幽霊だらけの古代都市!発達した呪術国家で、破滅的な未来なんて蹴り飛ばせっ! 幽霊たちと一緒に、ワクワクしながら元気に走り回るっっ!!!

折紙いろは

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第二章 洞窟探検

第15話 うんこ。

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 外に出ると、暗さを深めていく街に、火があちこちに灯っていた。 勉強会を出ていきながら、ゆっくりと足を動かし、歌子は歩いていく。

 ……あぁ、今日もいっぱい楽しいことしたなあ……。 朝は臨時出勤から始まって、ユメがおぼ作って、洞窟どうくつに行って……。
 ぼうっと思い返す歌子の横で、雨子はまだ元気があるようだ、疲れを感じさせない足取りで歩いている。 何かを思い出したように、振り向いて言った。

「あ! そうだ、アマネが未来人の降霊こうれい、やってみてるよ!」

 アマネっていう子も、私たちと仲がいい子の一人だよ。 ……え? 出てくる人たち、多すぎって? まあまあ、そんなこと言わずに。 私たちの仲間は、アマネで最後だよ。
 すっごく元気な子でね、いつもどこかを走り回っているような子なんだ。 だから、私たちと一緒にいることは、そんなにないんだけど。

 それで……えーっと、未来人の降霊? きのう雨子が勉強会に来て、楽しそうに話してたやつの、ひとつだっけ。 次から次にいろんな話を持ってくるから、どんどん流れていって、ついていくのが大変だ。
 えーっと未来人の降霊は……ユメに街の未来の姿がどうなるかの予想を聞いて、それをイメージの助けにして未来を想像しながら降霊をやってみるとかいうやつか。 ……でも、うーん、やっぱりそれは、無理があるかも。 だって、ユメが考えることは、正直、現実ばなれしたことばっかなんだよね。 本人は、そんなこと全然気にしてなくて、真面目な顔で語ってるんだけど。

 スズネは、今日友達になったばかりだから、『未来人の降霊』の話を、知らなかったらしい。 楽しそうな顔になって、話に食いついてくる。

「え、何それっ!」
「おい、あいつまた変なことやってんのか? ……大丈夫か」

 ゆったりと歩いていくミツバは、ぼやきながらも心配そうだ。 腕を組んで、顔をしかめている。 未来人を降霊しようと、棒切れを振り回しているアマネの姿でも、想像しているんだろうか?

 まあ、アマネもめちゃくちゃ元気な子だから、心配になるのも分かる。 雨子と一緒に行動しているときは、特に危ないんだよね。 雨子がもともと暴走気味だから、この2人が組むと、いつも、変な方向に物事が進んでしまうんだ。
 考えながら歩いていた歌子も、ちょっと心配になってきた。

「ちょっと、様子見に行ってみよう。 アマネ、どこにいるの?」
「ユメの家」

 よし、じゃあ、そこに行ってみよう。 一行は方向を少し変えて、ユメの家へと向かい始めた。
 新人スズネは、今度はユメの名前にも、聞きなじみがなかったみたいだ。 そわそわしたようにして、気になったように聞いてくる。

「……ねえ、ユメって、誰?」

 そうか、スズネは、ここにいない人のことは、名前すら知らないんだ。 気づいた雨子は答える。

「えーっとね……あ! 今日、最初にスズネと会ったところ、憶えてる? 木の板で作った、みすぼらしい小屋みたいな……」
「あぁ、うん」

 スズネは、最初に歌子と会った、憶え屋のことを思い出していく。 屈強な男たちが、木の板を運んで、しょぼい小屋みたいなのを作ってたっけ。 ……あの中で歌子と話したのが、今日の昼かあ。 なんだか、もっと時間がたった気がして、びっくりする。

「あそこで、憶え屋作ってる人」
「へー! ……どんな人?」

 スズネは、興味を持ったのか、ちょっと突っ込んで聞いてきた。 雨子は考えるように腕を組み、上のほうに目をやる。 ……どんな人、ねえ?

「うーん。 なんか、一人でいることが、多いかも」

 一人でフラフラしてて、あの人一体、何やってるんだろうね? ていうか、ふだん何やってるかとか、全然知らないし。 まあ、どうでもいいけど。 ……え? 興味なさすぎって? うーん、そんなことないけど……ユメの話って意味わかんないし、あんまり話しても時間の無駄なんだよねwwww

 薄情なことを考える雨子の横で、ぼんやりと遠くを眺めて歩いていた小春が、ぼそっと言う。

「……あの子、ふっとどこかに消えるとき、あるのよね」
「あぁ、そうかも」

 歌子が、同意するように相槌あいづちを打つ。 ……考えてみれば、たしかにそうだ。 ユメは、気づいたらどこかに行っていることが、たまにある。 さっぱり見当たらなくて、時間がたつと、ひょっこり街に帰ってきているのだ。

「用でも、足してんじゃねえの?」

 雑な感じに、ミツバが言う。 それを聞いて、前を歩いていた小春が振り向いた。 きょとんとした表情を浮かべている。

「へ? ……あの子、霊でしょ?」

 少し間を置き、ミツバが軽快に笑いだした。 冗談のつもりだったらしい、小春は気づいたように顔を赤らめ、下を向いた。

「なんなの! もう……」



 この街には、住宅が並ぶ場所は、いくつかの種類があるんだ。 わらと木でできた、大きな傘みたいな家が並んでいる場所と、岩の建物が並んでいる場所の、2種類だね。

 藁と木でできた家のほうは、生きていて生身の体を持ってる人と、幽霊の人が、一緒になって生活してるよ。 私――歌子の家も、そんな感じだったよね……私たちの家族以外は、みんな幽霊だったけど。
 家の近くには、料理をする場所とか、食糧庫とかの、生身の人が使う施設がそろってるんだ。 生身の人が住むのに、ぴったりな場所なんだね。

