幽霊だらけの古代都市!発達した呪術国家で、破滅的な未来なんて蹴り飛ばせっ! 幽霊たちと一緒に、ワクワクしながら元気に走り回るっっ!!!

折紙いろは

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第三章 死者サービス

第21話 詐欺グループを破壊しようぜっ!!

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 建物の中の、元の場所に戻ってきた。 雨子とクルミが言ってた道のほうが、どうやら正解だったらしい。
 角を曲がりながら、他人事ひとごとのように小春が言う。

「あら、こっちの道じゃない」
「だから言ったじゃん。 ねえ?」

 雨子は抗議するように、物静かすぎるクルミと顔を見合わせた。 辺りの建物の様子は、さっきよりはずいぶん単純なようだ。 ほんのちょっと間違えただけで、あんなに複雑なところに行っちゃうなんて。

「これで、詐欺さぎグループも撃退ねっ! あー、すっきりした」

 小春が歩きながら、伸びをしながら言う。 警備隊の一人が、後ろを振り返って、静かにするよう合図をしてきた。 もう、すぐそこが『死者と話せますサービス』の入り口だったらしい。 なんだ、すぐそこだったんじゃない。 でも、ちょうどいい散歩になったし、まあいっか。 ははっ! 小春は適当に思いながら、合図を受け取って、口を押えて静かになる。

 部屋の前に来ると、警備隊の男たちは壁に身を寄せて、中の様子をうかがっていった。 小春たちも、同じように壁に耳を当てて、中の様子をうかがってみる。
 聞き耳を立てると、ぼんやりと人の声がした。 知らない女の人の声だ、それに続いて、別の声が聞こえてくる。

 あ! これ、スズネの声じゃない。 でもなんか、ちょっと元気がないっていうか……淡々とした感じね。 『昨日はご飯を食べたの?』『いえ、食事ものどを通らなくて……』そんな感じだ。 他人と話すときなんか、こんなもんかしら。 ……何言ってんのか、教えてくれって? ちょっと待って、うーん……何言ってんのかは、分かんないわね。 なんとかして聞こえないかしら……。

 小春が眉をひそめて耳を壁に押しつけていると、横で男たちは立ち上がっていった。 ボスが何の合図もせず、いきなり突入していく。 ……あら、合図とかしなくていいのかしら。

「警備隊だ! 手を下ろせっ!!」

 飛び上がるような大声を出して、ボスが入っていく。 それに続いて、一緒に他の男たちも入っていった。 警備隊は部屋の中に入ると、問答無用にあちこちを調べ始める。
 警備隊の、幽霊の1人は、部屋の奥に素早く飛んでいった。 どうやら奥のほうに、別の部屋があるみたいだ。 別の所にある入り口は無視して、そのまま壁をすり抜けて、向こうの部屋へと入っていく。

 また別の幽霊は、すばやく部屋の中に入っていくと、部屋の中にいた人の顔を観察するように覗き込みはじめた。 一人一人顔を覗き込んで、眉をひそめて、ガンを飛ばしているようだ。 ちゃんと仕事をしているんだろうか?

 部屋にいたのは、2人しかいなかった。 幽霊の女が1人と、スズネだ。 2人は、机をはさんで座って話していたようだった。
 幽霊の女は、男たちが入ってきたのに気がつくと、驚いて立ち上がっていった。 さっと顔色を変えて、慌てたように叫ぶ。

「ちょっと、何なの、あなたたち!」

 座ったままのスズネは、なぜか、入ってきた警備隊に無反応だった。 叫ぶ女と向かい合うようにスズネは座っていて、なにかぼうっとしているようだ、前のほうを見つめて動かない。

 小春たちが、あとからこっそり、部屋の中に入ってきた。
 部屋は、なぜか煙がもくもくとかれていた。 見ると、部屋のはしっこのほうに、煙をたく何かがあるようだ。 そこから煙が立ち上っているのが見える。 ご飯でも作っているんだろうか? ありがたいわ、一緒に食べましょうっ!!

