幽霊だらけの古代都市!発達した呪術国家で、破滅的な未来なんて蹴り飛ばせっ! 幽霊たちと一緒に、ワクワクしながら元気に走り回るっっ!!!

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第五章 混乱

第44話 カナタくんっ!

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 海では、海の警備隊による大捜索が行われていた。 水の中におぼれている幽霊がいないか、もぐって探しているようだ。
 漁師の人たちも、一緒になって捜索を手伝っているようだ。 小舟が浮いていて、海面に沈んでは浮かんできて、報告をしていく人たちの姿が見える。
 海の警備隊は慣れているらしく、びゅんびゅんと意味不明な動き方をして、海中を探し回っているみたいだ。 目が追いつかないほど速くて、岩の裏を確認して、今度は向こうの岩の影を……。 すごい速さだぜ、もう一人でやっちゃえよっ!! ひゅうひゅうっ!!w そんな感じだ。

 そんな中、見慣れた姿が、海の中からざばっと体を出してきた。

「はぁっ! ……ここの辺りも、いないですね」

 海から上がってきたのは、スズネだった。 スズネも海の捜索を手伝って、水の中に潜って幽霊を探していたのだ。
 朝は山を探していたが、こんどは海だ。 今日は動き回っているけど、なぜだか体は疲れない。 いつも街の中に籠っているからか、色んな場所を動き回るのが気持ちいいのかも。
 船の上には、幽霊の人が1人いた。 年を取った老人が、船のへりに手をかけて座っている。 老人は船からこっちを覗き込むように見下ろして、返事をしてきた。

「あぁ、そうですか」
「おーい! その辺りは、もういいぞー!」

 ふと向こうのほうから、声が聞こえてきた。 たぶん警備隊の人たちだろう、捜索は終わったのかな? ここから引き揚げていいらしい。

「はーい!」

 スズネは大声で返事をすると、船に上がっていく。
 船のへりに手をかけて、身を引き上げて……よいしょっと。 小さくて軽い船でも、幽霊の体だと、船を押して戻ってくるような感覚がない。 めちゃくちゃ硬くて重い物体に、振り回されるような感覚になるんだ。 だから幽霊になってから、船って苦手なんだよな。
 船の上に乗ると、服についた『まぼろし』の水が滴っていった。 ふうと息を吐きながら、身を振って水を払いのけていく。
 手で透明な服を絞ると、透明な水がびちゃびちゃ出てきて……。 うーん、やっぱり変な光景だなあ。 慣れてるはずだけど、普段こんなに水の中に入らないからか、変な感覚になってくる。
 服から水を払っていると、近くで座っていた老人が、ふと気づいたように話しかけてきた。

「あれ? スズネさん?」
「はい。 ……ん?」

 適当に返事をしながら振り向くと、老人はこちらを見つめていた。
 ……あれ? っていうか、スズネさんって言った? 私、名前言ったっけ。
 状況がよく分からないままでいると、老人は自分を指して言う。

「僕だよ、カナタ。 憶えてない?」
「カナ……あー! ……え、カナタくん? あれ、……えぇっ?!」

 びっくりして、変な声が出てしまう。
 そうだ、そうだった。 この人は私の知り合いで、200年前……私が生きていた頃、近所に住んでいた男の子だ。
 私より年下の男の子だったはずだけど、今は老人の見た目になってる。 ということは、私よりずいぶん先に降霊されたのかな?

 カナタくんは、男なのに降霊能力を持っている珍しい人だった。 女の子たちと一緒に混じって、似合わない古い巫女みこ服を着て、降霊洞穴に修行に行ってたなー……。
 修行中じゃないときは、よく一緒に遊んだっけ。
 一人で遊んでいるとやって来て、私の後についてきたんだよな。 なぜか知らないけど、したわれていたのを思い出す。
 目の前のカナタは、年老いた、深い声で言った。

「あー、びっくりした。 スズネさん、降霊されてたんだ」
「うん、3年前ぐらいにね。 ……カナタくん、いまいくつなの?」
「僕は、もう70になったよ」
「えー!w そうなんだ」

 そんなことを話しつつ、スズネは明るい声を出して、まだ水を払っていた。 もうほとんど水は無いのに、バタバタと必要以上に顔やら腕やらを払っていて、乾布摩擦かんぷまさつみたいになってきている。
 だってこういうのって、恥ずかしいんだよっっww まっすぐ向き合って話すなんて……。 変なこと聞かれるかもしれないし、嫌じゃん?
 でも、他にやることなくなったし、しょうがないか。 よっこいせっと……。
 足を曲げて……。
 腰を落としていって……。
 必要以上にゆっくり座っていきながら、ようやく船の中で座り込んでいく。
 ゆっくり向き合って……。

 ……さて、なんか話すかね?