 反対に、岩の建物が立ち並んでる所は、そういう生身の人用の場所が近くに無いんだ。 だから、岩の建物が並ぶような場所は、幽霊の人しか住んでなかったりするの。

 いま私たちは、そんな『岩アパート』が並んでる通りに来たよ。 ここは岩の建物でできた住宅街で、住んでいる人のほとんどは、幽霊なんだ。

 岩の建物が並んでいて、道のわきには明かりがたくさん並んでいた。 火があちこちにかかげられていて、ぼうぼうと燃えている。 こんなへんぴなところでも、幽霊の人のために明るく照らそうと、火は絶やさないようだ。 暗闇恐怖症の人もいるぐらいだし、しょうがないのかもしれない。
 明るい道の中を、歌子たち一行は歩いていく。 小春が、なにか難しい顔をしているようだ。 むすっと黙り込んだまま、地面を見つめている。 歩きながら、ぼそっと呟いた。

「……ねえ、さっきの話だけど、霊って、用足すものなの?」

 いきなり、何の話だ?w 幽霊が、しょんべんしたり、うんこしたりするのかって?
 ミツバは面白くなって、ツッコミを入れる。

「なんだ? お前も、霊じゃねえかw」

 小春は頷きながらも、真面目な顔で続ける。

「いや、そうだけど。 ……私、もう2年も出てないんだけど、大丈夫かなって……」

 ミツバはそれを聞いて、大声で笑い始めた。 他の人もつられるように、思わず吹き出して笑いだす。 辺りに一行の笑い声が響き、閑静かんせいな夜の住宅街を通り抜けた。
 小春は一緒になって笑いながらも、それを振り払うようにして言う。

「なんで、笑うのよ!w 結構、深刻な問題なのよ。 私、本気で、悩んでるんだけど」

 小春は真面目なようだ、俯いてじっと地面を見つめている。 ミツバは落ち着いて相槌を打った。

「ふーん。 ……ま、誰も話さねえしな、そんなこと」

 横では、歌子がその話題に興味を持って、ウズウズしていた。 そんな話は、たしかに聞かない。 歴史所で仕事をしていても、誰もそんなことは話さない。 だけど、私は小さいときから、ずっと気になってたのっ!!!
 歌子は興味を抑えきれずに、声を不自然に躍らせながら聞いていく。

「あっ! 私も、じつは聞きたかったのっ。 霊になったら、どうなるのかって……」

 疲れが吹っ飛んだようだ、歌子は妙にウキウキしている。 大人しそうに見えて、歌子はかなり好奇心が強いのだ。
 小春は振り向いて言う。

「私は、最初、我慢してたのよ」

 我慢? ……出そうになる『便意』はあるってことっ?! 一瞬で考えをめぐらす歌子の横に、別の声が割って入ってくる。

「え、我慢するの?!」

 雨子が、信じられないといったように、素っ頓狂な声で、会話に入ってきた。 小春は頷く。

「うん。 だって、おかしいでしょ。 何も食べてないのよ?」

 ……まあ、たしかに、そうかも。 3日間、何も食べてないのに、うんこだけがブリブリ出続けたら、そりゃ誰だって気持ち悪いだろう。
 変な想像をしてしまった歌子は、落ち着いて、おもんぱかるように相槌を打つ。

「あー、まあそうだよね」
「私は、普通にしてたよ。 ていうか、今でも毎日するけど」

 雨子がいつもの調子で、けろっとした顔で言う。 普通に毎日、うんこするらしい。

「え?!」

 みんな驚いたように、雨子を見る。 あっけらかんとした様子で、雨子はきょとんとした顔を浮かべている。 ……え? うんこの話でしょ? やりたきゃすれば? そんな顔だ。

「……するって、どうやって?」
「だから、普通にぼとっと……」
「え?w 出たもの、どうなるの?」

 歌子は、なぜか笑顔になり、次々に聞いていく。 雨子は、何でもないことを話すように、思い返しながら答えた。

「うーん……私が見てる間は、あるけど、多分、立ち去ったら、見えなくなるんじゃない? 他の霊の人のうんことか、私も見たことないし」
「あぁ、そっか」

 幽霊が作る『まぼろし』の物体は、しょせんはその人の空想だ。 だから、本人がいなくなれば、消えてしまう。 ……まあ、そりゃそうか……。

 その言葉を最後に、その話題は終わったかのように、誰も話さなくなった。 変な沈黙が続き、住宅街を歩く足音だけが、スタスタと、誇張されたように聞こえる。

 横では、小春が静かに黙り込んで、まだ眉をひそめている。 やがて、ぼそっと言った。

「……ねえ、私はどうしたらいいの?」

 また一行は、面白くなって笑い始めた。 ミツバは顔をしかめると、雑な調子で言う。

「じゃあ、適当にすればいいんじゃねえのか? その辺でよ、雨子と一緒に、ぼとっとさ」
「あんた、他人事ひとごとだと思って、適当に言ってるわね?」
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