フィアンセは、婚約破棄されようと必死です

ゆきな

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42:ルイーズの強硬手段

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煌びやかなロウソクの灯りに照らされながら、たくさんの男女が手を取り合い、音楽に合わせてダンスを楽しんでいる。
その中には、ダニエルとジュリアの姿もあった。

今夜はいつも以上に混雑しているというのに、まるで他の招待客など目に入らないという様子で、熱っぽく互いを見つめ合う2人。
そんな彼らを、遠目から、じっと見つめる2つの人影があった。
ルイーズとケインである。

柱の影に身を隠しながら、ルイーズはギリギリと歯噛みした。

「なんだかすっかり良い雰囲気じゃないの。
この私を差し置いて!
ああ、まったく信じられないわ!」
「ほらほらルイーズ、落ち着いて。
そんな怖い顔をしていたら、人に見られるじゃないか」
「ちょっと、誰が怖い顔よ!
私のこの美しさが分からないなんて、本当にもう、どいつもこいつも……」

ルイーズはブツブツ言いながらも、柱にかじり付くようにして、ダニエル達から目を離さない。
そして彼らの行動を逐一チェックしていたのだったが、不意に

「チャンスだわ」

と呟いた。
ちょうど音楽が止まり、ダンスを終えたダニエルがジュリアに何か言って、1人で歩き出したのが見えたのである。

彼の行き先に目をやれば、どうやら飲み物を取ってくるつもりらしい。
ルイーズはニヤリと笑って、ケインを振り返った。

「さあ、行くわよ。
私はダニエルのところへ。
あなたは……」
「ああ、分かってる。
僕はジュリアのところへ」

ルイーズはケインと別れると、早足に、人の間を縫うようにして歩いて行った。
そしてさりげなくダニエルの隣に並ぶと、とびきりの笑顔を浮かべて、口を開いた。

「あら、ダニエル。来ていたのね」
「ル、ルイーズ……?」

ダニエルはまるで幽霊でも見たように青ざめた。

「こんなところで、何をしているんだ」

コソコソと囁いてくる彼に、ルイーズがイライラしないはずがない。
しかし彼女は、なんとか怒りを押し殺し、笑顔のまま答えた。

「あら、ご招待頂いた夜会に来ているだけよ。
それが、何か問題なのかしら」
「いや、そういうわけじゃないけど……」

ダニエルは心配そうに辺りをキョロキョロしている。
おおかた、ジュリアに見られていないか気にしているのだろう。

しかし彼の心配は杞憂に過ぎぬことを、ルイーズは知っていた。
なぜなら今頃彼女はケインに連れられて、ここから少し離れたところにいるはずだったからである。
もちろん、杞憂で済むのは今だけであることも、ルイーズは知っていたのだが。

「はい、どうぞ。2つね。
彼女の分も持っていくのでしょう?」

ルイーズはテーブルに並べられたグラスを、ひとつずつ両手に取ると、ダニエルに手渡した。

「え?あ、ああ……ありがとう」

ルイーズは、不審そうな顔のダニエルに微笑んだ。
それからもう一つ、今度は自分の分のグラスを手にすると、ゆっくり唇に運んだ。

「そんな心配そうな顔をしなくても大丈夫よ。
少しくらい婚約者以外の女性と話したからって、不自然ではないでしょう?」
「それはそうだけど……」

それでもやはり不安そうなダニエルに構わず、ルイーズはグラスを空にする。
そしてさりげなく目を上げると、ダニエルの肩越しに、ケインとジュリアが話しながら歩いているのを確認した。
作戦通りにいけば、これからケインがこちらに彼女を誘導してくれるはずだ。

ルイーズは深く息を吸った。
それから、手にしていたグラスをテーブルに置くと、急にバランスを崩してよろけてしまった。

「きゃっ……」

これはもちろんワザとだ。
しかし効果は絶大だった。
ほとんど反射的に、ダニエルが手を差し伸べてくれたのである。

ルイーズはすかさずその手を取ると、彼の首に思い切りしがみつく。
それから力任せに引き寄せるなり、唇を重ね合わせた。

途端に周囲から好奇の悲鳴が上がった。
懸命に体を離そうとするダニエルを必死に捕まえながら、ルイーズは満足げに微笑んだ。
視線の先に、これ以上ないほど大きく目を見開いてこちらを見ているジュリアの姿をとらえたのである。

相当ショックだったのだろう。
ほとんど転がるようにして駆け出していくジュリアを、ケインが慌てて追いかけていくのが見えた。


……やったわ。


ルイーズは心の内でニヤリとした。
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