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第七章 鬼退治とお泊りパーティー
第74話 ヒノキとの話!
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2階のある大きな部屋では、歌子たちが服作りをしていた。 広い部屋の中に、辺り一面に布が広げられている。 あまり馴染みがない人も参加しているみたいだ。
最初に服を作ろうと言い出したのは、じつはユメだった。
近年は、色々なものの流行の移り変わりは緩やかになっている。 服もその一つで、昔はデザインの流行の変動が激しかったが、ここ数十年はあまり変わっていない。
そんな退屈な状況を見て、ユメは変化が欲しいと思ったのかもしれない。
部屋の中は、ワイワイと楽しそうな雰囲気の中で服作りが行われていた。 床に色々な布地を広げて、どんなデザインにするかなどを考えているようだ。
雨子やホナミたちも雑誌作りをやめたのか、服作りに参加している。 雨子はどれだけ個性的な服を作れるか、自分の中で競っているみたいだ。 めちゃくちゃな模様が目の前に広がっていて、うーんと探偵のように唸っている。
部屋の向こうには、外に面したところに大きなテラス部分があった。 夜の景色が見えていて、涼しい空気が感じられる。
テラス部分には、スズネがいた。 服作りの途中で休憩でもしているのか、一人でぼうっとしている。
……あぁ、今日も楽しかったな。 朝の仕事が終わったら、歌どころに小春たちが来て。 小春が通貨量を報告してないとかで怒鳴られたり。 鬼探しで潜入してたら、小春の叫び声が聞こえたり。 城に帰ったら、小春火山が爆発したり。
……あれ、小春ばっかじゃんw 相変わらず小春は元気いいなあ、私も負けてらんないよ、ははっ!!w
そんな感じで一日を思い返していると、気さくな男がやって来た。
「よっ」
「あぁ、ヒノキくん」
見ると、来たのは声のデカいヒノキだった。 軽い身のこなしで歩いてくると、近くに腰を下ろしてくる。
私は200年前には、ヒノキくんと話したことは無い。 全く同じ時代に生きていたのに、場所が離れて住んでいたから知り合いではなかったのだ。
ほとんど初めて話すのに、色んな時代の人たちで溢れてる現代の環境の中では、妙に親近感があって……。 ちょっと、不思議な感じなのだ。
隣に座ったヒノキは、同じ方向を見て外の景色を眺め始めた。 一呼吸おいて、唐突に言う。
「……お前、自分で死んだんだってな」
よーっし、来たぁぁーぅっっ!!!!wwww こういう話を振られるのは、もう慣れたぜっっ!!!!!ww
……と思いたいけど、やっぱり無理だ。 なんでみんな、そんなに無神経に、ズカズカ聞いてくるんだろう。
そんな思いを振り払って、私は普通な感じで頷く。
「あぁ、うん」
「うーん……」
ヒノキは唸るように声を出すと、黙っていった。
些細なことでも、馬鹿みたいに落ち込んでしまう。 なんてことないことを言われても、激しく動揺してしまう。
振り返れば、私はいつもそんなことばかりだ。 後から考えればどうでもいいことなのに、その時は感情で頭がいっぱいになってしまう。
それで自殺までしちゃうなんて……。 変だよねえ、私も変だと思うんだ。 だけど同時に、自分にとってはすごく普通のことなんだけど。
少し黙った後、私は気になっていたことを聞いてみた。
「ねえ、ソラちゃんって、どんな人なの?」
「ソラ?」
「うん。 ……今日、ここに来るかなと思ったけど、来なかったから」
そういって、私は振り返って部屋のほうを見る。 みんなが服を作っていて、ワイワイしていて楽しそうだ。 ……あ、今ユメとナツミが部屋に入ってきた。 2人も服を作るのかな。
「あぁ、そうか。 ……うーん、どういう人ねえ……」
質問を振られて、ヒノキは考えるように黙り込む。
考えてみれば、私はソラのことをほとんど知らない。 憶え屋で見る限りでは、素直で、カラッと乾いたような性格だってことはなんとなくわかるけど……。
200年前に生きてた時は、住んでる場所が違ったから知らなかったし。 生け贄に進み出て、自ら海に飛び降りて……。 大きなことは、結局それぐらいしか知らないんだ。
ソラが話す内容は、最近はますます分からなくなってきた。 200年前のことを話していると思ったら、現代のことを話して……かと思ったら、50年前の街の様子なんかも話すのだ。
他の人がソラを見たという目撃情報もあるけど、なぜかピンとこない。 ちょっとイメージが違ったり、同時に別の場所で目撃されてたり……。 一体ソラがいつどこで、どんな風に生きているのか分からなくなる。
200年前に海に飛び降りた時、姿が忽然と消えたみたいだったという話だった。 そんなことまで聞くと、まるで幻の女の子のようにも思えてくる。
さっきも、城の大きな談話室で、またソラが置いていった日記を見つけた。
……そんなに気になってるなら、連絡とればいいじゃんって? うーん、でもなんか気恥ずかしいんだよなあ。
それにソラって、私には興味ないような気がするんだよね。 なんとなくだけどさ。
「……自分で、生け贄に進み出たって、聞いたけど」
私が呟くように言うと、ヒノキは当時を思い出すように答えた。
「あぁ、そうだ。 ……俺は、反対したんだけどな」
「そうなの?」
村が下した決定に、反対意見を言って口論するヒノキ……。 私はその時には死んでたから、直接見たわけではない。 だけど当時の村の雰囲気を知っているから、そんな光景がありありと脳裏に浮かぶ。
ヒノキは苦々しい顔を浮かべながら、頷いた。
「ああ。 だけど、大人はやるって言い張ってたし……ソラも、なぜか積極的だったからな」
「積極的?」
積極的って、何? ……自分が死ぬのに、積極的に進み出ていくの?
