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第三章 死者サービス
第19話 怪しい男たちを発見っ!
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一行はしばらく歩くと、さらに建物は複雑になっていった。 あちこちで入り組んでおり、迷路のように、上下左右に、道が分かれていく。
先頭を行く小春は、適当に行き先を決めて、どんどん進んでいる。 もうどうでもよくなったのか、雨子なども、ピクニック気分で歩いているみたいだ。 周りの景色を楽しそうに眺めて、小春と話している。
後ろのミツバとクルミは、何も言わずについていくだけ。 ツッコミ不在で、もう何をしているのかも分からない。 みんな、スズネのことも、忘れてるんじゃないだろうか?
雨子は、また関係ない話を思い出したようだ。 声を上げて、みんなのほうに振り向く。
「あ! そうだ、例の文字、解読進んでるみたいだよ」
洞窟から運んできた、石ころの話か。 どこかの国の文字がびっしりと書かれていたけど……。 その文字を知っている人は、勉強会には誰もいなかった。 大陸の向こうまで行った、この街でいちばん国外のことを知ってるミツエダですら知らなかったというのは、一体どういうことだろう? ふつうに考えれば、誰かの悪戯じゃないのか。
……っていうか、運んできたの昨日なのに、もう解読が進んでるって、ミツエダちゃんって、なかなかやるのね。 小春は思い返しながら、適当に相槌を打つ。
「あぁそうなの? ……なかなか、早いじゃない」
「内容はどんな?」
うしろから興味を持ったように、ミツバが聞いていく。 網を用意してきて、何回も往復して……。 あれだけ苦労して運んだんだぜ? ちょっとはマシな内容じゃないと、困る。
「なんか、別の国のことについて、書かれてるみたい。 ……えーっと、砂で覆われてて、お酒が大量に売られてて、大きな建物がたくさんあって、口を使わずに頭の中だけでみんな話してて……」
頭の中で、話す? おい、なんだその内容。 どう考えても、誰かの妄想だろ。 ミツバは顔をしかめて、聞き返す。
「ほんとか?それ」
「あ、あと、砂の牢獄があって、何でも宙に浮かせる技術があって……」
へえ! それはすげえな。 大陸のほうって、何でもかんでも発達してるって言うじゃねえか。 そんなことまで出来るなら、もうなんでもできんじゃねえのか?!おいっ!!www とりあえず、魚を自動で捕獲してくれるようになれば、毎日遊んで暮らせるな! ははっ!ww
ミツバは適当なことを考えながら、相槌を打つ。
「へー! すげえな、そんな国が、あんのか」
前を歩く小春は、どうでもよさそうだ。 ブラブラと周りを見ながら言う。
「世界は広いのねえ、もう、私、よく分かんないわ。 ここの事も、よく分かんないのに」
まあな。 幽霊が街を歩いてるなんて、海の向こうの連中は、誰も信じなかったらしいぜ。 ミツエダさんの話……を聞いた歌子から聞いた話、だけどな。
……え? ミツエダさんに、直接聞いたんじゃないのかって? いや、勉強会とか、行きたくねえだろ、ふつうに。 ちゃんと生きてて生活できてんのに、なんでわざわざ勉強すんだよ。 ははっw
ミツバは一人で笑っていると、また別の階段がある場所に出た。 さっきの最初に入った建物と、関係がある場所なのかも分からない。 なんか、どんどん狭くなっていってるけど、本当にこっちであってるのか?
「……どこだ?ここ」
「ねえ、やっぱり、最初の所で間違えたんじゃない?」
辺りを見ながら、雨子が思い返すように言う。 建物の感じもちょっと変わってきたし……戻ったほうが、いいかも?
階段の上のほうを眺めていた小春は、あっさりと認めた。
「うん、そうかも。 ……ん? ちょっと、待って」
しっと、静かにと言うように、いきなり腕を上げる。 ……え、なに小春、どうかした? 雨子が、同じ方向に目をやりながら聞く。
「……何?」
小春はじっとして、何かの音を聞こうとしているようだ。 耳をそばたてるようにしながら、階段をゆっくり上がっていく。
「……なんか、声聞こえない?」
「別に、珍しくねえだろ。 誰か、住んでんだろ、普通の建物みたいだし」
建物は精密に作られてるから、人の姿は見えない。 けど、ここは普通の住宅街だ。 壁の向こうに人がいたとしても、不思議ではない。
しかし、小春はなにかが気になるようだ。 真剣な顔をしながら、すいすいっと階段を上がっていった。
階段の上に来ると、さらに別の廊下が続いていた。 そこをスタスタと歩いていきながら、小春はふと気づいたように足を止め、床へとしゃがんでいく。
「……ここの、下?」
小春はそういって、床に顔を近づけて、耳をそばだてていく。 廊下の下に、部屋でもあるんだろうか?
