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第二部番外編 シュバルツ×ロイドの恋模様
16.※狐と狸②
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「うっ…ふぁ……」
アベルは二人がかりで大量に魔力を送り込まれながら酔わされ続けていた。
一体いつの間にシュバルツの魔力はこれほど濃厚になったのだろう?
半分になった自分の魔力ではとても抗うことなどできはしない。
「う…もうやめてくれ……」
頭がグラグラしてとても立てそうにない。
「ふっ…じゃあそこで休んでたらいい。そろそろ許してやるから、もう二度と私の大事なロイドを侮辱するな」
そんな言葉にもうただ素直に頷くしかない。
そうしてその場で崩れ落ちていると、目の前でシュバルツがロイドを口説き始めた。
「ロイド……口直し」
「私はまだ仕事があるんだが?」
「ちょっとだけ…。約束するから」
「ん…はぁ…少しだけだぞ?」
甘えるように口づけ、シュバルツはロイドの官能を引き出すように指を這わせる。
「うん。少しで我慢する。その代わりロイドが一回で満足できるくらい攻めてもいい?」
そしてシュバルツはそのままアベルの横でロイドへの愛撫を開始した。
「はぁ…っ、ロイド、ここ凄く熱くなってる」
「んんんっ…」
ほんのりと色っぽく頬を染めるロイドが腕の中で気持ちよさそうに腰を揺らす。
「アベルがいるから恥ずかしいんでしょ?声聞かれるの嫌いだもんね?」
「はぁっ…うぅ……」
色香を纏い壁に手をつきバックで犯されるロイドにそうやって声を掛けると、余計な事は言わずにさっさと終わらせろと目で訴えてきた。
「んっんっんっ……」
「あぁ…やっぱり可愛い声が聞きたいな」
けれどどうしても欲は出て、より一層弱い体位へと遠慮なく移行する。
「ほら。こっちの方が好きだよね?」
「あっ…あぁあああっ!」
ロイドを支えながら正面からゆさゆさと揺すってやると先程よりも甘い声で啼き始めた。
「あっあっあっ!」
「ロイド。可愛い」
「ふぅうっ!」
「そんなに声我慢しないで?アベルなんて気にしなくていいから、いつもみたいにいっぱい声聞かせて?」
「だ…れがっ…!」
どうしてもプライドを捨てきれないロイドに甘く言い含めるが、これくらいで聞いてくれないことなどわかりきっている。
「仕方ないな。じゃあ……」
ロイドが少し素直になれるように、片足を下ろしねじるような体位で思い切り奥まで突き上げてやった。
「ひっあぁあっ……!」
ぷるぷると震えながら頑張って耐えるロイドにフッと意地の悪い笑みを浮かべ、そのまま緩々と腰を振ってやるとじわりと目に涙を浮かべ始める。
これならきっと素直になってくれるはずだ。
「あっあっああっ…!」
「ロイド…そうやって意地を張る姿も可愛いけど、甘えてくれた方がもっと嬉しい。だから…ほら……ね?」
「シュバ…シュバルツッ……」
もう一押しかなと微笑んでやるが、ロイドの理性はまだ飛び切ってはいない。
「ん…気持ちいい。ロイド。もっと気持ちよくしてあげるから早く素直になって?」
「あっあっあっ…シュバルツッ!この角度…ダメッ!」
「知ってるよ?」
当然わかっててやっているに決まっている。
もっともっと追い詰めないとロイドは素直になってくれなさそうだと判断し、その言葉と同時に一気に奥まで突き込みグリグリと最奥を擦る様にしてやると、ロイドはその刺激に耐えられないとばかりに嬌声を上げた。
「んあぁああぁあっ!」
ひくんひくんと身を震わせるロイドを支え腰を逃がさないようしっかりと押さえてやる。
はぁはぁと荒い息を吐くロイドに『ちゃんとしっかり息を吐いて』と言い聞かせながらあやすように何度も軽く口づけ、腰は弱いところを何度も突き上げていく。
「やっやっやっ…!」
「ん…ロイド、大丈夫?」
忠告通り、気遣いは忘れずに。
でも素直になれるくらいには責め立てて────。
「シュバ…ルツッ!」
ロイドは熱い眼差しで自分を見つめ、その限界を訴えかけていた。
その姿に思い切りそそられてしまう。
「うん。そろそろ一緒にイこうか」
「うっうぅうっ…」
「ロイドは本当にプライドが高いよね」
ちっとも素直になってくれないロイドの腰を押さえて、仕方がないなと思い切り奥まで突き上げてやるとやっと可愛い声を聞かせてくれた。
「ふぁあああっ!」
激しく腰を打ち付けるたびにロイドの口の端から涎が滴り落ちる。
どうやらかなり気持ちがいいようだが、羞恥心が込み上げたのか、両手で口を押さえてまた必死に耐え始めた。
「ロイド、お願い。もっと可愛い声聞かせて?」
気にしなくていいと声をかけるが、それに対しロイドはふるふると首を振るだけだ。
「ロイド…強情だな。声を抑えてるのもいじらしくて可愛いけどね?はぁ…どんなロイドも好きすぎてつい……もっと虐めたくなる」
