幽霊だらけの古代都市!発達した呪術国家で、破滅的な未来なんて蹴り飛ばせっ! 幽霊たちと一緒に、ワクワクしながら元気に走り回るっっ!!!

折紙いろは

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第五章 混乱

第51話 ボサボサの態度のデカい男!

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 歴史所はまだ人だらけで、声であふれかえっていた。 もう夜だというのに、まだ騒ぎは収まる気配はない。
 住民登録などはある程度終わったが、街の説明を求めたりしている人が多いみたいだ。 現代に降霊されて、今までにどんな歴史があったのかを知りたい人もいるようだ。 職員が代わりに文字を読みながら、石板を眺めて話したりしている。

 歌子も歴史所に戻ってから、再び仕事をしていた。 もうちょっとで終わるらしいから、頑張ろうっ! 筆を素早く動かしていき、書類を作成していく。
 山で勝手に降霊術を使って、アワさんを降霊したことは大丈夫だった。 事情を話したら、適当な返事であっさりと許されたのだ。 やったっっ!!!!ww この状況で混乱してるから、正直それどころじゃないのかもしれない。

「歌子ちゃん!」
「はい!」

 歌子は聞こえた声に、振り向きもせずに作業をしながら答える。 次々にやることがあるから、もう忙しくて大変だ。 書類を書きなぐっていると、その人が近づいてきた。

「向こうのほうで、記録したいことがあるみたいで」
「わかりましたっ」

 文書を書き終えながら、勢いよく立ち上がっていく。
 あぁ、なんて日だっ! 朝から動き回ってて、体が疲れるとか言うレベルを超えてる気がする。 今は、ほとんど機械的に動いてる感じだ。
 無心で職員の人の後についていき、歌子はパタパタと走っていく。


 聞いたところでは、この騒ぎは結局誰の悪戯いたずらでもなかったらしい。 アマネの悪戯でもなかったし、ヤミコさまの悪戯でもなかったと聞いた。
 源の異常な活発化など、様々な状況を考慮して、自然災害的なものだと結論付けられたらしい。 こんな自然災害のような降霊は、500年前に降霊術がおこってから初めてだという。
 島の中は、一か所ずつ巫女が霊気れいきを確認していったから、取り残した幽霊の人はいないらしい。 元々街に住んでいた人たちの安全は確認されたし、新しく降霊された人も、もう全員この歴史所に来ているとのことだ。

「じゃあ、霊気の確認は、だいたい終わったのね?」
「はい。 今のところ、問題のあるところはありません」

 歴史所の中では、街の長の姿もあった。 まだ仕事をしていて、公的な人と話しているようだ、混乱の処理の進捗しんちょくを確認している。
 長は理解するように頷くと、何かを思い出したように、別のことを話しだした。

「そう。 例の8人は、どうなった?」

 8人? ……なんの話だろう? 長が聞くと、公的な人は何かをぐっとこらえるような顔をした。 俯いて、気持ちを押し殺すような声で答える。

「……巫女みこを行かせて、もとに戻しました」
「そう。 ……分かったわ、ありがとう」

 何の話だろう? ……もとに戻す? 巫女が? ……よく分からないが、なにか重大なことが起こったのかもしれない。 街の重要な人たちだけが、知ることのできる情報なんだろう。
 長は静かに頷くと、ねぎらいの言葉をかけていった。 公的な人は黙ってうなずくと、その場を立ち去っていく。


 歴史所は、研究棟の1階にある。 建物の全体から見て片側にあり、廊下をはさんで、反対側には『ことば所』という所がある。
 ことば所は、言語を扱うところだ。 外国の言葉もあるが、主なのはこの島の言葉についてだ。 1000年にわたって生きた時代に幅があるので、外国の言葉よりも、この島の内部の言葉について書かれた内容が多いのだ。

