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第六章 新しい街の始まり・初日
第61話 ソラの200年前の回想
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座っている人たちの間を、よけるようにしてマツリは歩いていく。
マツリはこの街に来たばかりだから、知り合いは少ない。
昨日まで見ていた村も、友達も近所の人たちも、全員いきなり目の前から消えたのだ。 代わりになんだかよく分からない人たちが街を作っていて、目の前を歩き回っている……。 そんな感覚だ。
会議には、憶え屋の別の職員も参加しているようだった。 さっき、マツリが仕事をしている中で知り合った、仕事仲間だ。 話し相手は、まだこの人ぐらいしかいないのだ。
その人の横に行くと、マツリはどさっと座りながら、話しかけていく。
「なあ、あんた。 あんま詳しく知らないでやってたんだけどよ、憶え屋って、どういう仕組みなんだ? 公開とか、非公開とかって、あるみたいだけど」
どうやらマツリは、憶え屋の仕組みをもっと詳しく知りたいようだ。 祭りの会議の最中なのに、突然どうしたんだろう? それとも、何か目的があるんだろうか。
職員の人は、いきなり話しかけられて驚いているようだ。 だが理解したように頷くと、改めて憶え屋の仕組みを説明し始めた。
「あぁ、えっとね。 基本的に口座は、どんなようにも作れるようになってるんだよ。 公開するか否かもそうだけど、合言葉を設定するとかもね」
憶え屋の仕組みは、基本的にはネットと同じだ。 どんな情報を、どんなふうに使うこともできる。 掲示板を作って話し合ったり、個人のサイトを作ったり……。
憶え屋の壁に公開口座を張り出しているのは、他の人にサイトがあることを知らせる役割があるから、『go〇gle chrome』や『internet ex〇lorer』のような『ブラウザ』と機能は似ている。
サイトを公開にするかどうかも自由に決められるし、入るためのパスワードを設定することもできる。
「そういうことか。 だから、合言葉ありとか、壁の所に書いてたのか」
「そう。 ……他にも、スズネちゃんが作った、『時間によって見える内容が変わるようにする』とか、『部屋と考えて、見た目を設定する』……とかも出来るし。 まあ、考えられる限り、何でもできるよ」
スズネが作ったのは、『時間によってコンテンツが変わるサイト』や、『部屋の写真が貼られているサイト』と同じことだ。 部屋の見た目が立体的に作られていれば、VR……仮想空間ととらえることもできるかもしれない。
話していると、別のほうから小春がやってきた。 気になってきたんだろうか、座っている人々の間を縫って歩いてくる。
小春は近くに来ると、興味があるように座っていった。
隣に座っていく小春をよそに、マツリは考える。
時間によって内容を変えられて、部屋のように見た目を設定できて……。 考えられる限り、本当に何でも出来るんだな。 おもしれえじゃねえか、憶え屋!! やっぱり俺の勘は、正しかったぜ。 フォォォォッッッ!!!!!ww
それだけ自由にできるなら、危ないこととかヤバいことも色々出来そうだな。
誰でも入れるけど、公開にはなってない『裏サイト』みたいなのも作れるってことじゃねえのか?
陰で誰かの悪口を言ったり、ヤバい情報を取引したり……。 そんなことも、やろうと思えば出来るってことだ。
……え? 俺がそういうことをやるのかって? 馬鹿野郎、やるに決まってんだろ。 俺を誰だと思ってんだ、この野郎。
「……じゃあ、誰でも入れるけど、おもてには出てないやつ……とかは、あるのか?」
俺は、しれっと自然に聞いてみる。 職員はなんとなしに頷いた。
「うん、あるよ」
「あぁ、やっぱりあるのか。 ……具体的には、どんな?」
「……何? 何の話?」
きょとんとした表情の小春が、興味があるように聞いていく。 一緒に話に入ろうとするが、会話はそのまま続いて無視された。
職員は、既に作られている『裏サイト』を説明していく。
「あぁ。 ……えっと、例えば歌子ちゃんなんかは、他の所から辿れるようにして、たくさん作ってるね。 『生け贄の体験談を募集します』とか、『奴隷《どれい》の体験談を聞きたい』とか……」
「えぇ、そんなことしてんの、歌子」
横で小春が、ドン引きしたように言う。
朝、憶え屋の中で直接書き込んでいた歌子……。 怪しいことをしている雰囲気だったが、どうやら裏サイトを大量に作っていたらしい。 好奇心が強いのも、困ったものだ。
マツリは、ふたたび考える。
……ほら、やっぱりな。 ヤベえこと考えるやつなんて、どこにでもいるんだよ。
ところで、今こいつ、さらっと重要なこと言ったな。 『他のところから辿れるようにして』……?