「んっ!このっ……バカ!」
凄く感じているくせにそれでもなけなしのプライドをかき集めギッと睨みつけてくるロイドが愛らしくて、一気にそこから弱いところを責め立て絶頂まで飛ばしてやった。
「あぁっ!やっ!あぁああああっ!」
中へ注いだ途端ビクビクと体を震わせたロイドに、どこまでも愛しい気持ちが込み上がる。
「んん…」
蕩け切った表情で脱力しながら呼吸を整えるロイドが可愛すぎてこのまま攫ってしまいたくなった。
本当ならここからまた攻めたいけれど、時間がなくて余韻を感じながらギュッと抱きしめるのが精々とは…残念過ぎる。
「ロイド。大丈夫?すぐに綺麗にするからね?」
そして仕方なくロイドへと回復魔法を掛け、ついでに体を清める呪文を唱えた。
これで仕事に戻るのに何も支障はないだろう。
「ロイド、愛してる。今日は早く帰ってきてね?」
続きは夜にと笑って言ってやると、ロイドは怒ったように睨んできた。
ちゃんと短時間で終わらせたのに…どうして睨まれたのか。
「……お前は本当にここ最近どこかのドS白魔道士のようだな」
「え?そんなことはないと思うけど?」
「~~~~っ。言っておくが、ドSになった時点で別れると誓約書の条件に足しておくからな!」
「……?!それって結婚の誓約書?もしかしてすぐに結婚してくれる気になったのか?!」
「違う!婚約の方だ!言っておくが婚約破棄の条件は随時追加だ。私の用意する誓約書に不備があると思うなよ?」
「ええっ?!何それ、聞いてない!酷い!」
「酷くはない!眷属達にも全員目を通してもらって、何一つこちらにリスクがない状態でしか絶対にサインはしない!覚えていろ!」
「ロイドッ!待って!ちゃんと信頼してもらえるように頑張るから!」
「信じられるか!腹黒!」
そんな風に言い合い去っていく二人を取り残されたアベルは呆然と見送ったのだった。
「……叔父上」
「おぉアベル!」
それからトルテッティへと戻り、帰ったかと言って微笑んだ叔父に憔悴しきったようにソレーユでのことを報告する。
「シュバルツはやはり結婚する気満々のようでした。諦めさせるのは難しいかと……」
けれど叔父はとても諦める気はないようだ。
「よいよい。どうせ二年の猶予があるのだろう?相手の言に甘えるようで腹立たしくはあるが…ここはそれに乗ってやって二人を別れさせる方へと手を打ってやればいいだけの話だ」
「叔父上。そんなことをすればシュバルツが暴走するだけです。幸い今はあの黒魔道士が上手く掌で転がしてくれているようですが、あの様子ではいつ立場が逆転するかわかりません。どうぞ思慮深くおありください」
「さすがの言い回しだと褒めてやりたいところだが、この私を舐めてもらっては困る。時間はできたのだ。研究所に対し黒魔道士の洗脳魔法をより強化させるよう指示は出した。あとはソレーユとの交渉次第だ。シュバルツを連れ戻し、あの黒魔道士をこちらに引き込み洗脳し国で利用してやる方向で陛下にもすでに話し済みだ。わざわざ結婚などせずともこうしてやればシュバルツは喜ぶだろう。あとは機を見て可愛い嫁を用意してやればいい」
その話にアベルは背筋が寒くなるのを感じた。
やはりこの叔父は怖い。
けれどこの案件は下手をすればクレイが自分の元にまたやってくるのではないかと思われて、心臓が嫌な音で弾みだす。
何と言ってもあのロイドはクレイと恋仲かと疑うほどの親しさだったのだから────。
これはおとなしく傍観に徹するのではなく、あらかじめ話をしておいた方が自分への火の粉は飛んでこないだろうと考え、とりあえず恭しく頭を下げるにとどめた。
(クレイに直接だと怖いな。ロックウェルに話を通しておくか……)
こうしてアベルは内心気乗りはしないが、自分とトルテッティを守るために動き始めた。
***
その日の夕刻、ロックウェルがクレイを可愛がっていると不意に魔法の発動を感じた。
「…いいところだったのに」
「はぁ……ロックウェル?」
「ちょっと待っていろクレイ」
ばさりとマントでその身を隠し、すぐさまそちらへと視線をやると、そこには意外な人物の姿があり驚いた。
「アベル…王子?」
その声にクレイが激しく反応し、バッと勢いよく起き上がるとすぐさま臨戦態勢へと入った。
そんな姿に落ち着けと目線をやる。
「お久しぶりです。私に用とは珍しいですね」
そうしてにこやかに言葉を紡ぐと、向こうもバツが悪そうにすまないが大事な話なんだと口にしてきた。
それによると、どうもシュバルツの父が二人の結婚を反対して色々計画を立て始めたとのこと。
「私としては叔父の暴走でそちらまで問題が波及しないか心配でな。こうして予め相談と言う形で話を通しておこうかと…」
「なるほど」
確かにアベルとしては叔父の暴走でクレイの反感を買えば自分の魔力を返してもらえなくなるのだから、実に理にかなった行動だった。