……意味が分からない。 ますますソラのことが分からなくなる。
横のヒノキも首をかしげていて、不思議そうだ。
「うーん。 俺も、あいつのこと、よく分かんねえんだよな。 死に抵抗が無いっていうか……みんなのために死ぬとか、そんな風にも見えないんだけどな」
死に抵抗がない……。 うーん、そんな人なんだ。 クルミとは、違うタイプなのかな……。
あ、物静かすぎるクルミも、生け贄で死んだらしいんだ。 1000年前らしいけど。 理由を聞いたら、みんなのために死ぬのが嬉しかったとか、言ってたんだよね。 なにそれ、意味わかんないんだけどw
……ほんと、なんでみんな、そんなので死ねるんだろう。
少し黙った後、私は自分に目を向けてみた。 もし私が同じ状況にいたら、どうするんだろう?
そう想像しながら、思ったことをそのまま話してみる。
「……私はさ、自分で死んだけど、本当は生きたがりなんだよ。 そんな状況になったら、どうやったって生き延びたいって思う。 それに、みんなのために死ぬとか、絶対に嫌だし」
自分で言って、やっと気づいた。 そうか、私は生きたがりなんだ。 自分で死んだのに、生きたがりなんだ。
私がソラを気にしてしまうのは、ソラがそうじゃないからかもしれない。
隣のヒノキはニヤッと笑った。
「ま、人それぞれなのかもな。 あいつにもあいつなりの、理由があるんだろ。 俺も、全然分かんねえけどw」
ヒノキは体を伸ばして笑う。 それを見て、私は気が抜けて笑いがこぼれた。
……そうだよ、分かるわけがない。 別に、分からなくてもいいのかもしれない。 どうせ私は、ソラとは違うんだから。
私はなんだか安心したような気分でいると、ふと頭によぎるものがあった。
「あ。 そうだ、200年前のソラちゃんって、なんで消えたんだろう?」
海に飛び降りたソラの姿は、直後に探したけどどこにもなかった……。 情報提供してくれた人の話によると、そういうことだった。
ヒノキは何の話か分からないようだ、きょとんとして聞き返してくる。
「え? 消えた?」
「うん。 なんか飛び降りた後に、死体が見つからなかったって……」
それを聞いて、ヒノキは思い出したように笑った。
「あぁ! あれは俺らが、助けたんだよw」
「え?! 助けた?」
「あぁ。 下でちょいと仕掛けを作って、落ちてくるソラを、さらったんだ」
トランポリンみたいなのを下に作って、ドサッとソラが落ちてきたってことだろうか。 一緒にマツリやナツミたちもそこにいて、イェーイww みたいな? なあんだ、そんなことかw
私は気が抜けて、笑う。
「そうなんだ! なんだw」
「……だけど、落ちる途中で岩にぶつかってな。 結局それが原因で、しばらくして死んだけどな」
ヒノキは、いきなり真面目な顔になって言う。
落ちてくるソラを受け止めたはいいものの、その前に大きなけがをしてしまって、少しして死んだ……。
そうか、村の人は誰も知らないんだ。 その後も生きてたんだったら、『死体が消えた噂』にはならない。
恐らくヒノキたちはどこかに身をひそめて、しばらくソラをかくまっていたんだろう。
……あぁ、それが東の洞穴ってことかな。 あの大きくて複雑な洞穴にケガをしたソラをかくまって、一緒に生活して……。 ナツミやマツリなんかもそこにいて、みんなで隠れて生きていたのか。
食べ物が少ない中で、地下道を通って降霊洞穴に行って、巫女さんたちに食べ物を分けてもらったりして、飢えをしのいでいた……。 そういうことだったんだ。
「千代も、かなり頑張ってたけどな。 ……あいつ、病に詳しくてな」
ヒノキはくるっと振り返り、部屋の中にいる一人を指す。 山で、ナツミに振り回されていた女の子だ。 名前を、千代というらしい。
千代は大人しいながらも、言うべきことは言うような、芯がしっかりしているような感じだ。
