幽霊だらけの古代都市!発達した呪術国家で、破滅的な未来なんて蹴り飛ばせっ! 幽霊たちと一緒に、ワクワクしながら元気に走り回るっっ!!!

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第四章 動乱の前日

第29話 憶え屋で、みんなの日記を読もうっ!

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 街に戻ってくると、道のあちこちで、お酒を飲んでいる人がいた。 やったっ! 今日は宴会の日だっ!
 この街では、たまにこうやって、街全体でお酒を飲むときがあるんだ。 意味があるのかは、私には分からないけど。
 幽霊の人も、『まぼろし』のお酒を作れる人は、飲んでるみたい。 幽霊の人も生身の人も、みんな一緒に混じって……うーん、こんな雰囲気、いいよねっ!

 賑やかでほんのり暖かい空気の中を、歌子ははずむようにあるいていく。 私はあんまり飲まないけど、宴会の時はみんな笑顔だから、やっぱり楽しい。
 あ、そうだ……みんなはどこにいるんだろう? あとで食事をしながら、一緒に過ごすことになると思うけど。 とりあえず、いつもの場所に行ってみるかな?

 そう思いながら歩いていると、ふと気づいたことがあった。 もう少しで憶え屋の場所なのだが、ここにも同じような建物が立っている。 ……これも、憶え屋かな?
 たしかユメが店舗をどんどん増やすと言ってたんだよね。 街のあちこちに作って、どんな場所にいてもメモ出来るわよっ!! っていう風にしたいんだって。
 2号店か3号店か知らないけど、元の『本社』の近くにも建てたんだ。 いいよいいよっ、ユメっ!! この調子で、どんどん作っていこうっ!!!

「へー、ここにもできたんだ……」

 歌子はそう呟きながら、店を覗いてみる。 結構人でにぎわっているようだ、たくさんの人の声が飛び交っている。 憶え屋って新しいサービスだから、興味本位で覗いてる人とかも、いるのかな?
 そう思いながら眺めていると、店から出てきた人が目の前に現れて、声をかけてくる。

「歌子ちゃん?」

 あ、この人は知ってる。 本社のほうの、憶え屋の職員の人だ。 返事をすると、その人は道の向こうの『本社』を指さしてきた。

「200年前の話を募集するっていう所に、新しい話が入ってたよ」

 あ! ついに来たかも。 200年前……スズネが生きていたころの、『飛び降りた人の死体が消えた事件』の話っ!
 スズネも歴史所で、自分の時代を知ろうとしてたけど、じつは私も調べてたんだ。
 ……とはいっても、『消えた死体』の話を知ってるって人が口座の中に現れて、書き込んできただけなんだけど。 詳しく話を聞きたいんですけどって、言っといたから……返事がきたのかもっ!

「ほんとですか! 分かりましたっ」

 歌子は返事をすると、さっそく本社のほうへ歩いていく。

 正直に言ってしまうと、私は最初、憶え屋はそんなに流行らないだろうと思ってたんだよね。 だって、仕組みが分かりにくいし、そんなに預ける記憶や記録なんて、みんなないんじゃないかと思ってた。 せいぜい使われるのは、後から付け足すように作られた、伝言サービスぐらいじゃないかってね。
 でも実際には、多くの人が利用してくれてるみたい! 通貨量の記録なんかの、真面目なことに使ってる人ももちろんいるけど……私たちみたいに遊び心で使ってる人も、結構いるみたいだよ。

