幽霊だらけの古代都市!発達した呪術国家で、破滅的な未来なんて蹴り飛ばせっ! 幽霊たちと一緒に、ワクワクしながら元気に走り回るっっ!!!

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第五章 混乱

第36話 タンポポちゃんっ!

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 さらに、別の場所。

 朝日の光がうっすらと差している中を、スズネが走っていた。 山の中の広い道のようだ、道の両側には木や草むらがある。
 スズネはきょろきょろと辺りを見ながら、不思議そうな顔で走っている。 他の人と同じように、場所を移動してしまったのだろうか。

「……ん?」

 ふと、何かの気配けはいを感じて立ち止まった。 スズネは振り向き、道の横のほうを見る。 雑木林ぞうきばやしが見えていて、木がいくつも立っている。
 ……よく分からないが、向こうの木の辺りに、誰かいたような気がする。

 でも、見ると何も無い。

 ……あれ、本当に何もない?  絶対、何かあったような……。
 そう思いながら、スズネはその木に向かって歩いていく。

 こういう時、自分が幽霊だと気持ちが楽だ。
 もし生きてて、生身なまみだったら、色んな可能性を考えなきゃいけない。 危ない動物がいたら、とか、ヤバい変人がいたら、とか……。

 歩いていき、すっと勢いよく木の裏を見ていく。
 体を傾けて裏を覗くと、目が合った。 人だ、小さい子供がそこにはいた。 木の裏で隠れるように背中をピッタリとくっつけたまま、こっちを見ている。 ……ん? でもなんか、違和感がある……。

 そうだ、服装だ。 服装が、なぜか異様に古臭い。 髪もボサボサで、なぜか街に住んでる人に見えない。
 違和感に背中を押されるようにして、スズネは思わず声が出た。

「……誰?」

 その子はキョロっと目を動かして、動揺したようなそぶりを見せた。
 目の前にいるのに、声をかけられると思ってなかったみたいな顔だ。 慌てたように、逆に聞いてくる。

「あ、えっと……これ、どうなってるんですか?」

 どうなってる……って、この状況のことかな。 そうか! この子ももともと街にいて、変な場所に移動してしまったとか。

 ……私だけが、知らないうちにフラフラしちゃってたんじゃないのか。 お酒にでも酔って、勝手に街を出ていっちゃってたとか思ってたけど……。
 なにしろ私も、いま目が覚めたばっかりなのだ。 目が覚めたら、いきなり草むらの中にいて……。 起き上がって歩きだしたばっかりだ。

「いや、私も分かんなくて。 ……何なんだろうね?」

 スズネは頭をかいて、不思議そうな顔をする。
 夜に宴会えんかいで楽しく話して、そのまま眠っちゃって……。 うーん、それ以降は憶えてないけどなあ。
 幽霊が別の場所に勝手に移動するなんて、聞いたことはない。 もしかして、何か変な事態にでもなっているんだろうか。
 ……あっそっか! そうだ、変な事件が起こってるんだ。 やったっっっ!!ww 退屈な日常が破壊されたぜぇぇーーっ!! フゥゥッッっっ!!!wwww

 スズネはいきなりテンションを上げながら、その子と一緒に茂みを出ていく。 元気に腕を振って、山の道へと戻っていると、後ろをついてくる古い格好の子はボソボソした声で聞いてきた。

「何か、起こったんですか?」
「さあ。 私も今起きたばっかで、気づいたら、こんなところにいて……」
「スーズネー!」

 説明していると、いきなり別のほうから、自分を呼ぶ声がした。
 あれ、聞き覚えのある声だ。 この軽やかで、元気さが先に歩いていくような声は……。

「小春っ!」

 振り向くと、小春が山の道を歩いてきていた。 いつもの調子で手を上げて、元気な笑顔を浮かべている。
 ……あれ、もしかしたら小春も、変な状況になってんのかな。 こんな朝早くに、山の中にいるなんてありえない。 それとも朝の散歩中かな。

 古い格好の子に、友達だと説明して、スズネは走っていく。 向こうで小春は手を振りながら、声を飛ばして聞いてきた。

「大丈夫だったー?」
「うん、小春は?」
「もう余裕よ。 ……ん、そっちの子は?」

 後ろについてきた古い格好の子に気づいたみたいだ。 スズネは振り返り、説明を加える。

「あぁ、今あったばかりで」

 小春は目の前で立ち止まり、真剣な顔になった。 顔がどんどん曇っていって、声を低くして……。

「……もしかして、新しい人?」
「え? ……何の話?」

 小春、なんて顔してんの。 ……そんな顔、できるんだ。 意味が分からずきょとんとしていると、小春は横を通り過ぎていった。
 古い格好の目の前に行くと、小春は眉をひそめて、その子をじろじろと見つめる。

