魔性少女カスミちゃん~隣の刹那君は私に惚れない~

三一五六(サイコロ)

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八性 終わりの始まり

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「一度、落ち着いて話し合わない? 私、まだ状況が把握できてないの」
「そ、そうだね。いきなり始めるよりも、昔みたいに楽しく話し合ってからする方がいいもんね!」

 別に昔も今も楽しくないと思うんだけどな。
 そこは置いといて、話し合えるようにできたのは大きい。
 好きな人からの提案だから、引き受けてくれたのかな? まぁ、何でもいいけど。

「あ、二人で話すのはもう何年振りかな?」
「四年五カ月二十一日二十三時間四十二分五十三秒振りだよ! 覚えてないの?」

 覚えてるわけないだろ! そんな詳しいやつおるか!
 てか、こっわ! 何で秒単位で覚えてるだよ! 本当にこっわ!
 完全に体中に鳥肌が立ったよ。もう全細胞が勃起してるもん。

「そ、そ、そんなに経ったんだね」
「もしかして忘れてたの?」
「……そ、そんなわけないじゃん」

 怖いから、その眼力怖すぎるから!
 こんなの覚えてるって答えるしかないよ。じゃないと多分、ヤられる。色んな意味で。

「あの時は急に転校しちゃってごめんね。まだ小学生だったから、僕も父の命令には逆らえなかったんだ。かすみは悲しい思いをしていたと思うけど、いや、していたよね……僕も悲しかったよ」

 全く悲しくないから安心してください。そして申し訳なさそうな顔をするのをやめろ!
 薫は『転校しちゃってごめん』と思っているみたいだけど、私は『転校してくれてありがとう』と思っていたから。だから、謝る必要なんかないさ。
 逆に私が感謝するよ。

「そ、そうなんだ……」

 まぁ、感謝なんかできないけどね。

「けどね、今は違う! 僕は父から離れて、そして今、かすみに会っている! もう今はあの時のように親からの邪魔は入らない! だから、安心して大丈夫だよ!」

 薫は私のことが好きすぎて家を出て、私に会いに来たってこと?
 ハァ……そこまでして私に会いに来るとか、言葉が見つからないよ。
 てか、親の邪魔が無くなっても、こんなやり方で私と会ったら、次は警察の邪魔が入ると思うんだけど……。

「そこまでして私を求める理由って?」
「好きだから……大好きだからだよ!」
「それだけなの?」
「理由としてはこれで十分だと思うんだけど……かすみもそうだろ?」

 薫は本当に純粋に私が死ぬほど好きなんだ。
 それがあの日、爆発して止められなくなったみたい。
 今思えば私があの時、抵抗せずにヤってしまったから、薫をこんな状態にしてしまったのだと思う。
 私が薫の人生の半分を失わせたようなものだ。
 そう考えると、私にも少しばかりは責任がある。
 だから、薫のこの状態を私が治さなければならない。
 そうなると言うことは一つ。

「私は君のことが好きではない」

 その言葉を口にした瞬間、二人のいる部屋は沈黙に包まれた。
 まるで、時間が止まったのではないかと思うほど、薫は動かず、言葉を発しない。
 私も同じく、口から音が出ない。
 だが、時は動き出す。地獄と言う名の時間が……

「……な、何で、何でだよ? 僕がこんなに好きなのに、何でかすみは僕のことが好きじゃないの? おかしいよね? ね?」
「やっ、やめて! 私は君を君が私を見るような目で見たことないっ!」

 肩を捕まれ、激しく私の体を揺さぶる薫。その顔はもう落ち着いてはいない。
 何かに取り憑かれたのかと思うほど、激しく醜い。

「この四年もの間、かすみは僕の夢に出てきてくれたじゃないか! そして『薫と早く夢の外で会いたい』って言ってくれたじゃないか! 他にもテスト前には勉強したり、温泉旅行に疲れを癒しに行ったり、毎日楽しかった。けど、あの日のように一つになっても何も気持ち良くなかった……」

 夢の私と何してるんだよ! お金払え、お金!

「そんなこと言われても私は私! 君の夢に出てきた私は君が作り上げた幻想だよ」
「げ、幻想……」
「そうだよ。だから、君が夢の中で言われたこと、してきたことは私には全く関係ないの!」
「……関係ない……だと」
「わ、分かってくれた? だから、早くこのロープを解いてくれるかな?」

 やっと、夢と現実の違いを分かってくれたかな?
 もう薫の私への思いは終わり。
 何もかも忘れて、元に戻って……。
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