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10:ダニエルの罪悪感①
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「やっぱり、これにするわ!」
ようやくジュリアがそう言ったものだから、ダニエルは顔を輝かせた。
これでやっと解放されると思えば、自然と笑顔まで浮かんでくる。
しかし、ジュリアの隣でレースを掲げていたお針子が
「では、次は寸法を測りますので、こちらへ……」
とジュリアを隣室へ連れていくのを見ると、がっかりしてしまった。
「では、行ってまいりますわ」
「行ってらっしゃい」」
部屋を出て行くジュリアと、伯爵夫人を見送りながら、ダニエルは心の中で毒づいた。
いったい何時間かければ気が済むんだ!
この店に入ってから、もうどのくらい時間が経ったのだろう。
店中の品物を点検してるのではないかと思うほど、大量の布地やらレースやらを見続けるジュリアに、ダニエルはすっかり疲れてしまっていた。
時折、どちらが良いかと聞かれたものの、これがまた彼を困らせた。
ダニエルの目には、ジュリアが示すものは全部同じにしか見えなかったのである。
しかし、まさか思ったままを口にするわけにもいかない。
その為、どちらも似合うと言うしかなかったのだった。
いっそのこと居眠りでもして時間をつぶしたいところであったが、ジュリアの両親も同席しているとなれば、当然そんなことはしていられない。
笑顔で鏡にむかい続けるジュリアをぼんやりと眺めながら、これがルイーズの花嫁姿だったら……と想像して、寝ないようにするのがやっとという状態だったのである。
そして今、やっとこの苦行から解放されると思ったというのに、どうやら、まだまだかかりそうだ。
しかし逃げ出すわけにもいかない。
仕方なく、どっかりと椅子に座り直したところで、バレないように小さくため息をついたのだったが。
不意に、伯爵がこちらを見ていることに気が付いて、慌ててしまった。
「す、すみません」
しかし彼は笑って手を振ってくれた。
「いやいや、良いんだよ。
男にとっては、こういうのはどうにも退屈だもんな」
「え……まあ、そうですね」
恐る恐る言ったが、伯爵は怒るどころか楽しそうな笑い声をあげた。
「そうだよなあ。
思い出すよ……私の結婚式の時も、妻がウエディングドレスにこだわってね。
そりゃあ何時間もかかったもんさ」
「そうだったんですね」
「うん。だから、今度はジュリアの番だと思うと、妻も嬉しいんだろう。
私も、2人が楽しそうにしているのを見ると、まあ退屈ではあるが、なんだか嬉しくもあってね」
そう言って微笑んでいた伯爵だったが、不意に目頭を指で押さえたものだから、ダニエルは慌ててしまった。
どうやら、思い出に浸るあまり、感極まってしまったらしい。
「いや、すまないね。
でも、大切に育ててきたジュリアが、嫁にいくのかと思うと……」
と言いながら、伯爵は言葉を詰まらせる。
「いえ……」
ダニエルは、そう呟くのが精一杯だった。
彼の顔を見ていると、ほんの少しだけ、胸が痛んでしまったのである。
そんなに大切な娘を、自分が婚約破棄しようと企んでいると知ったら、この父親はどんな顔をするのだろう。
そう考えて、ダニエルは顔をしかめた。
罵られるだけで済むはずはない。
怒りに任せて、何をされるか……。
ダニエルの想像は悪い方向へと、どんどん膨らんでしまって、思わず身震いしたのだった。
ようやくジュリアがそう言ったものだから、ダニエルは顔を輝かせた。
これでやっと解放されると思えば、自然と笑顔まで浮かんでくる。
しかし、ジュリアの隣でレースを掲げていたお針子が
「では、次は寸法を測りますので、こちらへ……」
とジュリアを隣室へ連れていくのを見ると、がっかりしてしまった。
「では、行ってまいりますわ」
「行ってらっしゃい」」
部屋を出て行くジュリアと、伯爵夫人を見送りながら、ダニエルは心の中で毒づいた。
いったい何時間かければ気が済むんだ!
この店に入ってから、もうどのくらい時間が経ったのだろう。
店中の品物を点検してるのではないかと思うほど、大量の布地やらレースやらを見続けるジュリアに、ダニエルはすっかり疲れてしまっていた。
時折、どちらが良いかと聞かれたものの、これがまた彼を困らせた。
ダニエルの目には、ジュリアが示すものは全部同じにしか見えなかったのである。
しかし、まさか思ったままを口にするわけにもいかない。
その為、どちらも似合うと言うしかなかったのだった。
いっそのこと居眠りでもして時間をつぶしたいところであったが、ジュリアの両親も同席しているとなれば、当然そんなことはしていられない。
笑顔で鏡にむかい続けるジュリアをぼんやりと眺めながら、これがルイーズの花嫁姿だったら……と想像して、寝ないようにするのがやっとという状態だったのである。
そして今、やっとこの苦行から解放されると思ったというのに、どうやら、まだまだかかりそうだ。
しかし逃げ出すわけにもいかない。
仕方なく、どっかりと椅子に座り直したところで、バレないように小さくため息をついたのだったが。
不意に、伯爵がこちらを見ていることに気が付いて、慌ててしまった。
「す、すみません」
しかし彼は笑って手を振ってくれた。
「いやいや、良いんだよ。
男にとっては、こういうのはどうにも退屈だもんな」
「え……まあ、そうですね」
恐る恐る言ったが、伯爵は怒るどころか楽しそうな笑い声をあげた。
「そうだよなあ。
思い出すよ……私の結婚式の時も、妻がウエディングドレスにこだわってね。
そりゃあ何時間もかかったもんさ」
「そうだったんですね」
「うん。だから、今度はジュリアの番だと思うと、妻も嬉しいんだろう。
私も、2人が楽しそうにしているのを見ると、まあ退屈ではあるが、なんだか嬉しくもあってね」
そう言って微笑んでいた伯爵だったが、不意に目頭を指で押さえたものだから、ダニエルは慌ててしまった。
どうやら、思い出に浸るあまり、感極まってしまったらしい。
「いや、すまないね。
でも、大切に育ててきたジュリアが、嫁にいくのかと思うと……」
と言いながら、伯爵は言葉を詰まらせる。
「いえ……」
ダニエルは、そう呟くのが精一杯だった。
彼の顔を見ていると、ほんの少しだけ、胸が痛んでしまったのである。
そんなに大切な娘を、自分が婚約破棄しようと企んでいると知ったら、この父親はどんな顔をするのだろう。
そう考えて、ダニエルは顔をしかめた。
罵られるだけで済むはずはない。
怒りに任せて、何をされるか……。
ダニエルの想像は悪い方向へと、どんどん膨らんでしまって、思わず身震いしたのだった。
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