幽霊だらけの古代都市!発達した呪術国家で、破滅的な未来なんて蹴り飛ばせっ! 幽霊たちと一緒に、ワクワクしながら元気に走り回るっっ!!!

折紙いろは

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第八章 混ざっていく世界、『時のはざま』

第76話 夜の議会!

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 街の階段を、歌子がけ上がっていた。 どうやら急いでいるようで、息を切らして走っている。 反対側から下りてくるユメの姿を見つけて、呼びかけていった。

「あ、ユメっ!」

 ユメは階段の途中で立ち止まる。 休憩していた木のところから、ちょうど下りて来たところのようだ。
 歌子は駆け上がりながら聞いていく。

「ねえ、ソラちゃん、見なかった?」
「あぁ、さっきいたよ」

 振り返って階段の上のほうを見やりながら、ユメは答える。 さっき私とすれ違って、生気せいきの感じられない顔で、とぼとぼ歩いていたよ。
 私は実際に見たのは初めてだけど、ソラさんってあんな感じなんだ。 最初は元気で乾いたような性格かと思っていたけど、チャラい感じの時もあるし。 かと思ったらあんな風に暗い顔の時もあって……。 ……うーん、ソラさんって難しい人なんだなあ。
 歌子は、声をはずませて答えた。

「ありがと! ……あ、そうだ。 ちょっとおさに、伝言頼める?」

 歌子は通り過ぎかけて、もう一度立ち止まって聞いてくる。
 ……おさに伝言? 歴史所の仕事で、なにか用事でもあるんだろうか。
 えーっと、たしか今日は議会の日だったから、議会にでもいるのかな。 議会は昼に行われるから、まさにこれからってところだろう。 見上げると快晴の空が広がっていて、議会日和びよりだ。 こんな天気の中で議会を開けば、心も開けて良い案もたくさん出てくるんだろうなあ、うん。
 そんなことを考えながら、ユメは答える。

「うん。 ……今日は、議会だよね?」
「あ、そうだね。 ……えっと、『これからお話ししたいんですけど、いいですか』って」

 これから? ……今から議会があるってのに、ずいぶん急だな。 そんなに急ぐ用事があるんだろうか。 まあいいか、長に伝言ね。 OK!

「分かった」
「じゃ、頼んだよっ!」

 歌子は通り過ぎて、階段を駆け上がっていった。 どうしたんだろう。 なにか、あったのかな。

「……えーっと、議会か」

 ユメはつぶやき、改めて行き先を確認して歩き始めた。


 議会は、いつものようににぎやかに行われていた。
 夜の黒々とした空のもとで明かりが大量に灯っていて、客席が野球場のナイトゲームのように照らし出されている。 毎度のごとく客席には多くの人がいて、意見のぶつけ合いを観戦……もとい見学しにきたようだ。
 夜なのに、ここはやたらと騒がしい。 街の色んな人たちが、他にやることがないからと暇をつぶしに来ているんだろう。
 客席には子供たちがはしゃいでいて、しりとりとかボードゲームみたいなことをやって遊んでいる。 『俺のターン!ドロー!』『チェックメイトォォォォッッッ!!!!wwフゥゥゥッツッ!!』
 家族連れで来ている人もいて、たこ焼きでも食いながら観戦しているらしい。 『お母さん、これなんて言うの?』『ファァァッッ、たこ焼きうめええぇぇっっ!!!wwww』
 おっ! 階段を通って料理を売ってる人もいるようだ。 『ビールいかがですかー』『あ、俺ら2つ!』
 客席の中をするめを食いながら走っている人がいて、酒を飲んでいるおっさんが死んだように倒れていて……。 毎度のごとくカオスな状態が広がっている。

「えー、じゃあ、次の議題に行きます! 次は、冒険隊ぼうけんたいですね」

 中央の広場のようなところでは、真面目に議会が進んでいた。 進行役の人が、大きな声を張り上げて頑張っている。
 議題を提示されると、前のほうで偉そうにふんぞり返っている人たちが、適当に手を上げていった。 指名を受けて、意見を言っていく形のようだ。

