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第三章 商会を束ねる者
第三章 Extra episode ある男の旅立ち(一部修正再投稿)
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Extra episode ある男の旅立ち
時系列 第四十三話 開始時点(アルが大陸に着き、退院を果たした辺り)
かつて、一人の男がとある学院でこう発言した。
『魔力って、魔法だけに使う物じゃない気がするんだが…皆はどう思う?』
その発言は大いに笑われ、男は不満を覚えた。
その男は才能に溢れ、多くの魔法を使用する事が出来る優秀な男だった。だが、目立つ事を嫌いその才能を発揮せずに埋もれる道を選んだ男だった。
だからこそ、自分の知らぬ道に興味を抱き、まだ誰も開拓していない風に見えた魔力という存在そのものの意味を突き詰めようと考えた。
しかし『魔力とは魔法を使用する源であり、人に与えられた試練を打破する為の術である』という浪漫めいた考え方が主流だった当時、男の発言は笑いの種にしかならなかった。
それから研鑽を重ねた。
その男の理論は、魔力は魔法にだけ使用出来るのなら、どうして常に体内に在るのだという物だった。体内において血液と同じ様に何か役割を持っているのではないかと調べ始めた。
そもそもがおかしな話ではあった。『人に与えられた』とするのなら、男が調べた中でモンスターと呼ばれる種族も、野生動物も、魔族と言われる人では無いそれ等種族全てが魔力を有している意味が分からない。
そして、見つけ出したのは近過ぎて気が付けない様な一つのヒント。
魔力欠乏症という症状がある。それは魔力の使い過ぎで身体に不調を来すという物であり、そこから考えれば早い段階で気付けても良い物なのだが、魔力は血液と同じで人の身体機能を維持する働きを持つ。
そして、魔力欠乏症についても調べてみた。
多過ぎる自分の魔力をギリギリまで使用して、体調の変化や陥る症状を調べてみた。
免疫が働かない訳でも無く。風邪に掛かった訳でも無いのに呼吸が苦しく。明らかに魔力という要素が欠けている事で起きる身体の不調が目立った。
そして何度かの実証を重ねて辿り着いた答え。
魔力の働き、それは浄化作用だった。
この世界の空気中には毒が含まれていて、それを魔力が体内で循環させる事、そして魔力によって中和される事で空気を身体に含んでも大丈夫なように人体は構造作られている・
『魔力を持たない生物がいないのは、全ての生物が進化の過程でこの世界の在り方に適応したから』
その男はそれを見つけ出した。
古い文献を漁ってみると、同じ事を提唱した者は何人もいた。
それ等の人々は、自分が生き難い事に疑問を抱いた魔力に乏しい人間達だった。
魔力に乏しい故に、魔力と魔法の才能が物を言う学問において発言に価値を見出して貰えなかった人々だった。
その男は、その人々の意思を継ぐ事を選んだ。異端とされてきた理論だけに、反発を受ける事は重々承知の上で選んだ道だった。
『学生の身の俺がコレを提唱した所で、同じ目に合う事は目に見えている…だとすれば』
男は、己の才能の全てを発揮する事を選んだ。
男の才は万能では無い、使える魔法は多かれど、全てをStg.3の規模で使う事は出来ない。
だが男には類稀なる一つの才があった。
繰り返し繰り返し、何度も何度も、例え気が遠くなる様な時間であっても突き詰める事が出来る飽く無き探求心。
使える魔法の多さ、そしてそれに見合った魔力の器、その二つを最大限に活用し、Stg.1の魔法を五つ以上同時に使う事で相乗効果を発揮しStg.2に匹敵する効果を発揮する。
それは、魔法という分野の可能性を広げる行いだった。
後に男は『千魔』と呼ばれ、男が残した論文は魔力と魔法の関わりを調べる研究者達に大きな衝撃を与えた。
男は多くの才を持っていた。
戦場に出れば不敗、弱点は無く千変万化の戦略を用い戦場を支配する一騎当千の千魔の使い手。
人魔戦争の中で、男が戦場に現れた際に兵達が叫ぶ事は『千魔万来』は、いつの間にか男の称号となっていた。
決して目を向けられる事が無かった真相を見付け、己の価値を証明し、千魔として学術的観点を交えた論文を発表し彼は見事に苦難を乗り越えた。
―――故に、疲れてしまったのだ。
己の人生全てを賭けてでも証明してみせると願った理論は、男が有能過ぎるが故にあまりにも早い段階で証明できてしまった。
人魔戦争で、多くの魔族を殺した。