「それで具体的なことは何か仰っていましたか?」
「ああ。今ある洗脳魔法を強化させてロイドをトルテッティの専属黒魔道士にする予定だとか何とか…」
その話にクレイがザワリと怒りで魔力を増幅させる。
これは確かに実行に移されたらマズい案件だ。
早めに対処しなければならないだろう。
「私では叔父は止められそうにないが、何か協力できることがあればできる限りのことはさせてもらうつもりだ。だから……」
そんなアベルにバサッと黒衣を纏ったクレイがクッと暗く笑った。
「わかっている。そんな洗脳魔法、俺の魔法で無力化してみせる。ちなみにシュバルツの父親は他にも手を考えていそうだったんだな?」
「ああ。叔父上はかなり怖い人でな。白魔道士至上主義と言っても過言ではない。シュバルツのことも溺愛しているし、そうそう引き下がるとは思えない」
だから今回のソレーユ行きはかなり妥協しての事だったのだとアベルは告げた。
「悪いが…上手く片を付けてくれると助かる」
その言葉に暫し思案し、クレイはニッと笑った。
「わかった。情報に感謝する。この件が片付いたら報酬としてお前とフローリアの魔力を約束通り返してやる。少し補填して…な」
「…………!」
その言葉にアベルは安堵したように表情を綻ばせ、絶対に協力するから何でも言ってほしいと言ってきた。
本当にすっかりクレイの掌で踊らされている。
「さて、話は終わりだな。何かあればまたこちらから連絡する」
「わかった」
そうして魔法はそのまま解呪され、クレイが大きく息を吐いた。
「はぁ…本当に次から次へと問題が発生する二人だな」
そう言いながらもクレイはそっと自分へと甘えるように身を寄せてくれる。
チュッと口づけそんなクレイを支えてまた寝台の方へと足を進めた。
そしてトサリと身を横たえさせて、そのまま甘く溶かすように口づけを再開させながらクレイへとその言葉を紡いでやる。
「私は別にロイドがシュバルツに犯されて殺されようと、トルテッティの玩具にされようとどうでもいいが…お前が嫌だと言うのなら協力するのも吝かではないぞ?」
「ん…お前は本当にあいつが嫌いだな」
「当然だ。あいつほどお前に近い黒魔道士は他にはファルくらいしかいないからな」
「ふふっ…嫉妬されるのは悪くはないが、続きをしてもらえた方が俺としては嬉しい」
そんな言葉にそう言えば先程は途中だったと思い出す。
「クレイ…今日は玩具は使わないぞ?」
「ん…そんなものがなくてもロックウェルとするのは気持ちがいいからいらない」
今日はゆったりと愛し合おうと言って微笑むクレイを組み敷いて、そのまま大好きな体位で攻めていった。
***
「と言うわけで、向こうから何かしら接触があるだろうから、警戒はしておいてくれ」
クレイは翌日早速ロイドへと話を通していた。
ソレーユの王宮にいきなり現れたクレイに目を丸くしてはいたが、なるほどなとロイドも訳知り顔で頷いてくる。
「お前の実力ならこの情報だけで上手くやれるだろう?」
「当然だな。まあトルテッティは排他的だし、予想の範囲内だ。こちらでも眷属に様子を探りに行かせるし、大丈夫だろう」
「ああ。とは言えトルテッティはあのアベルがいる国だ。どうせ親も親だろう。念には念を入れてお前に強化した防御魔法を掛けておいてやる。絶対に油断はするなよ?」
「わかっている」
そうしてヒラヒラと手を振るロイドに安心して、クレイはそのままソレーユを後にした。
「なんだった?」
ライアードのその言葉にロイドはクスリと笑って先程の話を口にした。
トルテッティが自分達を別れさせようと画策し始めたというものだ。
「洗脳魔法とやらはクレイの魔法で弾かれるでしょうし、問題は然程大きくなることもないでしょう」
そうして呑気に構えていたのだが……。
「ライアード様!トルテッティから使者が参りまして、ロイドの身柄をシュバルツ様と一緒に引き取りたいと!」
その話はひと月ほどで自分達の元へとやってきた。
それに対してライアードは当然のように却下を口にしたが、この話を持ってきた外務大臣は何故反対するのかわからないと主張した。
「シュバルツ様とロイドは最近婚約したと伺いました。それならば王族であるシュバルツ様の国に戻るのもおかしな話ではありません!諸手を挙げて歓迎すると申しているのですよ?」
「それは私の仕事にも支障が出る。却下だ」
「なんのなんの。黒魔道士は影渡りができます故、トルテッティに住んだところで何の支障もございません。それに向こうは受け入れに当たって結納金代わりだと言ってかなりの額を提示してくださっているのですよ?誠意を見せたいとシュバルツ様の父君自らあれこれと手配してくださったのです。さすがシュバルツ様の父君であらせられます」
外務大臣は喜色満面でシュバルツの父を褒めている。
確かに話を聞くだけなら全く隙がなく、寧ろ好意的とも取れる話だった。