後から来た雨子も、床に手をつけていき、一緒になって耳をそばだてていった。 すぐに何か聞こえたのか、ぼそっと呟く。
「……あ、ほんとだ」
人の声が聞こえる。 一人ではなく何人もいるような感じだ、男の太い声がいくつも聞こえて、会話をしている。 緊張感まるだしで、聞くからに怪しい。 しかし、何を話しているかは分からない。
一緒になってそれを聞きながら、ミツバは考えを巡らせる。 ……うーん、たしかに、変な感じだな。 なんかコソコソしてるような、ヤバいことをやってるような……。
……あ、そうだ。 ここにいるの幽霊ばっかなんだし、誰かこそっとすり抜けて、中の様子を見てこれないか?
「誰か、すり抜けられないか?」
聞き耳を立てて眉をひそめていた小春は、顔を上げて、うんざりするように答える。
「あのねえ。 前も言ったけど、私たちだって、練習しないと、そういうことは出来ないのよ」
……まあ、そうらしいな。 俺は死んでないから、分かんねえけど。
関係ない話だけど、俺がふだん漁をしてる海って、近くを訓練中の軍の奴らが、通っていくことがあるんだけどな。 海の中なのに、すげえスピードで飛んでいくんだよ、あいつら。 そう、泳ぐんじゃないんだよ、飛んでるんだぜ、海の中でww ヤバいだろ、どんな感覚なんだろうな? ……俺も死んだら、軍隊でもやろうかな。 飛んでいこうぜ、空とか海ん中とか、びゅーっっっとさ!!!wwwww
ノリで考えるミツバの横で、物静かすぎるクルミが、頑張って床に入ろうとしていた。 ……ん? なんだクルミ、お前、そういうこと出来んのか? クルミがスーパーマンみたいに空を飛んでるの想像したら、なんか笑えるわ。
そう思っていると、クルミはズズッと顔を床に半分埋めて、さらに首まで入っていった。 おっ、すげえじゃん!
「行けるか?」
「お、クルミっ! 行っちゃってっ!」
気づいた小春が、楽しそうに、跳ねるように言った。 横では、同じように床に入ろうとしていた雨子も、ズズっと床に入っていく。 ……雨子、あなたそういうの苦手じゃなかったの? 私よりも苦手かと思ってたけど、案外そうでもないのかしら。
「なんだ、みんな、やれば出来るじゃない」
雨子は目を開けると、下の部屋の景色が、目に入ってきた。 お、やったっ! 私、案外いけるじゃん。 そう思っていると、上からネックレスが落ちてきて、顔にかかってきた。 元々つけてたやつだ、顔に引っかかって落ちそうになってるけど、気にしないでおこう。
横を見ると、クルミも同じように覗いてるみたいだ。 ……クルミって、私もよく話さないから、どんな子か知らないんだよね。 ずっと黙ってるし、話しかけても適当な答えしか返してこないし。 ま、どうでもいいけど。
その部屋は、特に変なところはなく、ふつうの部屋だった。 相変わらず建物は綺麗に作られてて、壁はちゃんとしているようだ。
部屋の中では、太い声で話している男たちがいた。 こっちにはまったく気づかずに、屈強な男たちが、なにか話している。
その中でも、特に際立って大きな体格をした男がいた。 いちばん大柄な男が、偉そうに他の人たちと話している。 『おいお前ら、俺のかっこいい背中を見とけよ?』『へい、兄貴!』そんな具合だ。 なんか、ボスっぽいな。 この集団のボスかな? しめしめ、上から覗かれてるとも知らずに。
……ん? なにか、ちょっとだけ違和感がある。 雨子は何かを感じ取り、眉をひそめて考えた。
……そうか! ここにいる男たちは、生きてる生身の人が多いんだ。 生身の人の声ってね、響きがちょっと強いっていうか……はっきりしすぎてて、逆に特殊に感じられるんだよね。 歌子の声も、そうなんだけど……なんか、生々しくて、しっかりと耳に響いて、引っかかってくるような感じがするんだ。
街中では、幽霊のほうが、生きてる人よりずいぶん多いからね。 この人たちは半分ずつだから……ふつうに比べて、生身がちょっと多い。
それに、なんか元々声が大きい人たちみたいだ。 普通に喋ってるのに、いちいち耳に響いてくる。 うーん、それが違和感だったんだ。 ふむふむ……。
雨子がそんなことを考えていると、部屋の中では別の動きがあったようだ。 部屋に一人、新たに男が入ってきた。
「おう、どうだ?」
部屋の中にいたボスは、それに気づいて声をかけていった。 入ってきた男は、なにやら急いでいる様子だ。
「やっぱりそうですね。 彼ら、降霊能力は無いみたいです」
……お? 降霊能力って言った? もしかして、私たちが探してる『死者と話せますサービス』の人たちと、同じ人たちのことを話してたりして。
別の男が、不思議がるように言う。
「じゃあ、どうやって死者と話すってのを、実現してんだ?」
やっぱり、そうだ! この人たちも、私たちと同じサービスのことを、話してるんだ。 ……でもだったら、この人たちは、何者なんだろう? ふーむと考える雨子の眼下で、男たちは会話を続けている。
ボスは、考えてもしょうがないというように、鼻息を大きく吐きだした。
「まあいい。 とにかく、抑えてみよう。 実際に確認してみないと、何もわからん」
「そうですね。 ……ん?」
男の一人が、ふとこっちを見る。 不思議なものを見るような顔で、じっと見つめてきて、まるで時間が止まったかのようだ。 ……あれ、これって、バレたってこと? ヤバっ!