検索しても表示されないのに、別のところからこっそり行けるようになってるサイトってことだな。
なるほど、勉強になるぜ。 まさに裏サイト。 クールな俺にふさわしいぜ。
職員が、思い出したように続ける。
「あ、スズネちゃんも、そういえば作ってたな。 『東の海の近くの洞穴について、何か知ってる人いませんか』……って」
なんと、スズネまで作っているらしい。
東の海の近くの洞穴といえば、精神科の患者を探して入ったところだ。 夕方も深くなり、薄暗い中で入っていった、海の近くにあった洞穴……。
中でナツミにぶつかりそうになって叫んだり叫ばれたり、自殺のことを聞かれそうになってスズネが勝手に動揺したり……。
……あの洞穴のことを、スズネは気になっているんだろうか。
「東の洞穴? ……中身はどんななんだ?」
マツリが、その話題に反応した。 ぴくっと眉を動かして、神妙な面持ちになる。
どうしたんだろうか、何か自分に関係あることなんだろうか?
マツリの生きていた時のことについては、まだ何もわかっていない。 生きていた時代や、場所なども、マツリは不明なことだらけだ。
職員は再びそらを見て、眉間にしわを寄せて思い出していった。 すでにその話題には、情報提供がされているようだ。
「えーっと……『今日は、降霊洞穴に行ったべ。 あの地下道は通りにくいように見えるけど、じつは別の所に、もっと行きやすい道があるんだ。 昔の誰かが、作ったみたいだな。 降霊洞穴に、こっそりみんなで地下から行ったら、巫女さんたちも協力してくれるって言って、食べ物を分けてくれたよ』……って」
何の話だろう? ……降霊洞穴? 地下道……巫女?
聞いた感じでは、情報提供したのはソラのようだ。 200年前に生け贄で死んだ、不思議な装いをした、遠い地方の話し方のソラ……。
日記の形で、当時を振り返るように答えたんだろうか。
内容を見てみると、どうだろう……?
地下道というのは、前に、歌子やスズネたちみんなで探検した地下道のことだろう。 岩と岩の隙間が通りにくかったりなど、共通点が見られる。
みんなで探検した時に入った洞窟は、西の海にある。 地下道はそこから島を一直線に通って、東の洞穴まで繋がっているということだろう。
この日記の中では、ソラは東の洞穴から、逆に向かっていったことになる。
……だが、降霊洞穴に行く? 巫女たちが食べ物を分けてくれた?
ソラは200年前の、災害が多発したときに生きていた人だ。 当時、村は、食料がとれずに飢えていたというから、その話だろうか。
山でナツミが最初に降霊された時のことを思い出す。 あのときナツミは、ソラを探しているようだった。 200年前に一緒に生きていた、友達だったんだろう。
『みんなで降霊洞穴に行った』の『みんな』とは、ナツミたちのことを指すんだろうか?
……しかし、それでも変な感じだ。
そもそも彼らは、一体何をしているんだろう?
ソラは最終的に生け贄になって海へ飛び降りて死んだのだから、その直前の時期の話だろうか。
東の洞穴……。 こっそり行く? 協力……食べ物を分けてくれた?