 今、ことば所の中は人であふれていた。 いつもの静かな様子とはうってかわって、夜だというのに騒がしい。 新たに降霊された人たちが、押し寄せているのだ。
 降霊されたばかりの人は、まずは言葉を覚えなきゃいけない。 時代によるが、意味が変化した言葉がたくさんあるので、それを確認しなければならないのだ。
 ここでも職員が一緒になって、資料を見ながら説明していた。 眠い目をこすりながら、あっちこっちから次々に質問が飛んできているみたいだ。 新たに降霊された人たちは文字が読めないから、余計に忙しい。
 中には興味半分で覗いている人もいるみたいだ。 騒がしいところに何となく集まって、レクレーションセンターみたいな雰囲気を味わいながら、隣の人と仲良くなっちゃったりしている。


 近くの廊下では、小春が歩いていた。 歴史所とことば所を左右に見ながら、何気ない感じで歩いている。
 ……あー、かったるいわね。 結局人探しは終わったらしいけど、無駄に走り回されたわ。 帰ってシャワーでも浴びようかしら。 きれいな風呂場でシャーッとね、優雅ゆうがに浴びたいわ。

 そんなことを思いながらふと横を見ると、ことば所の様子が目に入ってくる。
 ……私も降霊されたばっかの時は、何日かはここに通ったものよねえ。 ちっちゃくて初々ういういしくて、可愛かったのよあの頃。
 こんな街にいきなり引っ張り出されるなんて思ってないから、そりゃもう慌ててね。 だって800年前よ、私。 なーんにも無いところだったんだから、この街に初めて来た時、ビクビクしておびえてたのよ。
 ことば所に通って、歴史所にも行って、勉強会にもちょっとだけ通って……。 必死に勉強したけど、意味は無かったわね。 この街が大したことない街だって気づくまでには、時間はかからなかったわww ははっ!!w
 笑いながら、こんどは廊下の反対側を見ると、歴史所が目に入ってくる。 こっちも騒がしいわねえ、人が多くて奥の壁が見えないわよ。
 ……歌子も忙しくて、大変ねえ。 さっき会ってきたんだけど、ご飯を食べる暇もないってなげいてたわ。 弟くんや妹ちゃんが料理を作って、届けてくれてるみたいだけど。

 小春が歩いている廊下には、一人の男が座り込んでいた。 ボサボサの頭に悪すぎる目つきをギラつかせながら、目の前を通っていく小春に声をかけていく。

「おい」

 小春は何事も無かったかのように、通り過ぎようとする。
 ……ふふーん♪♪ そろそろ帰って寝るかしらね。 今日は疲れたーっ!! ふぅーーっ!!
 そんな小春に、男は顔をしかめてもう一度呼びかけていく。

「おい!」

 大声で呼び止められ、ようやく小春は気づいて振り返った。 足を止めて、きょとんとした顔で男をじっと見る。
 ……誰よ、あんた。 髪がボサボサで、ボロボロの服を着て、偉そうに股を開けて座り込んでるわね。 いい調子じゃない。

「ん? ……誰? あんた」
「おい、ちょっといいか。 お前、この時代の人間だろ」

 男はそういって、身を乗り出して聞いてくる。 聞きたいことでもあるような雰囲気だ、小春は応じて頷いていく。

「うん、そうだけど」
「この時代について聞きたいことがあるんだが、いいか」
「うーん……ま、いいけど。 何?」
「こっちにこい」

 男は腰を上げて立ち上がると、廊下を歩きだしていった。 結構長身だ、ボサボサの髪は背中まで垂れていて、もはや変な意地を感じる。 これを見るだけでも、この男の性格がねじ曲がっているのが容易に想像つくわね。 なははっww

「……何? ……感じ、悪いわね」

 小春はボソッと呟きながらも、男の後についていく。


 2人は外に出ると、街が見える高いところへと出ていった。 大量の明かりが街を照らしている夜景が見える。
 男はどうやら、この時代や街のことを細かく知りたいようだった。 歴史所で簡単な説明は受けたが、細かく知ることは出来なかったらしい。
 小春は、文字について詳しく聞かれた。 男は文字に強い関心を示しているようだった。 自分の生きていた時代には無かったらしく、しきりに質問を繰り返し、大した説明ができない小春に苛立っていた。
 幽霊と生身の違いについても、説明していった。 物に触れていないのに感触があることを、男は不思議がっていた。 実際には触れていないが、生きていた時の記憶があるから、さわったような感じがするのよ。 納得しなさい。 練習を積めば空を飛ぶことや、壁を通り抜けたりできるのよねえ。
 さらには政治のこと、この街のサービスについてなど、小春は話していった。