その中で彼は、一人の少女と出会う。
そして男は戦場を去り、その少女を連れて旅を始めた。後に千魔の相棒とまで呼ばれるミノタウロスの少女と共に…。
だが少女が女性として見られる事になったある日、千魔は姿を消した。
何処か遠くの土地に移り住んだと言われる千魔の居場所を知る者は、いない。
傭兵達の中で噂される千魔の存在、いつの間にか兵士達を奮い立たせる為のホラ話の様にすら扱われる様になった千魔という存在。
その男は今、己の才を全て発揮してでも守りたい者の為に再び大陸へ渡ろうとしていた。かつての相棒と共に再び世界を練り歩く為に。
「ツミレさん、それじゃあ俺はこれで」
「うん、アル君によろしくね…でも本当に戦えるの?貴方はアル君に多くの能力を譲渡したって聞いたけれど」
男は不敵に笑みを浮かべる。
「確かに能力は譲渡しましたが…俺はかつて魔力を調べる中で気が付いたもう一つの理論があるんです」
そう言って男は自身の内から魔力その物を手に集め、固形化させた。
「もう一度、世界を賑わせてきますよ…この理論をアルに教えて、ね」
「…無口を装って島の人達にすら隠していた男が、よくも饒舌に」
それが魔力形成、男の才能が辿り着いた魔力の活用の境地、長きを生きる魔族でも気付けぬ魔力の活用方法だ。
千魔と気付かれ持て囃されるのは好きじゃ無かった故、男は無口を貫きアルにも無口で接してきていた。
この、ツミレという女性を除いて。
「大陸が煩くなるわよ…『千魔万来』なんて昔話、今じゃ信じてる人もいないでしょうけど」
トレンチコートを身に纏った齢六十を重ねる男は、二十代にしか見えぬ外見で堂々と言ってのけた。
「それならご安心を、俺が得意なのは魔法よりも何よりも、誰かに何かを証明し信じさせる事ですので」
こうして、勇者を支える為の旅を始めた。いや、その男にとっては勇者では無く弟として見ていた存在の為の旅だ。
アレクサンド・ディナモルタ、千魔が再び、大陸へ向かう。
『アレクサンド・ディナモルタ Lv.068
固有能力 譲渡 分解
能力 長剣術Stg.2 短剣術Stg.2
撫でStg.2 道具作成Stg.2
魔力感知Stg.3 魔力操作Stg.3
魔力形成Stg.3 魔力回復Stg.3
称号 一騎当千 千魔万来
不敗 千変万化
支配者 苦難を乗り越えし者』
―――――――――――
この話は一部修正しての再投稿になります。
時系列 第四十三話 開始時点(アルが大陸に着き、退院を果たした辺り)
かつて、一人の男がとある学院でこう発言した。
『魔力って、魔法だけに使う物じゃない気がするんだが…皆はどう思う?』
その発言は大いに笑われ、男は不満を覚えた。
その男は才能に溢れ、多くの魔法を使用する事が出来る優秀な男だった。だが、目立つ事を嫌いその才能を発揮せずに埋もれる道を選んだ男だった。
だからこそ、自分の知らぬ道に興味を抱き、まだ誰も開拓していない風に見えた魔力という存在そのものの意味を突き詰めようと考えた。
しかし『魔力とは魔法を使用する源であり、人に与えられた試練を打破する為の術である』という浪漫めいた考え方が主流だった当時、男の発言は笑いの種にしかならなかった。
それから研鑽を重ねた。
その男の理論は、魔力は魔法にだけ使用出来るのなら、どうして常に体内に在るのだという物だった。体内において血液と同じ様に何か役割を持っているのではないかと調べ始めた。
そもそもがおかしな話ではあった。『人に与えられた』とするのなら、男が調べた中でモンスターと呼ばれる種族も、野生動物も、魔族と言われる人では無いそれ等種族全てが魔力を有している意味が分からない。
そして、見つけ出したのは近過ぎて気が付けない様な一つのヒント。
魔力欠乏症という症状がある。それは魔力の使い過ぎで身体に不調を来すという物であり、そこから考えれば早い段階で気付けても良い物なのだが、魔力は血液と同じで人の身体機能を維持する働きを持つ。
そして、魔力欠乏症についても調べてみた。
多過ぎる自分の魔力をギリギリまで使用して、体調の変化や陥る症状を調べてみた。
免疫が働かない訳でも無く。風邪に掛かった訳でも無いのに呼吸が苦しく。明らかに魔力という要素が欠けている事で起きる身体の不調が目立った。
そして何度かの実証を重ねて辿り着いた答え。
魔力の働き、それは浄化作用だった。
この世界の空気中には毒が含まれていて、それを魔力が体内で循環させる事、そして魔力によって中和される事で空気を身体に含んでも大丈夫なように人体は構造作られている・
『魔力を持たない生物がいないのは、全ての生物が進化の過程でこの世界の在り方に適応したから』