よく分からないが、ソラたちは、まるで何かから隠れるように生きているみたいだ。
「……どういうこと? 何の話?」
小春は話を聞きながら、きょとんとした顔をしている。
一方でマツリは、じっと黙り込んで、今までにないほど真剣な顔になっていた。 顔の前で、手をひらひらと動かしてみるが、即座に払いのけられる。
もしかして、マツリは200年前の出身者なんだろうか? ソラとも知り合いで、東の洞穴の話にも関わってるとか……。 この真剣さを見ると、そんなようにも思えてくる。 もしそうだとしたら、ナツミたちとも知り合いなのかもしれないが……、まだそれは分からない。
近くには、ミツバとクルミも移動してきた。 向こうには、周りに誰もいなくなっても頑張っているユメがぽつんと一人でいるが、置いてきたらしい。
周囲の動きをよそに、マツリは考えている。 眉をぐぐっと吊り上げて、かつてないほど真面目な顔だ。
……俺はこの情報提供者と連絡を取りたい。 だが、どうするか?
ただの伝言で連絡を取り合うのは、問題がある。
5時に伝言を頼んだとしたら、職員が街を走って20分で相手を見つけ、5時20分に相手が伝言を聞く。 これは、逆に言えば5時20分以外には伝言を聞けないということだ。
例えばトイレでうんこを1時間ぐらい踏ん張って、6時にスッキリして街に戻ってきたとしたら? 40分もたてば職員は諦めて、もう別の仕事をしている。
憶え屋も意外と適当にやってるから、伝言相手が見つからなかったら、伝えないまま終わることもあるんだぜ。 ……なるべく伝えるように、努力してるみたいだがな。
それに対して、口座の中で会話をするって手段もある。 要は、ネットの掲示板でチャットするようなもんだな。 これだと記録がしっかり残るから、お互いに聞き漏らすことはない。
自分が好きな時に口座を開けるから、落ち着いてやり取りができる。 仮に10時間トイレで粘って踏ん張りまくったとしても、次の日にゆっくり確認すればいいからな。
伝える速さが早いのは、伝言。 確実性なら、口座での会話。 そんな風に考えられるってわけだな。
そんなことを考えつつ、マツリは再び職員に聞く。
「個室を作るって出来るか? ……人を呼び出して、そこで2人で話すとか」
今回は確実性を重視して、口座でのやり取りをしたい。
個室を作れれば、2人だけでチャットできる。 公開してしまうと、他のやつが会話にまじってくるからな。
「うーん……それなら、口座をまず非公開にして、合言葉を作って、相手に口座の存在と合言葉を伝える……とか?」
「……え、そんな面倒くさいことするの? なんで。 堂々としなさいよ、あなた」
小春が、理由も知らずにズイズイと押していくが、マツリは相変わらず無視する。
「そうか。 ……じゃ、一つ口座作ってみるか」
「もしもし? ……おーい」
小春が手を振ると、やっとマツリがこっちを見た。 独り言を言うように、自分の思っていることを呟く。
「多分知ってるやつだから、呼び出してみる」
「はあ」
そうこうしてると、祭りの会議がもう終わりかけていた。 最後の挨拶とかやってるが、もうみんな解散しかけている。
よく見れば、ユメも1人で、静かに退散していってる。 司会の人がかわいそうだろ、最後まで聞こうぜ。
会場を眺めていたミツバは、マツリのほうを見た。
「結局、祭りの案、どうすんだ?」
マツリはそれを聞き、目をパチパチさせた。 今気づいたぜ、みたいな感じだ。
結局ソラと知り合いらしいから、マツリは200年前に生きていたんだろう。 途中から200年前の話になって、祭りのことは忘れていたんだろうか。
マツリは不満がまだくすぶっているような表情で、ふんと鼻息を鳴らしながら、どこか別のほうに目をやる。
小春がそんな様子を見て、思いついたように言った。
「じゃあ、委員会に立候補したら? そしたら、自分で案出していけるじゃん」
「はあー? なんでそんなこと、俺がしなくちゃいけねえんだよ」
マツリは突っかかるように、顔をしかめてぼやく。
……面倒くさいことはやりたくないって? あんた、子供ねえ。
「でも、そうしないと面白くならないよ?」
「……あぁ、分かった」
マツリはもう一度鼻息を鳴らすと、しょうがないというように頷いた。 意外と物分かりはいいらしい。
向きを変えて、司会の人たちが集まっているほうへと歩いていく。
「すいません」
司会をしていた人に話しかけていくと、そのおじさんは振り返った。 気のよさそうなおじさんだ。
途中で発言したマツリのことは憶えていたらしい。