「ねえあなた、ここの時代の人?」

 そう、妙に静かに話しかけている。
 ……何を言ってるんだろう?……ここの時代? その子も突然の質問に困惑したようだ、目をキョロっとさせて聞き返した。

「ここの時代……?」
「あ! やっぱりっ! そうだ、先に名前聞かなきゃいけないわ。 ねえ、あなた名前は?」

 変なことを続ける小春の顔を、スズネは不思議そうにのぞき込んでいく。

「……小春、何言ってんの?」
「名前……タンポポっていいます」

 古い格好の子は、きょとんとした顔を浮かべながらも、大人しく自分の名前を答えた。
 小春はフンフンと頷き、無理やり作ったような変な笑顔になりながら、質問を続ける。

「タンポポ……ふーん、いい名前ねえ。 で、タンポポちゃん、あなたどこの時代の出身? ……あじゃなかった、えーっと、……あれ、なんだっけ?」

 いきなり小春はあたふたとし始め、自分でも何を言ってるのか分からないような感じになっていく。 そんな様子を見て、スズネは耐えかねたように笑いながらツッコミを入れていった。

「ねえ小春、さっきから何言ってんの?」

 さっきから、小春は変な行動ばっかしている。 脈絡みゃくらくもなく名前を聞くし、何か隠してるのはバレバレなのに、演技みたいに穏やかな口調を続けるし。 こんなに真面目な顔を長時間続けている小春を、初めて見た。
 小春にはそんなの関係ないようだ、振り払うように言う。

「いいのよ、こうしなきゃいけないの!」
「いけないって、何が? ……ていうか、みんなこうなってんの?」

 一体何が起きてるのか、私は結局知らない。 目覚めたら、このタンポポちゃんも私も、変な場所にいて……。 小春もたぶん同じ状況なんだろう。
 まずは街に戻らないと、何も分からないんじゃないの? そう思っていると、小春がこっちを見て聞き返してくる。

「……こうって?」
「だから、なんかよく分かんない所で寝てて……」
「あぁ、そうみたいね。 でも、……あ、これは言っちゃいけない。 ふぅ!」

 何かを言うのを踏みとどまったようだ、小春は額から汗をぬぐって、さわやかな顔をしている。
 もう、いったい何なんだよ! 何言ってるか分かんないし、聞いても答えてくれないし。 このままじゃ、らちが明かない。 スズネは小春を無視して、強引に話を進めた。

「とりあえず、街に帰ろうよ。 タンポポちゃんって、どこに住んでるの?」

 聞かれたタンポポは宙を眺めて、思い出すように答える。

「……えーっと、確か、第4区画……」
「え?! あなた、いま降霊されたんじゃ、ないの?」

 小春の頓狂とんきょうな大声が、辺りに響く。 第4区画って……そんな現代っぽい専門用語、なんで今降霊されたばっかのあんたが知ってんのよ?!
 タンポポちゃんは、きょとんとした顔を浮かべた。

「……今?」
「ねえ、さっきから小春なに言ってんの?」

 耐えかねたように、スズネは笑う。 さっきから、まるで話がかみ合ってない。 小春はなぜか真剣な表情だけど、何を言ってんのかさっぱりだ。
 小春は向き直り、大真面目な顔で答えた。

「だから、誰がやったのか分かんないけど、新しく霊がたくさん降ろされてるみたいだから……あっ」

 やばっ!というように、小春は口を覆う。 ……幽霊がたくさん降ろされてる? 誰がやったのか分からない?
 スズネはそれを聞き、ようやく事態を知った。

「え、あ、そうなの?」

 一瞬固まった小春だが、やがて堪忍かんにんしたように息を吸い込んだ。

「はー! ……あぁ、そうなの。 だから、どこの誰が降ろされたのか、本人確認しないといけないらしいの。 ……あぁ、疲れた」

 新たに降霊された人が、どういう素性すじょうの人かが分かるまでは、なるべく情報を漏らしてはだめだと、アキカゼに言われていたのだ。

「そういうことなんだ。 ……え、なら、何が起きたの?!」

 新しい幽霊が降ろされてる……しかも、どこの誰か分からない? 厳重に管理してるはずの街の降霊システムで、そんなことがありえるんだろうか。
 そんな疑問に、小春は力なく首を振った。

「私も、分かんない。 ……あ! ほら、あっち!」

 いきなり何かに気づいたようだ、小春は別のほうを指さす。 見ると、そこには男の幽霊が1人いた。 こっちに向かって走ってきているようだ……あっ! まさか新しく降霊された人ってことっ?!!
 スズネたちはドキドキしていると、男はきょろきょろと辺りを眺めながら、3人に声をかけてきた。
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