このあまりにも隙のない優遇話でトルテッティに身柄を移させ、一気に自分を絡めとり洗脳しようと考えているのだろう。
とんだ狸だと思わず舌打ちをしたくなる。
自分の放った眷属達がトルテッティで得てきた情報は、クレイから貰ったもの以上に酷いものだった。
何が悲しくて鎖で繋がれながら媚薬漬けにされ、下手くそな男達に犯され続けなければならないのか。
洗脳されたとしてもそんな廃人生活は断固としてお断りだ。
話が耳に入った時点で一応手は打っておいたが、そもそも籠の鳥になる気など全くない。
(どうせなら極上のテクニックを持った数人で相手してほしいものだな)
その方が何倍も楽しめるし、自分を釣るという意味ではそちらの方がずっとポイントが高い。
「シュバルツ様も話を聞いて、それならロイドの仕事に支障もなさそうだしいいかもしれないと思案されておりましたし、いかがでしょう?ライアード様」
ここまで言われてはさすがのライアードも表立って反対を口にはし辛くなってしまった。
(困ったな…)
ロイドが優秀な黒魔道士だと周知されていることから、毎日トルテッティからソレーユに来るのは大変だという言葉も何も意味をなさない。
それくらい軽々やってのけるのがロイドだからだ。
とは言えクレイの持ってきた裏の話があるため、ライアードとしてもそう簡単に送り出すなど論外だとの結論は出ていた。
けれどそこへミシェルがやってきたので思わず眉を顰めてしまう。
「バルディオス。トルテッティからロイドにはもったいないほどの良い話が来たと聞いたが…?」
「おお!ミシェル様!相変わらずの麗しき姿を拝顔できこのバルディオス、誠に嬉しゅうございます!」
ミシェル贔屓の外務大臣は嬉々として顔を輝かせミシェルへと礼を取った。
元々ロイドが好きではないミシェルからすれば今回の話は飛びつきたくなるほど良い話だ。
このままではこの浮かれた外務大臣と早々に話を纏められてしまうのではないだろうか?
さすがに皇太子ともなれば自分よりも発言権は高い。
これはまずいのではと、そう思ったのだが────。
「ミシェル様も二つ返事でお受けするべきだとお思いでしょう?」
「まあ良い話ではあるな。ただそうは言っても準備もあるだろうし、急ぐ必要もないだろう。あくまでもまだ婚約段階。結婚ではないのだし、向こうに行ってすぐに別れられてもソレーユとしての体面が傷つく。向こうには私の方から書面で告げておいてやろう。『慈悲深きシュバルツ殿には不釣り合いな”問題の多い黒魔道士”なので、安全だと確認できた上で送り出させていただきます』とな」
ミシェルの口から思いもよらぬ言葉が飛び出して、思わず目を見開いて凝視してしまった。
この言葉には外務大臣も一瞬虚を突かれた顔をしたが、次の瞬間には確かにと深く頷いて納得していた。
「さすがミシェル様。国と国の関係を無視できぬ話ゆえに、ここは慎重にいくのも大切ですな。向こうの厚意にこちらが泥を被せては申し訳が立ちません。念には念を入れておいた方がよいでしょう」
黒い噂も絶えず普段の行いが悪いのは周知の事実ですからなとロイドに一瞥を送り、ミシェルへは満面の笑みを浮かべた後彼はそのままトルテッティの使者達の方へと今の言葉を伝えに行ってしまった。
「兄上…珍しいですね。ロイドを庇うなど」
ライアードはそんな風に言うが、ミシェルはただの本音だと言ってそのまま踵を返し行ってしまう。
いまいち考えていることはわからないが、もしかしたらこれまでのことで僅かなりとも恩返しをしようと考えてくれたのかもしれなかった。
言葉は辛辣だが、トルテッティに行かずにすむよう手を打ってくれたのは明白だ。
今の言葉はロイドを嫌っているミシェルが言ったからこそ、最大の効果を発揮したと言っても過言ではないだろう。
「兄上の機転に助けられたな。さて、どうしたものか」
このまま相手の出方を待っているだけでは相手の思うつぼだ。
なし崩し的にロイドを奪われるのはライアードとしても本意ではなかった。
それを受けてロイドは自分の考えをそっと口にする。
「それなのですが、面倒なのでもういっそのこと本人に直接脅しをかけてこようかと…」
「できるのか?」
「もちろんです。ただ…申し訳ないですが、ライアード様にお願いしたいことが……」
そうしてロイドの提案を聞き、ライアードはそれはいいなとニヤリと笑った。
「確かに申し分のない内容で、実にお前らしい提案だ」
「お褒めに預かり光栄です」
「ではこちらに使者を引き留めておく。お前は明日にでもシュバルツ殿を連れてトルテッティに行ってくるがいい」
「ありがとうございます」
こうしてロイドは妖しく笑いながらトルテッティへと向かうことにしたのだった。
アベルは二人がかりで大量に魔力を送り込まれながら酔わされ続けていた。
一体いつの間にシュバルツの魔力はこれほど濃厚になったのだろう?