 顔を覗き込んでいた警備隊員が、ボスのところに戻ってきた。

「どうだ?」
「違います。 巫女みこでは、ありません」

 ガンを飛ばしていたのではなく、どうやら、正式な巫女みこかどうかをチェックしていたようだ。 巫女全員の顔でも、憶えているのだろうか。 幽霊の人だし、そういう記憶力とかを強みに仕事をしてるのかもしれない。

「ちょっと! 一体……」

 女はわけが分からないというように、部屋の中心で叫び続けている。 今度は向こうの部屋に行っていた幽霊の警備隊員が、声を出して報告してきた。 壁からするっと首だけを出して、まるで壁に生えたキノコみたいだ。

かしら! こいつら、通貨不正利用者です。 過去1年、報告をしてません」
「スズネー! 生きてるーっ!???」

 幽霊ジョークを飛ばしながら、小春が飛び出していった。 我慢できなかったのだろう、大声で叫びながら、部屋の中央へと走っていく。 おい、待て!小春っっ!! 邪魔じゃますんなって、ボスに言われただろ! ミツバたちも、それに慌ててついていく。
 スズネのところへ近づいていくと、警備隊の幽霊の男が、背中を向けたまま立ちふさがった。 顔をしかめて、小春は立ち止まる。

「うわっ!」
「ちょっと待て」

 男は冷静に、背中を向けたまま言う。

「ちょっと! どいて! 友達だって、言ったじゃん!」

 怒気を飛ばして、小春は威嚇いかくするように男に向かっていく。 向こうでは、スズネはまだぼーっとしているみたいだった。 正面の上の方を眺めたまま、動かない。 スズネっ!! どうしたの、今助けにいくわよっっ!!
 煙が立ち込めた部屋の中で、耳をすませば、かち、かち、と規則的な音が、どこからか鳴っているのが聞こえる。 不思議な音で、聞いているとクラクラとしてくる。

 奥の部屋には、別の仲間がいたようだ。 入り口を通って、生身なまみの男が連れ出されてきた。 うなだれていて、事件の被疑者!って感じだ。 隣にはもう一人、べつの幽霊の女も一緒になって出てくる。 パシャ!パシャ! 今、容疑者が自宅から出てきました! そんな感じだ。
 髪が長くて、静かに歩いて……すごく幽霊らしい幽霊だ、建物の前で話しかけてきた、案内人の人だろう。 やっぱりこの人も、仲間だったのだ。

「死者と話せます……ってか。 ふざけんなっ、詐欺集団が!」

 警備隊の一人が、大きい声で怒鳴る。 女が抵抗した。

「何のことよ、違うわよ!」
「とぼけるな、もうお前らのことは、調べてるんだ。 お前は、クニヨ、年齢18、1年前に降霊された、陸のほうの出身だな?」

 全部バレてると分かって、さすがに観念したようだ。 女はうなだれて、静かになった。

 一方で、小春は立ちふさがった幽霊の男を、無理やり突破していった。 目をつむって苦しそうにしながら、男の体をぐぐっと通り抜けようとしていく。 警備隊の男も苦しそうだ、胃が痛いような顔でなんとか抵抗していたが、やがて小春はスルッと通り抜けていった。 机のところにたどり着くと、スズネのそばに行って呼びかける。

「スズネっ! ……あれ、ちょっと、どうしたの? おーい」

 スズネは、まだぼんやりとしているようだった。 ぽけっと口を開けたまま、虚空を眺めている。 小春は目の前で手をひらひらと振ってみると、反応はない。 先生っ! 患者さん、意識ありませんっ!! 雨子もそこへ来て、そばに駆け寄った。

「スズネ、大丈夫?」
「……え? ……あぁ、小春、雨子」

 スズネはようやく気がついたようだ、こっちを見て、小春たちの顔を見た。 とりあえず死んでは無いようだ、良かったわ!

「おい、お前ら、うるさいぞっ!」

 話していると、ボスに怒鳴られた。 小春はピクっと顔を引きつらせて、ボスを見上げた。 ムカついたように口をとがらせ、ぼそっと呟く。

「なによ、偉そうに」

 詐欺グループは、次々に部屋の外へと連行されていた。 警備隊も一緒になって、ぞろぞろと引きあげていく。
 ボスは、女に向かって向き直り、くぎを刺すように言った。

「いいな。 逃げたって、無駄だぞ。 大人しく、ついてこい」




 小春たちは、街に帰ってきた。 もう夕日が差していて、夕ご飯の時間みたいだ、辺りでは料理の煙が流れていく。

 あの後スズネは、一応、身元を確認された。
 警備隊の幽霊の1人は、街の人の名前と顔を、全部憶えているらしかった。 部屋にいる人たちの顔を覗き込んでいたのは、どこの誰かをチェックする意味合いもあったのだろう。 事前に調べた詐欺グループの情報と合っているかを確認したり、顔をすばやく憶えて逃げ道をふさぐ……なんていう理由もあるのかもしれない。
 名前と住んでる場所を言うと、スズネはすぐに解放された。

