観測者はゲートに降り立つ

アルガス タイター

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戦争の始まり

伝言[未来]

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 僕はこの世界のおいて異端な存在なのだろう。
いや、訂正しよう。それでは少し語弊が生まれるか。
 今現在の世界において「人間」というものが、一体どういった存在が人間なのかは分からないが、僕の知る限りならば強欲で色欲に溺れたがり、自分の気に食わないことがあれば憤怒し嫌悪する。最悪にはそれを除外し敵視し、人の感情に自然に毒を植え付け集団心理へと導き出す。集団になることで自らを誇示し弱いことに気づかない愚かな生命体。
 まぁ、つまりは人間とはとても傲慢なのだ。
 人間というものがもし先のであるのならば、僕はそれに当てはまらない。人間では本来到達できる記憶保存領域を逸脱し知りうる事実の差異も人間という域を凌駕している。自分がどれほどのものなのかは僕自身でも分からない。
 それ故に僕は「人間」というものに倦怠感を覚えた。人間というものがとてもめんどくさいものだと思えた。だけど勘違いしないでもらいたい。僕は別に人間が嫌いという訳では無い。好きか嫌いかと言われれば、人間は好きである。

 僕では到底考えることの出来ない言動をする。人間は物事の大体にどちらが善でどれが悪なのかを暈しながら決め悪だと感じたものを徹底的に排除しようとする。
 実際では大して力になることもしないのにそれを動画で見て「それはいけないことだ」「人として間違っている」など価値観を相手に押し付けてくる。誰の力にもなれないくせしてヒーローになりたがる。人間のそういった欲望に誠実なのは僕には存在しない感情であって非常に興味深い。

ーーーーーーー


 僕はいつしか自分というものが一体何なのかと考えるようになった。最初の自分ー生まれたての頃はちゃんとした人間ではあった。いつだっただろうか。僕を人体実験の被検体としてある組織に捕まり色々な実験を試された。
 腕を切り落として何か投薬した後に繋ぎ合わせてみたり灼熱の炎で体を溶かそうとしたり、逆に凍らせてみたり、通常の人間では到底耐えることの出来ない拷問並みの実験を行われていた。
 辛いことばかりあった訳ではなかった。僕はそこの施設のような場所で一人の少女に出会った。その少女は研究者達の上についている人の子どもらしく生まれた時から特殊な人種だと説明された。
 その少女とは施設内でよく遊んでいた友人の一人だった。友人という言葉よりも恋人といった意味での友人であった。その施設は勝手に僕らを結ばせようと工作していた。工作されていたことも僕らは知っていたが、二人でよく一緒にいることが多く非常に親密になり始めていた。
 周りに煽てられて恋人というような関係になったのだろうが、恐らく僕らは出会った時から互いのことが好きだったんだろう。僕らは夜遅くに抜け出してまで一緒にいようとしていたんだからね。
 少女との生活を楽しみながら生きていくうちに僕の頭の中は少女のことで埋め尽くされていた。僕は僕のことを産んでくれた親のことなどどうでも良くなった。その頃には実験を快く受け入れていた記憶がある。僕の脳は次第に作り替えられていたのをその時初めて知った。


ーーーーーーー

 人の過去というものはあまり覗かない方がいいのかな。
 さて今は西暦何年だったかな?確か響霖《きょうりん》柊亜《しゅうあ》戦争が集結して五年ほど経ったから今は2156年になるのかな。僕が生まれたのは響霖柊亜戦争が始まる前だから90歳を迎えるのか。
 2066年に戦争が始まってこの世界は軍事による支配が強まった。化学兵器には魔術が取り入れられ、軍の部隊に魔術師専用の部隊が新設された。科学と魔術が組み合わされてより強大な軍事力を各国は手に入れた。
 本来科学サイドと魔術協会が一緒になることはなかったはずだが、軍事力の補強のために両サイドはタッグを組んだ。それがなんの意味を指すか君たちなら分かるだろう?先進国ならまだしも発展途上であった国は到底どこかに従属するか国家を解体して取り込まれるかの二択に迫られる。正確には三択ではあるが残りの一つの選択肢は悪手と捉えられている。
 解体か従属を迫られた国家はそれぞれが集まって一つの連合を作るために奔走した。一つの連合国となれば一時的に凌ぎにはなるだろうが所詮は元々資金などが足りない国同士が集まって連合を築いたに過ぎない。いくら対抗のために募ったとしても国それぞれの風習や考え方に違いがある。差別のようなものもある。最初のうちは活気は生まれるが、いずれ目的に向かって行くにつれて陰険な雰囲気に襲われる。まぁそこら辺の話はまた後日っていうことで今は片付けよう。



