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第二部 ソレーユ編~失くした恋の行方~
7.視察
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「ジャン!ジャスティン!」
王子の自分を庇い今まさに護衛騎士である無二の友がその命を散らそうとしていた。
もう助からないとわかるほどに血の気の失せたその顔に、そっと手を添え涙を流す。
けれどそんな状態なのに、彼は儚い笑みを浮かべながらこちらを気遣ってくれた。
「ご…無事で?」
「私は大丈夫だ!」
「…弟とのこと…ご協力できず…申し訳ありません…」
そんなことはいい。
それなのに彼は今際の際までこちらを気に掛けてくれる。
これほど忠義に溢れ、自分を想ってくれた親友を自分は失くすのか────。
今ほど自分が無力なことが辛いと思ったことはない。
地位など────王子など、死にゆく者の前では無力に過ぎない。
護衛は自分を守って当然だと思っていた。
皆強いから絶対に死なないだろうと甘く考えていた。
けれどそんな驕りが……友の命を奪ったのだ。
自分がもし白魔道士だったならば、防御魔法や回復魔法で助けてやれたかもしれない。
自分がもし黒魔道士だったならば、攻撃を跳ね返し影を渡ってすぐさま医師の元へと運んでやれたかもしれない。
自分がもし魔道士だったなら────彼は命が助かっていたかもしれない。
そんな思いがどうしても込み上げてきて、涙が次々に溢れてくる。
「ジャン…ジャン……」
段々と熱を失い冷たくなっていく友人を抱きしめて、熱を分けるかのように彼の頬に熱い涙がこぼれ落ちるが、それすらももう彼が感じてくれることはない。
彼は死んだのだ────。
永遠に失われた友に別れを告げて、ミシェルはゆっくりと立ち上がる。
友との別れが身を裂かれるかのように辛い。
それと共に、自分の恋もまた終わりを告げた。
兄が自分を庇い死んだのなら、弟である彼はきっと自分を許さないだろう。
表面上『王子を庇って死んだのなら本望だ』と言ってはくれるだろうが、心に傷を負わせることは必至…。
こんな自分が彼と契りたい等……考えるまでもなく叶わぬことだ。
以後、この想いは閉ざそう────。
後の人生は好きな者と過ごすことを考えるのではなく、王子としての責務を果たすことに全力を尽くそう。
それが…友へ捧ぐ唯一の餞(はなむけ)となるだろうから……。
それから約8年────現在自分には二人の妃がいる。
どうせ政略結婚なのだからそこに愛がなくともよかった。
その場限りで甘い言葉を囁いて、優しく愛でてやればそれでいい。
どうせ向こうにも自分への想いなどはないのだから────。
子も各々一人ずつ、二人の息子が産まれた。
ようやくだ。
想いを封印してから責務を全うし、ソレーユの未来へも繋いだ。
あとは親友に恥じない王の道をゆるぎなく突き進んでいくのみ。
自分は決して有能ではない。
王として立つには周囲の協力は必然だし、まだまだ学ぶべきことも多い。
だからこそ、憂いの種は早々に取り除かねばならない。
そしてその憂いの種は優秀な弟ではなく、弟を惑わそうとする黒魔道士の方なのだ。
元々自分の立場を弁えている弟の事だ。
あの黒魔道士さえいなくなれば、退屈そうにしながらも国のために自分に協力してくれることだろう。
黒魔道士に誑かされない限りライアードが王位を狙ってくることなどないはず。
(ロイド…今度こそ、ライアードから引き離して見せる!)
友との約束を違えないためにも、諸悪の根源を断ってみせる────!