「……って感じで、まあ色々あるんだけど、やっぱり一番面白いのはお笑いよね。 で2番目は……」

 小春が元気な調子で話している。 その足元では男が草むらに座り込んで、街のほうを見ながら聞いていた。 態度は悪いが、真剣に聞いているみたいだ。 にらむように街を見つめていて、一体何を考えているんだろう?
 身動き一つせずに聞いていた男は、話の途中にいきなり鼻息を鳴らした。

「ふん。 ……なんだ、つまんねえな。 数百年たっても、その程度なのか」

 低い声をうならせ、悪態をつきだす。 突然のことに驚いて、小春は足元を見た。

「……え、なに?いきなり」

 そんなに私の話、つまらなかったのかしら。 うまく話せるとは思ってないけど……。
 眼下で男は、顔をこわばらせて睨むように街を見ながら続けた。

「それに、なんだ? 最近は、日常的には降霊しなくなってるって言ったか?」
「あぁ、そう。 霊ばっか増えても、生身の人の負担が、重くなるだけだしね。 まあ、しょうがないのよ。 ……ちょっと、寂しいけど」

 生身と幽霊は、お互いに出来ることが違うから、その数にはバランスがある。
 うーん、まあしょうがないわよねえ。 降霊は簡単にできるけど、生身の人は簡単には増えないんだし……。 赤ちゃんを産んで、少しずつ育てていって、初めて1人になるんだから。 そうでしょう?
 男は不満そうに息を吐きだし、大げさにため息をついた。

「はあ……。 つまんねえな、なんだ、ここは。 ……期待して、損したわ」

 不興ふきょうそうな顔を浮かべたまま立ち上がり、その場を立ち去ろうとする。 街の姿から目をそらして、苦々しい顔を浮かべている。

「はあ?! 何がそんなに、気に入らないの?」

 突然のことに小春はぎょっとして、慌てて男を追っていった。
 そりゃ、上手く説明できなかったかもしれないけど……。 お笑いもあるし、昔とは比較にならないぐらい音楽があるし……この街って、楽しいことで溢れてるじゃないっ!
 追っていく先で、男は立ち止まって振り返った。

「……お前、ここがこのままさかえ続けると、思ってんのか?」

 こっちを見て聞いてくる。 身動きせずにじっとしていて、真剣な表情だ。
 ……未来にも栄えていくかって? 当たり前でしょ、こんなの序の口よ! これからますます面白くなるに、決まってるじゃないっ!!
 小春は胸を張って答える。

「当たり前じゃない。 どっからどう見ても、イケイケどんどんよ」
「なわけねえだろ」

 男は鼻で笑うと、服のすそを返して歩きだした。 小春は呆然ぼうぜんとして、その後ろ姿を見つめる。
 ……この街に問題があるってことぐらい、聞いたことがある。 ふだん生活をする中で、そんな雰囲気を感じたことだってある。 でも、そんなに深刻なことなの?
 グルグルと頭の中に色んな考えがめぐり、街の中での出来事が思い出されてくる。 ……あぁもう、わけわかんなくなってきた。 ……っていうか、せっかく私が説明してあげたのに、あいつお礼も言って無くない?!
 小春は男の後姿うしろすがたを黙って見つめていたが、色々我慢の限界にきて、ついに声を上げた。

「ちょっとっ! 礼ぐらい、言いなさいっ!!」

 向こうに小さく見えていく男の背中は、聞こえたのか、礼を示すように、あしらうように軽く手を上げていった。
 残された小春は、かんかんになって怒りだす。

「なに、あいつ! むきーっ!! もういいわ、帰るわ! ……知らないわよ、あんなやつ!」

 小春はブチギレて、地面を踏み鳴らしながら歩きだした。 ドシドシと歩きながら、歴史所へと戻っていく。
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