今はお泊りパーティーに参加していて、みんなと一緒に服を作っているようだ。 布を広げて、隣の雨子と楽しそうに話しているのが見える。
今では笑っているけど、200年前は一人で、必死にソラを治療していたんだろう。
誰も助けてくれない中で、みんなが見殺しにした人を、助けようとする……。 それは、どんな気持ちなんだろう。
私はぼんやりと当時の光景を想像していると、気になったことがあった。
「……最後って、どんなだったの? ソラちゃん」
それを聞いて、ヒノキはなんてことないことを思い出すように、答えた。
「ん? あぁ、なんか、笑ってたな」
「笑ってた?」
死ぬ間際に、笑う……? ……一体どういうことなんだろう。
ヒノキは頷いて、続ける。
「死ななくてよかった、とか言ってな。 ……やっぱ、あいつのことは、俺もよく分かんねえわw」
笑うヒノキの横で、私は俯いて、黙り込んだ。
私たちは正反対の立場で、別々の地域で生きていた。 もし私がソラたちと同じ地域に住んでいたら、どうなったんだろう? それでも私は、一人だったんだろうか。 それとも、周りにはヒノキやナツミたちがいて、助けてくれたんだろうか?
……いや、私は一人でいることを選んでたんだ。 私の周りにだって、友達になりそうな人なんていくらでもいた。
結局、結果は変わらない。
私は生きたかったのに、独りぼっちで、自分で死んだ。 ソラは死にたがりなのに、みんなが周りにいて、助けてくれた……。
どうしてこんなことになるんだろう? 私だって、同じ時代に生きてたのに……。
最初に服を作ろうと言い出したのは、じつはユメだった。
近年は、色々なものの流行の移り変わりは緩やかになっている。 服もその一つで、昔はデザインの流行の変動が激しかったが、ここ数十年はあまり変わっていない。
そんな退屈な状況を見て、ユメは変化が欲しいと思ったのかもしれない。
部屋の中は、ワイワイと楽しそうな雰囲気の中で服作りが行われていた。 床に色々な布地を広げて、どんなデザインにするかなどを考えているようだ。
雨子やホナミたちも雑誌作りをやめたのか、服作りに参加している。 雨子はどれだけ個性的な服を作れるか、自分の中で競っているみたいだ。 めちゃくちゃな模様が目の前に広がっていて、うーんと探偵のように唸っている。
部屋の向こうには、外に面したところに大きなテラス部分があった。 夜の景色が見えていて、涼しい空気が感じられる。
テラス部分には、スズネがいた。 服作りの途中で休憩でもしているのか、一人でぼうっとしている。
……あぁ、今日も楽しかったな。 朝の仕事が終わったら、歌どころに小春たちが来て。 小春が通貨量を報告してないとかで怒鳴られたり。 鬼探しで潜入してたら、小春の叫び声が聞こえたり。 城に帰ったら、小春火山が爆発したり。
……あれ、小春ばっかじゃんw 相変わらず小春は元気いいなあ、私も負けてらんないよ、ははっ!!w
そんな感じで一日を思い返していると、気さくな男がやって来た。
「よっ」
「あぁ、ヒノキくん」
見ると、来たのは声のデカいヒノキだった。 軽い身のこなしで歩いてくると、近くに腰を下ろしてくる。
私は200年前には、ヒノキくんと話したことは無い。 全く同じ時代に生きていたのに、場所が離れて住んでいたから知り合いではなかったのだ。
ほとんど初めて話すのに、色んな時代の人たちで溢れてる現代の環境の中では、妙に親近感があって……。 ちょっと、不思議な感じなのだ。
隣に座ったヒノキは、同じ方向を見て外の景色を眺め始めた。 一呼吸おいて、唐突に言う。
「……お前、自分で死んだんだってな」
よーっし、来たぁぁーぅっっ!!!!wwww こういう話を振られるのは、もう慣れたぜっっ!!!!!ww
……と思いたいけど、やっぱり無理だ。 なんでみんな、そんなに無神経に、ズカズカ聞いてくるんだろう。
