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コンビニ②
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初恋とはいえ、告白したりしてる訳じゃない。この気持ちとはとっくの昔に折り合いをつけていた。
ただ高校一年の時に同じクラスで、やたらと親密に話しかけてきただけで---そんで僕が異性に対して初めて、甘い感情が芽生えただけなのだ。
「いやーほんと久々だ。大学受かったの?....あーあそこでしょっ?エリートのトコ」
ウヅキは慣れた手つきでカップヌードルをバーコードリーダーで読み取る。
こういう、プライベートに土足で踏み込むような、普通は躊躇うような質問を平気でするのだ、彼女は。それを高校一年の僕は『こ、この娘、ボクに興味あ、あるのかなっ』と、デレデレソワソワしてしまったワケ。
少し経って、誰に対してもウヅキ・ユズリハという女はこういう態度を取るのだと予想できるようになってからはもう、尚のこと。気持ちは冷めていた。
まあ実際、官僚養成学校に合格してるし。いいんだけどね、こういう質問されても。そこまで受験にナーバスになってない。
行くかどうかについては未だ、論決される目途も無いけれど。
「まあ、うん。ウヅキは?」
「おーおめでと。...私は専門だから早く決まったんだ。美容師」
ウヅキはチョキチョキ、とハサミの仕草でおどける。
「だからバイトか」
「そそ。...てか、マジメンはどうしたのこんな時間に。ちっちゃい子連れて、全然マジメじゃないじゃん」
俺は別にマジメなんじゃなくて、休み時間とか特にすることがなかったから一人黙々と勉学に励んでいただけなんだよな...。
「あーこの子は...親戚みたいな?」
ウヅキは隣で静かにしていた、フードを目深に被った彼女を一瞥する。皇女様だとバレないように、彼女は微動だにせず、喋らずにいた。親戚とかいうでまかせを信じたかは知らないが、ウヅキはそれ以上追求してこない。
「誘拐?」
「ちゃうわ...あ、カード決済で。あと箸二つ」
小首を傾げ、あらぬ誤解はかけられたけど。
僕はスウェットのポケットに忍ばせていたクレジットカードを渡す。
「はーい。ピッピッっと。袋入れとくよー」
「あ、お願い」
小さめの袋にカップヌードルとグミを入れ、箸を二つ投げ込むウヅキ。雑だな雑。性格が窺えた。
「じゃ、お品物とカードのお返しでーす」
「どうも」
手に触れないように受け取る。爪長いしマニキュアが蛍光黄色。夜目立ちそう。
「ありがとーございまーす。...ま、そんな格好で小さい子連れて、補導とかされないようにね」
その時になってやっと、自分の姿について意識を向けた。なんか寒いと思ってたんだ。
季節外れの下着っぽい無地白Tシャツ(半袖)に、グレーのスウェット。極め付けはどう考えてもサイズの小さい、女物のコートを持っているコトだった。
「不審者じゃんか僕...」
僕が呟くと、皇女様が肩を震わせる。必死で笑いを抑えようとしてるみたいだ。全く誰のせいだと思っているんだ...。
「ま、気をつけなねー。あ、あと、お湯出るやつは勝手につかっていいからー」
出入口付近にある給湯器の事を言っているのだろう。
「うん」
「じゃ、私はまた奥でサボってくるからー」
さっきまでサボってたのか。大した胆力だ。ウヅキはヒラヒラ~と手を振り、再び姿を消した。
皇女様はそれを見計らってから僕の耳に顔を近づける。こそばゆっ。
「お腹すいたのだ。早くお湯を入れよう、マジメンくん。な?マジメンくん」
悪戯っぽく耳打ちしてくる。
...なんか猛烈に恥ずかしかった。
ただ高校一年の時に同じクラスで、やたらと親密に話しかけてきただけで---そんで僕が異性に対して初めて、甘い感情が芽生えただけなのだ。
「いやーほんと久々だ。大学受かったの?....あーあそこでしょっ?エリートのトコ」
ウヅキは慣れた手つきでカップヌードルをバーコードリーダーで読み取る。
こういう、プライベートに土足で踏み込むような、普通は躊躇うような質問を平気でするのだ、彼女は。それを高校一年の僕は『こ、この娘、ボクに興味あ、あるのかなっ』と、デレデレソワソワしてしまったワケ。
少し経って、誰に対してもウヅキ・ユズリハという女はこういう態度を取るのだと予想できるようになってからはもう、尚のこと。気持ちは冷めていた。
まあ実際、官僚養成学校に合格してるし。いいんだけどね、こういう質問されても。そこまで受験にナーバスになってない。
行くかどうかについては未だ、論決される目途も無いけれど。
「まあ、うん。ウヅキは?」
「おーおめでと。...私は専門だから早く決まったんだ。美容師」
ウヅキはチョキチョキ、とハサミの仕草でおどける。
「だからバイトか」
「そそ。...てか、マジメンはどうしたのこんな時間に。ちっちゃい子連れて、全然マジメじゃないじゃん」
俺は別にマジメなんじゃなくて、休み時間とか特にすることがなかったから一人黙々と勉学に励んでいただけなんだよな...。
「あーこの子は...親戚みたいな?」
ウヅキは隣で静かにしていた、フードを目深に被った彼女を一瞥する。皇女様だとバレないように、彼女は微動だにせず、喋らずにいた。親戚とかいうでまかせを信じたかは知らないが、ウヅキはそれ以上追求してこない。
「誘拐?」
「ちゃうわ...あ、カード決済で。あと箸二つ」
小首を傾げ、あらぬ誤解はかけられたけど。
僕はスウェットのポケットに忍ばせていたクレジットカードを渡す。
「はーい。ピッピッっと。袋入れとくよー」
「あ、お願い」
小さめの袋にカップヌードルとグミを入れ、箸を二つ投げ込むウヅキ。雑だな雑。性格が窺えた。
「じゃ、お品物とカードのお返しでーす」
「どうも」
手に触れないように受け取る。爪長いしマニキュアが蛍光黄色。夜目立ちそう。
「ありがとーございまーす。...ま、そんな格好で小さい子連れて、補導とかされないようにね」
その時になってやっと、自分の姿について意識を向けた。なんか寒いと思ってたんだ。
季節外れの下着っぽい無地白Tシャツ(半袖)に、グレーのスウェット。極め付けはどう考えてもサイズの小さい、女物のコートを持っているコトだった。
「不審者じゃんか僕...」
僕が呟くと、皇女様が肩を震わせる。必死で笑いを抑えようとしてるみたいだ。全く誰のせいだと思っているんだ...。
「ま、気をつけなねー。あ、あと、お湯出るやつは勝手につかっていいからー」
出入口付近にある給湯器の事を言っているのだろう。
「うん」
「じゃ、私はまた奥でサボってくるからー」
さっきまでサボってたのか。大した胆力だ。ウヅキはヒラヒラ~と手を振り、再び姿を消した。
皇女様はそれを見計らってから僕の耳に顔を近づける。こそばゆっ。
「お腹すいたのだ。早くお湯を入れよう、マジメンくん。な?マジメンくん」
悪戯っぽく耳打ちしてくる。
...なんか猛烈に恥ずかしかった。
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