幽霊だらけの古代都市!発達した呪術国家で、破滅的な未来なんて蹴り飛ばせっ! 幽霊たちと一緒に、ワクワクしながら元気に走り回るっっ!!!

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第三章 死者サービス

第18話 いざ、死者サービスへっ!

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 スズネは住宅街の道を歩きながら、辺りの景色を眺めていく。
 左右には、岩で作られた建物が並び、向こうの方まで続いている。 たしか、そのサービスがあるのは、7番目の建物だったな。 ……5、6、……7。
 スズネはゆっくりと歩くのをやめていき、その場所に立ち止まった。

 目の前には、普通の岩の建物が立っていた。 この辺りの建物は、けっこう精密せいみつに作られているようだ、小さな岩をうまく組み合わせて、きれいな建物がいくつも立っている。 最近の建物なんだろう。

 スズネは別の方向に立っている建物にも、目をやってみる。 他の建物を見ても、特段変わったところはない。
 天気は晴れで、穏やかな空が上に広がっている。 昼間の、ただの閑静かんせいな住宅街に見える。

 人は、通行人が少しだけ歩いているようだ。 地面に座ったり、寝そべってる人もいるようだが、ただぐうたらしているだけのようで、誰も不審には見えない。
 幽霊の人は、こんな風にダラダラしてる人も、割といるんだよね。 ……地面にうつぶせになって、死んだみたいになってる人も、ほら、そこに見えるけど……まあ、死ぬわけじゃないし、放っておこうか。 ははっw

 スズネは適当に笑っていると、隣の建物で、動きがあった。 建物の前で、地面に座っていた女の人の幽霊が、ふっと立ち上がったと思うと、こっちに向かって歩いてくる。
 きょろきょろと辺りを見回していたスズネは、それに気づいて、女の人に目を向けた。 その女の幽霊は、どんどん近づいてきて、まっすぐこっちにやってくる。 ……え?! ちょっと、ヤバくない? あの人。 だってほら、その女の人、めっちゃ幽霊っぽいんだもん。 歩き方も静かだし、異様いように髪の毛長いし、じっとこっち見てくるし。
 女の幽霊の人は、ゆっくりとこっちに歩いてくると、やがて目の前まで来た。 ぼそっと、垂れた髪の毛の間から、言葉をこぼすように話しかけてくる。

「……雨子さんですか?」

 違いまーーーすっっ!!!ww ……って叫びたいけど、やめとこう。 たぶんこの女の人は、死者と話せるサービスの関係者なんだろう。 スズネは静かに頷く。

「はい、そうです」

 私、雨子です。 イェイっ!

「……こちらへどうぞ」

 女の人は、静かに背中を向けていった。 目の前に立っていた建物へと歩いているようだ、その後を追って、スズネも歩いていく。
 建物へと近づいていくと、建物の正面ではなく横のほうへと、女の人は歩く方向をずらしていった。 横の建物との間に、裏路地うらろじがあって、そこへ入っていこうとしているようだ。

 ……この女の人、最初は隣の建物の前で様子をうかがってたし、向きをずらして別の建物に行こうとしてるし……。 ははあ、怪しさ満点だぜ。 そんなに知られたくなかった場所なのか? おぉ、ワクワクしてきたっ!!

 スズネは内心ウキウキしながらも、平静を装ってすまして歩いていると、ふと横のほうで、動きがあるのに気づいた。 小春たちだ、道を走ってこっちに向かってくる。 バタバタと走ってくる雨子は、こっちを見ると楽しそうに手を振ってきた。 静かに歩くスズネは笑いをこらえながら、前へと目を戻していく。

 裏路地に入っていって、女の人に続いてスタスタと歩いていく。 周りは岩の建物で囲まれ、見上げれば空が見える。 裏路地の奥には、さらに別の建物があるようで、女の人はそこへ向かっているようだった。 スズネは少し緊張した面持ちで、建物へと近づいていく。



 その後ろを、少し離れて、小春たちが走って追っていた。 さっさっと、建物の影に身を隠しながら追っているようだ。
 後ろでは、大きな体を走って揺らしながら、ミツバがついていっていた。 割とのんびりしながら、懐をまさぐって、お菓子みたいなものを取り出したりしている。 棒状の、緑色の植物みたいなものだ、ミツバはそれを取り出すと、ぱくっと口に含んだ。 ……え? 何食ってんのかって? さあ、知らんけど、うまいぞ、これ。

「ちょっと、ミツバ、うるさいっ!」

 小春が走りながら振り返り、小さく叫んだ。 ミツバはそれを聞いて、自分の体の周りを確認する。 ……あぁ、ここにいるの幽霊ばっかだから、俺だけ生身で、音がうるせえってか。 幽霊は、声以外は物音は立てねえんだよ。 地面を蹴ったり、服がこすれたりする音は、俺みたいに生身の奴しか出さないんだな。 まったく、しょうがねえな……。
 ミツバはぶつくさと心の中でぼやきながらも、工夫して、何とか静かにしようとする。