そんな思いを振り払って、私は普通な感じで頷く。
「あぁ、うん」
「うーん……」
ヒノキは唸るように声を出すと、黙っていった。
些細なことでも、馬鹿みたいに落ち込んでしまう。 なんてことないことを言われても、激しく動揺してしまう。
振り返れば、私はいつもそんなことばかりだ。 後から考えればどうでもいいことなのに、その時は感情で頭がいっぱいになってしまう。
それで自殺までしちゃうなんて……。 変だよねえ、私も変だと思うんだ。 だけど同時に、自分にとってはすごく普通のことなんだけど。
少し黙った後、私は気になっていたことを聞いてみた。
「ねえ、ソラちゃんって、どんな人なの?」
「ソラ?」
「うん。 ……今日、ここに来るかなと思ったけど、来なかったから」
そういって、私は振り返って部屋のほうを見る。 みんなが服を作っていて、ワイワイしていて楽しそうだ。 ……あ、今ユメとナツミが部屋に入ってきた。 2人も服を作るのかな。
「あぁ、そうか。 ……うーん、どういう人ねえ……」
質問を振られて、ヒノキは考えるように黙り込む。
考えてみれば、私はソラのことをほとんど知らない。 憶え屋で見る限りでは、素直で、カラッと乾いたような性格だってことはなんとなくわかるけど……。
200年前に生きてた時は、住んでる場所が違ったから知らなかったし。 生け贄に進み出て、自ら海に飛び降りて……。 大きなことは、結局それぐらいしか知らないんだ。
ソラが話す内容は、最近はますます分からなくなってきた。 200年前のことを話していると思ったら、現代のことを話して……かと思ったら、50年前の街の様子なんかも話すのだ。
他の人がソラを見たという目撃情報もあるけど、なぜかピンとこない。 ちょっとイメージが違ったり、同時に別の場所で目撃されてたり……。 一体ソラがいつどこで、どんな風に生きているのか分からなくなる。
200年前に海に飛び降りた時、姿が忽然と消えたみたいだったという話だった。 そんなことまで聞くと、まるで幻の女の子のようにも思えてくる。
さっきも、城の大きな談話室で、またソラが置いていった日記を見つけた。
……そんなに気になってるなら、連絡とればいいじゃんって? うーん、でもなんか気恥ずかしいんだよなあ。
それにソラって、私には興味ないような気がするんだよね。 なんとなくだけどさ。
「……自分で、生け贄に進み出たって、聞いたけど」
私が呟くように言うと、ヒノキは当時を思い出すように答えた。
「あぁ、そうだ。 ……俺は、反対したんだけどな」
「そうなの?」
村が下した決定に、反対意見を言って口論するヒノキ……。 私はその時には死んでたから、直接見たわけではない。 だけど当時の村の雰囲気を知っているから、そんな光景がありありと脳裏に浮かぶ。
ヒノキは苦々しい顔を浮かべながら、頷いた。
「ああ。 だけど、大人はやるって言い張ってたし……ソラも、なぜか積極的だったからな」
「積極的?」
積極的って、何? ……自分が死ぬのに、積極的に進み出ていくの?
……意味が分からない。 ますますソラのことが分からなくなる。
横のヒノキも首をかしげていて、不思議そうだ。
「うーん。 俺も、あいつのこと、よく分かんねえんだよな。 死に抵抗が無いっていうか……みんなのために死ぬとか、そんな風にも見えないんだけどな」
死に抵抗がない……。 うーん、そんな人なんだ。 クルミとは、違うタイプなのかな……。
あ、物静かすぎるクルミも、生け贄で死んだらしいんだ。 1000年前らしいけど。 理由を聞いたら、みんなのために死ぬのが嬉しかったとか、言ってたんだよね。 なにそれ、意味わかんないんだけどw
……ほんと、なんでみんな、そんなので死ねるんだろう。
少し黙った後、私は自分に目を向けてみた。 もし私が同じ状況にいたら、どうするんだろう?