そうして強い思いと共にミシェルは計画を遂行へと移した。
***
ガラガラと馬車を走らせ黒曜石の鉱山へと視察に向かう中、ライアードは目の前のロイドへと目を向けた。
「それにしても……兄上は本当にお前と遊ぶのが好きだな」
眷属からの報告を受けてそう口にすると、ロイドは何でもないように短く答えてくる。
「そう言っては可哀想ですよ?あの方はあれでも真剣なのですから」
これまでの数々の所業から慣れたもので、ロイドは退屈そうにそうやって受け流してくる。
「そんなことよりも横流しの件についてですが……」
「ああ」
どうやら問題の鉱山は不正を働く者がいるようで、直接兄が関わっているということはなさそうだったが、それを使って兄はロイドを陥れようと画策しているようだった。
今回はそれを上手くやり過ごしながら不正を摘発し、報告書を纏めなければならない。
「兄上の目にお前はどんな風に映っているのやら…」
これまでも色々とあったが、そうまでしてロイドを恐れ自分と引き離したいのかと思わずにはいられない。
けれど対するロイドはどこ吹く風だ。
「あの方の目には、私はライアード様を洗脳し誑かす悪魔の様な黒魔道士に映っているのでは?」
「兄上にも困ったものだ。お前はこんなにも私に忠実な魔道士だというのに」
ロイドの言葉に、思わずククッと笑ってしまう。
ロイドが自分にマイナスになるようなことをするはずがないではないか。
「まあ仕方がありません。あの方もライアード様も魔力を有しているわけではありませんし、私が大人しく付き従っている理由がわからないのでしょう」
そんなロイドにそう言えばと思いながら考える。
初めて会った時はギブアンドテイクが成り立ったからお抱え魔道士になってくれた。
けれどロイドがそこから長年仕えてくれているのには何か理由でもあるのだろうか?
ロイドの事だから、ただの惰性とは考えにくいのだが……。
そう思い尋ねてみると、ロイドは呆れたようにため息を吐いた。
「お分かりではなかったんですか?確か初めの頃に『面白いからだ』と言ったはずですが?」
どうやらそこがロイドの一番の重要ポイントだったらしい。
確かに思い返すとロイドは自分同様、仕えるのは面白いからだと言ってくれたことがあった気がする。
「ライアード様は私の目から見て非常に興味深く面白い方なのです。お傍に仕えるのにこれほど適した相手は他におりません」
その言葉を口にしながらロイドは実に楽しそうに微笑んだ。
どうやら本気でそう思っているらしいことが見て取れる。
「そうか」
それならそれでギブアンドテイクの間柄は何も変わらないということだ。
これからもずっと好きに使わせてもらうことにして、話題をあっさりと切り替える。
「そう言えば黒曜石の加工はお前がするのか?」
「ええ。クレイが気に入りそうな美しい黒色を有した石を厳選し、渡す前に艶やかに磨き上げ仕上げておこうと思いまして」
それが今から楽しみなのだとロイドが嬉しそうに笑った。
その姿は先程の兄との遊びよりもそちらの方が楽しみと言わんばかりだ。
(やれやれ…)
これまでもそうだったが、ロイドにとっては兄のいたずらなどたかが知れているようで、取るに足らないつまらないものでしかないのだろう。
とは言え些か浮かれすぎのようにも見える。
浮かれすぎて足元を掬われなければいいのだが……。
「ロイド。精々気を引き締めておけ」
そうして一応の忠告と共に馬車は視察先へと到着した。
***
「ライアード様、到着いたしました」
そう言いながらロイドが先に降りて深々と頭を下げる。
そして下りた先では鉱山の案内役として総責任者が同じく頭を下げて出迎えてくれた。
「ライアード王子。ようこそいらっしゃいました。本日ご案内させていただきます、総責任者のマックと申します」
「そうか。よろしく頼む」
「はっ。ではこちらへ」
そう言ってマックは中へと促してくれる。
(さて…どうしたものか…)
