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第一章:アナザーニューワールド
44 脱出
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「それでいいニャ、もう時間ないニャ。扉から離れるニャ。」
ドーーン!!
アズがそう警告した瞬間、大きい衝撃音と共に駕籠が横転し、扉が破壊されて外に出れるようになった。
「きゃあああ!!」
二人はいきなりの轟音と衝撃に、駕籠と一緒にひっくり返るがケガはない。
「それじゃ行くニャ! 走ってついて来るニャ。」
二人は体を起こすと、すぐに立ち上がって駕籠の外に出た。
ドン! ドン!! ドン! ドン!!
規則正しく何かが落下する轟音が辺りに鳴り響く。
外は既に暗くなっており、かがり火のお蔭で近くならギリギリ見えているが、遠くはほとんど見えない。
外で何が起きているのかわからないが、とにかく急いで駕籠から脱出する。
ムギュッ!
駕籠から出たヒヨリンは何かを踏んだ感触を足裏に感じる。
反射的に自分が踏んだ物を見ると、そこにあったのは駕籠を持っていた大柄の赤鬼の顔だった。
「キャア!!」
赤鬼は白目を剥いて気絶している。
びっくりしたヒヨリンは転びそうになるが、それをマリリンは受け止めた。
「ヒヨリンしっかりして! 大丈夫、気絶してるわ。 急いで猫ちゃんを追いかけるわよ。」
そして二人は、駕籠の周りには赤鬼しかいなかったのもあり、誰にも気づかれることもなく鬼族の野営地から抜け出す事に成功する。
「アズちゃん、どこに向かってるの?」
「このままついて来るニャ。そろそろニャ。」
にゃーーーー!!
マリリンの質問に答えた後、突然アズが大きな鳴き声を出した。
すると、目の前を走っていたアズが消える。
「え? 何? アズちゃんどこいったの!」
二人は困惑しながらもアズが最後に見えたところまで走ると……
ーー穴に落ちてしまった。
「きゃあぁぁぁ!」
絶叫をあげて穴に落ちていくマリリンとヒヨリン。
そして二人が落ちると同時に、上の穴がふさがった。
二人は、まっすぐ下に落ちたかと思うと、なぜか直ぐにお尻が壁と接触する。
どうやらこの穴は最初こそ垂直であるものの、構造的には傾斜のある穴らしい。
垂直から傾斜に変わった事で、地面部分にお尻がつき、滑り台を滑るのように下降し始める。
そして不思議な事に、壁はつるつるしていて摩擦を感じさせなかった。
シューー!!
ひたすら重力に従って滑り落ちていくマリリンとヒヨリン。
穴に落ちた時の恐怖こそ薄れたものの、先の見えない落下に不安を覚え始めた。
「ねぇマリリン、これいつまで滑るのかな?」
「私に聞いたってわからないわよ! 大分慣れたけど、これ早すぎない?」
二人の落下スピードは、ジェットコースター並みだった。
その速度で落ち続けるにも関わらず、いつまでも落下し続け、更に先は闇で真っ暗。
頼りのアズが見えない事もまた二人を不安にさせる。
「ねぇ長すぎるよ! このまま地の底まで行ったらどうしよ? 出られないよ!!」
「おばぁ様を信じるのよ! きっと大丈夫よ!!」
マリリンは気丈に振舞った。
ヒヨリンの不安にマリリンも同意したいところだが、姉としてこれ以上不安にさせるわけにはいかない。
しかしその後直ぐに、二人の不安が薄れる事となった。
なぜならば、遠くに明かりが見えてきたからである。
「なんか見えてきたよ! あ! 猫ちゃん!」
ヒヨリンは遂にアズを発見する。
シューー!!
そして傾斜が更に緩くなっていくと、そのまま減速し、そして落下が止まった。
辺りを見渡すと、そこは松明が壁に設置された直径30メートル位の広間になっている。
「やっと来たニャ、ここでしばらくシンを待つニャ。にゃから、シンが来たら起こすニャ。にゃあはもう眠いニャ。」
アズは降りてきた二人を見てそれだけ告げると、その場で丸くなった。
「ちょ! 待ってよ、アズちゃん! シンって言われても、私達会ったこともないからわからないわ!」
マリリンの叫びが広場にコダマする。
そんなマリリンをよそに、ヒヨリンは丸くなったアズに近づくと、アズを抱き上げた。
「寝るなら一緒!」
ヒヨリンは寝ているアズを抱き上げて、膝の上に丸くなったアズを置いて目を閉じた。
その行動に茫然とするマリリン。
「もういいわよ! 私が起きてるわよ!」
マリリンは意外に図太い神経を見せるヒヨリンを見て、不貞腐れながらもまだ見ぬシンを待つのだった。
ドーーン!!
