魔性少女カスミちゃん~隣の刹那君は私に惚れない~

三一五六(サイコロ)

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八性 終わりの始まり

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「あれれ~? 警察官が何してるのかな?」
「ん? 警察官のコスプレでローププレイをして何が悪い?」
「え、コスプレ?」
「ああ、そうだ。だから、出て行ってくれ」

 扉の方から聞き覚えのあるような声が聞える。
 だが、下毛さんが丁度被っていて何も見えない。

「こ、この警察官は本物です! 襲われているんです! 助けてください!」
「へ~、警察官の人、嘘をついてたんだ」
「このガキの言葉に耳を傾けるな! 出て行けって言ってんだろ!」
「まぁ、何でもいいけど。それにしても、追い込まれた人間の表情はいいものだね。それに嘘がよく出てくるから面白い」
「「え?」」
「だから、君達二人が嘘をついていることは知っている。だから、俺に何を言おうが無駄なんだよ。ほら、取り押さえろ!」
「「イエス、ボス」」

 下毛さんが立ち歩き、扉の方が見えたと思ったら二人のムキムキな黒人が寄って来る。
 白いタンクトップにジーンズの短パン、それにサングラス。
 見るからに強そうだが、下毛さんはさっきのように向かって行く。

「お前らみたいな鍛えているだけの筋肉バカが、僕を捕まえられるとでも?」
「メイレイ、ゼッタイ!」
「ツカマエル、ゼッタイ!」
「へ~、お前ら如きが僕を捕まえると。日本の警察官がどれだけのものか見せてやるよ!」
「「ノゾム、トコロ!」」

 二対一、どう考えても下毛さんに勝ち目はない。体格差を見ても圧倒的。
 だが、さっきの薫との戦いを見た感じ下毛さんは武術はかなりのもの、それに警察官という実戦経験があるプロだ。
 そう考えると、この相手でもどうにかなるかもしれない。

「ボス、ツカマエタ」

 って、やっぱり無理だよね。分かってたよ。
 圧倒的なスピード、リーチの長さ、二人のコンビネーションにより下毛さんは手も足も出ずにあっさり捕まった。
 有名なことわざの弱い犬ほどよく吠えるとはこういうことなのだろう。

「……イ、イってぇ……。お、お前らは何者だ!」
「そこの二人は誰でも一度は耳にしたことのある元アフリカ武装集団の戦闘員だよ。日本の警察官? そんな奴らとは比べものにならない。こいつらは殺し合いの実戦経験、圧倒的パワーと技術、そして知識。全てを持っている戦闘のプロだ」
「そ、そんなやつがなぜ……」
「それは俺が……買ったからな。今は俺のボディーガードさ! おい、お前ら! 女のロープを外し、服を着たのを確認できたら、ここまで連れて来い!」
「「イエス、ボス」」

 その命令によって、手際よく私の手足に付けられていたロープが外される。
 そんな黒人達だが、体が大きい割には手先が器用で少し見とれてしまった。

「あ、ありがとうございます」

 そう言うと、二人は一歩下がり小さく会釈をした。
 そして、私はやっと自由になった手でタオルで胸を隠し、シャツのボタンを付ける。
 残念ながら、ビンビンの乳首はタオルの上からでもしっかり目立っていた。
 この際、乳首なんかどうでもいいけどね。
 だって、この短時間で何人に見られたか分からないし、ハァ……。
 最後にスカートのファスナーを上まで上げて着替えは終わった。

「オンナ、コイ」

 黒人の一人が私の腕を掴み、扉の方へ連れて行く。
 正直、腕が痛い。握力なんぼだよ、お前はゴリラか!
 って、ゴリラだったら腕の骨は粉々か。

「久しぶりだね、カスミ!」

 そこに立っていたのは……

「……た、大志君!」

 そう、あのマナの彼氏の大志君だ。
 最近はマナとの危機とかで、話の話題になることが多かったが、大志君と実際に会うのはあの卒業させた日以来。
 それにしても何故ここに?

「襲われていたみたいだけど、大丈夫?」
「うん、大丈夫。それより家の用事は?」
「今、その用事でここに来てたんだよ。じゃあ、たまたまカスミを見かけてね」
「ど、どういうこと?」

 大志君の言っている意味が全く分からない。
 ここは貸し切りのホテル。そんな場所に家の用事で来るなどあり得ない。
 あるとしたら……って、まさか!

「その表情は分かったみたいだね。そう、ここは俺の経営するホテルなんだよ」
「や、やっぱり。けど、用事は大丈夫なの?」
「大丈夫、それならもう少しだから……」

 私を安心させるためなのか、満面の笑みを見せる。

「じゃあ、行くよ」
「え、あ、うん」

 振り返り、歩き出す大志君に私は小走りでついて行く。

「おい、待って!」
「そうだ、かすみをどうするつもりだ!」
「ダマレ、ゴミ!」
「ペニス、フェラ、シロ!」
「や、やめ、やめろぉ~。そんな汚物を顔に向けるなぁ!」
「い、嫌だ……け、汚れたくない。た、助けてよ。助けて、かすみぃ~」

 下毛さんと薫の裏返るほどの叫び声が聞えるが、私にあんなことをしたのだから自業自得だ。
 それに男同士だから暴力しか……。
 私の耳に片言の外国人から、発音の良い『ペニス』と『フェラ』が聞えたことはおそらく空耳だろう。
 うん、絶対にそうだ。
 そう思い込んだ私だが、脳内に二人が黒人の立派な物を咥えさせられている情景が浮かんでいることは今後誰にも言うことはないだろう……。
 そんなことは置いといて、今からどうしようか?
 このまま家に帰るのがベストだけど、ギリギリのところで助けてもらったからな。
 それにまずここがどこなのかが分からない。
 ホテルの廊下なのだが、部屋ばかりで窓が一切ない。

「た、大志君」
「どうかした? トイレ?」
「いや、それは大丈夫かな。それより今からどこに行くの?」
「あー言ってなかったね、屋上だよ屋上」
「な、何で屋上なの?」
「もう少しすれば、ヘリが来る。それに乗ってここから逃げるんだよ」
「どういう――」
「ほら、屋上だよ!」

 私の言葉を遮るかのように、扉を開けて屋上に出る。
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