 混沌こんとんとした議会の中を、ユメが憶え屋の仕事のために動いていた。 ギャーギャー騒がしい子供たちの横を無表情で通り過ぎ、階段を素早く下りていく。

おさ!」

 ユメは中央の広場の辺りに来て、長に声をかけていった。
 長はやっぱりひんがある。 後ろから見てもすぐに分かるぐらい、すっと姿勢を正して座っている。 偉い人の中には、がーがーといびきをかいて寝ている人もいるぐらいだし、際立って綺麗きれいだ。
 ユメは長に近づくと、耳元に顔を近づけていった。 歌子からの伝言です、むにゃむにゃ……。 にゃむにゃむ……ええ、分かったわ。 そんな具合のようだ。


 いっぽうで客席では、スズネが座って議会観戦に来ていた。 ボケっとした顔で頬杖ほおづえついて、議会の様子を眺めている。 日も沈んだしやること無いし、暇つぶしにでも来たんだろう。

 近くには、他にも見たことのある人たちがいた。
 軽くておちゃらけた感じの、大陸まで冒険に行ったススキと、ことば所につとめているツムギちゃんだ。
 2人ともなんか食い物でも食べているようで、議会を無視してガツガツ食っている。 若いしお腹がすいてるんだろう、仕方ないね。

 その横には、どっしりした体格のマツまでいた。
 ……誰? えーっと、山で降霊されていた、ナツミに古臭いおっさんと言われていた人である。 500年前の若者で、降霊術こうれいじゅつの創始者のアキカゼと友達だったとかいう人だ。
 この人は、よく分からないが真面目で誠実せいじつそうだ。 いい人オーラを出しながら、たぶん一応議会の進行を見守っている。

 遠くのほうを見ていたスズネは、議会を無視して話しだした。

「あ、考えたんだけどさ。 新しい街の地図とか作ったら、どうかなって」

 ことば所のツムギちゃんが振り向いた。 焼きそばみたいな料理を食っているようで、素手で口に突っ込みながら、ソースまみれになりながら振り返る。

「ひふ(地図)?」
「うん。 調べたんだけど、島の地図は一応あるんだけど、50年前ので、ちょっと古いみたいなんだよね」

 50年前に急速に街づくりが発展し始めた時に、様々な用途に使おうと島の地図を作ったらしい。
 しかし、最近は状況が変わってきている。 建物がたくさん立つようになったから、街中の様子が大きく変わったのだ。

「あぁ、そっか」
「最近は、新しく建物も建ってるから」

 50年前に比べれば、街はずいぶん変わった。 ど田舎だった昔に比べれば、今は大都会レベルだぜ!!
 無意味な自信をただよわせてスズネはニンマリと笑っていると、横からススキが軽い調子で入ってきた。

「じゃあついでに、昔の地図も作るか!」
「……昔?」

 スズネはきょとんとして聞き返す。 なんで、昔?

「色々調べものをするときに、昔のも、まとめられてたら便利だなーって思うこと、結構あるから」

 降霊能力を持った一族の家がどこにあったとか、そういうのとかかな。 昔の情報が、整理されてないってことかな。
 うーん、まあそれは分かる気がする。 この街には色んな時代の人が生きているから、どの出来事がいつの時代なのか、ぐちゃぐちゃで分かりにくいのだ。
 まあ、私たちは都市伝説として楽しめるから、それでもいいんだけど。