 科学と魔術の違いは科学でも可能なことでそれを実行するのに過程を全て破棄し結果だけをこの世界に体現化させる。
 魔術で炎を出すというのであれば、呪文を唱え脳内でイメージした炎を自分の魔力に乗せて実体化させる。炎を出すのであれば科学サイドでもマッチに火をつけるようなイメージだと考えることも出来る。ただし科学では道具を用いて行うことで事象を可能にすることが出来るのに対して魔術では魔力を用いるだけで過程を抜きにして事象を可能に出来る。
 科学と魔術というのは余り違いはなくどちらも過程があるかないかで分類されているが二つの勢力では互いに争いは起こすも完全に仲が悪いと言う訳ではない。戦争などで重宝されるのが魔術であって日常生活では科学が重要視されている。
 少し話がずれたか。僕はどうしても話をずらしてしまう性格なんだ。許してくれ。


 発展途上国はいずれそれぞれの勢力に従属し、最終的に世界は地球に存在する国々は二つの勢力に分断され戦争が始まった。戦争を永遠と続けることは各勢力にも辛いところがあった。細菌兵器を含む核爆弾、魔術回路を破壊する術式を含んだ爆撃など人体や環境破壊に影響を与える兵器ばかり使われ、戦地で死ぬのではなくただ平凡に暮らしている人間に死が多く見えた。その現状で一般の人が死んでいき兵士は死ぬことがないという事実に戦争を続けることは出来なくなった。
 戦争を無くそうと考えていた平和主義という言葉はどこかに消えていた。このままでは世界が崩壊してしまう。世界が崩壊してしまうのであれば、仮に戦争で勝利を収めたところで意味がなかった。
 響霖柊亜戦争の最中にある協定が二つの勢力のあいだで結ばれた。
 世界に全部で四つの学園都市を作る。その四つのどこかの都市全てに各勢力の未来ある子供たちを住まわせ学校に行かせそれぞれを競い合う。戦争の代わりとしてある競技を導入することにした。
 一人から五人の人数で行う試合形式の殺し合い。実際に殺すのではなくどちらかが気を失うか「降参」と口にするまで続ける試合。人々はそれを【ゲーパ】と呼んだ。こういった話も後々誰かが語らうだろうから今は割愛させてもらうよ。

 僕から告げることの出来る時間ももう少しで終わり。僕は単なる観測者だからね。直接君たちに関与することはしてはいけない。だから本当はこういうのもダメなんだろうけど、なにせ現在の人間は未来に起きたことは分からないからね。唯一の抜け穴というものだろうか。
 僕にやり直す時が来るならばヒントをあげよう。

“世界政府を信用してはならない”

 科学というものがあるが学園都市以外の場所で発達した乗り物などを見ることはほとんどない。学園都市や国の重要都市以外は魔物が繁殖している。いくら狩っても狩りきれないほど大量に。

 そういえば僕のここでの役割を伝えてなかったね。
 僕は単なる観測者。
 世界が最も恐れ最も排除させておきたかった“元”人間の一人。
 観測者たる僕の役割は一つ。
 に伝言を伝えることだよ。


『世界は君に十二の試練を与えるだろう。君は観測者となって廃れてしまった世界を救うんだ。僕は僕のことを信じてるよ。僕が失敗してしまった過去を未来を変えてみせてくれ』


 そろそろ時間のようだ。未来の僕が君に干渉できるのはここまで。あとは君が一人でやるんだ。ヒントは与えた。
 君には世界を救う資格がある。
ここから先は君一人で戦いたまえ。




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