半分になった自分の魔力ではとても抗うことなどできはしない。
「う…もうやめてくれ……」
頭がグラグラしてとても立てそうにない。
「ふっ…じゃあそこで休んでたらいい。そろそろ許してやるから、もう二度と私の大事なロイドを侮辱するな」
そんな言葉にもうただ素直に頷くしかない。
そうしてその場で崩れ落ちていると、目の前でシュバルツがロイドを口説き始めた。
「ロイド……口直し」
「私はまだ仕事があるんだが?」
「ちょっとだけ…。約束するから」
「ん…はぁ…少しだけだぞ?」
甘えるように口づけ、シュバルツはロイドの官能を引き出すように指を這わせる。
「うん。少しで我慢する。その代わりロイドが一回で満足できるくらい攻めてもいい?」
そしてシュバルツはそのままアベルの横でロイドへの愛撫を開始した。
「はぁ…っ、ロイド、ここ凄く熱くなってる」
「んんんっ…」
ほんのりと色っぽく頬を染めるロイドが腕の中で気持ちよさそうに腰を揺らす。
「アベルがいるから恥ずかしいんでしょ?声聞かれるの嫌いだもんね?」
「はぁっ…うぅ……」
色香を纏い壁に手をつきバックで犯されるロイドにそうやって声を掛けると、余計な事は言わずにさっさと終わらせろと目で訴えてきた。
「んっんっんっ……」
「あぁ…やっぱり可愛い声が聞きたいな」
けれどどうしても欲は出て、より一層弱い体位へと遠慮なく移行する。
「ほら。こっちの方が好きだよね?」
「あっ…あぁあああっ!」
ロイドを支えながら正面からゆさゆさと揺すってやると先程よりも甘い声で啼き始めた。
「あっあっあっ!」
「ロイド。可愛い」
「ふぅうっ!」
「そんなに声我慢しないで?アベルなんて気にしなくていいから、いつもみたいにいっぱい声聞かせて?」
「だ…れがっ…!」
どうしてもプライドを捨てきれないロイドに甘く言い含めるが、これくらいで聞いてくれないことなどわかりきっている。
「仕方ないな。じゃあ……」
ロイドが少し素直になれるように、片足を下ろしねじるような体位で思い切り奥まで突き上げてやった。
「ひっあぁあっ……!」
ぷるぷると震えながら頑張って耐えるロイドにフッと意地の悪い笑みを浮かべ、そのまま緩々と腰を振ってやるとじわりと目に涙を浮かべ始める。
これならきっと素直になってくれるはずだ。
「あっあっああっ…!」
「ロイド…そうやって意地を張る姿も可愛いけど、甘えてくれた方がもっと嬉しい。だから…ほら……ね?」
「シュバ…シュバルツッ……」
もう一押しかなと微笑んでやるが、ロイドの理性はまだ飛び切ってはいない。
「ん…気持ちいい。ロイド。もっと気持ちよくしてあげるから早く素直になって?」
「あっあっあっ…シュバルツッ!この角度…ダメッ!」
「知ってるよ?」
当然わかっててやっているに決まっている。
もっともっと追い詰めないとロイドは素直になってくれなさそうだと判断し、その言葉と同時に一気に奥まで突き込みグリグリと最奥を擦る様にしてやると、ロイドはその刺激に耐えられないとばかりに嬌声を上げた。
「んあぁああぁあっ!」
ひくんひくんと身を震わせるロイドを支え腰を逃がさないようしっかりと押さえてやる。
はぁはぁと荒い息を吐くロイドに『ちゃんとしっかり息を吐いて』と言い聞かせながらあやすように何度も軽く口づけ、腰は弱いところを何度も突き上げていく。
「やっやっやっ…!」
「ん…ロイド、大丈夫?」
忠告通り、気遣いは忘れずに。
でも素直になれるくらいには責め立てて────。
「シュバ…ルツッ!」
ロイドは熱い眼差しで自分を見つめ、その限界を訴えかけていた。
その姿に思い切りそそられてしまう。
「うん。そろそろ一緒にイこうか」
「うっうぅうっ…」
「ロイドは本当にプライドが高いよね」
ちっとも素直になってくれないロイドの腰を押さえて、仕方がないなと思い切り奥まで突き上げてやるとやっと可愛い声を聞かせてくれた。
「ふぁあああっ!」
激しく腰を打ち付けるたびにロイドの口の端から涎が滴り落ちる。
どうやらかなり気持ちがいいようだが、羞恥心が込み上げたのか、両手で口を押さえてまた必死に耐え始めた。
「ロイド、お願い。もっと可愛い声聞かせて?」
気にしなくていいと声をかけるが、それに対しロイドはふるふると首を振るだけだ。
「ロイド…強情だな。声を抑えてるのもいじらしくて可愛いけどね?はぁ…どんなロイドも好きすぎてつい……もっと虐めたくなる」
「んっ!このっ……バカ!」
凄く感じているくせにそれでもなけなしのプライドをかき集めギッと睨みつけてくるロイドが愛らしくて、一気にそこから弱いところを責め立て絶頂まで飛ばしてやった。
「あぁっ!やっ!あぁああああっ!」
中へ注いだ途端ビクビクと体を震わせたロイドに、どこまでも愛しい気持ちが込み上がる。