雨子はいきなり慌てだし、頭を動かして元に戻ろうとするが、なぜか体が動かない。 え? なんで?! 何かにがっちりと固定されたように、腕も体も、動かない。
「おい! お前、何やってんだ!」
大きな声が、部屋中に響いた。 うわ、やっぱ見つかってんじゃんっ! イェーイっっ!!!w
ノリで自分を誤魔化そうとする雨子を差し置いて、横のクルミは、するっと抜けていった。 ちょっと、置いてかないでよ、クルミっ!
頑張って手足を動かそうとする雨子の眼下で、部屋にいた男たちは、足音を立てて部屋を出ていった。 同時に、部屋にいた男の一人が、目の前にスーパーマンのように、ぶわっと飛んでくる。 雨子はびっくりして、うわっと声を漏らしながら目をつむり、顔をそむけた。
宙に浮いてきた男は、こっちを観察しているようだった。 険しい顔で、じっと雨子の様子を眺めて、やがて床を貫通するように、すいっと上のほうへと上がっていく。
先頭を行く小春は、適当に行き先を決めて、どんどん進んでいる。 もうどうでもよくなったのか、雨子なども、ピクニック気分で歩いているみたいだ。 周りの景色を楽しそうに眺めて、小春と話している。
後ろのミツバとクルミは、何も言わずについていくだけ。 ツッコミ不在で、もう何をしているのかも分からない。 みんな、スズネのことも、忘れてるんじゃないだろうか?
雨子は、また関係ない話を思い出したようだ。 声を上げて、みんなのほうに振り向く。
「あ! そうだ、例の文字、解読進んでるみたいだよ」
洞窟から運んできた、石ころの話か。 どこかの国の文字がびっしりと書かれていたけど……。 その文字を知っている人は、勉強会には誰もいなかった。 大陸の向こうまで行った、この街でいちばん国外のことを知ってるミツエダですら知らなかったというのは、一体どういうことだろう? ふつうに考えれば、誰かの悪戯じゃないのか。
……っていうか、運んできたの昨日なのに、もう解読が進んでるって、ミツエダちゃんって、なかなかやるのね。 小春は思い返しながら、適当に相槌を打つ。
「あぁそうなの? ……なかなか、早いじゃない」
「内容はどんな?」
うしろから興味を持ったように、ミツバが聞いていく。 網を用意してきて、何回も往復して……。 あれだけ苦労して運んだんだぜ? ちょっとはマシな内容じゃないと、困る。
「なんか、別の国のことについて、書かれてるみたい。 ……えーっと、砂で覆われてて、お酒が大量に売られてて、大きな建物がたくさんあって、口を使わずに頭の中だけでみんな話してて……」
頭の中で、話す? おい、なんだその内容。 どう考えても、誰かの妄想だろ。 ミツバは顔をしかめて、聞き返す。
「ほんとか?それ」
「あ、あと、砂の牢獄があって、何でも宙に浮かせる技術があって……」
へえ! それはすげえな。 大陸のほうって、何でもかんでも発達してるって言うじゃねえか。 そんなことまで出来るなら、もうなんでもできんじゃねえのか?!おいっ!!www とりあえず、魚を自動で捕獲してくれるようになれば、毎日遊んで暮らせるな! ははっ!ww
ミツバは適当なことを考えながら、相槌を打つ。
「へー! すげえな、そんな国が、あんのか」
前を歩く小春は、どうでもよさそうだ。 ブラブラと周りを見ながら言う。
「世界は広いのねえ、もう、私、よく分かんないわ。 ここの事も、よく分かんないのに」
まあな。 幽霊が街を歩いてるなんて、海の向こうの連中は、誰も信じなかったらしいぜ。 ミツエダさんの話……を聞いた歌子から聞いた話、だけどな。
……え? ミツエダさんに、直接聞いたんじゃないのかって? いや、勉強会とか、行きたくねえだろ、ふつうに。 ちゃんと生きてて生活できてんのに、なんでわざわざ勉強すんだよ。 ははっw
ミツバは一人で笑っていると、また別の階段がある場所に出た。 さっきの最初に入った建物と、関係がある場所なのかも分からない。 なんか、どんどん狭くなっていってるけど、本当にこっちであってるのか?
