魔性少女カスミちゃん~隣の刹那君は私に惚れない~

三一五六(サイコロ)

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二性 ピンク色の日常

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 まぁ、そんなことはいいとして、今からあの地獄の電車に乗らなければならない……。
 人は「パイパン」じゃなくて「パンパン」で、どこの車両も空いている場所など見つからない。車両の扉や窓は熱気で曇り、見るからにサウナ状態。思わず唾を呑み込んだ。
 そしてついにあの「プシュ~」という音が鳴り、扉が開く。それと同時に後ろから押された扉付近の人が勢い良く飛び出てきた。
 例えるなら便秘の時に勢い良く出たウンピーみたいな感じかな? 
 あの時の快感は最高だよね。本当につい頬が緩んじゃうよね。
 あ、今はそんなことを考えている場合じゃない。地獄に突入する前だ。
 電車からはゾンビのような表情の学生や会社員が降りてくる。酷い顔……。
 思わずハロウィンの季節が四月かと思っちゃったよ。まだ、半年も早いね……。

「……よし、アレに乗るよ……」

 拳を握り気合い入れたが、実際は全く乗り気ではない。あ~本当に嫌い。
 けど、そんなネガティブになっている場合じゃない。てか、乗っても同じ気持ちになるのだから、そこは我慢っと! こういうところで私の長所を活かさないと!
 そう思い電車に乗り込む。
 けど……イーターい! もう痛い、痛い。いや、痛いどころじゃないよ。
 何でこの外国人はこんな朝からこんなデカいバッグ持っているの!
 こっちのおばさんは臭い! 鼻が捥げるわ! このクソ香水ババァ、絶対に彼氏いないわ~。てか、結婚もできないだろうな、うぇ~だ!
 うわ~、いたよ、いた! 香水と地獄のハーモニーを奏でる悪魔の臭いの持ち主が!
 その持ち主の名は……知らないがハゲの中年のおっさん。加齢臭というスカンク顔負けの猛烈な臭いを放っている。
 はぁ、それにしてもどうしたらこんな臭いがするようになるの? カレーの食べすぎ? 
 加齢臭だけに! ここ笑うところですよ、皆さん!
 まぁ、こっちは全く笑える状況じゃないですけどね。そのおっさんが目の前にいるから仕方ないよね……。
 しかも、至近距離。
 おい、やめろ! これ以上は近づかないで! 私の心がそう叫んでいる……。

「ご、ごめんね……へへへ」

 何でその距離で口を開けたの? バカなの? アホなの? それとも女子高生に加齢臭を浴びせる性癖なの?
 本当にあり得ない、死ね。
 おっと、言葉使いが悪くなってしまった。ここは謝るとするね。
 ごめんなさい、加齢臭化け物性癖おっさん。死なないで生きてください。てへ!
 おー完璧だ。っておっさんになんか返事しないと!

「……満員電車なんですから、仕方ないですよ! 一緒に我慢ですね!」

 私は嫌な顔一つ見せず、笑みを浮かべて乗り切った。優しすぎるよ私!
 もし、ギャルなら「マジで、超臭いんですけどー、吐き気! マジ吐き気!」とか普通に言うはずだよ。
 そう考えるとこのおっさんの前が私で感謝してほしい。

「おい、頼むから乗せてくれ~」

 あ~あ、「プシュ~」って音で電車は閉まっちゃったよ。乗れなかった会社員一年目の新人、ドンマイ! グッドラック!
 おっと、そんな余裕を見せている場合じゃなかった。ここからが地獄。
 まぁ、ずっと地獄だけどね。
 私の降りる駅は次だけど、駅の区間距離的にはかなり長い。約七分というところかな?
 好きなことで七分と嫌いなことで七分ってありえないほどの差があるよね。アレ、本当に何でなのかな?
 同じ時間なのにワケわかめだよね。
 それにしても静かだ。満員電車ってなぜか静かだよね。
 アレだけの人がいるのに声が全くしないって変な感じだ。けど、この状況じゃ無理もないか。
 それともマナーなのかな?
 聞こえる音って言えば、スマホの音か、イヤホンから音漏れした音楽の微かに聞こえる音、鞄を動かす音など。
 耳に入るものとしてはこれぐらい。
 まぁ、今は音なんか気にしてられないけどね。
 それにしても長い、長い、長い。駅を出て何分経っただろうか?
 スマホは鞄の中だし、時計は付けてない。外の景色も人間という壁によって見えないから今、どこにいるのかさえも分からない。
 だから、今できることは時が経つのを待つだけ。そう、待つだけ。

「間もなく、SM高等学校前、SM高等学校前。お出口は右側です」

 これが聞えたということはそろそろ駅につくということだ。
 やっと、地獄から解放される。本当に長かった……え、待って! ちょ、ちょっと……。
 な、何でこの状況で来ちゃうの。もう着くというのに。
 本当にあと少しで駅だったんだよ。時間的にはおそらく一分あるかどうかぐらい。
 なのに何で……またこのタイミングなの?
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