幽霊だらけの古代都市!発達した呪術国家で、破滅的な未来なんて蹴り飛ばせっ! 幽霊たちと一緒に、ワクワクしながら元気に走り回るっっ!!!

折紙いろは

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第八章 混ざっていく世界、『時のはざま』

第75話 混沌の世界

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 部屋の中では、服作りが進んでいた。 もう夜中も深くなっているというのに、まったくみんな寝る気配がないみたいだ。 ギャーギャーと騒ぎながら、深夜テンションで作っているみたいだ。
 そんな中、イトも服を作っていた。 床の上に広げた布地の前で、せっせと作業している。
 完全に没頭ぼっとうして、目の前しか見えてない顔だ。 次はこれをして、その次はあれをして……。 おそらくイトの頭の中では、グルグルと作業の手順がめぐっていることだろう。 周りの様子を気にしている様子は、ひとかけらもない。
 イトが作業を続けていると、横から視界に何かが入ってきた。 大きくて黒くて、ちょっと茶色っぽい髪の毛で……。 気づけば、それは歌子の頭だった。
 歌子はもう眠たいようで、うとうとしていてイトのほうに頭をもたげてきたみたいだ。

「……あ」

 イトは手を止めると、ぼうっと歌子の頭を見つめた。 どうすればいいのか分からないみたいに、座ったままじっとしている。 手で支えてやればいいだけなのに、それすらも色々頭で考えているんだろうか。
 そうこうしているうちに、歌子の体はさらに傾いてきた。 いよいよ頭が落ちそうになったのを見て、イトは道具を放り投げて受け止めていった。

「イトー、ちょっと……。 ん、どうしたの? ……あら歌子、もう寝たの?」

 小春がのんきな声でやってくる。 小春はまだ眠気がなく、普段の調子みたいだ。 もう夜が深いというのに、元気なものだ。
 そこへ、雨子もやってくる。

「あれ、歌子、もう寝た?」

 腕の中で、歌子はすうすうと寝息を立てていた。 イトはその寝顔をじっと見つめていて、何かを考えるようだった。 今まで自分がしてきた行動を、振り返っているような様子だ。 イトは何かにつけて歌子を引っ張り回してきたから、考えるところでもあるんだろうか。

「あ、じゃあ、もう寝ようか。 みんなー、ねるよー!」

 雨子が少し抑えた声で、部屋のみんなに呼びかけた。 その場の人々も、少しずつその様子に気づいていったみたいだ。 あぁ、もう夜遅いしね。 明日も仕事があるし、そろそろ寝よう。 そんな感じで声を控えて、手を止めていく。
 ご飯もいっぱい食べたし、服作りも進んだ。 お泊りパーティーも、そろそろおしまいの時間である。

 広い部屋の中で、それぞれが床に敷物を用意して、寝る準備を始めた。
 ユメもその声を聞いて、片付けを始めた。 敷物しきものを部屋の端から持ってきて、テラス部分の近くに陣取って、敷物を敷いていく。

「じゃ、消すよー」

 スズネは部屋に呼びかけると、明かりに土器をかぶせて火を消していった。
 ふっと辺りが暗くなり、窓から入ってくる星明りだけになった。 部屋の中は一段と静かになり、小さな寝息が立ち始める。

 ユメは横になると、目の前の床をぼんやりと眺めた。 星明りが差し込んできていて、涼やかな夜だ。 窓際だから、外の空気が感じられる。 城の中で寝るのも、悪くないかも……。
 床を見つめながらぼんやりとしていると、前方で横になっていたホナミが話しかけてきた。

「ユメ」
「……ん?」

 目をつむりかけていた私は、目を開けてホナミを見る。
 横になって寝ているホナミは、こっちを見ていて、なんだかすごく普通の女の子に見えた。 ホナミもこんな風に、普通に寝るんだ。
 ……いや、そりゃそうでしょ。 何言ってるんだろう、私。
 だってホナミって、普段は宙に浮いてフワフワしてるし、いつもどこかに散歩に行ってるし……。
 そんなことを思っていると、目の前のホナミは、ぽつんと話しかけてくる。