 やがて一行は、建物のそばにたどり着いていった。 スズネの姿は、建物の中に入っていてもう見えない。
 小春と雨子は、先に建物の壁にたどり着き、身を隠していった。 外壁に身を寄せて、ちらっと中を覗いてみる。
 中には、すぐに何か部屋があるわけではなかった。 大きな階段が目の前を横切っていて、上のほうへ繋がっているのが見える。 その階段には、スズネと女の人の姿があった。 その階段を上がっているようだ、するすると音もなく、上に上がっているのが見える。

 小春は中を眺めていたが、ふうと息をついて、外のほうに目を戻してきた。 ふと見ると、横にいて建物にもたれかかっていたミツバが、何かを口に含んでいるのに気づく。 小春は興味のあるような顔で、それをじっと見た。

「……何それ」

 目線の先には、例の緑色の植物のような、棒状のものがあった。 それを煙草たばこのように口にくわえていたミツバは、振り向いて答える。

「ん? あぁこれは、おやつ」

 2人が話していると、中を覗いていた雨子もこっちの会話に気づいて、建物の外へと目を戻してきた。 小春はじっと『おやつ』を見つめて、興味が出たのか、続けて聞いていく。

「どんな味?」

 どんな味? ……うーん、ちょっと苦くて、でも甘い感じか? ミツバは口をモグモグと動かし、味をたしかめながら答える。

「んー……フキをそのまま甘くしたような……」
「ふーん。 ……私の前で、よく食べられるわね」

 幽霊は、あまり食事ができない。 料理の形をした『まぼろし』を、目の前に作りだすことや、それを食べることは、人によるが可能だ。
 でも多くの場合は、味をはっきりと感じることはできないらしい。 人によって食感は違うようで、例えば小春にとっては、ふわふわしてて、食べてるのか食べてないのかよく分からなくなるそうだ。
 味を楽しめない人は、食事という楽しみが生活から消えたようなものだ。 ミツバはそんなことを思い出しながら、適当に謝る。

「あぁ、悪い」
「……まあ、いいけど」

 小春はむすっとしたまま、建物の中をふたたび覗き込んでいった。

「……あれ、上に行った?」

 階段にいたはずのスズネたちの姿は、気づくとどこかへ消えていた。 小春は慌てて建物の中へ入っていき、2人の姿を探していく。 それについていき、雨子たちも中へ入っていった。

 建物の中は、岩で組まれているが、かなり綺麗きれいな四角形の形をしていた。 それでも粗はあるが、現代東京から見ても、これなら建物といえるかもしれない。 そんな建物の中を、一本横たわる階段を、小春は素早く駆け上がっていく。

 階段を上がりきると、こんどは踊り場のような、少し広い場所に出た。 2つの方向へ廊下が伸びているだけの場所で、それ以外は何もない。 廊下の先は日の光が差して、明るく白く光っているのが見える。 こちらの建物から、別の2つの建物に、それぞれ繋がっているようだ。 渡り通路のようなものらしい。 しかし2人の姿はもう見えず、どこにもなかった。

 きょろきょろと辺りを見回す小春のあとに、雨子たちも追いついてきて、一緒になって探していく。

「……あれ、どこ行った?」
「もう! ミツバのせいで、見失ったじゃないっ!」

 小春は手を大げさに動かして、怒ったように言う。 ミツバは抗議するように言った。

「おい、俺のせいか」

 雨子は、辺りを見ながら、2人の行き先がどっちか見分けようとしているようだ。 難しい顔をして、事件現場の探偵のように、ふーむと唸っている。

「……こっち……?」

 誰かがぼそっと、一つのほうを示すように言った。 ……だが、誰も聞いていない。
 ……じつは今日も、物静かすぎるクルミくんが、ついてきているんだけど。 存在感が無さすぎて、誰も、クルミの声に気づいていないみたいだ。

 眉をひそめて2つの廊下をにらんでいた小春は、諦めたように鼻息を鳴らした。

「もう、しょうがないわね。 ……まあいいや、適当に行きましょう」

 相変わらず小春は適当だ、考えるのが面倒くさくなったのか、一つの廊下のほうへスタスタと歩きだす。 クルミが言ったのとは別のほうだが、残りの人もそれに続いていった。 クルミも黙って、そのままついていく。 一言ぐらい、文句言えばいいのに。
 つられて歩いていきながらも、雨子は何かを感じ取ったようだ。 周りを見回しながら、眉をひそめた。

「ほんとにこっち? ねえ、向こうっぽくなかった?」

 そういって雨子は、クルミに聞いていく。 さっき言ったぜっ! そう思いながら、クルミはうーんと首をひねって、よく分からないような曖昧な顔をした。
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