「んん…」
蕩け切った表情で脱力しながら呼吸を整えるロイドが可愛すぎてこのまま攫ってしまいたくなった。
本当ならここからまた攻めたいけれど、時間がなくて余韻を感じながらギュッと抱きしめるのが精々とは…残念過ぎる。
「ロイド。大丈夫?すぐに綺麗にするからね?」
そして仕方なくロイドへと回復魔法を掛け、ついでに体を清める呪文を唱えた。
これで仕事に戻るのに何も支障はないだろう。
「ロイド、愛してる。今日は早く帰ってきてね?」
続きは夜にと笑って言ってやると、ロイドは怒ったように睨んできた。
ちゃんと短時間で終わらせたのに…どうして睨まれたのか。
「……お前は本当にここ最近どこかのドS白魔道士のようだな」
「え?そんなことはないと思うけど?」
「~~~~っ。言っておくが、ドSになった時点で別れると誓約書の条件に足しておくからな!」
「……?!それって結婚の誓約書?もしかしてすぐに結婚してくれる気になったのか?!」
「違う!婚約の方だ!言っておくが婚約破棄の条件は随時追加だ。私の用意する誓約書に不備があると思うなよ?」
「ええっ?!何それ、聞いてない!酷い!」
「酷くはない!眷属達にも全員目を通してもらって、何一つこちらにリスクがない状態でしか絶対にサインはしない!覚えていろ!」
「ロイドッ!待って!ちゃんと信頼してもらえるように頑張るから!」
「信じられるか!腹黒!」
そんな風に言い合い去っていく二人を取り残されたアベルは呆然と見送ったのだった。
「……叔父上」
「おぉアベル!」
それからトルテッティへと戻り、帰ったかと言って微笑んだ叔父に憔悴しきったようにソレーユでのことを報告する。
「シュバルツはやはり結婚する気満々のようでした。諦めさせるのは難しいかと……」
けれど叔父はとても諦める気はないようだ。
「よいよい。どうせ二年の猶予があるのだろう?相手の言に甘えるようで腹立たしくはあるが…ここはそれに乗ってやって二人を別れさせる方へと手を打ってやればいいだけの話だ」
「叔父上。そんなことをすればシュバルツが暴走するだけです。幸い今はあの黒魔道士が上手く掌で転がしてくれているようですが、あの様子ではいつ立場が逆転するかわかりません。どうぞ思慮深くおありください」
「さすがの言い回しだと褒めてやりたいところだが、この私を舐めてもらっては困る。時間はできたのだ。研究所に対し黒魔道士の洗脳魔法をより強化させるよう指示は出した。あとはソレーユとの交渉次第だ。シュバルツを連れ戻し、あの黒魔道士をこちらに引き込み洗脳し国で利用してやる方向で陛下にもすでに話し済みだ。わざわざ結婚などせずともこうしてやればシュバルツは喜ぶだろう。あとは機を見て可愛い嫁を用意してやればいい」
その話にアベルは背筋が寒くなるのを感じた。
やはりこの叔父は怖い。
けれどこの案件は下手をすればクレイが自分の元にまたやってくるのではないかと思われて、心臓が嫌な音で弾みだす。
何と言ってもあのロイドはクレイと恋仲かと疑うほどの親しさだったのだから────。
これはおとなしく傍観に徹するのではなく、あらかじめ話をしておいた方が自分への火の粉は飛んでこないだろうと考え、とりあえず恭しく頭を下げるにとどめた。
(クレイに直接だと怖いな。ロックウェルに話を通しておくか……)
こうしてアベルは内心気乗りはしないが、自分とトルテッティを守るために動き始めた。
***
その日の夕刻、ロックウェルがクレイを可愛がっていると不意に魔法の発動を感じた。
「…いいところだったのに」
「はぁ……ロックウェル?」
「ちょっと待っていろクレイ」
ばさりとマントでその身を隠し、すぐさまそちらへと視線をやると、そこには意外な人物の姿があり驚いた。
「アベル…王子?」
その声にクレイが激しく反応し、バッと勢いよく起き上がるとすぐさま臨戦態勢へと入った。
そんな姿に落ち着けと目線をやる。
「お久しぶりです。私に用とは珍しいですね」
そうしてにこやかに言葉を紡ぐと、向こうもバツが悪そうにすまないが大事な話なんだと口にしてきた。
それによると、どうもシュバルツの父が二人の結婚を反対して色々計画を立て始めたとのこと。
「私としては叔父の暴走でそちらまで問題が波及しないか心配でな。こうして予め相談と言う形で話を通しておこうかと…」
「なるほど」
確かにアベルとしては叔父の暴走でクレイの反感を買えば自分の魔力を返してもらえなくなるのだから、実に理にかなった行動だった。
「それで具体的なことは何か仰っていましたか?」
「ああ。今ある洗脳魔法を強化させてロイドをトルテッティの専属黒魔道士にする予定だとか何とか…」
その話にクレイがザワリと怒りで魔力を増幅させる。