 歌子は本社に着いて、馴染なじみのある小屋に入っていく。 中は人の声で満ちていて、今日も賑やかだ。

 憶え屋の中は、人が話すためのカウンター席がある。

 席はプライバシーのために区切られていて、隣の声は、いちおう聞こえないようになっている。 実際には、めちゃくちゃ聞こえるけどね。

 カウンターに近づいていくと、一つだけ空いている席があった。 そこの職員が、こっちに気づいて挨拶をしてくる。

「こんばんはー」
「こんばんは。 第3区画の歌子です、活動記録をお願いします」
「歌子ちゃんね。 ちょっと待ってて」

 了解して職員は立ち上がり、店の奥へ引っ込んでいった。 向かった先は、記録室だ。
 憶え屋の奥には記録室というところがあって、部屋中に紙の記録が置いてあるんだ。
 私も行ったことがあるけど……人の名前や、住んでる区画なんかを使って、順番に並べて整理しててね。 そこから私の記録を、今から持ってきてくれるんだ。

 歌子は仕切りの中に座ったまま、憶え屋の中を見回してみる。
 ……あ、壁に、たくさん文字が書かれてる。 『アキカゼの植物情報口座』『ミツエダの大陸マメ知識!』……? ……ほうほう、なんか口座の名前が、並べて書かれてるみたい。

 憶え屋では、誰がどんな口座を作ってるかは隠されていて、職員の人以外は分からないようになってる。 口座を名前を並べたリストを張り出せば、分かりやすいけど、さすがにプライバシーがあるからね。
 だから、例えば私の口座を誰でも書き込めるようにして、公開にしたって、誰も気づいてくれないんだ。 『歌子の都市伝説口座っ! 公開口座にしたよ! フゥゥーーっっ!!www』って大声で宣伝して回らないと、誰も気づいてくれないの。

 いま、私が見てる壁には、口座の名前がたくさん並んでるけど……。 もしかしたらこれは、公開口座だけは、宣伝もねて壁に張り出すようにしたのかも。 こうしておけば、わざわざ自分で宣伝する必要がないからね。

 ちなみに、私の都市伝説口座は、最初からなぜか有名だったんだ。 自分で宣伝しなかったのに、みんなが書き込んできてね。 スズネも私たちのこと、知ってたし……なんでだろう?
 ……そうか。 意外と私たち、有名なのかなっ!!!?? やったっ!!!ww

 歌子がガッツポーズを決めていると、2人の職員が戻ってきた。 さっきの人に加えて、もう1人いるみたいだ、声をかけてくる。

「あ、歌子ちゃん! ……はいこれ」

 ぽんと、何かを手渡される。 石ころだ、文字がびっしりと書かれた石ころが、私の手の上に置かれた。

「え?」

 意味が分からなくて、思わず声が出る。 その職員の人は、笑って答えた。

「あぁ、そうやって書いとけば、渡すだけで済むから」

 ここのカウンター席に座って、職員の人に内容を話してもらうのが普通だ。 だけど私が生身だから、物理的なメモを手渡すのも出来る……。 なんだ、それだけか。

「あぁ、そういうことか」

 私は、なんか変な笑いが出てくる。 こうやってると、誰が幽霊で、誰が生身だか、よく分からなくなってくる。
 目を落とすと、石ころには文字がびっしり並んでいる。 書かれてるのは、200年前の『消えた死体の話』の詳しい話みたいだ。 200年前の体験談のようだから、話したのは幽霊の人だろう。
 でも、ここに書かれた文字ははっきりとしてて、指でさわれる。 まるで幽霊が文字を書いてるような感覚になって、……うーん、もうなんだか分かんなくて、ぐちゃぐちゃだ。

 石ころを渡してくれた職員は、面白がるような顔で笑いながら、奥へ引っ込んでいった。
 もう一人の職員は、私の目の前に座って、別の紙束を広げていく。 都市伝説が書き込まれてる、例の私の記録帳だ。 職員の人は、記録の紙をぱらぱらとめくっていった。

「えーっと? ……じゃあ、どうする?」

 200年前の情報は手に入れたし、あとは普段の感じで、適当に聞いてみようかな。 小春たちも最近はよく利用してるみたいだし、何か書かれてるかも。

「なんか、ここ数日で書かれたこと、ありますか?」

 職員の人は紙をめくって、記録帳の中を眺めていく。

「えーっと……ホナミちゃんが、書き込んでる。 『今日は、東の森に行った。 ここの高台は、眺めがいい。 でも、人は少ないから、おすすめだよ』って」

 ホナミは、またいつものように、島の中をふらふらと散歩しているみたい。
 ……あぁ、やっぱり不思議な気分っ! 今までは私一人しか、こういう日記みたいなことはできなかったから。
 それに、交換日記をみんなでしてるみたいで、新しい感じっ!