普通に行けばこのまま説明を聞きながら黙々と現場を回り、質問があれば尋ね、最終的に採掘量等を書類で確認して…という流れになるだろうが、兄は必ずロイドを陥れるため手の者に指示を出しているはずだ。
ちなみに横流しをしている者達の裏は取れているから人物は特定できる。
採掘担当のシュリンが良い黒曜石を見つけたら、それを鑑定するためにジュードへと持っていく、そしてそのままくすねて横流しをするためにマックへと渡すと言う流れだ。
マックはそれがある程度たまったところでそれをクズ石と共に処分────つまりは他の者にばれないよう外へと持ち出しオークションで売りさばく。
そして売り上げを三人で山分けするのだ。
今回はその宝の山を差し押さえ回収するのも仕事の内だと考えているのだが、恐らく兄が狙ってくるのはそのタイミングだろう。
マック達の問題が発覚したところで手の者が『この黒曜石をどこに流すつもりだった』とでも促し、その黒幕にロイドを仕立て上げる────それが一番可能性が高い。
罪が軽くなるのならマック達も誘導されるがままにロイドの名にコクコクと勢いよく頷くことだろう。
証人は山ほどいるだろうし、そうなっては言い逃れは難しい。
自分としてもロイドを拘束する羽目になってしまう。
ここまで筋道は読めるのに、犯人達を取り押さえそれを回避する案が思い浮かばない。
(本当に面倒だ……)
そうやってため息を吐いていると、横からロイドが笑顔で添えてくる。
「ライアード様。ご心配には及びません。私がそんなに簡単に見え透いた罠に嵌るとでもお思いですか?」
「……クレイの件で浮かれているように見えるから心配してやっているんだが?」
「ふっ…そんなライアード様のお気持ちは嬉しいですが、今回私がその黒曜石を狙っているのは本当なので精々利用させてもらいますよ」
「なんだ。そっち狙いか」
どうやらロイドは最初から横流し用の黒曜石からいい物をもらうつもりでいたらしい。
どうせなかった物と判断された品だ。好きに見繕って手に入れようと思ったのだろう。
「お前は本当にあくどいな」
「私はライアード様のお抱え黒魔道士ですよ?善人な訳がないではありませんか」
「それもそうだ。清廉潔白でお綺麗な黒魔道士ならそもそもまず私に仕えていないだろうな」
そうして二人で笑みながらこの後の算段を練った。
「では兄の策に乗って精々お前を陥れてやるとしようか」
「そうしてください」
実にあっさり返すロイドはどこまでも不敵に笑っていて、心配するだけ無駄だったと思わせるものがある。
本当に優秀な黒魔道士だ。
それならそれで差し押さえた黒曜石は今回の不正発覚に対するロイドへの報酬扱いとでもしておこう。
それくらいの裁量権は自分にはあるのだから────。
王子の自分を庇い今まさに護衛騎士である無二の友がその命を散らそうとしていた。
もう助からないとわかるほどに血の気の失せたその顔に、そっと手を添え涙を流す。
けれどそんな状態なのに、彼は儚い笑みを浮かべながらこちらを気遣ってくれた。
「ご…無事で?」
「私は大丈夫だ!」
「…弟とのこと…ご協力できず…申し訳ありません…」
そんなことはいい。
それなのに彼は今際の際までこちらを気に掛けてくれる。
これほど忠義に溢れ、自分を想ってくれた親友を自分は失くすのか────。
今ほど自分が無力なことが辛いと思ったことはない。
地位など────王子など、死にゆく者の前では無力に過ぎない。
護衛は自分を守って当然だと思っていた。
皆強いから絶対に死なないだろうと甘く考えていた。
けれどそんな驕りが……友の命を奪ったのだ。
自分がもし白魔道士だったならば、防御魔法や回復魔法で助けてやれたかもしれない。
自分がもし黒魔道士だったならば、攻撃を跳ね返し影を渡ってすぐさま医師の元へと運んでやれたかもしれない。
自分がもし魔道士だったなら────彼は命が助かっていたかもしれない。
そんな思いがどうしても込み上げてきて、涙が次々に溢れてくる。
