幽霊だらけの古代都市!発達した呪術国家で、破滅的な未来なんて蹴り飛ばせっ! 幽霊たちと一緒に、ワクワクしながら元気に走り回るっっ!!!

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第六章 新しい街の始まり・初日

第59話 祭りの会議に行くわよっっ!!

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 一日が終わり、夕方になってきた。
 街は、混乱を終えての初日を乗り切ったようだ。 新しい人たちの仕事とか、住む場所を探したりなど色々あったようだが、何とかなったみたいだ。
 街の中には、ほっとしたような安堵感が流れている。 でも、ちょっと違う空気も感じられる。 刺激的で、新鮮で、不安定な感じ……。 日常は戻ってきたはずなのに、やっぱり違った風に見える。

 フワフワと浮いたような雰囲気の街を、小春が元気に走っていた。

 ふふふーん♪ 今日もいい一日だったわ。 市場で気持ち良く歌ったし、新しい都市伝説もたくさん見つかったし!
 さて、憶え屋にでも行ってみようかしら。 あいつ、どうなったかしらね……ほらあの、ボサボサの髪の目つきの悪い男よ。 ……誰だっけ? あそう、マツリよ。
 あいつは目つきは悪いけどねえ、意外と真面目に仕事するっていうのが、私の見立てなのよ。

 憶え屋の本社に近づいていくと、中から巫女みこのアマネが出てきた。

「あら、アマネ」
「んー」

 んーってなによ、相変わらず適当な返事ね。 ……というかアマネも、憶え屋を使うのね。 山の中に住んでるかと思ってたから、意外だわ。
 憶え屋に入ると、そろそろ店じまいかというところだった。 客の対応をしている人もいるが、片付けを始めている人も見える。

「はー! ……あ、いた」

 辺りをさらっと見ていくと、壁のほうにマツリがいた。 仕事を終えて、ゆっくりしながら壁を眺めているみたいだ。
 憶え屋の壁には、誰でも読んでいいし書き込んでいい『公開口座』が、並べて示されている。 そしてそれだけでなく、学習用の文字表も張り出している。 文字が読めない人が勉強するために、張り出したらしい。
 マツリは張り出された学習用の文字表と、公開口座を、ちらちらと視線を往復させて見比べているようだ。 まだ文字が読めないから、暗号を解読するみたいに、一文字ずつ確認していっているんだろう。
 物静かすぎるクルミが、そばに突っ立っているが、黙っているので相変わらず存在感がない。

「マツリー! ……どうだった? どんな調子よ?」

 小春は壁際に行くと、気さくにマツリの顔を下からのぞき込む。

「……ん? あぁ、お前か」

 壁のほうを見ていたマツリは、ちらっと目を下にやって小春を見ると、壁のほうに目を戻していった。
 ……へえ、ずいぶん熱心に、壁の文字表を眺めてるじゃない。 この街に来て初日なのに、もう文字憶えようとしてんのかしら。 この人、勉強熱心ねえ。

「あんた、文字憶えてんの?」
「そりゃそうだろ。 いずれ必要になるだろうよ」

 文字は便利だから、覚えられるなら覚えておいた方がいい。 憶え屋が発達したところで、いちいち人に聞かなきゃいけないから、面倒くさいのだ。

「まあ、そうね。 ……あ! それどころじゃないのよ、祭りよ、祭り!」
「あ? なんだ?」

 マツリは名前を呼ばれたと思ったのか、ぎょっとしたように振り向く。
 ……あぁいや、あんたのことじゃないんだけどね。 この時期になると、毎年やるお祭りがあるのよ。
 みんなで歌って踊って、夜まで騒いでね。 気分が盛り上がって、いい感じになるのよ。

「これから、祭りの会議があるのよ! あんたも、行くよっ」

 せっかくこの街に来たんなら、あんたも楽しみなさいっ!! 私はびしっと指を突きつけて、ポーズを決めてみせる。
 しかしマツリは顔をしかめて、面倒くさそうな顔をした。

「祭りー? ……はっ」

 そういって鼻で笑うと、また壁のほうをながめだす。 なんで俺がそんな下らねえことしなきゃいけねえんだよとか、考えてそうな顔ね。

「また、鼻で笑うわね。 結構面白いのよ?」

 夜まで騒いで、お酒を飲みまくって……。 街のふだんの宴会の、大規模バージョンみたいなもんね。 やってることは、大して変わんないんだけど。
 マツリは壁を眺めながら、相槌を打った。

「ふーん……何するんだ?」
「普通に、みんなで歌ったり踊ったり……」
「うわ、つまんね」

 苦い虫を食ったみたいに、マツリは顔をそむける。 あんた、相変わらず面倒くさい性格ねえ。 まったく、最近の若者は。 シャキッとしなさいよっ!