 歌子はウキウキして、さらに聞いていく。

「他には?」
「他には……スズネちゃんが、書き込んでる。 『歌子、また新しいの考えたよ。 雨の日にしか入れない口座とか、どう? ……あ、だけど、雨の日には、憶え屋は休みなのかな』……だって」

 職員の人も、思わず笑っている。 雨の日には、憶え屋も休んでるだろう。
 でもそんな日に、家にいながら、家の仕切りを超えてみんなで自由に集まれる場所があったら、楽しいだろうな。

 そんなことを考えていると、職員が思い出したように言った。

「そうだ、さっき、これとは別に、伝言預かってたみたいだよ。 ……おい!」

 そういって、近くを歩いていた別の職員に声をかける。 呼ばれた人は振り返ると、こっちを見て、伝言を伝えてきた。

「え? ……あ、歌子ちゃん。 小春ちゃんが、『第1区画の、西のはしの、下のほう家で待つ』……だって」
「あぁ、分かりました」

 第1区画っていうところは、ふだん私たちが行かない所だ。 いつもの場所じゃなくても、こうやって伝え合えれば、自由に約束の場所を決められるっ!

 そろそろ、小春たちのいる場所に行くかな? 歌子は口座を開くのをやめて、立ち上がっていった。 ……あ、そうだ、壁に書かれてる口座のことを、聞いてみよう。

「これって、もしかして、公開してる口座ですか?」

 立ち去りかけて、壁に書かれてる口座のことを聞いてみる。 片付けをしていた職員の人は、頷いて答えた。

「そう。 誰でも入れる口座は、ここに書くようにしたんだよ」
「へー! ……そっか」

 これで、宣伝とかをしなくても、公開してる口座のことをみんなに伝えられる。 他の人が公開してる口座も、自由にチェックできるようになるし……ムフフ、さらに色んな楽しいことが、起こる予感っっ!!


 歌子は憶え屋を出ていき、夜の道を再び歩き出した。 宴会で明るい街は、賑やかさを増してきていた。
 ……そういえば、さっき石ころをもらったんだった。 この中には、200年前の『消えた死体』のことが書かれてるんだったよね。 えーっと、なになに?

「……あ」

 石ころを読もうとしていた歌子は、ふと気づいたように顔を上げる。 見ると、道の向こうにスズネがいた。 一人で歩いて、ブラブラと辺りを眺めているみたいだ。

「スズネ!」

 スズネはぼんやりと、退屈そうに辺りを眺めていたが、こっちに気づいて足を止める。

「あ。歌子」
「小春が、いつもの場所で、待ってるみたいだよ」

 それを聞いたスズネは、一瞬たじろいだように見えた。 迷うような、変な表情を浮かべるが、すぐにいつもの顔を取り戻し、自然な感じをしてみせた。

「うーん……。 ……あ、私はいいや。 じゃあね!」

 背中を向けて、スズネはスタスタとどこかへ去っていく。 ……え、なんで?!

「いいの?!」

 一瞬遅れて、スズネの後ろ姿に声をかける。 しかし、スズネの姿は通行人の中にかき消されてしまった。

 ……なんで? ……まあ、しょうがないか。 そんなことも、あるのかも。
 誰だって、一人になりたいときはある。 スズネが今はそうなのかもしれない。

 私がなにか悪いことをしたって可能性も、あるけど。 うーん……友達になってから、みんなであちこち連れまわしすぎたかな?
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