「あぁ、君か。 ……どうした?」
「俺も、祭りの進行に入れてもらえませんか」
マツリはそういって、お願いの言葉を言う。 かなり頑張っているのだろうが、顔はしかめたままで、眉が吊り上がったままだ。 相変わらず不機嫌オーラは隠せていない。
司会の人はきょとんとした様子だったが、すぐに頷いた。
「あぁ、いいよ。 考える頭は、たくさんあったほうがいいしな」
どうやら受け入れてもらえたらしい、なんて優しいんだ。
近くにいた他の人たちも、こっちの会話に入ってきた。 同じように祭りの委員会をやってる人たちだろう、同じように賛同してくれる。 あぁ、優しい世界。
「そうだな。 まあ、さっきのは実現できるかは分からんが、面白くしたいと思うのは、みんな同じだよ」
「……ありがとうございます」
マツリは目つきの悪い顔のままだが、小さく頭を下げた。 一応、最低限の礼節はあるらしい。
そんな様子を、少し離れたところから小春やミツバたちが眺めていた。
「なんだ、やれば、ちゃんと出来るじゃない」
「まあ、そりゃそうだろうよw」
なんだかんだ言って、マツリはそんなにめちゃくちゃな奴には見えない。 普段から理性で抑えているからこそ、いちいち不満を漏らすのかも。
「あとは、案を考えつくだけだな。 ……俺も、考えるかな」
「そうよ、私たちも考えましょ! あ、おじさんっ! ちょっと話があるんだけど……」
さっそく案を思いついたみたいだ。 小春はやる気になって、委員会の人たちのところへ走っていく。
マツリはこの街に来たばかりだから、知り合いは少ない。
昨日まで見ていた村も、友達も近所の人たちも、全員いきなり目の前から消えたのだ。 代わりになんだかよく分からない人たちが街を作っていて、目の前を歩き回っている……。 そんな感覚だ。
会議には、憶え屋の別の職員も参加しているようだった。 さっき、マツリが仕事をしている中で知り合った、仕事仲間だ。 話し相手は、まだこの人ぐらいしかいないのだ。
その人の横に行くと、マツリはどさっと座りながら、話しかけていく。
「なあ、あんた。 あんま詳しく知らないでやってたんだけどよ、憶え屋って、どういう仕組みなんだ? 公開とか、非公開とかって、あるみたいだけど」
どうやらマツリは、憶え屋の仕組みをもっと詳しく知りたいようだ。 祭りの会議の最中なのに、突然どうしたんだろう? それとも、何か目的があるんだろうか。
職員の人は、いきなり話しかけられて驚いているようだ。 だが理解したように頷くと、改めて憶え屋の仕組みを説明し始めた。
「あぁ、えっとね。 基本的に口座は、どんなようにも作れるようになってるんだよ。 公開するか否かもそうだけど、合言葉を設定するとかもね」
憶え屋の仕組みは、基本的にはネットと同じだ。 どんな情報を、どんなふうに使うこともできる。 掲示板を作って話し合ったり、個人のサイトを作ったり……。
憶え屋の壁に公開口座を張り出しているのは、他の人にサイトがあることを知らせる役割があるから、『go〇gle chrome』や『internet ex〇lorer』のような『ブラウザ』と機能は似ている。
サイトを公開にするかどうかも自由に決められるし、入るためのパスワードを設定することもできる。
「そういうことか。 だから、合言葉ありとか、壁の所に書いてたのか」
「そう。 ……他にも、スズネちゃんが作った、『時間によって見える内容が変わるようにする』とか、『部屋と考えて、見た目を設定する』……とかも出来るし。 まあ、考えられる限り、何でもできるよ」
スズネが作ったのは、『時間によってコンテンツが変わるサイト』や、『部屋の写真が貼られているサイト』と同じことだ。 部屋の見た目が立体的に作られていれば、VR……仮想空間ととらえることもできるかもしれない。
話していると、別のほうから小春がやってきた。 気になってきたんだろうか、座っている人々の間を縫って歩いてくる。
小春は近くに来ると、興味があるように座っていった。
隣に座っていく小春をよそに、マツリは考える。
時間によって内容を変えられて、部屋のように見た目を設定できて……。 考えられる限り、本当に何でも出来るんだな。 おもしれえじゃねえか、憶え屋!! やっぱり俺の勘は、正しかったぜ。 フォォォォッッッ!!!!!ww
それだけ自由にできるなら、危ないこととかヤバいことも色々出来そうだな。
誰でも入れるけど、公開にはなってない『裏サイト』みたいなのも作れるってことじゃねえのか?