「ほらまた。 つまんないかどうかは、行ってみなきゃ分かんないじゃない! ……あ、ユメ」

 2人が雑談をしていると、向こうからユメが歩いてきていた。 店の奥から、廊下を通ってこっちに来る。 ちょっと疲れたような顔に見えるけど、気のせいよね。

「ユメも、祭りの会議行かない? 仕事、そろそろ終わるでしょ?」

 ユメはその場に来ると、ゆっくりと立ち止まっていった。 あーとか、んーとか、曖昧あいまいな声を出して考えながら、店の中を振り返っていく。
 憶え屋も少しずつ閉店に向かっているようだし、もういいかな。 仕事場を一通り眺めて、返事をしていく。

「うーん。 ……そうだね、行ってみようかな」
「よしきたっ!」
「おーい、呼んだか?」

 背後からの別の声に振り返ると、ミツバが来ていた。 憶え屋の入り口をくぐり、のんびりした足取りで歩いてくる。 来たわね! 私がさっき、伝言で呼んでおいたのよ。 みんなで祭りの会議に行くわよ!

「あ、ミツバ!」
「祭りの会議あるらしいけど、行くか?」

 ミツバもどこかで聞きつけたみたいだ、祭りの会議へと誘ってくる。 私は張り切って、腕を振るって声を上げた。

「もちろん、行くわよ! みんなで一緒に行きましょうっ! ほら、マツリ、行くわよ!」

 壁際に近づいて、マツリに声をかけていく。 ……だが、マツリは無視して壁のほうを眺め続けている。 ほらあんた、こっち見なさいっ!!

「マツリーーっっ!!!」

 私は渾身こんしんのわちゃわちゃ攻撃を開始した。 目の前で手をばたつかせて、ついでに無意味に足もバタつかせていく。
 マツリは顔をしかめてこっちを見た。

「うるっせえな、お前! なんだ、祭りの会議? はぁ……」

 ため息をつきつつも、マツリは壁から離れていった。 行く気があるみたいだが、かったるいように首を回しながら、格好つけている。

「よし! じゃあ、出発しんこーう!」

 まだまだ今日一日、終わってないわよっ!! 私は元気の有り余る体をビシバシと振って、先頭を歩いていく。



 小春やユメたちは、夕方の街を歩きだした。
 料理の煙が流れてくる道を、汁物しるものをすすりながら歩く人が通りがかっていく。 落ち着きないわねえ、食べる時ぐらい、座って食べなさいよ。
 先頭をズンズンと歩いていた私は、後ろを振り返った。

「そういえば、ユメ、あんたもなんか都市伝説探してるって聞いたけど」

 なんの都市伝説かは知らないけど、そういう話を耳にしたわよ。
 目線の先で、ユメは考えるように目を伏せる。 もったいぶったようにして、言いづらそうに答えた。

「あー……。 ……まあ、ちょっとね」

 なによ、ずいぶん歯切れ悪いわね。 ユメって、こういうとこあるのよねえ。 心の中で思ってることがあるのに、口に出さないっていうか……。
 私なんて、思ったこと全部言っちゃうのに。 言う必要のない時までポンポン出ちゃうんだから、ヤバいわよ。 どうしよう、第2病院にでも行こうかしら。
 横でユメは、ぼんやりと何かを考えているようだ。 思わせぶりな感じでうつむいて、うれいのある目をしている。 じつは晩ごはんのことしか考えてなかったら、ウケるわね。

「……ねえ、まだ殺人鬼のうわさ、流れてるみたいだね」
「え、そうなの?」

 思わず間抜まぬけな声で返事をしてしまう。
 いきなり、何? 殺人鬼って……。 昨日の混乱の中で、流れた噂のこと? でも、それはデマだったんでしょ。
 ……病院の包帯グルグル巻きのアキラが、私に忠告したらしいけど。 うーん、私も悪気わるぎは無かったんだけどねえ。 あわてたもんだから、しょうがないのよ、うん。
 適当に自分で言い訳していると、ユメが俯いたまま続ける。

「うん。 あと、城に誰かが置いてってた紙に書かれてたんだけど、なんか破滅はめつ的な未来がどうのとか……」

 また誰かがメモ紙を、城に置いてったの? ……名前は書かないで、しかも内容は破滅的な未来?!
 アキラ……あんた、いい加減にしなさいよ。 私にデマが云々うんぬんとか言ってるやつが、自分でデマ流してどうすんのよっ!
 ……え、まだデマだと決まってないって? アキラが書いたのかも、分からないって? そんなわけないでしょ、こんなの絶対デマよ!!