これは確かに実行に移されたらマズい案件だ。
早めに対処しなければならないだろう。
「私では叔父は止められそうにないが、何か協力できることがあればできる限りのことはさせてもらうつもりだ。だから……」
そんなアベルにバサッと黒衣を纏ったクレイがクッと暗く笑った。
「わかっている。そんな洗脳魔法、俺の魔法で無力化してみせる。ちなみにシュバルツの父親は他にも手を考えていそうだったんだな?」
「ああ。叔父上はかなり怖い人でな。白魔道士至上主義と言っても過言ではない。シュバルツのことも溺愛しているし、そうそう引き下がるとは思えない」
だから今回のソレーユ行きはかなり妥協しての事だったのだとアベルは告げた。
「悪いが…上手く片を付けてくれると助かる」
その言葉に暫し思案し、クレイはニッと笑った。
「わかった。情報に感謝する。この件が片付いたら報酬としてお前とフローリアの魔力を約束通り返してやる。少し補填して…な」
「…………!」
その言葉にアベルは安堵したように表情を綻ばせ、絶対に協力するから何でも言ってほしいと言ってきた。
本当にすっかりクレイの掌で踊らされている。
「さて、話は終わりだな。何かあればまたこちらから連絡する」
「わかった」
そうして魔法はそのまま解呪され、クレイが大きく息を吐いた。
「はぁ…本当に次から次へと問題が発生する二人だな」
そう言いながらもクレイはそっと自分へと甘えるように身を寄せてくれる。
チュッと口づけそんなクレイを支えてまた寝台の方へと足を進めた。
そしてトサリと身を横たえさせて、そのまま甘く溶かすように口づけを再開させながらクレイへとその言葉を紡いでやる。
「私は別にロイドがシュバルツに犯されて殺されようと、トルテッティの玩具にされようとどうでもいいが…お前が嫌だと言うのなら協力するのも吝かではないぞ?」
「ん…お前は本当にあいつが嫌いだな」
「当然だ。あいつほどお前に近い黒魔道士は他にはファルくらいしかいないからな」
「ふふっ…嫉妬されるのは悪くはないが、続きをしてもらえた方が俺としては嬉しい」
そんな言葉にそう言えば先程は途中だったと思い出す。
「クレイ…今日は玩具は使わないぞ?」
「ん…そんなものがなくてもロックウェルとするのは気持ちがいいからいらない」
今日はゆったりと愛し合おうと言って微笑むクレイを組み敷いて、そのまま大好きな体位で攻めていった。
***
「と言うわけで、向こうから何かしら接触があるだろうから、警戒はしておいてくれ」
クレイは翌日早速ロイドへと話を通していた。
ソレーユの王宮にいきなり現れたクレイに目を丸くしてはいたが、なるほどなとロイドも訳知り顔で頷いてくる。
「お前の実力ならこの情報だけで上手くやれるだろう?」
「当然だな。まあトルテッティは排他的だし、予想の範囲内だ。こちらでも眷属に様子を探りに行かせるし、大丈夫だろう」
「ああ。とは言えトルテッティはあのアベルがいる国だ。どうせ親も親だろう。念には念を入れてお前に強化した防御魔法を掛けておいてやる。絶対に油断はするなよ?」
「わかっている」
そうしてヒラヒラと手を振るロイドに安心して、クレイはそのままソレーユを後にした。
「なんだった?」
ライアードのその言葉にロイドはクスリと笑って先程の話を口にした。
トルテッティが自分達を別れさせようと画策し始めたというものだ。
「洗脳魔法とやらはクレイの魔法で弾かれるでしょうし、問題は然程大きくなることもないでしょう」
そうして呑気に構えていたのだが……。
「ライアード様!トルテッティから使者が参りまして、ロイドの身柄をシュバルツ様と一緒に引き取りたいと!」
その話はひと月ほどで自分達の元へとやってきた。
それに対してライアードは当然のように却下を口にしたが、この話を持ってきた外務大臣は何故反対するのかわからないと主張した。
「シュバルツ様とロイドは最近婚約したと伺いました。それならば王族であるシュバルツ様の国に戻るのもおかしな話ではありません!諸手を挙げて歓迎すると申しているのですよ?」
「それは私の仕事にも支障が出る。却下だ」
「なんのなんの。黒魔道士は影渡りができます故、トルテッティに住んだところで何の支障もございません。それに向こうは受け入れに当たって結納金代わりだと言ってかなりの額を提示してくださっているのですよ?誠意を見せたいとシュバルツ様の父君自らあれこれと手配してくださったのです。さすがシュバルツ様の父君であらせられます」
外務大臣は喜色満面でシュバルツの父を褒めている。
確かに話を聞くだけなら全く隙がなく、寧ろ好意的とも取れる話だった。
このあまりにも隙のない優遇話でトルテッティに身柄を移させ、一気に自分を絡めとり洗脳しようと考えているのだろう。
