俺の高校には『放課後 殺人クラブ』がある件

ジャンマルコ

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防具屋

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道場を出た俺達は、防具屋に向かう事にした。

「ねぇ、イツキ…さっきのゾンビだけど、あれって本物っぽくなかった?」

「確かに…俺もビックリした。もしかしたら「シュラ」には罪人以外にも、モンスターがいるのかもね」

ネットにある「ギル2」の動画には、罪人と戦うチェイサーしか見た事はない。
でもゾンビは、CGでも、誰かが演じているワケでもなさそうだった。
ただ、現実に存在する『シュラ』の世界が舞台の「ギル2」だから、
ファンタジー要素は少ないと思ってたんだけど…そうでもないのか。

「え~あたしちょっと苦手だな…スライムくらいだったらいいけど」

「そうだな…ただ罪人は武器を持ってるから、かなり手強いけど、
 ゾンビとかだと武器を持つ俺達の方が有利になるから、Lv上げにはちょうど良いかもな」

「…そうかもだけど…う~、なんかまだヌルっとした感触が残ってる気がする…」

そんな事を言いながら、俺達は防具屋に着いた。
防具屋の中は、洋服屋のようになっていた。

「わぁ…イツキ、なんか『ウニクロ』みたいだね~」

「そうだな、色んな種類があるな…俺は、まずはノーマルでいきたいから、
 この青い皮の鎧にしようかな…」

「あ、いいね。
 じゃあ私も、この赤っぽい皮の鎧にするよ」

皮の鎧は、肩当てと小手がセットになっていて、3,000ルギだった。
これが死んだらなくなるって言ってたな…鎧の相場がこのくらいだったら、剣も1,000ルギ位だろう。
初期の金が3万ルギだったから、道具を1000ルギ位買えば、
まぁ…死んでも減るのは5,000ルギ位、と見積れるな。

死んでも金が半分になるとかは、言ってなかったから、減るのはこの金額しかないだろう。
って事は初めに少し死んでも、装備が揃えられなくなる心配は、ないな。

「イツキ、盾もあるけど買わなくていい?」

「盾か…そうだな、二人のパーテイーだから俺が簡単にやられちゃ、意味ないもんな。
 せっかく、イノリがヒーラーになってサポートしてくれるんだったら、盾はあった方がいいか」

「ほら、このタワーシールドだったら鉄壁…う……重い……これ私、全然持てないよ…」

「イノリ、それはたぶんアーマーだったら軽く感じるようになってるんだよ。
 だから、俺達はこっちのバックラーとか、カイトシールドとかを装備するんだ」

「そうなんだ……やっぱりアーマーなら攻撃を受けても、かなり耐えられそうだね」

「ああ、でもアーマーは重い分スピードは落ちるだろうし、それぞれ一長一短だよ」

「そっか…で、どうするの、盾?
 イツキが買うなら私も買うけど」

「そうだな…買っておこう。
 罪人の攻撃は武器になるから、盾があると便利だろうし…まずはこの皮のバックラーだな」

「わかった……あ、こっちには兜があるよ?」

「ああ…俺は兜はいらないよ」

「そうなの?」

「見た目が、少しやぼったくなる気がして、他のゲームでも、あまりかぶらないんだ」

「そうなんだ、見た目は確かに重要だよね」

「うん」

見た目。
ゲームでも、現実でも、見た目は重要だ。
特に俺みたいなゲーム好きは、よく現実の姿がヤバい事が多い。

人間は、見た目が何割とかって言うのを聞いた事がある。
なのに、何かに没頭すると、人は見た目なんてどうでもよくなる事がある。

だが、俺は高校生だ。
見た目を気にしないで生きる事ができる社会に、生きていない。
高校生は、バカだから見た目が大きな影響力を持つ。

以前にも言ったが、俺は無駄に目立つのは嫌いなんだ。
見た目がゼロ、またはマイナスだと、どうしても逆に目立ってしまう。
そうなると、不思議とキャラも勝手に決められてしまうんだ。

ゲーム好き=オタク=ダサい=ドーテー

この負の連鎖が、自分をどんどん下げていってしまうんだ。

実際は、全部当たっているのだが…

それを見破られてしまうのは、負ける事と同じだ。
どこかで、この下げコンボを止めなければならない。
どこで止めるか?


ゲーム好きは、止まらない。
アイデンティティだ。

オタクも、止まらない。
性だ。

ドーテーは、止まらない。
相手が必要だ。

ダサいは、止まる。
ここが最後の砦だ。

俺は、オシャレではない。
興味もない。
だが、服は選ぶ。
ここで間違えてはいけない事は、オシャレになろうとする事と、自己主張をする事だ。
これは、選ばれた者のみが手に出来る、スキルだ。
興味もないのに、これに手を出そうとするから、人は失敗をしていく。
俺はそうはならない。
俺が選ぶのは、オシャレなものじゃなくて、目立たず無難なもの、サイズのあったもの、だ。

これだけで、いいのだ。
これだけで、コンボは防げる。
「ドーテーのゲーム好き」…ではなく…「普通の奴でがゲーム好き」…に、クラスチェンジするんだ。

異性は、「普通」の見た目なら、ある程度は受け入れてくれるのだ。
深く踏み込めば、痛い奴だった…でも、その頃には耐性がついてきてるものだ。
だから、なんとかなる。
強引にいっても、許される可能性が増える。

人参を、ヘタの方から入れても小さな穴には入らないが、
細くなった方から入れれば入る…

ちょっと待て…

俺は、何を考えているんだ……?


イノリが俺を見ている。


「イノリ、兜はいらない」

「うん………さっき聞いたよ」


ああ……それだけで、良かったな。

俺達は防具屋を出た。
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