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第二章 船上の証明
第二十七話 二師
しおりを挟むギル兄とアリス姉さんは…どうやら知り合いみたいだ。
アリス姉さんにキスをして貰っちゃった事、ギル兄には黙っておいた方がいいかもしれない…。だけど、キスをして貰って、イメージを伝えて貰うまでに何をしていたのかが思い出せない…。
だけど、何か変な事をされてはいないようだし、アリス姉さんを疑うのも嫌だから飲み込んで朝ごはんと一緒に消化しちゃおう。
あれから夜が明けて朝、ギル兄は今日も僕の魔法の修行を見てくれているんだけれど…その隣、アリス姉さんが同じベッドに腰掛けて、僕の魔法の修行を同じ様に見てくれている。
…なんで二人とも、会話もせずにずっと僕を見てるんだろう。
アリス姉さんが部屋に入って来てから、一言もギル兄は喋って無い…。
アリス姉さんが僕の頭を撫でてくれようとした時だけ、手を伸ばしてアリス姉さんの細い腕を掴んでいたけれど…アリス姉さんが腕に炎を纏ってすぐに手を放していた。
こ…怖いよ、何だか二人から変な圧力を感じる。
しゅ、集中出来ない!
―――いや、待つんだアルノート!もしかしてこれは二人が実戦の場に置いて圧力に耐えながらも魔法が使えるようにと整えてくれたんじゃないか?
だとしたら、集中しないと失礼に当たる。
集中だ。
自分の中の魔力を感じて、それを全身に行き渡らせるんだ。
☆ギル視点
何故かアルの修行を見ていたら、昔戦場で見た時の魔法使い然りな格好をしたアリサスが部屋に入って来た。
この女との忌まわしい記憶が甦る…あれは俺がまだ大陸で傭兵をやっていた頃、戦場の中でこの女は…この女は俺達の軍の男とセックスをしていやがった!
分かるか、戦場だぞ!?
キャンプじゃない、戦いの中でだ!狂ってやがるだろそんなの!?
それも、誰も咎めようとしない、確かにその光景の異常さに敵軍さえ脚を止めていたが、普通はしないだろそんなこと!?
だから俺は注意をした。
『ここは戦場だぞ、なにやってんだクソ年増』
その言葉に対するアリサスの言葉は、
『煩いわね…何?女なら自分で男を捕まえなさいな?そんな鎌まで持って、後ろ専門だってアピールしてるならお尻の布が無い服でも貸してあげましょうか?』
…今思い出しても腹立たしい、この女は俺を女性と見間違えたんだ。
当時の俺はまだ少し幼さが残っていて、長い黒髪で顔の半分を隠しているのもあって女性に見えたそうだ。
とはいえ会話の中だ。俺の声は当時から聞けば弾性と分かる声をしていた…それなのに間違えたんだ。
こいつは根っから腐ってる。絶対にアルに近づけちゃならねぇ奴だ。
部屋に入れたのはアルが警戒をしていないから、アル自身が嫌がっていないからだ。
だがもしもアルに何かしてみろ、すぐに切り裂いてやる…。
☆アリス視点
水平線の向こう側から朝日がこんにちはをした様な時間帯。
こんな朝早くに起きてアルの魔力を追って部屋に来てみたら、アルは既に修行を始めていた。
自分の内側にある魔力を感じる為の修行だというのは、アルの内にある魔力が自分の存在を気付いて欲しそうに炎の様に燃えていることから分かった。
そしてそれをベッドに座ってじっと観察しているイケすかない男、ギルバート。
この男だけは許さない、あれは私が傭兵として戦場に行っていた頃…。
私は戦場における魔法として、魅了と存在主張、つまりは人目を集める事で敵に隙を作る役を買って出た。その為に女性フェロモンをより多く放出する必要があり、私は軍の弾性とセックスをした。
確かに戦場の戦闘中のど真ん中、だけどそれが起因して確かに敵足は乱れていた。
確かな成果があったのだ。
だけどどうだ。このギルバートという男、当時はまだ幼い外見で可愛らしかったけれど口調は乱雑、私に言った言葉は、
『ここは戦場だぞ、娼婦は宿に帰って腰でも振ってなブチ殺すぞ』
あぁ腹立たしい、私は優雅に返したわ、
『あらいやね、私のこれは作戦よ、鎌なんて持って物騒だわ、女の子なのに鎌なんて危ないわ、剣を使いなさい』
そのアドバイスも聞かぬ存ぜぬ、ギルバートは私の近くでわざと戦い出した。お陰でエッチに全然集中出来なかったのだから嫌になるわ。
こいつがアルの魔法の師匠…?こんな鎌振ってるだけの馬鹿に何ができるってのよ…。
よーく見ていてあげるわ、どんな先生をしているのか。
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