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第一章 島からの旅立ち
第十二話 誘惑 ①
しおりを挟む幼馴染で、昔、僕が塞ぎ込んでいた時に明るい場所に連れ出してくれたクレア姉さん。
そのクレア姉さんが言った。
「私がもし、行かないでってお願いしたら、アルは…どうする?」
答えに悩んでしまった僕は、不誠実なのだろう。
だけどそれは、過去の事があるからだ。
「僕…は…」
「ねぇ、もしも居てくれるなら」
言いながら一歩詰めてきたクレア姉さんは、僕の頬に手を添えた。
その行動に驚いて、僕は続きの言葉を言えなかった。
「昔みたいに、色んな事教えてあげる」
背筋にぞっとした何かを感じるほどの豹変だった。
「んむっ…ん…ぷはっ…クレアね、姉さん…何して…」
ぎこちない、ただ唇同士を重ねるだけのキス。
決して慣れているワケでは無いが、纏う雰囲気はその行為を当然と思わせる物があった。
「私もまだ…知らない事ばっかりだから、一緒にお勉強…出来るよ?」
頬に添えた指を這わせて肩へ、クレア姉さんはさらに一歩近づくと僕に密着した。
お風呂上りなのだろうか、ふわりと甘い香りが鼻孔をくすぐり、頬が紅潮するのが分かった。
「アル…エッチってしたこと…ある?」
「エッチ…?」
その香りが思考を削ぎ落し、僕は何処か虚ろな目になっていた。
「そう、アルのおちんちんを…私のおまんこに入れるの…」
「おまん、こ?」
知ってはいるけれど聞き慣れない言葉に、首を傾げる僕に対してクレア姉さんは小さく笑うと僕のおちんちんに右手で、僕の手に左手で触れた。
「んゅ…」
「もう大きくなってるじゃないの…おまんこっていうのは、ここのこと…」
導かれる様にしてクレア姉さんの左手が僕の手を引いて、自分の股へと持っていった。
パンツ越しにぷにっとした柔らかい感触が伝わってきて、いけない事をしている気分になる。
自分のおちんちんをおまんこに挿れる。
それは神様と行ったあの行為を思い出させた。
「ぼ、僕分からないよ」
「大丈夫よアル、大丈夫…私と一緒に居てくれれば…いっぱい、教えてあげるから」
耳元で囁かれた所為か、ぞわぞわと背中がくすぐったくなって、おちんちんがむず痒くなった。
神様が教えてくれた『気持ち良い』だ。
「ねぇ、一緒に居よう?私、一人は嫌なの…アル、お願い」
言葉を口に、その手は僕のおちんちんに。
ズボンの上から擦られているだけなのに、僕は膝がガクガクと揺れてしまう。
大きくなったおちんちんの裏側を、人差し指と中指で下から上になぞられる。
何度も何度も繰り返しながら、時折クレア姉さんは「いいでしょ?」「だめ?」とねだる様な言葉を並べる。
「んっ…ダメ…だよぉ…」
「どうして?気持ち良いの嫌い?」
「んひゃぅ…んやぁっ…!」
耳に舌を入れられ、ぬめっとした感触と人の体温が持つ暖かさに思わず目を瞑って声を上げてしまう。
どうすればいいのか分からず、思わず自分の両手を胸の所に持ってきてドキドキする心臓を抑える為に当てて落ち着こうとするけれど、まるで効果は無い。
「ねぇ、好きでしょ?気持ち良いコト…」
空いている片方の手で僕の背中に手を回して、色々な所を指先でくるくると弄りだす。
自分の感覚を何処に集中させれば良いのか分からず、指先に踊らされているかのようにピクピクと身体が跳ねてしまう。
「好き…だけ、どっ…んぅ…」
「なら、一緒にいようよ…いくらでも気持ち良いコトしてあげるよ…」
心が傾きそうになる。
耳元で囁かれると、自分の考えている事なのか、言われたことなのか、思考と聴覚の境界線が取り除かれそうになる。
「一緒に居るって言ってくれるだけでいいんだよ?」
ズボンの中で大きくなったおちんちんの先っぽをクレア姉さんの指先がぐりぐりと辱める。
自分が意図したことでは無いのに、ズボンに染みを作る程に粘液質な液体がおちんちんから出てしまっている。
「気持ち良いんでしょ?ズボン越しに我慢汁でぐちゅぐちゅになってるわよ」
「くぅっ…うぅ…」
「一緒に居るって言ってくれたら…直接触ってあげるわよ?」
心臓が跳ねた。
ズボンの上から触られるだけでこれ程まで気持ちが良いんだ。
直接触られたりしたら…どれ程の気持ち良さが…。
だけど…それでも…!
「僕は…人魔戦争を止めるんだ…!」
「………」
指の動きが止んだ。
それが理由で、少しだけ腰が動いてしまったのを、クレア姉さんは見逃さなかった。
「でも…気持ち良くもなりたいの?」
「あぁああっ…」
指で先端をなぞられて、腹筋をへっこませて、身体を少しでも動かして快楽を逃がそうとするけれど、クレア姉さんは先端を軽くつねり刺激を強くして逃しきれない快楽を与えてきた。
―――だけど、ここで言葉を緩める訳には、いかないんだ。
「っは…う…だか…ら、今は、一緒にいられない」
再び指の動きが止まったけれど、僕は反応せずに乗り越える事が出来た。
「…ふぅ、分かったわ、アルがそう言うんだったら今晩は諦める」
身体を離して悲しそうな顔をするクレア姉さんに、思わず罪悪感が湧いた。
そのクレア姉さんからは、先程まで感じていたぞわっとする物は感じられない。
クレア姉さんは、出会った時は本当に嬉しそうで、今はとても悲しそうで…。
トントルを引っ越してから、クレア姉さんはこの港町で友達を作ることも無く一人だったんじゃないだろうか?
あのレストランで働きながら、毎日を過ごしていたから…。
友達に飢えていて…それで、だから…僕に…。
「それじゃあ、また明日ね…アル」
そう言って去って行ったクレア姉さんの心境を、僕は考えてみようとしたけれど、まるで想像も付かなかった。
昼間のクレア姉さんからは想像も付かないほどの変容ぶりに驚きながらも、僕は、
「…今日は、寝よう」
もやもやした何かが頭に渦巻いている中で、僕は宿屋の部屋に戻って寝付けない夜を過ごした。
明日になったって、答えは変わらない…僕は、人魔戦争を止める為に、誘惑を払いのけなきゃいけないんだ。
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