陰で誰かの悪口を言ったり、ヤバい情報を取引したり……。 そんなことも、やろうと思えば出来るってことだ。
……え? 俺がそういうことをやるのかって? 馬鹿野郎、やるに決まってんだろ。 俺を誰だと思ってんだ、この野郎。
「……じゃあ、誰でも入れるけど、おもてには出てないやつ……とかは、あるのか?」
俺は、しれっと自然に聞いてみる。 職員はなんとなしに頷いた。
「うん、あるよ」
「あぁ、やっぱりあるのか。 ……具体的には、どんな?」
「……何? 何の話?」
きょとんとした表情の小春が、興味があるように聞いていく。 一緒に話に入ろうとするが、会話はそのまま続いて無視された。
職員は、既に作られている『裏サイト』を説明していく。
「あぁ。 ……えっと、例えば歌子ちゃんなんかは、他の所から辿れるようにして、たくさん作ってるね。 『生け贄の体験談を募集します』とか、『奴隷《どれい》の体験談を聞きたい』とか……」
「えぇ、そんなことしてんの、歌子」
横で小春が、ドン引きしたように言う。
朝、憶え屋の中で直接書き込んでいた歌子……。 怪しいことをしている雰囲気だったが、どうやら裏サイトを大量に作っていたらしい。 好奇心が強いのも、困ったものだ。
マツリは、ふたたび考える。
……ほら、やっぱりな。 ヤベえこと考えるやつなんて、どこにでもいるんだよ。
ところで、今こいつ、さらっと重要なこと言ったな。 『他のところから辿れるようにして』……?
検索しても表示されないのに、別のところからこっそり行けるようになってるサイトってことだな。
なるほど、勉強になるぜ。 まさに裏サイト。 クールな俺にふさわしいぜ。
職員が、思い出したように続ける。
「あ、スズネちゃんも、そういえば作ってたな。 『東の海の近くの洞穴について、何か知ってる人いませんか』……って」
なんと、スズネまで作っているらしい。
東の海の近くの洞穴といえば、精神科の患者を探して入ったところだ。 夕方も深くなり、薄暗い中で入っていった、海の近くにあった洞穴……。
中でナツミにぶつかりそうになって叫んだり叫ばれたり、自殺のことを聞かれそうになってスズネが勝手に動揺したり……。
……あの洞穴のことを、スズネは気になっているんだろうか。
「東の洞穴? ……中身はどんななんだ?」
マツリが、その話題に反応した。 ぴくっと眉を動かして、神妙な面持ちになる。
どうしたんだろうか、何か自分に関係あることなんだろうか?
マツリの生きていた時のことについては、まだ何もわかっていない。 生きていた時代や、場所なども、マツリは不明なことだらけだ。
職員は再びそらを見て、眉間にしわを寄せて思い出していった。 すでにその話題には、情報提供がされているようだ。
「えーっと……『今日は、降霊洞穴に行ったべ。 あの地下道は通りにくいように見えるけど、じつは別の所に、もっと行きやすい道があるんだ。 昔の誰かが、作ったみたいだな。 降霊洞穴に、こっそりみんなで地下から行ったら、巫女さんたちも協力してくれるって言って、食べ物を分けてくれたよ』……って」
何の話だろう? ……降霊洞穴? 地下道……巫女?
