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第2章 骨の谷

第24話 えっ!? 喋れるんだ!?

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 えっ!? 太陽が降って来た!?

 ゴシゴシ。

 眼をこすって2度見するが、間違いなく太陽がドンドンでっかくなって来てる。

 んな、莫迦バカな。

 そう思った矢先、チラッと太陽かと思ってたモノの背後から、本物が顔をのぞかせた。重なってただけかいっ!?

 「いや、太陽じゃねえっ! 莫迦デッカイ火の玉かよぉっ!!」

 今出来ることは、シッカリ踏み込んで山の方に力いっぱい跳ぶことだ!

 「おおおおおおっ!!」

 ステータスが成長してなければ完全に爆発に呑まれてたタイミングだったぞ。

 飛び出した瞬間、後ろで莫迦デッカイ火の玉がぜて、爆風と炎に背中を蹴られることになった。

 なんちゅう威力だ。

 それに頭も良い。

 太陽の位置に合わせてあんなでかい火の玉を打てるんだからよ。

 吹き飛ばされて空中を舞いながら、俺は何処か冷静に思いを巡らせていた。

 確認するつもりはないが、さっきの爆発で相当数の骸骨が逝ったはずだ。でも、着地点付近はそうじゃない。

 そう思ったら、横合いからさっきまでよりも小さな火の玉が飛んで来た。

 見事に着地点に着弾するコースだ。

 「丸焼け、なんて、御 免 な ん だ よ!」

 咄嗟とっさに飛びながら膝を抱えて前転し、勢いを付けたところで足を伸ばす。頭と足が真逆なった時だ。

 そうすると重心が崩れて失速し、予定より手前で意図的に落ちることになる。

 骸骨が1体下敷きになって犠牲になるが、心は痛まない。

 けど、それで眼と鼻の先に来た火の玉を躱すように、もう1度地面を蹴れたのが大きいな。

 「さっきの爆発にメイジが巻き込まれなかったってことか?」

 「いや、そうではない。爆発の外に初めから居たぞ」

 「は!?」

 えっ!? 喋った!? 少し低いが女の声!?

 カタカタしか言わなかった骸骨から声が聞こえた気がした。まさか、ね。

 「枯れ地が騒がしいと思って来てみれば、風変わりな兎を見つけてな。われも交ざりに来てみたという理由わけだ」

 「っ!?」

 聞き間違いじゃない!?

 慌てて声が聞こえた側に顔向けると、黒っぽい袖付き外套ローブを着て、フードを深々と被った骸骨が、左肩に乗せた杖をトントン動かしながらこっちを見てるじゃねえか。

 ◆屍之上王かばねのじょうおう(深淵種)◆
 【種族】エルダー・リッチ
 【性別】♀
 【レベル】?
 【状態】?
 【生命力】? / ?
 【魔力】? / ?
 【力】?
 【体力】?
 【敏捷】?
 【器用】?
 【知性】?

 【ユニークスキル】
  ?

 【アクティブスキル】
  ?
  ?
  ?

 【パッシブスキル】
  ?
  ?
  ?

 【称号】
  ?
  ?

 【装備】
  ?
  ?

 Oh……。エルダー・リッチとな。

 【鑑定眼】が勝手に仕事してくれた。「しかばね」じゃなくて、「かばね」なんだな。より難しい読み方ってどうよ?

 ん?

 というか、今まで何とも思ってなかったが、本の字は読めねえのに、ステータスの字は読めるのって何でだ?

 はは。こういう時に限ってどうでも良いような疑問がいてくる。

 あれか?

 人が書いたものは読めんが、自分の中で読み取ったものは俺の見やすいように都合良く出来てるって仕様か?

 もしそうなら、ザニア姐さんにまた礼を言っておかないといけねえな。

 「ほう。面白い。吾を鑑定したか。雪毛ゆきげの兎風情が【鑑定眼】を持つとな」

 「いっ!? バレた!? っと!」

 こっちに来て初めて喋ったのがエルダー・リッチというのもどうかと思うが、骸骨どもの攻撃を躱し、切り裂きながらも明らかに格上の存在を意識の外に外すことが出来なくなっていた。

 「当然だ。吾を誰だと思っているのだ」

 いえ、存じ上げませんが?

 「――初めまして」

 「何と!? 吾を知らぬとな!?」

 おいおい、知ってると思ってる方が驚きだよ。

 名前も名乗ってないだろうがっ!

 あれか? ちょっと残念なやつか!?

 右も左も分らんような状態で、基礎知識無しで可怪しな森に放り出されてるんだ。

 「すみま、せん、ねえっ! こちとら、昔、話に、興味、ないもんでっ!」

 あ――、骸骨が鬱陶うっとうしいっ!

 「ふむ。吾の爆炎を躱したことと言い。【鑑定眼】のレアスキルを持っているといい。存外良い拾い物やも知れぬな」

 はいっ?

 「それは、どういう、ことでっ?」

 「うむ。どれくらいこの森に居るかは忘れてしまったが」

 忘れたんかいっ!

 「――っ!」

 大声で突っ込みたいのを抑えて、歯を食いしばり骸骨を蹴り飛ばす。

 「喋り相手が居らぬとつまらぬのでな。かと言って、あそこに出向いて消し炭になりたくはない。【फायर कोड़ा】」

 完全にマイペースで話すエルダー・リッチが最後に何かつぶやいて杖を振ったと思ったら、その先から燃える鞭のようなモノが、空気を切り裂きながら俺に向かって飛んで来た――。





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