「ジャン…ジャン……」
段々と熱を失い冷たくなっていく友人を抱きしめて、熱を分けるかのように彼の頬に熱い涙がこぼれ落ちるが、それすらももう彼が感じてくれることはない。
彼は死んだのだ────。
永遠に失われた友に別れを告げて、ミシェルはゆっくりと立ち上がる。
友との別れが身を裂かれるかのように辛い。
それと共に、自分の恋もまた終わりを告げた。
兄が自分を庇い死んだのなら、弟である彼はきっと自分を許さないだろう。
表面上『王子を庇って死んだのなら本望だ』と言ってはくれるだろうが、心に傷を負わせることは必至…。
こんな自分が彼と契りたい等……考えるまでもなく叶わぬことだ。
以後、この想いは閉ざそう────。
後の人生は好きな者と過ごすことを考えるのではなく、王子としての責務を果たすことに全力を尽くそう。
それが…友へ捧ぐ唯一の餞(はなむけ)となるだろうから……。
それから約8年────現在自分には二人の妃がいる。
どうせ政略結婚なのだからそこに愛がなくともよかった。
その場限りで甘い言葉を囁いて、優しく愛でてやればそれでいい。
どうせ向こうにも自分への想いなどはないのだから────。
子も各々一人ずつ、二人の息子が産まれた。
ようやくだ。
想いを封印してから責務を全うし、ソレーユの未来へも繋いだ。
あとは親友に恥じない王の道をゆるぎなく突き進んでいくのみ。
自分は決して有能ではない。
王として立つには周囲の協力は必然だし、まだまだ学ぶべきことも多い。
だからこそ、憂いの種は早々に取り除かねばならない。
そしてその憂いの種は優秀な弟ではなく、弟を惑わそうとする黒魔道士の方なのだ。
元々自分の立場を弁えている弟の事だ。
あの黒魔道士さえいなくなれば、退屈そうにしながらも国のために自分に協力してくれることだろう。
黒魔道士に誑かされない限りライアードが王位を狙ってくることなどないはず。
(ロイド…今度こそ、ライアードから引き離して見せる!)
友との約束を違えないためにも、諸悪の根源を断ってみせる────!
そうして強い思いと共にミシェルは計画を遂行へと移した。
***
ガラガラと馬車を走らせ黒曜石の鉱山へと視察に向かう中、ライアードは目の前のロイドへと目を向けた。
「それにしても……兄上は本当にお前と遊ぶのが好きだな」
眷属からの報告を受けてそう口にすると、ロイドは何でもないように短く答えてくる。
「そう言っては可哀想ですよ?あの方はあれでも真剣なのですから」
これまでの数々の所業から慣れたもので、ロイドは退屈そうにそうやって受け流してくる。
「そんなことよりも横流しの件についてですが……」
「ああ」
どうやら問題の鉱山は不正を働く者がいるようで、直接兄が関わっているということはなさそうだったが、それを使って兄はロイドを陥れようと画策しているようだった。
今回はそれを上手くやり過ごしながら不正を摘発し、報告書を纏めなければならない。
「兄上の目にお前はどんな風に映っているのやら…」
これまでも色々とあったが、そうまでしてロイドを恐れ自分と引き離したいのかと思わずにはいられない。
けれど対するロイドはどこ吹く風だ。
「あの方の目には、私はライアード様を洗脳し誑かす悪魔の様な黒魔道士に映っているのでは?」
「兄上にも困ったものだ。お前はこんなにも私に忠実な魔道士だというのに」
ロイドの言葉に、思わずククッと笑ってしまう。
ロイドが自分にマイナスになるようなことをするはずがないではないか。
「まあ仕方がありません。あの方もライアード様も魔力を有しているわけではありませんし、私が大人しく付き従っている理由がわからないのでしょう」
そんなロイドにそう言えばと思いながら考える。
初めて会った時はギブアンドテイクが成り立ったからお抱え魔道士になってくれた。
けれどロイドがそこから長年仕えてくれているのには何か理由でもあるのだろうか?
