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第一章 島からの旅立ち
第十九話 遠い異国で《予告編》
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少年が戦っている。
涙目になりながら、悲しみを瞳に湛えてそれでも剣を握り振るっている。
何処かで見た事のある少年だ。
銀色の髪に、幼さの残る精悍な顔立ち。
懐かしさを覚える…悲しげな瞳。
「…今のは」
目を覚ました私は、先程までの光景が夢の中である事を理解しました。
また…同じ夢。
何度も何度も夢に見る。銀色の髪をした。勇敢な少年の戦う姿。
私とは違う。人間という種族の少年の夢。
一体どこの誰なのかも分からない、名前も、歳も…だけどこんなに胸に残るこの夢は、本当に…夢?
ベッドから尾を垂らして、冷たいタイルの床を楽しむ。私達の種族は温度に敏感なので、出来ればカーペットが欲しいけれどカーペットなんて敷いてしまったらすぐに駄目にしてしまう。
魔道具で時間を確認すると、もう明け方…丁度良い時間に起きる事が出来た。
外、障子の向こうから鏑矢の奏でる高い音が聞こえた。鳥の鳴き声と聞き間違えてしまいそうな高い音。
「今のは…誰なの?」
疑問を胸に、支度を始める。
私の傍仕えが起こしに来る前に、母様譲りの白い髪を結い簪で留める。
金色の瞳のすぐ下、涙袋に紅を塗って数度瞬き。
雪の紋様が描かれた着物を着て、帯まで自分で結ぶ。
教えてくれる人が亡くなってしまって、独学で学ぶしか無かった帯の結び方は少し歪かもしれない。
「いつか…出会う人なの?」
障子の外に見える瓦屋根は答えてくれない、羅身亜の国は…今日も静かに時を刻む。
―――――――――
銀色の少年…ベッドに横になり、眠っている。
もう涎が出てしまうほど可愛らしい、大人になろうと日々努力している事が身体のあちこちに見受けられる可愛い少年。
なんて、兄にしたいと思わせる可愛さ。
きっと無知、無知でありながら敏感な身体を持っている。
こんなに美味しそうな少年を、私は知らない…もしも知っていたら、とっくに食べている。
「…誰誰誰?今の誰~?」
今のが夢だったと分かったのは、起きて目に入ってきた天蓋があったからだ。
嘘みたい、私が夢を見るなんて…夢の中に入る私が夢を見る?
あの子はもしかして、私の夢の中に入ってきてしまったの?
夢に干渉する能力を持っているけれど、そんな事が起きるのは初めてだった。
「あぁもう一度見ないかしら、可愛かったなぁ…本当、犯したいって一瞬で思わせるなんて」
自分の唇を舐める。舌舐めずり、その単語をあの少年の耳元で囁きたい。
きっと良い反応をしてくれる…その反応すら、想像出来ない程の可愛さ。
「もう決めた!いつか見付けたら、絶対にお兄ちゃんになってもらうんだから」
サキュバスの姫は、誰にも告げず心に決めた。
―――――――――――
潮風が吹く町で、一人の女性が海を眺めていた。
傍らに立つ騎士が、静かにその女性に耳打ちをした。
「…へー、ようやっと会えるんか、アルノート君に」
女性はその名前の少年を見た事が無い、見た事が無いが名前だけは知っていた。
「やーっと借りが返せるでガディウスのおっちゃん、任せとき…」
女性は、金色の髪に魔力を通してまるで朝焼けの様な輝きを周囲に放った。
「このキティ!約束はちゃんと守って…アルノート君の御嫁さんになったるわ!!」
互いを知らないというのに、勝手な事をいいながら…。
――――――――――
もう最悪!
何が貴族の船よ、貴族の船って言うのなら紳士の一人でも乗ってなさいよね!
私を見るなり「ご年齢が…」だの「歳をお考えになっては?」だの…何よロリータ商会って、どんだけ見る目が無い男の集まりなのよ!
自分で言うのもおかしな話かもしれないけれどワインレッドの髪色に妖艶な外見、これで寄ってこない男なんて不能を患っているんじゃないかしら!
次に寄るのは有名でも無い島だっていうし…何処かに可愛らしい男の子はいないかしら。
こう、手取り足取り教えてあげたくなる様な可愛い男の子がいいわね…。
私の得意なことなんて夜伽と魔法だけなんだから、存分に活かさないと損ね!