「はー! ……楽しかった」

 小春が腕を上に伸ばして、すっきりしたように言う。 その後ろで歩く雨子は、スズネのことがまだ心配のようだ、声をかけている。

「スズネ、ほんとに大丈夫なの? ……なんか、様子がおかしかったけど」

 解放されたというのに、スズネは元気のない顔だ。 さっきからぼんやりと遠くを眺めて、心ここにあらずといった具合で歩いている。 振り向いたスズネは、しかし笑顔を見せた。

「いや、大丈夫だよ」

 小春は振り返り、相槌あいづちを打つ。

「そうよ、あいつら、あそこで何やってたの? ……なんか、変な部屋だったけど」

 煙が焚かれていたし、変な規則的な音も鳴っていた。 まるで別の世界に引きずり込もうとしているような……不思議な感じがしたわね。 うーん、怪しいわ。

「うん……煙とか、焚いてたし」
「あれ、おこうだぞ」

 後ろを歩いていたミツバが言った。 振り返った他の人たちは、きょとんとした顔をしている。

「そうなの?」
「ああ。 結構きついにおいの」

 生きていて生身のミツバだけ、匂いをはっきりぐことが出来る。 今日集まったメンバーは、ミツバ以外はみんな幽霊だ。
 小春はふうんと言って、そらを見上げ、匂いを思い返そうとしているみたいだ。 ミツバはそれを見て、ニヤニヤする。 ……いーや、無理だね。 幽霊にとっては、目から見えるものと、聞こえる音が全てだ。 それ以外の感覚はないから、匂いや肌触はだざわりなどは、分からない。 見た目がただの煙なら、それ以外は何も感じないんだぜ。 つまり、生きているやつ最強!!! 俺、最強っ!!!!! フウウゥゥゥゥっっっ!!

「それで、何やってたの?」

 話を戻して、雨子が聞く。 スズネは頭をひねりながら答えた。

「うーん、私もあんまり覚えてないんだよねー……。 ただ、なんとなく過去の記憶を、思い返してた気がする」
「過去の記憶?」
「それって、スズネの昔のことってこと?」

 続く質問に、スズネはぼんやりとしながら頷いた。

「うん。 ……どんなんだったか、もう忘れたけど」

 そういって、スズネは笑っておどけてみせる。 それを見て、雨子はちょっと残念そうに、息を吐いた。 ……うーん、結局、どういうサービスだったのかは、謎のままかあ……。

「そっかー……」
「ま、いいんじゃない! 一つの詐欺が、潰されたことだしっ! ……あ」

 小春は会話をたたみかけ、何かに気づいたように、街の一角を見た。 なにやら人がごった返している場所がある。
 よく見ると、それは憶え屋だった。 ユメが作ったあのしょぼい小屋に、客が殺到さっとうしているようだ。

「うわー、すごっ」
「へえ、すごい客じゃない。 ……あ、ユメ」

 ユメが、街の道を、こっちに向かって歩いてきていた。 気づいたユメは、軽く挨拶あいさつを返してくる。

「小春」
「あんた、すごいわねえ。 大盛況だいせいきょうじゃない」

 小春はそういって、感心するように店のほうを見る。 小さな小屋の中では、幽霊がひしめき合ってうごめいていた。 お前、どけよっ! なによ、あんたがどきなさいよっ!! 勢いが良すぎて、生身の体を持ってたら、喧嘩けんかが起きてそうだ。
 ユメはそのほうを見ると、頷いた。

「あぁ、これね。 ……なんか、勉強会の人たちが、知識を移してみようって、言ってるみたいで」
「あぁ! 昨日、言ってたやつか」

 ミツエダの部屋で話した、勉強会の知識をまとめるという話。 幽霊の人でも使える教科書として、憶え屋を利用しようということだった。 それを実際に、やってみるつもりなんだろう。
 ユメはこっちに向き直って、思い出したように伝言を伝えてきた。

「あ、そうだ、小春たち、歌子がいつもの場所で待ってるって」

 歌子は仕事が終わって、食事でもしているんだろう。 夕方にたまにみんなで集まって、一緒に食事の席を囲むのだ。 幽霊はほとんど食べる人はいないけど、生きているときの食事のことは憶えてる。 雰囲気だけでも楽しいし、どこか落ち着くのだ。
 小春はわかったと言うように頷いた。

「あ、そう。 ……ユメも、時間あったら、たまには来なさいよ」

 ユメは、みんなが集まるところには、そんなに来ない。 本人曰く、べつに嫌いではないらしいけど。 自分でも、気づいたら一人でふらふらしているらしい。 たまに小春が無理やり連れてきて、一緒に話したりするのだ。

 ユメはいつものように、はいはいと適当に答えて、背を向けていった。

 一行はその場を後にして、歌子たちのところを目指す。
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