ロイドの事だから、ただの惰性とは考えにくいのだが……。
そう思い尋ねてみると、ロイドは呆れたようにため息を吐いた。
「お分かりではなかったんですか?確か初めの頃に『面白いからだ』と言ったはずですが?」
どうやらそこがロイドの一番の重要ポイントだったらしい。
確かに思い返すとロイドは自分同様、仕えるのは面白いからだと言ってくれたことがあった気がする。
「ライアード様は私の目から見て非常に興味深く面白い方なのです。お傍に仕えるのにこれほど適した相手は他におりません」
その言葉を口にしながらロイドは実に楽しそうに微笑んだ。
どうやら本気でそう思っているらしいことが見て取れる。
「そうか」
それならそれでギブアンドテイクの間柄は何も変わらないということだ。
これからもずっと好きに使わせてもらうことにして、話題をあっさりと切り替える。
「そう言えば黒曜石の加工はお前がするのか?」
「ええ。クレイが気に入りそうな美しい黒色を有した石を厳選し、渡す前に艶やかに磨き上げ仕上げておこうと思いまして」
それが今から楽しみなのだとロイドが嬉しそうに笑った。
その姿は先程の兄との遊びよりもそちらの方が楽しみと言わんばかりだ。
(やれやれ…)
これまでもそうだったが、ロイドにとっては兄のいたずらなどたかが知れているようで、取るに足らないつまらないものでしかないのだろう。
とは言え些か浮かれすぎのようにも見える。
浮かれすぎて足元を掬われなければいいのだが……。
「ロイド。精々気を引き締めておけ」
そうして一応の忠告と共に馬車は視察先へと到着した。
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「ライアード様、到着いたしました」
そう言いながらロイドが先に降りて深々と頭を下げる。
そして下りた先では鉱山の案内役として総責任者が同じく頭を下げて出迎えてくれた。
「ライアード王子。ようこそいらっしゃいました。本日ご案内させていただきます、総責任者のマックと申します」
「そうか。よろしく頼む」
「はっ。ではこちらへ」
そう言ってマックは中へと促してくれる。
(さて…どうしたものか…)
普通に行けばこのまま説明を聞きながら黙々と現場を回り、質問があれば尋ね、最終的に採掘量等を書類で確認して…という流れになるだろうが、兄は必ずロイドを陥れるため手の者に指示を出しているはずだ。
ちなみに横流しをしている者達の裏は取れているから人物は特定できる。
採掘担当のシュリンが良い黒曜石を見つけたら、それを鑑定するためにジュードへと持っていく、そしてそのままくすねて横流しをするためにマックへと渡すと言う流れだ。
マックはそれがある程度たまったところでそれをクズ石と共に処分────つまりは他の者にばれないよう外へと持ち出しオークションで売りさばく。
そして売り上げを三人で山分けするのだ。
今回はその宝の山を差し押さえ回収するのも仕事の内だと考えているのだが、恐らく兄が狙ってくるのはそのタイミングだろう。
マック達の問題が発覚したところで手の者が『この黒曜石をどこに流すつもりだった』とでも促し、その黒幕にロイドを仕立て上げる────それが一番可能性が高い。
罪が軽くなるのならマック達も誘導されるがままにロイドの名にコクコクと勢いよく頷くことだろう。
証人は山ほどいるだろうし、そうなっては言い逃れは難しい。
自分としてもロイドを拘束する羽目になってしまう。
ここまで筋道は読めるのに、犯人達を取り押さえそれを回避する案が思い浮かばない。
(本当に面倒だ……)
そうやってため息を吐いていると、横からロイドが笑顔で添えてくる。
「ライアード様。ご心配には及びません。私がそんなに簡単に見え透いた罠に嵌るとでもお思いですか?」
「……クレイの件で浮かれているように見えるから心配してやっているんだが?」
「ふっ…そんなライアード様のお気持ちは嬉しいですが、今回私がその黒曜石を狙っているのは本当なので精々利用させてもらいますよ」
「なんだ。そっち狙いか」
どうやらロイドは最初から横流し用の黒曜石からいい物をもらうつもりでいたらしい。
どうせなかった物と判断された品だ。好きに見繕って手に入れようと思ったのだろう。
「お前は本当にあくどいな」
「私はライアード様のお抱え黒魔道士ですよ?善人な訳がないではありませんか」
「それもそうだ。清廉潔白でお綺麗な黒魔道士ならそもそもまず私に仕えていないだろうな」
そうして二人で笑みながらこの後の算段を練った。
「では兄の策に乗って精々お前を陥れてやるとしようか」
「そうしてください」
実にあっさり返すロイドはどこまでも不敵に笑っていて、心配するだけ無駄だったと思わせるものがある。
本当に優秀な黒魔道士だ。
それならそれで差し押さえた黒曜石は今回の不正発覚に対するロイドへの報酬扱いとでもしておこう。
それくらいの裁量権は自分にはあるのだから────。
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