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しおりを挟む一瞬にして全身に冷水を浴びたかのようにヒヤッとし、二人は硬直した。
まさか、気づかれていたのか? …でも、特段悪い事をしたわけでもないし、事情を話せば理解してもらえるかもしれない、と思った透はゆっくりと顔を上げて物陰から出て行こうとした。
「…な~んてな、漫画の読み過ぎか。誰かいたら俺がビビるわ。」
物陰から出て行こうとした透は、しかし密着する和基に阻まれ全く身動きできなかった。
しばらくして職員が部屋を出る足音が聞えた。
フゥと安堵の息を吐く二人。
「一瞬ヒヤッとしたぜ。」
「ああ。…ドアが閉まってないからまた戻ってくるみたいだな。」
「なぁ、今のうちに出といた方がいいんじゃねぇ?」
その時、ドタドタと足音がして
「上にはいなかったね!」
「もう一度1階を探してみよう!」
「……もうちょっとここにいるか。」
「……ああ。」
通り過ぎる足音を聞きながら二人はまだ身を潜める事を決意した。
透は、それにしても、一時身を隠してやり過ごしたらすぐに移動するつもりだったからあまり深く考えてなかったが、男二人でびったり密着して暑苦しい事この上ないな、と思っていた。
夏というほど暑くはないが、今日は気温が高いほうだった。ーー男二人で身を寄せ合っていたら数分で火照ってくるぐらいには。
いつの間にか戻って来ていた職員の男のつぶやき声を聞きながら、透は和基が荒い呼吸をしている事に気づいた。
「はぁ。」
「和基?大丈夫か?」
透は囁いた。
古い扇風機がうるさい音をたてているおかげで、小さくささやくように話せば聞えない状態だった。
「あぁ、ちょっと暑くて。」
炎天下でも運動をしていた経験のある透はまだ余裕がありそうだが、和基には辛いようだった。
「俺も暑いな、お前の体温で。」
「それは、はぁ、すまないな。」
「いやお互い様だ。むしろ俺が巻き込んでるし。」
「いや、勝手に俺がついてったんだ。」
和基はちょっと疲れたように笑って、透の肩に頭を預けた。
「悪い、ちょっと肩貸してくんねぇ?」
首元でささやかれた声に一瞬ビクッとなりつつも、透はそのままじっと和基を支えた。
密着し続ける体と、耳もとで吐かれる荒い息づかい、籠る熱に、透は段々とおかしな気分になってくるような気がした。
そして透は自らも荒くなる呼吸を意識しながら、今までにふとした時に感じる和基の焼け付くような目つきを思い出していた。
「っはぁ。」
透が息を吐き出した時、和基の体がピクッと反応した。
ーあれ、なぜこんな体勢になっているんだ?
いつの間にか和基がロッカーについていた手は透を抱きしめる形になっていた。
「っ透。」
小さく切羽詰まったような和基の声を、透はぼんやりしながら聞いていた。
「透っずっと、お前の事…っ。」
その時、透は下腹部に堅い膨らみがあたっている事に気づいてビクッと体を揺らした。
「かず…きっ。」
和基は透が気づいた事を察したのか、下半身はピッタリと密着させたままゆっくりと透の肩から顔を上げた。
「透、っ好きだ。」
和基はあの焼け付くような目で、劣情を抑えきれない怖いくらいの表情で、まっすぐに透に告げた。
「はぁっはぁ、っ透!」
「はぁ、はぁ・・・。」
透は大学に入って和基という部活以外の友達が初めて出来て、日々自分との差を感じては驚き新鮮な気持ちになっていた。
少しの違和感を感じても、それもまた陸上一筋でいた自分との差なのだと深く考えなかった。…考えないようにしていた。だがーー
以前から感じていた熱視線。2人分の荒い息遣い、目の前の欲情した瞳、押し付けられた膨らみに反応する自身のもの。
結局、なぜこんな事になってしまったのかぼぅっとする頭で考えても、明確な答えは出なかった。
職員はまだこの部屋を出たり入ったりしているのに、こんな状況だというのに和基は下半身を押し付け、透の首元に再度顔を埋め、耳をネットリと舐めて荒い呼吸を吐きかけてきた。
透は耳元で吐かれる息に反応してゾクゾクと背筋を震わせていた。密着する体ではすぐにその反応は相手に伝わり、和基はグッ!と更に下半身を強く押しつけてきた。
「っ透!」
「…かず…ダメ、だ…。」
和基は透の制止の声を無視して、抱きしめながら大胆に透の身体を淫らに撫でまわしてきた。
あまり難しい事が考えられなくなっていた透だが、おかしな気分になり堅く張りつめていく自身のを感じ、マズイ、これはマズイ、という思いだけが頭の中をグルグル回っていた。
ーああマズイもっと刺激を、いやダメだ!もっと快楽を、いやダメだ!ああっもう腰が動くのをこれ以上抑えられない!
と透が思ったその時、古い扇風機の音が止まり、扉が閉められ施錠される音が聞えた。
ーガチャン、ガチャガチャ
この部屋にはもう自分達以外誰もいない。その事実を認識した途端、どちらからともなく唇を重ねお互いに激しくむさぼりついた。
「んっ…んぅ…っはぁはぁ…ん。」
「透っ透!…はぁはぁっ。」
その間にもカチャカチャとお互いにベルトを外し、下着から自身の昂りきったモノを取り出して直接刺激を与えあった。
和基が透のものと自身のガチガチに昂ったモノを一緒にしごき出した時、ついに透は鼻にかかったような喘ぎ声を出してしまった。
「あっ…んっ…あぁっ。」
「っ透!…はぁはぁっダメだ!そんな声っ。」
和基は透の興奮した声を聞き、一層欲情したように腰を動かし手を速めた。
透もその様子に煽られ更に快楽を求めて淫らに腰を振った。
「んっ…はぁはぁ…あっあっあ…ああ!」
「透!透っ好きだ!はぁはぁっ…透っ…くっ!」
いつの間にか透の腕も和基の背に回っており、お互い強く密着しあって絶頂を迎えた。
暖かい液体が和基の手を濡らしていた。
達した事でぼぅっとした頭が徐々にクリアになってきていた透は、またなぜこんな事になってしまったのかと考えるのと同時に、これからも普通のキャンパスライフは送れそうもないな、と漠然と感じていた。
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