「夢見酒、見つかった?」

 あぁ、ホナミも知ってたんだ。 もう、やってらんないね。 みんなに注目されてんじゃん。
 そっちのほうは匿名とくめいにしてなかったし、しょうがないかな。
 私は小さく首を振って答える。

「……いや」
「ふーん。 ……おやすみ」

 ホナミは一言いうと、背中を向けていった。 相変わらず気まぐれな人だなあ。
 たぶん夢見酒に興味があるってわけではないんだろう。 ただなんとなく、日常会話をしたかっただけなのかな。 まあ、いっか。
 私は目を閉じて、眠りの中へと入っていく。


 風が、そよいでいる。 目を開けると、草木くさきと心地よい木漏こもれ日が視界に入ってきた。
 私は草むらの上で寝転がり、日向ひなたと日陰の間で揺られていた。 小さく風が吹いてきて、穏やかに私の顔をなぜていく。
 そばには木が立っているのが見えている。 枝分かれする葉っぱの間からは、日の光が散らばるように降り注いでくる。
 私は呼吸を続けると、体が上下していく。 すう、はあ……すう、はあ……。 自分の心臓の音が小さく混じるように聞こえてきて、大地の中に溶け込んでいくようだ。
 そのままの体勢で、私は腕を上のほうにやり、適当にそこらの葉っぱを手に取った。 引き寄せて、鼻にくっつけていく。 目を閉じてすうーっとにおいをぐと、葉っぱの青臭あおくささが感じられた。 あぁ、気持ちいい……。
 そのまま葉っぱを口にくわえて、私は身を起こしていく。

 上半身だけ起き上がると、私は街のほうを見た。 高いところからの眺めで、気持ちがいい。 街はさらに発展していき、さらに複雑で大きな建築が出来ていっているのが見える。 そのうち、さらに変なものでも出てきそうな勢いだ。 未来研究所の人たちも研究を頑張っていると聞くし、どんどんヘンテコな街になったらいいな。
 私は地面を押して、腰を上げていった。 立ち上がると、うーんと腕を上に伸ばして伸びをする。
 近くを通りがかった子供が、こっちを見た。 葉っぱをくわえた私を見て、不思議そうな顔をしながら通り過ぎていく。 相変わらず私は街の変人代表なんだろう。 まあいいや。
 私は歩きだし、木の影を抜けて日向へと出ていく。 街の階段へとさしかかると、見覚えのあるような姿の人が、下から階段を上がってきていた。
 不思議な、未来っぽい服を着た女の子だ。 あぁ、ソラさんか。 前は相談に乗ってくれて、ありがとう。
 そう思いながらすれ違い、ユメは階段を下りていく。


 ユメとすれ違ったソラは、街の階段を上がっていった。 しかし、ずいぶん疲れているように見える。 表情はぼんやりしていて、生気せいきが感じられない。 ぼうっとしながら階段を歩き、目の焦点も定まっていないようだ。
 隣に、階段を駆け下りていく子供たちがいた。 笑いながらじゃれ合って、楽しそうだ。 ソラは横目にそれを見ながら、機械的に足を動かし続けて階段を上っていく。
 階段を上りきり、少し開けた場所に来ると、ソラは足を止めて街の景色を振り返った。 眼下に広く、穏やかで平和な街の様子が見える。 料理を売ってる人がいて、人と楽しく話している人がいて……。
 ソラはその様子をうつろな目で見つめていたが、やがて景色に背中を向けていった。 そのまま地面に座り込むと、はあとため息をついて、頭を力なくうなだれる。
 ソラは一体、どうしたんだろう? 嫌なことでもあったのかもしれないが……しかし、なにか変な感じだ。
 ソラはもう少し明るくて素直なはずだが、今のソラは利発りはつで、複雑な心を抱えた感じがするのだ。
 姿かたちはソラなのに、ここにいるのは違うような……。 妙な違和感を感じさせるのは気のせいだろうか。
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