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戦争の始まり
発端
しおりを挟む「いいか?お前はこのままこの国をでろ!そしてもう人の前に現れるな」
陽は沈み世界が闇に包まれ誰もが寝静まった時間にそれは起きた。
いつもの夜を迎えるはずだった。専属のメイドが運んできた食事を摂り決まった時間に本を読み決まった時間に就寝する。明日は16歳になり成人の儀を執り行う予定であったためにいつもより早めに寝ようと考えていた。
そんな日を迎えようとした前日、突然兄弟の中で一番年長者で第一王子として財政にも優秀なお兄様が私にそう言い放った。
お兄様はお姉様や二人目のお兄様を連れて私の部屋にきた。三人は私がいることを理解すると私の手を強引に掴み馬車の元まで連れていかれた。
「お、お兄様!どういうことですか?」
「お前は明日殺される。理由は教えたくないがお前は.....お前だけは生きていてほしい」
私の疑問は晴れることなくさらに濃くなってきた。明日死ぬ?お前だけは生きていてほしい?どういうことか全く分からない。
私は助けを求めようと一緒に付いてきていたお姉様に視線を送った。
「辛いことかもしれないけど、あなたは明日生贄になるの」
生贄?どういうこと?成人の儀をするのではなかったのですか?
「その...明日あなたが成人の儀を行った後、勇者召喚をする。国はあなたの魔力に惹かれあなたを触媒にして召喚するつもりなの」
「おい、シーナ。あんまり話し込むな!」
「でも...」
お姉様は一番上のお兄様に強く言われて口を閉じてしまった。勇者召喚というのは?私は初耳の情報です。
「クレア、お前を触媒にして殺してまで異界の人間を召喚する必要は無い。このままではお前を殺してしまう。それを阻止するためにお前はこのまま王位を捨てこの国を出て密かに暮らせ」
「暮らせって一人でですか?そんなの嫌です!私はお兄様方と一緒にいたいです!」
「時間が無い!お前をここに残すことは出来ない。国を出てある程度離れるまでは冒険者が馬車引いてくれる。そこから先は自分で好きなように生きていけ。積荷は出来るだけ多く積んどいた。さぁ、行け。早く行けぇぇ!」
お兄様やお姉様は泣いていた。泣きながらこれから頑張って生きるように言われた。
私はお兄様に無理やり馬車に押し込められると同時に馬車が動き出した。王門を抜ける頃、後ろの方から鎧の擦れるガチャガチャという音がした。後ろから兵士の方たちが追いかけてきたのでしょうか?
私の頬には涙が流れていた。それは家族との別れをしていないから?私を殺すと言った政治の方たちへの怒りから?兄弟の涙を見てしまったから悲しいの?辛いの?憎みたいのかな?
私は馬車の中で声を押し殺しながら泣いていた。しばらくして泣き疲れたのか前が暗くなってきた。
寒い...暖かいはずなのに寒いよ...。
ーーーーーーーーー数時間経過
「それでクレアは捕らえる子は出来たのか?!」
「何?!逃げられただと?!クソ!貴様らがいてなぜ捕えられなかった!」
「触媒にすることを知られていた?偶然聞かれたか。ちっ、まぁいい。冒険者ギルドに要請を掛けろ。金は金貨千枚で呼び掛けろ!」
「既に出していたか。さすがはスレイプ。よく出来た息子よ」
「クレアを見つけ次第逃げられないよう拘束しここに連れてきて勇者を召喚する。これ以上あの方たちに失態を見せるわけにはいかない!」
王城のある一室でクレアを逃がした張本人である第一王子スレイプからの報告を受けた国王ザッツバルトは月明かりに照らされた街並みを見て不敵な笑みを浮かべていた。
スレイプは頭を下げ部屋から出て自室に戻ると今日全員が写っている写真を見てクレアについて考えていた。
クレアは無事に逃げられたようだ。クレアは本来魔法の才に長けていた。魔力量が高く宮廷魔道士から教え込まれた魔法を全て難なくこなし苦労することもなく賢者として周囲に知られることになった。この国でもしっかりとした戦力になりうる人材でもあった。
しかし父上は宰相のクレアを触媒として勇者召喚をすればいいという提案に軽く乗っかり実行に移そうとした。
世界政府からの信用を取り戻すために勇者召喚を行う。別に勇者召喚を行うことは悪いって訳じゃない。勇者召喚を行う触媒は別成功率云々を無視すれば水晶でも構わなかった。水晶に秘められている魔力量が多ければ多いほど成功しやすい話ではあるが、それをクレアにやらせるというのは人間のしていいことではない!
