幽霊だらけの古代都市!発達した呪術国家で、破滅的な未来なんて蹴り飛ばせっ! 幽霊たちと一緒に、ワクワクしながら元気に走り回るっっ!!!

折紙いろは

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第三章 死者サービス

第20話 警察?!

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 上で耳をそば立てていた小春が、突然の大声を聞いて、顔を床から離した。

「あら、見つかった?!」

 気づくと目の前の雨子が、体をジタバタさせていた。 戻れないでいるようだ、腰のあたりが固定されているのか、下半身だけがバタバタしている。 床から生えてる植物みたいで、なんか滑稽こっけいね。
 そんなことを思う暇もなく、小春は慌てて雨子に呼びかける。

「ちょっと、雨子! 何やってるの、早く戻りなさいよっ!」

 そう言って、雨子の体を引っ張って外に出そうとする。 しかし、幽霊の体にはもちろんさわれない。 必死に雨子の体に手を突っ込んでいくが、雲にさわるようにスカスカと通り抜けていく。
 小春がなんとかしようと頑張っていると、すぐそばに、いきなり床から人が現れた。 下の部屋から、直接通り抜けてきたみたいだ、あらゆる物理法則を無視したように、すいっと床から出てきている。
 ちゅうに浮いたムキムキマッチョの男はこっちを見て、睨むような、観察するような真剣な形相ぎょうそうだ。 小春はうわっと声を上げて、驚いたようにその場で尻もちをついた。

 続けてバタバタと、激しい足音が近づいてきた。 下の部屋にいた男たちだ、勢いよく足音を響かせて、この場に集まってきた。

「お前ら、誰だ!」

 びっくりするぐらい大きな低い声が、辺りに響き渡る。 男たちは、やはり体格がいい人ばかりだ、幽霊まで筋肉ムキムキな人がずらりと並んでいる。
 なによ、この変な集団! とりあえず誤魔化しましょうっ!! 床に倒れこんでいた小春は起き上がり、慌てて弁解を始める。

「あ、これは、違うのよ! えーっと、あ、そうだ。 ……すみませんねえ、建物の調査を、してまして」

 途中でいきなり不自然な笑顔に切り替えて、なんとかやり過ごそうとする。 だが、男たちの警戒の色は、ますます強くなったようだ。 ボスのような、一番大きな体をした男が、険しい顔で聞いてくる。

「お前ら、あいつらの一味か?」

 ……あいつら? 誰、なんの話よ? 小春は眉をひそめて聞き返す。

「あいつら?」
「とぼけんな!」
「ひいっ!」

 低い大声が響き、小春はビビる。

 奥のほうでは、仲間と思われる男たちが、なにやらコソコソ話していた。
 ……なによ、感じ悪いわね。 私たちの顔を見つめたり、仲間どうしでコソコソ話したり……。 そう思っていると、その中の一人が前に出てきて、ボスのような男に声をかけていく。

かしら、ちょっと待ってください」

 目の前にいた大きな男は、その声に振り返る。 やっぱり、この男がボスのようだ。 生きてて生身の体で、声も大きいから、存在感がハンパない。
 一方、向こうから出てきた人は幽霊のようだった。 こっちもなかなかの体つきだ、幽霊なのにこんなに筋肉をつけて、果たして意味あるんだろうか。

 その幽霊の男は前に出てくると、まだバタバタと足を動かしている雨子のほうへ向かった。 そばに行って、しゃがんで話しかけていく。

「おい、とりあえず、目を閉じろ」

 雨子は聞こえていないようで、まだバタバタと手足を動かしている。 助けを求めて声を出しているようだが、床でさえぎられていて、はっきりとは聞こえない。 耳をすますと、遠くのほうから、助けてーと言っているのが分かる。 下の部屋から、廊下を通じて聞こえているのだろう、空間がぐちゃぐちゃに感じられて、変な状況だ。
 近づいた幽霊の男は、今度は大きな声で呼びかけた。