 口元がソースだらけのツムギちゃんが賛同して、手をパンと叩いた。 あなた汚いわねえ、拭きなさいよ。

「それ、いいかもね!」
「……マツ、500年前のも、知りたいんだけど」

 ススキは隣に座っていたマツの肩を、がしっとつかむ。 マツも、こっちの話を一緒に聞いていたみたいだ。 頷いて参加してくれる。

「あぁ、出来ることなら、協力するぞ」
「よし、じゃあ決まりっ!」

 スズネは笑顔で叫んで、楽しそうに腕を組んだ。 ……フフン、新しい地図づくりだぜっ!!
 それにあんまり聞いてなかったけど、議会でも冒険隊するとか言ってるし。
 私たちが、新たな時代の幕開け? ジェネレーション・ファースト・第一世代? よく分かんないけど、これはもう、新時代が始まる予感だなっ!!ww ははっっ!w
 私はニヤニヤしながら腕を組んで、偉そうに議会のほうを眺める。 議会では、まだ冒険隊の話をしているみたいだ。 ははっ、遅いなあ。 グダグダやってると、私たちは一歩も二歩も先に進んじゃうぜ??!! フゥゥゥッッ!!!!!www

 ……ん、待てよ。 冒険隊……? そういえば、むかーしそんな話をしたことがあったような……。
 私が歌子と知り合って間もないころ、歴史所で話した時だ。 歌子が石板を黒い液体に浸したりして、石板の内容を修正していたことがあった。 憶え屋の私たちの口座にソラが初めてやってきたのは、確かその時だった。
 議会で冒険隊が出ることになったとか、新しく地図作りを自分たちで始めることになったとかを書き込んでて、この子は何を言ってるんだろう……冒険隊なんてもう終わったんだし ソラちゃんって不思議な子だなあとか言ってたような……。

 あれ? ソラ、今ここにいるの? 私は辺りをきょろきょろと見てみる。 でも、ソラの姿は見当たらない。
 ソラは、いつもどこにいるのか分からない。 200年前のことを話していると思ったら、現代の話もするし……。
 まさかソラって、未来にも行けるんだろうか。 今もこの議会のどこかに座っていて、タイムスリップしてあの時の私たちの口座に日記を書き込んだとか……?

 私が難しい顔をしてウームと考えていると、議会の中で異変が起こった。 ざわざわと客席がどよめいている。
 ふと見ると、中央の広場の中を叫びながら突っ切っていく人がいた。 服をまとわずはだかで、奇声きせいを発しながら走っている女の子がいる。
 アマネだ。 元気すぎる巫女みこのアマネが、議会に乱入して、笑いながら叫んで全速力で走っていた。

「ふぉあああああああぉぉぉぁぁぁっっ!!!!wwwwwww」

 アマネっっっっっ!!!!!!!!!!!!!wwwwwwwww やったぁぁーーーーーーっっっ!!!!wwwww
 さすが我らがアマネ、やってくれるぜっっ!!!!!www 私はガッツポーズを決めながら、心の中で叫ぶ。
 何があったのか分からないけど、めちゃくちゃ楽しそうだ。 アマネは乱入してきたかと思うと、意味不明にそのまま議会を横切って走っていく。
 続けて、さらに異変が起きた。 どやどやと足音を鳴らしながら、警備隊と思われる人たちが議会に流れ込んでくる。 待てーっ!!! アマネーっ!! 服を着ろーーっ!!! そんな怒号どごうのような声が、辺りに響く。

「アマネっ!!! どうしたのっっ???」

 私やツムギちゃんも思わず叫びながら、走るアマネの後を追っていった。
 見ると、警備隊の人たちの中には、それにまぎれて歌子や小春の姿もあった。 同じようにして走って、アマネを追いかけているらしい。

「アマネーーーっっっ!!! 待ちなさーいっっ!!!」

 小春はぜえぜえと息を切らしながら、必死になって追いかけている。 どれだけ走ってきたのか、めっちゃ息が上がっていて苦しそうだ。 ヘロヘロになりながら、隣の歌子と一緒に走っている。
 アマネは全速力で議会を駆け抜けると、そのまま外へと飛び出していった。 警備隊たちはそれに続いて、どやどやと走りながら追いかけていく。

 一体何が起こっているんだろう……。 深い意味があるような気がするが、無いようにも見える。 アマネはいつものように元気みたいだ。 よかったよかった。
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