とんだ狸だと思わず舌打ちをしたくなる。
自分の放った眷属達がトルテッティで得てきた情報は、クレイから貰ったもの以上に酷いものだった。
何が悲しくて鎖で繋がれながら媚薬漬けにされ、下手くそな男達に犯され続けなければならないのか。
洗脳されたとしてもそんな廃人生活は断固としてお断りだ。
話が耳に入った時点で一応手は打っておいたが、そもそも籠の鳥になる気など全くない。
(どうせなら極上のテクニックを持った数人で相手してほしいものだな)
その方が何倍も楽しめるし、自分を釣るという意味ではそちらの方がずっとポイントが高い。
「シュバルツ様も話を聞いて、それならロイドの仕事に支障もなさそうだしいいかもしれないと思案されておりましたし、いかがでしょう?ライアード様」
ここまで言われてはさすがのライアードも表立って反対を口にはし辛くなってしまった。
(困ったな…)
ロイドが優秀な黒魔道士だと周知されていることから、毎日トルテッティからソレーユに来るのは大変だという言葉も何も意味をなさない。
それくらい軽々やってのけるのがロイドだからだ。
とは言えクレイの持ってきた裏の話があるため、ライアードとしてもそう簡単に送り出すなど論外だとの結論は出ていた。
けれどそこへミシェルがやってきたので思わず眉を顰めてしまう。
「バルディオス。トルテッティからロイドにはもったいないほどの良い話が来たと聞いたが…?」
「おお!ミシェル様!相変わらずの麗しき姿を拝顔できこのバルディオス、誠に嬉しゅうございます!」
ミシェル贔屓の外務大臣は嬉々として顔を輝かせミシェルへと礼を取った。
元々ロイドが好きではないミシェルからすれば今回の話は飛びつきたくなるほど良い話だ。
このままではこの浮かれた外務大臣と早々に話を纏められてしまうのではないだろうか?
さすがに皇太子ともなれば自分よりも発言権は高い。
これはまずいのではと、そう思ったのだが────。
「ミシェル様も二つ返事でお受けするべきだとお思いでしょう?」
「まあ良い話ではあるな。ただそうは言っても準備もあるだろうし、急ぐ必要もないだろう。あくまでもまだ婚約段階。結婚ではないのだし、向こうに行ってすぐに別れられてもソレーユとしての体面が傷つく。向こうには私の方から書面で告げておいてやろう。『慈悲深きシュバルツ殿には不釣り合いな”問題の多い黒魔道士”なので、安全だと確認できた上で送り出させていただきます』とな」
ミシェルの口から思いもよらぬ言葉が飛び出して、思わず目を見開いて凝視してしまった。
この言葉には外務大臣も一瞬虚を突かれた顔をしたが、次の瞬間には確かにと深く頷いて納得していた。
「さすがミシェル様。国と国の関係を無視できぬ話ゆえに、ここは慎重にいくのも大切ですな。向こうの厚意にこちらが泥を被せては申し訳が立ちません。念には念を入れておいた方がよいでしょう」
黒い噂も絶えず普段の行いが悪いのは周知の事実ですからなとロイドに一瞥を送り、ミシェルへは満面の笑みを浮かべた後彼はそのままトルテッティの使者達の方へと今の言葉を伝えに行ってしまった。
「兄上…珍しいですね。ロイドを庇うなど」
ライアードはそんな風に言うが、ミシェルはただの本音だと言ってそのまま踵を返し行ってしまう。
いまいち考えていることはわからないが、もしかしたらこれまでのことで僅かなりとも恩返しをしようと考えてくれたのかもしれなかった。
言葉は辛辣だが、トルテッティに行かずにすむよう手を打ってくれたのは明白だ。
今の言葉はロイドを嫌っているミシェルが言ったからこそ、最大の効果を発揮したと言っても過言ではないだろう。
「兄上の機転に助けられたな。さて、どうしたものか」
このまま相手の出方を待っているだけでは相手の思うつぼだ。
なし崩し的にロイドを奪われるのはライアードとしても本意ではなかった。
それを受けてロイドは自分の考えをそっと口にする。
「それなのですが、面倒なのでもういっそのこと本人に直接脅しをかけてこようかと…」
「できるのか?」
「もちろんです。ただ…申し訳ないですが、ライアード様にお願いしたいことが……」
そうしてロイドの提案を聞き、ライアードはそれはいいなとニヤリと笑った。
「確かに申し分のない内容で、実にお前らしい提案だ」
「お褒めに預かり光栄です」
「ではこちらに使者を引き留めておく。お前は明日にでもシュバルツ殿を連れてトルテッティに行ってくるがいい」
「ありがとうございます」
こうしてロイドは妖しく笑いながらトルテッティへと向かうことにしたのだった。
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