「おい! 何もしないから、落ち着け!」

 やっと聞こえたのか、雨子は、足をばたつかせるのをやめた。 しゅんとしおれて、でろんと足だけが横になっている。 情けない格好だが、どうしようもないらしい。

「まず、何も考えるな。 ……いいか、お前の周りには、何もない」

 幽霊の男は、辺りに響き渡るほど、大きく深い声で言い始めた。 近隣住民にはいい迷惑だが、たぶん雨子を助けようとしてくれているのだろう。
 男は、呪文を一人で唱えるように、続けていく。

「気づいたら、いま、海にいる。 周りには他には何もない、海だ」
「……なにそれ、何も無かったら、おぼれるじゃない」

 小春が横で、ツッコミを入れていく。 それを無視して、幽霊の男は続けた。

「お前は、波に揺られている。 ゆっくり、ゆっくり……」

 落ち着いた声でそう言っていると、やがて雨子の体が、左右にゆらゆらと揺れだした。 床がそこに無いかのように、通り抜けて動いている。 催眠術さいみんじゅつのようなものなのだろう、雨子の体は水に浮いているかのように動き、イメージのままに動いているみたいだ。

「……あぁ、お前は、水の下にいたみたいだ。 ちょっとずつ、ぷかぷか、体が浮いてきた……」

 こんどは雨子の体は、少しずつ上へと浮かんできた。 プカプカと、水の中にいるみたいに揺れながら、宙に浮き上がっていく。 床に座り込んだ小春の、目線の高さを通り過ぎていった。 下から見ると、目をつむった雨子が腕を垂らして、ゆらゆらと揺れている。 ……なにこの光景、ちょっと不思議で、神秘的ね。

「……そのままだと、息が苦しい。 波の上に出て、息を吸おう」

 ちょっと苦しそうにしていた雨子は、水の上に出るように、ぷはっと上を向いた。 ……え? ここ海の上じゃないのっ?! 雨子ははっとして周りを見ると、自分の体が宙に浮いていることに気づく。
 その瞬間、雨子は真っ逆さまに落ちていった。

「うわーっ!」

 ドスンと、音は聞こえなかった。 床に落ちた雨子は、腰を打ち付けて顔をしかめる。 いたたと、痛そうに尻をさすりながら、雨子は呟く。

「はあ、死ぬかと思った……」
「死んでるわよ」

 何かに埋もれてしまった幽霊の救出の仕方などは、こういうものらしい。 幽霊の人は、見えるものがすべてだ。 実際にはそこに無いものも、思いこみによってあるように感じるし、逆に目の前の物を無いように感じることもできる。

 しかし、こんな専門的っぽいこともできるなんて、この男たちは一体何者なんだろう? 体を鍛えていることもあるし、もしかしたら警察とかだったりするんだろうか。

 雨子の救出を見届けたボスが、改めて話しかけてきた。

「それで、お前ら、何やってんだ。 なんで、俺らを聞いてた?」
「私たちも、死者と話す手伝いってのに、興味があるのよ。 友達が1人、今、それを受けてるの」

 別の幽霊の男が近づいてきて、ボスに説明を加えていった。

「一人、さっき客が入っていったみたいです」

 下の部屋で、さっき帰ってきて、報告していた男のようだ。 『死者と話せるサービス』が行われてる場所へ、直接行っていたのだろう。
 ボスはそれを聞き、ようやく状況を理解したように頷いた。

「あぁ、なるほどな」
「……もしかして、警備隊の人たち?」

 男たちを見て、ミツバが思っていたことを呟いていく。 ……警備隊っていうのは、この街の警察みたいなもんだぜ。 街の人の安全を守る、責任重大な仕事なんだけどな。 見た感じ、かなり体をきたえてるみたいだ。
 俺も漁師やってるから、けっこう鍛えてる方だけど……この人たちはもっとムキムキだ。 海で訓練してる軍の連中を見てるからか、なんとなく分かるんだよ。
 ミツバはそう思っていると、ボスが頷く。