「……どこだ?ここ」
「ねえ、やっぱり、最初の所で間違えたんじゃない?」
辺りを見ながら、雨子が思い返すように言う。 建物の感じもちょっと変わってきたし……戻ったほうが、いいかも?
階段の上のほうを眺めていた小春は、あっさりと認めた。
「うん、そうかも。 ……ん? ちょっと、待って」
しっと、静かにと言うように、いきなり腕を上げる。 ……え、なに小春、どうかした? 雨子が、同じ方向に目をやりながら聞く。
「……何?」
小春はじっとして、何かの音を聞こうとしているようだ。 耳をそばたてるようにしながら、階段をゆっくり上がっていく。
「……なんか、声聞こえない?」
「別に、珍しくねえだろ。 誰か、住んでんだろ、普通の建物みたいだし」
建物は精密に作られてるから、人の姿は見えない。 けど、ここは普通の住宅街だ。 壁の向こうに人がいたとしても、不思議ではない。
しかし、小春はなにかが気になるようだ。 真剣な顔をしながら、すいすいっと階段を上がっていった。
階段の上に来ると、さらに別の廊下が続いていた。 そこをスタスタと歩いていきながら、小春はふと気づいたように足を止め、床へとしゃがんでいく。
「……ここの、下?」
小春はそういって、床に顔を近づけて、耳をそばだてていく。 廊下の下に、部屋でもあるんだろうか?
後から来た雨子も、床に手をつけていき、一緒になって耳をそばだてていった。 すぐに何か聞こえたのか、ぼそっと呟く。
「……あ、ほんとだ」
人の声が聞こえる。 一人ではなく何人もいるような感じだ、男の太い声がいくつも聞こえて、会話をしている。 緊張感まるだしで、聞くからに怪しい。 しかし、何を話しているかは分からない。
一緒になってそれを聞きながら、ミツバは考えを巡らせる。 ……うーん、たしかに、変な感じだな。 なんかコソコソしてるような、ヤバいことをやってるような……。
……あ、そうだ。 ここにいるの幽霊ばっかなんだし、誰かこそっとすり抜けて、中の様子を見てこれないか?
「誰か、すり抜けられないか?」
聞き耳を立てて眉をひそめていた小春は、顔を上げて、うんざりするように答える。
「あのねえ。 前も言ったけど、私たちだって、練習しないと、そういうことは出来ないのよ」
……まあ、そうらしいな。 俺は死んでないから、分かんねえけど。
関係ない話だけど、俺がふだん漁をしてる海って、近くを訓練中の軍の奴らが、通っていくことがあるんだけどな。 海の中なのに、すげえスピードで飛んでいくんだよ、あいつら。 そう、泳ぐんじゃないんだよ、飛んでるんだぜ、海の中でww ヤバいだろ、どんな感覚なんだろうな? ……俺も死んだら、軍隊でもやろうかな。 飛んでいこうぜ、空とか海ん中とか、びゅーっっっとさ!!!wwwww
ノリで考えるミツバの横で、物静かすぎるクルミが、頑張って床に入ろうとしていた。 ……ん? なんだクルミ、お前、そういうこと出来んのか? クルミがスーパーマンみたいに空を飛んでるの想像したら、なんか笑えるわ。
そう思っていると、クルミはズズッと顔を床に半分埋めて、さらに首まで入っていった。 おっ、すげえじゃん!