その男はそれを見つけ出した。
古い文献を漁ってみると、同じ事を提唱した者は何人もいた。
それ等の人々は、自分が生き難い事に疑問を抱いた魔力に乏しい人間達だった。
魔力に乏しい故に、魔力と魔法の才能が物を言う学問において発言に価値を見出して貰えなかった人々だった。
その男は、その人々の意思を継ぐ事を選んだ。異端とされてきた理論だけに、反発を受ける事は重々承知の上で選んだ道だった。
『学生の身の俺がコレを提唱した所で、同じ目に合う事は目に見えている…だとすれば』
男は、己の才能の全てを発揮する事を選んだ。
男の才は万能では無い、使える魔法は多かれど、全てをStg.3の規模で使う事は出来ない。
だが男には類稀なる一つの才があった。
繰り返し繰り返し、何度も何度も、例え気が遠くなる様な時間であっても突き詰める事が出来る飽く無き探求心。
使える魔法の多さ、そしてそれに見合った魔力の器、その二つを最大限に活用し、Stg.1の魔法を五つ以上同時に使う事で相乗効果を発揮しStg.2に匹敵する効果を発揮する。
それは、魔法という分野の可能性を広げる行いだった。
後に男は『千魔』と呼ばれ、男が残した論文は魔力と魔法の関わりを調べる研究者達に大きな衝撃を与えた。
男は多くの才を持っていた。
戦場に出れば不敗、弱点は無く千変万化の戦略を用い戦場を支配する一騎当千の千魔の使い手。
人魔戦争の中で、男が戦場に現れた際に兵達が叫ぶ事は『千魔万来』は、いつの間にか男の称号となっていた。
決して目を向けられる事が無かった真相を見付け、己の価値を証明し、千魔として学術的観点を交えた論文を発表し彼は見事に苦難を乗り越えた。
―――故に、疲れてしまったのだ。
己の人生全てを賭けてでも証明してみせると願った理論は、男が有能過ぎるが故にあまりにも早い段階で証明できてしまった。
人魔戦争で、多くの魔族を殺した。
その中で彼は、一人の少女と出会う。
そして男は戦場を去り、その少女を連れて旅を始めた。後に千魔の相棒とまで呼ばれるミノタウロスの少女と共に…。
だが少女が女性として見られる事になったある日、千魔は姿を消した。
何処か遠くの土地に移り住んだと言われる千魔の居場所を知る者は、いない。
傭兵達の中で噂される千魔の存在、いつの間にか兵士達を奮い立たせる為のホラ話の様にすら扱われる様になった千魔という存在。
その男は今、己の才を全て発揮してでも守りたい者の為に再び大陸へ渡ろうとしていた。かつての相棒と共に再び世界を練り歩く為に。
「ツミレさん、それじゃあ俺はこれで」
「うん、アル君によろしくね…でも本当に戦えるの?貴方はアル君に多くの能力を譲渡したって聞いたけれど」
男は不敵に笑みを浮かべる。
「確かに能力は譲渡しましたが…俺はかつて魔力を調べる中で気が付いたもう一つの理論があるんです」
そう言って男は自身の内から魔力その物を手に集め、固形化させた。
「もう一度、世界を賑わせてきますよ…この理論をアルに教えて、ね」
「…無口を装って島の人達にすら隠していた男が、よくも饒舌に」
それが魔力形成、男の才能が辿り着いた魔力の活用の境地、長きを生きる魔族でも気付けぬ魔力の活用方法だ。
千魔と気付かれ持て囃されるのは好きじゃ無かった故、男は無口を貫きアルにも無口で接してきていた。
この、ツミレという女性を除いて。
「大陸が煩くなるわよ…『千魔万来』なんて昔話、今じゃ信じてる人もいないでしょうけど」
トレンチコートを身に纏った齢六十を重ねる男は、二十代にしか見えぬ外見で堂々と言ってのけた。
「それならご安心を、俺が得意なのは魔法よりも何よりも、誰かに何かを証明し信じさせる事ですので」
こうして、勇者を支える為の旅を始めた。いや、その男にとっては勇者では無く弟として見ていた存在の為の旅だ。
アレクサンド・ディナモルタ、千魔が再び、大陸へ向かう。
『アレクサンド・ディナモルタ Lv.068
固有能力 譲渡 分解
能力 長剣術Stg.2 短剣術Stg.2
撫でStg.2 道具作成Stg.2
魔力感知Stg.3 魔力操作Stg.3
魔力形成Stg.3 魔力回復Stg.3
称号 一騎当千 千魔万来
不敗 千変万化
支配者 苦難を乗り越えし者』
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この話は一部修正しての再投稿になります。
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