「あ、スズネさん、なんで自分で飛び降りたの?」

 ズバァァァーーーンッッ!!!www いきなり直球絶好調っ! 170kmっ!!ww デッドボーールっっっっう!!!!!

「あの時、自分で飛び降りたんだよね?」
「あぁ、うん、まあね」

 内心ガタガタに動揺しながら、自然な感じで返事をしていく。
 なんだよ、この会話。 スーパーで魚買ってたぐらいの日常会話だ。
 昨日、魚買ってた?w あぁうんまあねw……ってなんだよ、私wwww ぷっはwww
 そんなに死ぬことって、軽かったっけ???ww この街にいると、これが日常でーすってかっ!?w ふはははっ!!!www
 爆笑しているスズネとは対照的に、目の前のカナタは、言葉があふれるように話しだしていた。

「僕、ずっとそれを今まで考え続けてて。 なんであの時、スズネさんは、死んだんだろう……、自分は、気づかなかったんだろう、って……」
「あーw……んー……」

 そんなの私を降霊して、無理やり聞けばいいじゃんっ!!w
 『ねえ君、何でさっき死んだの?』『うーん、村が嫌いだからですwwww』とか言ってさwww ははっ!!w
 ……でも、そんなことは起こらなかった。 気づいたらこの街に降霊されてて、200年前の村の姿はすっかり視界から消えたんだよなあ。 よかったよかったw
 考えてみれば、そんなものかも。 別に殺人とかでもない限り、細かい理由で降霊することは無いらしいんだよね。
 目の前のカナタは、一人でせきを切ったように話し続けている。

「ずっと、引っかかってたんだよ。 誰も、理由がよく分からないみたいだったし……スズネさんの親とかもさ。 でも、僕は、なんとなく、スズネさんが、あの時一人でいたような気がして……。 気になってたのに聞かなくて、聞けばよかったって……」

 カナタはこっちを見つめながら、話している。
 もう!w みんな真面目だなあw ……あ、ちょっと海のほうに目線をずらそう。
 ……よいしょ。 ふう、あぁ、海がきれい。 風がさらさら吹いてきて、気持ちいいなあ……。 でも気分が悪いのは、気のせいだろうか。
 スズネは言葉の合間を見つけて、適当に相槌あいづちを打っていく。

「うーん。 まあ、私もよく分かんないんだよねー……。 なんでだろうね?w」

 こういう時は、笑ってはぐらかそう!ww ヤッホーっ!!w イェイッ!! なんつってwww ははっ、歌子かっ!!wwww
 ……うーん、カナタくん、なんでこっちをじっと見てくるんだろう。 顔も全然笑ってないし……この子、こんなに落ち着いてたっけ?
 2人が会話していると、船のそばで音がした。 海面に誰か浮かんできたようだ、音速でそっちのほうに目をやっていく。 シュインっっつってww
 来たーっ!! 救世主っ!! メシアよ! 物静かすぎるクルミっち!!! さっきから、一緒にこの辺を探してたんだよね。

「あ、クルミ」
「こっちは、いない。 今度、向こうに行ってくる」

 クルミは簡単に報告を済ませると、もう一度潜ろうとしている。 それを見たスズネは慌てて呼び止めた。

「あ! もう、いいよ。 さっき、警備隊の人たちが、引き揚げていいって言ってたから」

 クルミはそれを聞いて頷くと、船へと上がってきた。
 気づくと、近くには別の船が来ていた。 漁師の人たちだろうか、何人か生身なまみの人が乗っているようだ、1人がこっちを見て言ってくる。

「なんだ、ここ、生身いねえじゃねえか」

 聞いたことある声だと思ったら、ミツバだった。 海の捜索に参加していたらしい、漁師だから駆り出されたのかな。
 ミツバが移ってくると船が揺れて、乗っていた3人はびっくりするようにへりにつかまった。 今まで乗っていたのは幽霊しかいなかったのだ、いきなり実感が押し寄せてくる。
 オールを手に取ると、ミツバは手慣れたように舟をこぎだした。 波に揺れていき、風を感じながら静かに船は動いていく。
 ちらっと横を見ると……ん? カナタくん、なんかもじもじしてる? ……あ、こっち見た。 もうやめてww 私のハートはズタズタよwwww