「あぁ。 もしかしたら、不正に降霊を使ってるやつらかもしれんからな」

 やっぱり警備隊なのか。 ……ん? 不正に降霊を使うなんて、できたっけ? そういうのはバレるんじゃなかったか。 案の定、『元』巫女みこの雨子が、即座に会話に入ってくる。

「でも、不正に使ったら、分かるようになってるけど。 ……あ、私、死ぬ前に、巫女やってから、ちょっと詳しいんですけど」

 巫女たちは、『霊力れいりょく』を感知する力がある。 最近では、道具を使って感知することもでき、この街全体の霊力をつねに監視しているのだ。 正式な巫女として登録されてない人が降霊術を使ったりすると、すぐに分かるようになっている。

 ボスは知っていたようだ、頷いて答える。

「基本的には、そうだがな。 だが最近は、それに当てはまらない例もあるようで、一応調べるようにしてるんだよ」
「霊だけにねえ」
「へえ」

 ミツバは、納得したように頷く。 その横で、床に座り込んだままの小春は、別のことが気になったようだ、続けてボスに聞いた。

「ところで、そいつらって、何者なの? やっぱり、詐欺さぎなんでしょ?」
「いや、まだ何とも言えん。 これから確認しに行くところだ」

 ボスはそう答え、まわりの男たちを見た。 10人ぐらいはいる、この集団で乗り込んでいって、詐欺集団をめちゃくちゃにするらしい。 ……あら、なんか、ワクワクするじゃないっ!

「あっ! なら、私たちも、一緒に行きましょう!」
「いや、お前らは、帰ってろ。 邪魔だ」

 小春が、いそいそと雨子を促しながら立ちあがっていると、ボスが冷たく言った。 小春は意表を突かれたような顔をして、びっくりしたように大声を出す。

「え?!」

 帰ってろ? ……なんで?! 私たちの友達のスズネが、そのサービスのところにいるのよ? 邪魔って、どういうことよ。
 呆然とした顔の小春の前で、男たちはぞろぞろと引きあげていく。 ボスも立ち上がり、背中を向けていった。 小春は追っていきながら、食らいついていく。

「ちょっと! 私たちも、一緒に行くって!」
「だめだ。 外で待ってろ」

 ボスは向こうへ歩いていきながら、振り向きもせずに言う。 小春は勢いよく飛び出していって、ボスの目の前に出ていった。

「ちょっと、あんた、いい加減にしなさいよっ! 友達が、いま、苦しんでるのよ?! じっとしてられるわけ、ないじゃないっ!」

 びっくりするぐらいの大声で、小春は怒鳴る。 けっこう真面目な顔だ、キレたんだろうか。
 男たちは、思わず立ち止まって振り返った。 ボスは行く手を遮られ、面倒くさそうな顔をしながら、頭をかく。
 ……ったく、しょうがねえな。 仕事の邪魔だけは、すんなよ。 そんな感じでため息をつきながら、ボスはしぶしぶ頷いた。

「あぁわかった、わかった!」

 小春は一瞬で嬉しそうな顔になった。 ニヤッと笑って、してやったりみたいな顔だ、もしかして今のは、ちょっとした演技だったのだろうか?
 小春は楽しそうにガッツポーズをして、腕を掲げる。

「やったーっ!! ほら、雨子、さっさと立って!」

 床に座り込んでいた雨子を促して、今度こそ、一緒に歩きだす。 小春は軽やかにスキップをするように、ボスの横に並んでいった。

「……あら、よく見ればあんた、結構いい男じゃない。 よっ、大将! かっこいいよっ!」

 小春は、今度はやりすぎなぐらい盛り上げて、にぎやかしていく。 ひゅーひゅー、その筋肉も、なかなかイカしてるわねっ!!
 ボスは面倒くさそうな顔で、苦笑いした。

「なんだお前、うるせえなあ」

 そういいつつも、ボスはなぜだかちょっと嬉しそうだ。

 今度こそ、『死者と話せるサービス』の本拠地へと乗り込んでいこうっ!
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