あと「おばさん」って言った船長は後でシめる。絶対にシめてやるわ。
これから待つ出会いの数々が…煌きを見せていた。
涙目になりながら、悲しみを瞳に湛えてそれでも剣を握り振るっている。
何処かで見た事のある少年だ。
銀色の髪に、幼さの残る精悍な顔立ち。
懐かしさを覚える…悲しげな瞳。
「…今のは」
目を覚ました私は、先程までの光景が夢の中である事を理解しました。
また…同じ夢。
何度も何度も夢に見る。銀色の髪をした。勇敢な少年の戦う姿。
私とは違う。人間という種族の少年の夢。
一体どこの誰なのかも分からない、名前も、歳も…だけどこんなに胸に残るこの夢は、本当に…夢?
ベッドから尾を垂らして、冷たいタイルの床を楽しむ。私達の種族は温度に敏感なので、出来ればカーペットが欲しいけれどカーペットなんて敷いてしまったらすぐに駄目にしてしまう。
魔道具で時間を確認すると、もう明け方…丁度良い時間に起きる事が出来た。
外、障子の向こうから鏑矢の奏でる高い音が聞こえた。鳥の鳴き声と聞き間違えてしまいそうな高い音。
「今のは…誰なの?」
疑問を胸に、支度を始める。
私の傍仕えが起こしに来る前に、母様譲りの白い髪を結い簪で留める。
金色の瞳のすぐ下、涙袋に紅を塗って数度瞬き。
雪の紋様が描かれた着物を着て、帯まで自分で結ぶ。
教えてくれる人が亡くなってしまって、独学で学ぶしか無かった帯の結び方は少し歪かもしれない。
「いつか…出会う人なの?」
障子の外に見える瓦屋根は答えてくれない、羅身亜の国は…今日も静かに時を刻む。
―――――――――
銀色の少年…ベッドに横になり、眠っている。
もう涎が出てしまうほど可愛らしい、大人になろうと日々努力している事が身体のあちこちに見受けられる可愛い少年。
なんて、兄にしたいと思わせる可愛さ。
きっと無知、無知でありながら敏感な身体を持っている。
こんなに美味しそうな少年を、私は知らない…もしも知っていたら、とっくに食べている。
「…誰誰誰?今の誰~?」
今のが夢だったと分かったのは、起きて目に入ってきた天蓋があったからだ。
嘘みたい、私が夢を見るなんて…夢の中に入る私が夢を見る?
あの子はもしかして、私の夢の中に入ってきてしまったの?
夢に干渉する能力を持っているけれど、そんな事が起きるのは初めてだった。
「あぁもう一度見ないかしら、可愛かったなぁ…本当、犯したいって一瞬で思わせるなんて」
自分の唇を舐める。舌舐めずり、その単語をあの少年の耳元で囁きたい。
きっと良い反応をしてくれる…その反応すら、想像出来ない程の可愛さ。
「もう決めた!いつか見付けたら、絶対にお兄ちゃんになってもらうんだから」
サキュバスの姫は、誰にも告げず心に決めた。
―――――――――――
潮風が吹く町で、一人の女性が海を眺めていた。
傍らに立つ騎士が、静かにその女性に耳打ちをした。
「…へー、ようやっと会えるんか、アルノート君に」
女性はその名前の少年を見た事が無い、見た事が無いが名前だけは知っていた。
「やーっと借りが返せるでガディウスのおっちゃん、任せとき…」
女性は、金色の髪に魔力を通してまるで朝焼けの様な輝きを周囲に放った。
「このキティ!約束はちゃんと守って…アルノート君の御嫁さんになったるわ!!」
互いを知らないというのに、勝手な事をいいながら…。
――――――――――
もう最悪!
何が貴族の船よ、貴族の船って言うのなら紳士の一人でも乗ってなさいよね!
私を見るなり「ご年齢が…」だの「歳をお考えになっては?」だの…何よロリータ商会って、どんだけ見る目が無い男の集まりなのよ!
自分で言うのもおかしな話かもしれないけれどワインレッドの髪色に妖艶な外見、これで寄ってこない男なんて不能を患っているんじゃないかしら!
次に寄るのは有名でも無い島だっていうし…何処かに可愛らしい男の子はいないかしら。
こう、手取り足取り教えてあげたくなる様な可愛い男の子がいいわね…。
私の得意なことなんて夜伽と魔法だけなんだから、存分に活かさないと損ね!
あと「おばさん」って言った船長は後でシめる。絶対にシめてやるわ。
これから待つ出会いの数々が…煌きを見せていた。
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