この国はいつから腐ってしまったのだろうか。もうこの国は救われることは無いだろう。もし救われるのであればそれは我々王族による政治では無く国民たちによる政治によるものだろう。
既に国民たちにはそういった事実を教えてある。明日にはクーデターが起きているはずだ。徴収している税も悪用している王政に未来はない。私含む三人の兄弟の安全は確定ではないが、父上と宰相、そして政治に関係した貴族の処刑は確定。クレアを勇者召喚の触媒として用いるなんて情報をチラつかせれば簡単に決心がついていた。
クレアの存在はそれほどまでに大きかったのだろうな。街に出ては子供たちと接し色々なことを教えて魔法なんかも見せて遊んでいた。クレアには酷いことをした。兄ながら償える訳では無い。もしもの時は私の命で...いや私も生きてクーデターを成功してみせる。
ーーー城下のとある場所
どこかの宗教の司祭のような人に部下であろう人に報告を受けていた。
「司祭様、住民達の準備は整っております。早朝からでも乗り込むことは可能です。ですが...ほんとに宜しかったのですか?」
「何がだ?」
「いえ、その国を裏切るという行為をして...」
「ハハハ、国を裏切るだと?そんな訳が無いだろう。先に私たちを裏切っていたのは国の方。殿下から密告が無ければ私たちは永遠と国に騙され続けているということ。我々のクレア様を勇者なんかの触媒として用いるなんて以ての外!」
「ですが...いえ、なんでもありません。それで明日ですがこれを所持して王城に乗り込んでもらいます。これは王族の働いた悪略の限りが全て乗っております。他にはもしもの保険として世界政府にはお知らせしてあります」
「ん?それは大丈夫なのか?」
「はい、世界政府とこの国では信頼関係はほぼゼロのようですので。それに加えて聖峰会《せいほうかい》の方々に直接お知らせ致しました。あちらも動くということでしたが交換条件を提示されました」
「あの方たちに頼るということは...彼らが来るのか?交換条件というものはなんだ?」
「はい、その事なんですが第一王子スレイプ様、第一王女シーナ様、第二王子レイド様の身柄の安全と無傷による捕縛。この国の貴族の招集及び尋問、拷問の許可。だそうです」
「ふむ、それに立ち会うことはできるか?」
「可能です。既に国外に出ている領主は捕縛済みで、亡命も出来ないようにしてあるそうです」
仕事が早い。あの方たちはこのことを分かっていたのだろうか?この国の圧政ということを理解した上で泳がせていたということだろうか?世界政府に密告したのがほんの三日前、するとたった二日でこの国を八方塞がりにしたということになる。恐らくそれよりも早く根回ししていた筈だ。
「クレア様の捕縛は入っていないのか?」
彼らが提示した条件の中には一人の姫だけ含まれていなかった。このクーデターを引き起こす引き金となった重要人物。彼女だけは殺してはいけない。
「クレア様についてですが、この王都の外に亡命しているはずです。亡命することもあちらは知っている筈なので大丈夫な筈です」
「確証はない...か」
「.......はい」
部下はもうこれ以上出来ることがないことに苦しくも答えた。
「よかろう。では夜が明けたら手筈通り実行する。他の信者に各地配置に着くように指示しろ」
これ以上のこの国を破壊してはいけない。夜が明けたらこの国は救われる。今度こそは我々民衆のための国を作り上げる。
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