「行けるか?」
「お、クルミっ! 行っちゃってっ!」
気づいた小春が、楽しそうに、跳ねるように言った。 横では、同じように床に入ろうとしていた雨子も、ズズっと床に入っていく。 ……雨子、あなたそういうの苦手じゃなかったの? 私よりも苦手かと思ってたけど、案外そうでもないのかしら。
「なんだ、みんな、やれば出来るじゃない」
雨子は目を開けると、下の部屋の景色が、目に入ってきた。 お、やったっ! 私、案外いけるじゃん。 そう思っていると、上からネックレスが落ちてきて、顔にかかってきた。 元々つけてたやつだ、顔に引っかかって落ちそうになってるけど、気にしないでおこう。
横を見ると、クルミも同じように覗いてるみたいだ。 ……クルミって、私もよく話さないから、どんな子か知らないんだよね。 ずっと黙ってるし、話しかけても適当な答えしか返してこないし。 ま、どうでもいいけど。
その部屋は、特に変なところはなく、ふつうの部屋だった。 相変わらず建物は綺麗に作られてて、壁はちゃんとしているようだ。
部屋の中では、太い声で話している男たちがいた。 こっちにはまったく気づかずに、屈強な男たちが、なにか話している。
その中でも、特に際立って大きな体格をした男がいた。 いちばん大柄な男が、偉そうに他の人たちと話している。 『おいお前ら、俺のかっこいい背中を見とけよ?』『へい、兄貴!』そんな具合だ。 なんか、ボスっぽいな。 この集団のボスかな? しめしめ、上から覗かれてるとも知らずに。
……ん? なにか、ちょっとだけ違和感がある。 雨子は何かを感じ取り、眉をひそめて考えた。
……そうか! ここにいる男たちは、生きてる生身の人が多いんだ。 生身の人の声ってね、響きがちょっと強いっていうか……はっきりしすぎてて、逆に特殊に感じられるんだよね。 歌子の声も、そうなんだけど……なんか、生々しくて、しっかりと耳に響いて、引っかかってくるような感じがするんだ。
街中では、幽霊のほうが、生きてる人よりずいぶん多いからね。 この人たちは半分ずつだから……ふつうに比べて、生身がちょっと多い。
それに、なんか元々声が大きい人たちみたいだ。 普通に喋ってるのに、いちいち耳に響いてくる。 うーん、それが違和感だったんだ。 ふむふむ……。
雨子がそんなことを考えていると、部屋の中では別の動きがあったようだ。 部屋に一人、新たに男が入ってきた。
「おう、どうだ?」
部屋の中にいたボスは、それに気づいて声をかけていった。 入ってきた男は、なにやら急いでいる様子だ。
「やっぱりそうですね。 彼ら、降霊能力は無いみたいです」
……お? 降霊能力って言った? もしかして、私たちが探してる『死者と話せますサービス』の人たちと、同じ人たちのことを話してたりして。
別の男が、不思議がるように言う。
「じゃあ、どうやって死者と話すってのを、実現してんだ?」
やっぱり、そうだ! この人たちも、私たちと同じサービスのことを、話してるんだ。 ……でもだったら、この人たちは、何者なんだろう? ふーむと考える雨子の眼下で、男たちは会話を続けている。
ボスは、考えてもしょうがないというように、鼻息を大きく吐きだした。
「まあいい。 とにかく、抑えてみよう。 実際に確認してみないと、何もわからん」
「そうですね。 ……ん?」
男の一人が、ふとこっちを見る。 不思議なものを見るような顔で、じっと見つめてきて、まるで時間が止まったかのようだ。 ……あれ、これって、バレたってこと? ヤバっ!
雨子はいきなり慌てだし、頭を動かして元に戻ろうとするが、なぜか体が動かない。 え? なんで?! 何かにがっちりと固定されたように、腕も体も、動かない。
「おい! お前、何やってんだ!」
大きな声が、部屋中に響いた。 うわ、やっぱ見つかってんじゃんっ! イェーイっっ!!!w
ノリで自分を誤魔化そうとする雨子を差し置いて、横のクルミは、するっと抜けていった。 ちょっと、置いてかないでよ、クルミっ!
頑張って手足を動かそうとする雨子の眼下で、部屋にいた男たちは、足音を立てて部屋を出ていった。 同時に、部屋にいた男の一人が、目の前にスーパーマンのように、ぶわっと飛んでくる。 雨子はびっくりして、うわっと声を漏らしながら目をつむり、顔をそむけた。
宙に浮いてきた男は、こっちを観察しているようだった。 険しい顔で、じっと雨子の様子を眺めて、やがて床を貫通するように、すいっと上のほうへと上がっていく。
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