聞いた感じでは、情報提供したのはソラのようだ。 200年前に生け贄で死んだ、不思議な装いをした、遠い地方の話し方のソラ……。
日記の形で、当時を振り返るように答えたんだろうか。
内容を見てみると、どうだろう……?
地下道というのは、前に、歌子やスズネたちみんなで探検した地下道のことだろう。 岩と岩の隙間が通りにくかったりなど、共通点が見られる。
みんなで探検した時に入った洞窟は、西の海にある。 地下道はそこから島を一直線に通って、東の洞穴まで繋がっているということだろう。
この日記の中では、ソラは東の洞穴から、逆に向かっていったことになる。
……だが、降霊洞穴に行く? 巫女たちが食べ物を分けてくれた?
ソラは200年前の、災害が多発したときに生きていた人だ。 当時、村は、食料がとれずに飢えていたというから、その話だろうか。
山でナツミが最初に降霊された時のことを思い出す。 あのときナツミは、ソラを探しているようだった。 200年前に一緒に生きていた、友達だったんだろう。
『みんなで降霊洞穴に行った』の『みんな』とは、ナツミたちのことを指すんだろうか?
……しかし、それでも変な感じだ。
そもそも彼らは、一体何をしているんだろう?
ソラは最終的に生け贄になって海へ飛び降りて死んだのだから、その直前の時期の話だろうか。
東の洞穴……。 こっそり行く? 協力……食べ物を分けてくれた?
よく分からないが、ソラたちは、まるで何かから隠れるように生きているみたいだ。
「……どういうこと? 何の話?」
小春は話を聞きながら、きょとんとした顔をしている。
一方でマツリは、じっと黙り込んで、今までにないほど真剣な顔になっていた。 顔の前で、手をひらひらと動かしてみるが、即座に払いのけられる。
もしかして、マツリは200年前の出身者なんだろうか? ソラとも知り合いで、東の洞穴の話にも関わってるとか……。 この真剣さを見ると、そんなようにも思えてくる。 もしそうだとしたら、ナツミたちとも知り合いなのかもしれないが……、まだそれは分からない。
近くには、ミツバとクルミも移動してきた。 向こうには、周りに誰もいなくなっても頑張っているユメがぽつんと一人でいるが、置いてきたらしい。
周囲の動きをよそに、マツリは考えている。 眉をぐぐっと吊り上げて、かつてないほど真面目な顔だ。
……俺はこの情報提供者と連絡を取りたい。 だが、どうするか?
ただの伝言で連絡を取り合うのは、問題がある。
5時に伝言を頼んだとしたら、職員が街を走って20分で相手を見つけ、5時20分に相手が伝言を聞く。 これは、逆に言えば5時20分以外には伝言を聞けないということだ。
例えばトイレでうんこを1時間ぐらい踏ん張って、6時にスッキリして街に戻ってきたとしたら? 40分もたてば職員は諦めて、もう別の仕事をしている。
憶え屋も意外と適当にやってるから、伝言相手が見つからなかったら、伝えないまま終わることもあるんだぜ。 ……なるべく伝えるように、努力してるみたいだがな。
それに対して、口座の中で会話をするって手段もある。 要は、ネットの掲示板でチャットするようなもんだな。 これだと記録がしっかり残るから、お互いに聞き漏らすことはない。
自分が好きな時に口座を開けるから、落ち着いてやり取りができる。 仮に10時間トイレで粘って踏ん張りまくったとしても、次の日にゆっくり確認すればいいからな。
伝える速さが早いのは、伝言。 確実性なら、口座での会話。 そんな風に考えられるってわけだな。
そんなことを考えつつ、マツリは再び職員に聞く。
「個室を作るって出来るか? ……人を呼び出して、そこで2人で話すとか」
今回は確実性を重視して、口座でのやり取りをしたい。
個室を作れれば、2人だけでチャットできる。 公開してしまうと、他のやつが会話にまじってくるからな。
「うーん……それなら、口座をまず非公開にして、合言葉を作って、相手に口座の存在と合言葉を伝える……とか?」
「……え、そんな面倒くさいことするの? なんで。 堂々としなさいよ、あなた」
小春が、理由も知らずにズイズイと押していくが、マツリは相変わらず無視する。
「そうか。 ……じゃ、一つ口座作ってみるか」
「もしもし? ……おーい」
小春が手を振ると、やっとマツリがこっちを見た。 独り言を言うように、自分の思っていることを呟く。
「多分知ってるやつだから、呼び出してみる」
「はあ」