そう想像しながら、思ったことをそのまま話してみる。
「……私はさ、自分で死んだけど、本当は生きたがりなんだよ。 そんな状況になったら、どうやったって生き延びたいって思う。 それに、みんなのために死ぬとか、絶対に嫌だし」
自分で言って、やっと気づいた。 そうか、私は生きたがりなんだ。 自分で死んだのに、生きたがりなんだ。
私がソラを気にしてしまうのは、ソラがそうじゃないからかもしれない。
隣のヒノキはニヤッと笑った。
「ま、人それぞれなのかもな。 あいつにもあいつなりの、理由があるんだろ。 俺も、全然分かんねえけどw」
ヒノキは体を伸ばして笑う。 それを見て、私は気が抜けて笑いがこぼれた。
……そうだよ、分かるわけがない。 別に、分からなくてもいいのかもしれない。 どうせ私は、ソラとは違うんだから。
私はなんだか安心したような気分でいると、ふと頭によぎるものがあった。
「あ。 そうだ、200年前のソラちゃんって、なんで消えたんだろう?」
海に飛び降りたソラの姿は、直後に探したけどどこにもなかった……。 情報提供してくれた人の話によると、そういうことだった。
ヒノキは何の話か分からないようだ、きょとんとして聞き返してくる。
「え? 消えた?」
「うん。 なんか飛び降りた後に、死体が見つからなかったって……」
それを聞いて、ヒノキは思い出したように笑った。
「あぁ! あれは俺らが、助けたんだよw」
「え?! 助けた?」
「あぁ。 下でちょいと仕掛けを作って、落ちてくるソラを、さらったんだ」
トランポリンみたいなのを下に作って、ドサッとソラが落ちてきたってことだろうか。 一緒にマツリやナツミたちもそこにいて、イェーイww みたいな? なあんだ、そんなことかw
私は気が抜けて、笑う。
「そうなんだ! なんだw」
「……だけど、落ちる途中で岩にぶつかってな。 結局それが原因で、しばらくして死んだけどな」
ヒノキは、いきなり真面目な顔になって言う。
落ちてくるソラを受け止めたはいいものの、その前に大きなけがをしてしまって、少しして死んだ……。
そうか、村の人は誰も知らないんだ。 その後も生きてたんだったら、『死体が消えた噂』にはならない。
恐らくヒノキたちはどこかに身をひそめて、しばらくソラをかくまっていたんだろう。
……あぁ、それが東の洞穴ってことかな。 あの大きくて複雑な洞穴にケガをしたソラをかくまって、一緒に生活して……。 ナツミやマツリなんかもそこにいて、みんなで隠れて生きていたのか。
食べ物が少ない中で、地下道を通って降霊洞穴に行って、巫女さんたちに食べ物を分けてもらったりして、飢えをしのいでいた……。 そういうことだったんだ。
「千代も、かなり頑張ってたけどな。 ……あいつ、病に詳しくてな」
ヒノキはくるっと振り返り、部屋の中にいる一人を指す。 山で、ナツミに振り回されていた女の子だ。 名前を、千代というらしい。
千代は大人しいながらも、言うべきことは言うような、芯がしっかりしているような感じだ。
今はお泊りパーティーに参加していて、みんなと一緒に服を作っているようだ。 布を広げて、隣の雨子と楽しそうに話しているのが見える。
今では笑っているけど、200年前は一人で、必死にソラを治療していたんだろう。
誰も助けてくれない中で、みんなが見殺しにした人を、助けようとする……。 それは、どんな気持ちなんだろう。
私はぼんやりと当時の光景を想像していると、気になったことがあった。
「……最後って、どんなだったの? ソラちゃん」
それを聞いて、ヒノキはなんてことないことを思い出すように、答えた。
「ん? あぁ、なんか、笑ってたな」
「笑ってた?」
死ぬ間際に、笑う……? ……一体どういうことなんだろう。
ヒノキは頷いて、続ける。
「死ななくてよかった、とか言ってな。 ……やっぱ、あいつのことは、俺もよく分かんねえわw」
笑うヒノキの横で、私は俯いて、黙り込んだ。
私たちは正反対の立場で、別々の地域で生きていた。 もし私がソラたちと同じ地域に住んでいたら、どうなったんだろう? それでも私は、一人だったんだろうか。 それとも、周りにはヒノキやナツミたちがいて、助けてくれたんだろうか?
……いや、私は一人でいることを選んでたんだ。 私の周りにだって、友達になりそうな人なんていくらでもいた。
結局、結果は変わらない。
私は生きたかったのに、独りぼっちで、自分で死んだ。 ソラは死にたがりなのに、みんなが周りにいて、助けてくれた……。
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