 見なさいよ、この明るさにあふれた街を!!!

 焼き魚を食べながら走ってるやつがいて、汁物を飛び跳ねながらすすってるやつがいて……だからあんたたち、落ち着いて食べなさいよ。
 マツリもなんか未来が暗いからもう終わりだみたいなこと言ってたけど、そんなことないのよっ!!!

「あー、もうっ! ……みんな、ちょっと混乱が起きたからって、乱れすぎなのよ。 未来なんて知らないわよ、世界は、今ここにしかないのよっ!」

 ビシッとそういって、ポーズを決めてみせる。
 そうよ! 私、いいこと言うじゃないっ!

 ……。 ……。 ……。 ……。

 ……あれ、誰も反応しないんだけど。 みんな黙り込んで、心なしか俯いている。 ……え、本当に破滅するの? マジ?
 私は冷めた空気に耐えかねて、ミツバのほうを見た。

「……ちょっと、なんか言いなさいよ」
「え? ……あぁ、まあ、そうだなw」

 そんなことを話していると、一行は降霊洞穴こうれいほらあなにたどり着いた。 よく分からないが、今回はここで祭りの会議をやるらしい。

「まったくもー……みんな、ノリ悪いわねえ」

 小春は口を尖らせながら、洞穴の中へと入っていく。

 降霊洞穴の中は、人で一杯だった。 昨日、歌子や雨子たちと入った時とは違い、辺りにはたくさんの人が歩いている。
 洞穴の中は明るくて、大量の火がともされていた。 人が多いのもあって、空気も暖かく感じる。
 入り口は少し高いところにあり、近くには大きな階段があった。 下りた先には広い平地のように開けた場所が見える。 平地部分からは、いくつか通り道があり、降霊洞穴の色んな場所へと行けるように繋がっている……ということだった。 みなもとなんかも、昨日行ったわね。

 一行は、下へ向かう階段を下り始めた。 横には階段に沿って、牢屋ろうやのような小部屋が続いている。 雨子が50年前に、巫女として修行していた時に使っていた部屋だ。 今日は人が多いからか、階段からわきにどけられてる感じで、暗い小部屋はほとんど存在感がない。
 後ろで歩くマツリは、大柄な体で階段を下りていきながら、辺りをきょろきょろと眺めている。 この場所の役割や機能なんかに、興味があったりするんだろうか。
 昨日来た時と比べて、人が多く行き来しているからか、階段が狭く感じられる。

「……ここって、こんな風に使う場所なの?」

 人をよけながら階段を下りていた小春が、ふと疑問に思ったことを口にした。
 見回すと、祭りの話し合いを前にして、人々は楽しそうに話している。 でも、ここは本来降霊術のための場所じゃないの?
 ユメが辺りを見回しながら、どうでもよさそうに答えた。

「いいんじゃない? どうせ放っておいたって、何にも使わないんだし」

 聞くところによると、50年前に降霊術の技術が発達してからは、全然使わなくなったらしい。 まあそうか、どうでもいいわね。

 階段を下りて、平地の部分に来た。 そこにはすでに多くの人が座り込んでいて、あちこちで話し声がしていた。 みな会議を前にして楽しそうだ。
 座る場所を探して歩いていく一行に、通りがかったおじさんが声をかけてくる。

「お! 小春ちゃん、久しぶり、元気そうだね」
「あ、おっちゃん! そうよ、私、元気しかないんだからっ」

 ポーズを決めてニカッと笑う小春を見て、おじさんは笑いながら通り過ぎていく。
 会場の後ろを進んで、座る場所を探していたミツバが、きょろきょろしながら言った。

「どこ座ろうか?」
「どこでもいいじゃん。 ……ここでいいよ」

 どうでもいいようにユメが言いながら、その辺で腰を下ろしていく。 それに続いて、他の人も適当に座っていった。 前のほうに張り出して小春が、その後ろにみんなが座るって感じだ。
 それぞれが座る場所を調整していると、いよいよ会議が始まった。
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