そうこうしてると、祭りの会議がもう終わりかけていた。 最後の挨拶とかやってるが、もうみんな解散しかけている。
よく見れば、ユメも1人で、静かに退散していってる。 司会の人がかわいそうだろ、最後まで聞こうぜ。
会場を眺めていたミツバは、マツリのほうを見た。
「結局、祭りの案、どうすんだ?」
マツリはそれを聞き、目をパチパチさせた。 今気づいたぜ、みたいな感じだ。
結局ソラと知り合いらしいから、マツリは200年前に生きていたんだろう。 途中から200年前の話になって、祭りのことは忘れていたんだろうか。
マツリは不満がまだくすぶっているような表情で、ふんと鼻息を鳴らしながら、どこか別のほうに目をやる。
小春がそんな様子を見て、思いついたように言った。
「じゃあ、委員会に立候補したら? そしたら、自分で案出していけるじゃん」
「はあー? なんでそんなこと、俺がしなくちゃいけねえんだよ」
マツリは突っかかるように、顔をしかめてぼやく。
……面倒くさいことはやりたくないって? あんた、子供ねえ。
「でも、そうしないと面白くならないよ?」
「……あぁ、分かった」
マツリはもう一度鼻息を鳴らすと、しょうがないというように頷いた。 意外と物分かりはいいらしい。
向きを変えて、司会の人たちが集まっているほうへと歩いていく。
「すいません」
司会をしていた人に話しかけていくと、そのおじさんは振り返った。 気のよさそうなおじさんだ。
途中で発言したマツリのことは憶えていたらしい。
「あぁ、君か。 ……どうした?」
「俺も、祭りの進行に入れてもらえませんか」
マツリはそういって、お願いの言葉を言う。 かなり頑張っているのだろうが、顔はしかめたままで、眉が吊り上がったままだ。 相変わらず不機嫌オーラは隠せていない。
司会の人はきょとんとした様子だったが、すぐに頷いた。
「あぁ、いいよ。 考える頭は、たくさんあったほうがいいしな」
どうやら受け入れてもらえたらしい、なんて優しいんだ。
近くにいた他の人たちも、こっちの会話に入ってきた。 同じように祭りの委員会をやってる人たちだろう、同じように賛同してくれる。 あぁ、優しい世界。
「そうだな。 まあ、さっきのは実現できるかは分からんが、面白くしたいと思うのは、みんな同じだよ」
「……ありがとうございます」
マツリは目つきの悪い顔のままだが、小さく頭を下げた。 一応、最低限の礼節はあるらしい。
そんな様子を、少し離れたところから小春やミツバたちが眺めていた。
「なんだ、やれば、ちゃんと出来るじゃない」
「まあ、そりゃそうだろうよw」
なんだかんだ言って、マツリはそんなにめちゃくちゃな奴には見えない。 普段から理性で抑えているからこそ、いちいち不満を漏らすのかも。
「あとは、案を考えつくだけだな。 ……俺も、考えるかな」
「そうよ、私たちも考えましょ! あ、おじさんっ! ちょっと話があるんだけど……」
さっそく案を思いついたみたいだ。 小春はやる気になって、委員会の人たちのところへ走っていく。
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ユーゴ・タカトー。
それは、女神の「推し」になった男。
見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。
彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。
彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。
その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!
女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!
さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?
英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───
なんでもありの異世界アベンジャーズ!
女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕!
※不定期更新。
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