど、今の自分にそれはできない。

どうしよう?
どうしたらいい?
どうしたらこの場から逃げられる?
頭の中はそんな言葉ばかりがグルグル回っている。
そして結局、自分に言えることはこれしかなかった。

「でき…ないっ」

今手元にある聖輝石には聖なる力は残っていない。空っぽだ。
だからどう足掻いてもこんな大怪我を治すのは不可能だった。
なのに私に聖なる力があると思い込んでいる皆にはわかってもらえない。

「何故だ!こんなに酷い怪我なんだぞ?!まさか見捨てる気か?!」
「貴女は聖女だろう?!できないはずがないじゃないか!」

フルフルと蒼白になりながら首を横に振る自分を皆が寄ってたかって責め始める。
騎士達は皆屈強な者達ばかりだし、凄く怖い。
どうしてこんなに自分が責められなければならないのか?
悪いのは全部勝手にいなくなったランスロットなのに。

「できない!できないのよ!」

「できないとはどういうことだ?!」
「エヴァンジェリン!これまで幾度となくその素晴らしい力を見せてくれていたじゃないか!何故できないなんて言うんだ?!」

「だから!聖輝石に込められた聖なる力がなくなったから、もう無理なのよ!」

皆から責められて、八つ当たりするかのように泣きながら懐に入れてあった聖輝石を地面へと叩きつけたらその場がシンと静まり返った。

「…………」
「…………エヴァンジェリン。どういうことだ?」

王子がわなわなと震えながら顔色悪く私へと尋ねてくる。
その目は不信感に満ちていて、とても愛する者を見つめる眼差しではない。
そんな王子にジリッ…と距離を詰められ、怯えるように後ずさった。
口の中がカラカラに渇いて、言葉が上手く出てこない。
当然頭の中はどうしていいのかわからず真っ白だ。
だからただただ首を横に振ることしかできなかった。

そんな自分を見てこれはダメだと思ったのか、副団長の治癒は早々に諦められ、その場で応急処置が行われる。
最初からそうしてくれていたら良かったのにと泣きたくなった。

けれどそんな騎士達とは違い、王子は自分を逃がしてくれはしなかった。
ヒタとこちらを睨むように見つめ、詰問してくる。

「どうなっている?!お前は聖女じゃなかったのか?!」

その言葉に私は反射的に答えていた。

「私は聖女よ!!」
「ならどうして聖なる力を使えない?!」

それに対する言葉は私の中では決まっていた。

「ランスロットに奪われたからですわ!私のっ、私の聖なる力は弟に奪われたんです!私が悪いんじゃない!あの弟が全部悪いのよ!!」

『わぁあああっ!』とその場で両手で顔を覆い泣き崩れた私を、その場にいた皆がとても冷ややかに見つめていたことに私は気づかなかった。


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