「……何か今度、苦しいことがあったら、僕に言って。 僕じゃ、何もできないかもしれないけど……」

 身を近づけて、手の辺りに触れてきながら言ってくる。 あぁ、もう! みんな、真面目すぎなんだよっ!!w いいじゃん、そんなこと。

「あぁw うん、ありがとう」

 一応、適当にお礼を言ってみる。
 でもなあ、苦しくなっても多分相談しないだろうなあ。 なんでだろうねw
 ……ところで、海の幽霊の捜索はどうなったんだろう? 見上げて、ミツバに聞いてみる。

「もう終わったの?」
「あぁ、この辺りはな。 ……やっぱ警備隊の奴ら、すげえな。 手早いの、なんのって」

 まあ、あんだけ速く動けるなら、そうなるよね。 私たちの手伝いなんて、要らなかったんじゃないの?w ははっ!!ww


 陸に船をつけていると、浜辺の向こうから、元気のいい声が呼びかけてきた。 小春だ、こっちに手を振って歩いてくる。

「ミツバー! スズネーっ!!」
「おお小春! 生きてんじゃねえか」

 死んでるだろっ! 無言でツッコみながら、スズネは浜辺に上がっていく。
 ファサっと砂浜に足をつけて……あぁ、地面が懐かしいぜ。 海に潜るのも、たまにはいいかもな。 水をびしゃびしゃに浴びて気持ち良かったし……ふーう、いい汗かいたっ。
 いい運動の後のため息をついて、スズネは涼しげな顔で辺りの景色を眺めていると、近くに声が聞こえてきた。

「スズネさん」
「うぁ、何?w」

 カナタが目の前にいた。 あまりに近くて、びっくりして飛びのく。

「ちゃんと、言ってね!」

 言う? ……さっきの相談の話ね。 はいはい。
 適当に心の中で返事をしながら、スズネは苦笑いを浮かべる。

「あぁ、分かった、分かったw……」

 昔は、お姉さんと弟分みたいな感じだったのになあ。 今はもう、どう見ても孫とおじいちゃんだよ。

 カナタは手を振って、別のほうへ歩いていった。 歩き方も落ち着いてて、やっぱり老人にしか見えない。 
 入れ替わりになるようにして、こんどは小春が走ってきた。 元気よく息を切らして、生き生きした様子で声をかけてくる。

「どうー? 海の中は、いたの?」
「いや、いない。 巫女さんたちも、霊気を確認したらしいぜ」

 浜辺を眺めていくと、巫女たちが、漁師の人と一緒に船から上がってきているのが見える。 霊気を感じ取って、取りこぼしがないか確認したのだろう。
 立ち止まった小春はふうんと呟きながら頷くと、別のことを思い出したように話しだす。

「あ。 そうだ、さっき憶え屋確認したら、どうも病院の人手が足りないらしいのよ。 ……っていう書置きが、色んな口座に入れられててね」

 人々は、憶え屋をSNSみたいに使っているようだ。 こういう時には便利かもしれない。

「ふーん。 じゃあ、そっち行ってみるか」

 片付けを終えて、一行は海を背にして歩きだした。 海の捜索の次は、病院で手伝いだっ!
 次から次に仕事が変わって、場所も移り変わっていく。 いつもはボケっとしてて、気づいたら夕方になってるのに、上を見上げたらまだ昼だ。 太陽がさんさんと照らしてくるのが、健康的で逆に不自然に思えてくる。
 並んで砂浜を歩きだすと、小春がまた別の話を始める。

「……そういえば、また変なうわさがあってね」
「お前、なんかさっき、変なこと言ってたらしいなw」

 ミツバが笑いながら、ツッコミを入れていく。
 ……白骨死体とか、未来人が降霊されたとか? ははっw なんだよ白骨死体って、いつの話してんだよ。 ……え、未来人?? 来るなら来いよ、一緒に知的パズルでもやろうぜww

「いや、違うの! あれとは、別で。 なんか、殺人鬼が降霊されてうろついてるって噂が、あるみたいでね」
「ほんとか?w」
「え、殺人鬼?w」

 横から面白がるように、スズネが入ってくる。 小春は真面目な顔で頷いた。

「うん。 ……ってあれ? だから、殺人なんて、意味ないじゃん! なんで信じてんの、私っ!」

 また自分の言っていることのおかしさに気づいたようだ、小春は一瞬かがんで、ぱしんと自分の足を叩く。

「まあ混乱してるから、そういう噂が出るんじゃねえの?」
「そういうことね。 ……まったく、誰よ? こんな噂流したの!」

 ぷんすか怒る小春と一緒に、一行は歩いていく。
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