アズがそう警告した瞬間、大きい衝撃音と共に駕籠が横転し、扉が破壊されて外に出れるようになった。
「きゃあああ!!」
二人はいきなりの轟音と衝撃に、駕籠と一緒にひっくり返るがケガはない。
「それじゃ行くニャ! 走ってついて来るニャ。」
二人は体を起こすと、すぐに立ち上がって駕籠の外に出た。
ドン! ドン!! ドン! ドン!!
規則正しく何かが落下する轟音が辺りに鳴り響く。
外は既に暗くなっており、かがり火のお蔭で近くならギリギリ見えているが、遠くはほとんど見えない。
外で何が起きているのかわからないが、とにかく急いで駕籠から脱出する。
ムギュッ!
駕籠から出たヒヨリンは何かを踏んだ感触を足裏に感じる。
反射的に自分が踏んだ物を見ると、そこにあったのは駕籠を持っていた大柄の赤鬼の顔だった。
「キャア!!」
赤鬼は白目を剥いて気絶している。
びっくりしたヒヨリンは転びそうになるが、それをマリリンは受け止めた。
「ヒヨリンしっかりして! 大丈夫、気絶してるわ。 急いで猫ちゃんを追いかけるわよ。」
そして二人は、駕籠の周りには赤鬼しかいなかったのもあり、誰にも気づかれることもなく鬼族の野営地から抜け出す事に成功する。
「アズちゃん、どこに向かってるの?」
「このままついて来るニャ。そろそろニャ。」
にゃーーーー!!
マリリンの質問に答えた後、突然アズが大きな鳴き声を出した。
すると、目の前を走っていたアズが消える。
「え? 何? アズちゃんどこいったの!」
二人は困惑しながらもアズが最後に見えたところまで走ると……
ーー穴に落ちてしまった。
「きゃあぁぁぁ!」
絶叫をあげて穴に落ちていくマリリンとヒヨリン。
そして二人が落ちると同時に、上の穴がふさがった。
二人は、まっすぐ下に落ちたかと思うと、なぜか直ぐにお尻が壁と接触する。
どうやらこの穴は最初こそ垂直であるものの、構造的には傾斜のある穴らしい。
垂直から傾斜に変わった事で、地面部分にお尻がつき、滑り台を滑るのように下降し始める。
そして不思議な事に、壁はつるつるしていて摩擦を感じさせなかった。
シューー!!
ひたすら重力に従って滑り落ちていくマリリンとヒヨリン。
穴に落ちた時の恐怖こそ薄れたものの、先の見えない落下に不安を覚え始めた。
「ねぇマリリン、これいつまで滑るのかな?」
「私に聞いたってわからないわよ! 大分慣れたけど、これ早すぎない?」
二人の落下スピードは、ジェットコースター並みだった。
その速度で落ち続けるにも関わらず、いつまでも落下し続け、更に先は闇で真っ暗。
頼りのアズが見えない事もまた二人を不安にさせる。
「ねぇ長すぎるよ! このまま地の底まで行ったらどうしよ? 出られないよ!!」
「おばぁ様を信じるのよ! きっと大丈夫よ!!」
マリリンは気丈に振舞った。
ヒヨリンの不安にマリリンも同意したいところだが、姉としてこれ以上不安にさせるわけにはいかない。
しかしその後直ぐに、二人の不安が薄れる事となった。
なぜならば、遠くに明かりが見えてきたからである。
「なんか見えてきたよ! あ! 猫ちゃん!」
ヒヨリンは遂にアズを発見する。
シューー!!
そして傾斜が更に緩くなっていくと、そのまま減速し、そして落下が止まった。
辺りを見渡すと、そこは松明が壁に設置された直径30メートル位の広間になっている。
「やっと来たニャ、ここでしばらくシンを待つニャ。にゃから、シンが来たら起こすニャ。にゃあはもう眠いニャ。」
アズは降りてきた二人を見てそれだけ告げると、その場で丸くなった。
「ちょ! 待ってよ、アズちゃん! シンって言われても、私達会ったこともないからわからないわ!」
マリリンの叫びが広場にコダマする。
そんなマリリンをよそに、ヒヨリンは丸くなったアズに近づくと、アズを抱き上げた。
「寝るなら一緒!」
ヒヨリンは寝ているアズを抱き上げて、膝の上に丸くなったアズを置いて目を閉じた。
その行動に茫然とするマリリン。
「もういいわよ! 私が起きてるわよ!」
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