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41:ケインの条件
「それでダニエルは『ジュリアと結婚する』と言うだけ言って、逃げて行ったというわけか!
こりゃあ良い!
あいつにしては頑張ったじゃないか」
「笑い事じゃないわよ!
まったく最低最悪な日だったわ」
腹を抱えて笑うケインを、ルイーズは恨みがましい目つきで睨んでくる。
しかしその顔を見ていると、我慢しようと思っても、また笑いが込み上げてきてしまって。
なんとか口は閉ざしたものの、明らかに肩がぷるふと震えているものだから、ルイーズの機嫌はますます悪くなっていく。
しかしケインも、彼女の話を聞いて単に笑い転げているばかりではなかった。
ダニエルがジュリアと結婚を決意したということは、完全に自分の方が分が悪くなったと分かっていたのである。
せっかくここまで、着々とジュリアを揺さぶって、ダニエルに不信感を抱かせてきたというのに、これでは台無しである。
ダニエル本人に出て来られては、ジュリアの目に自分など簡単に映らなくなってしまうだろう。
いや、もうすでに映ってはいないに違いなかった。
「さて、ではどうするか……」
ケインは長い足を優雅に組み替えながら、ため息をついた。
するとそこで、ルイーズが口を開いたのである。
「1つ良い考えがあるのよ。
私とあなたで手を組めば、きっと上手くいくわ
」
「良い考えね……。
それ、本当に上手くいきそうかい?」
「大丈夫よ。
ダニエルより余程頭の回るあなたがいれば、必ず……ね」
おだてられてもケインは肩をすくめるばかりで、笑顔を浮かべようとはしなかった。
しかしすぐに片手を挙げると
「分かったよ。
じゃあ、『良い考え』っていうのに、乗ろうじゃないか」
「本当?」
途端に目を輝かせて身を乗り出してくるルイーズ。
けれども、それを追い払うかのように手を振る仕草をしながら、ケインは苦々しく笑った。
「本当だよ。
でも頼むから、もう色仕掛けは無しだ。
いいな?」
「あ、当たり前でしょ!
頼まれたって、もう二度としてあげないわよ!」
「それから……」
ケインはピンと立てた人差し指を顔の前に上げた。
「条件が、1つある」
「条件……ね。なんなの?」
「今まで3人でやって来たことについては、ジュリアには絶対に言わないこと、だ。
まあダニエルが何をしてたかバレたって構いやしないが、とにかく僕が加担してたことは黙っててくれ」
「あら……そんなこと。
もちろん黙っているわ、大丈夫よ」
ルイーズはあっさり頷いたものの、手を唇に当てるとクスッと笑った。
「そんなことが条件だなんて。
あなたまで、あの子には本気なのね」
「当たり前だ。
もう何度もそう言っているだろう?」
「それはそうだけれど。
改めて言われると、なんだか……」
不意にルイーズの顔から笑顔が消えた。
目はうつろになり、真っ直ぐにケインに向けられているはずなのに、明らかに彼を見てはいなかった。
「なんだか、とっても嫌な気分だわ。
なによ皆して、あの子のことばかり」
ケインはゾクリとした。
媚を売ったり、怒り狂っている彼女は見たことがあっても、こんな顔をしているルイーズを見たのは初めてのことだった。
ルイーズは、もうケインがそばにいる事など忘れてしまっているかのように、ぼんやりとしながら、ブツブツと何か言い続けていた。
「絶対……絶対許さないわ。
私を捨てて、自分たちだけ幸せになろうなんて。
……絶対に許すものですか」
こりゃあ良い!
あいつにしては頑張ったじゃないか」
「笑い事じゃないわよ!
まったく最低最悪な日だったわ」
腹を抱えて笑うケインを、ルイーズは恨みがましい目つきで睨んでくる。
しかしその顔を見ていると、我慢しようと思っても、また笑いが込み上げてきてしまって。
なんとか口は閉ざしたものの、明らかに肩がぷるふと震えているものだから、ルイーズの機嫌はますます悪くなっていく。
しかしケインも、彼女の話を聞いて単に笑い転げているばかりではなかった。
ダニエルがジュリアと結婚を決意したということは、完全に自分の方が分が悪くなったと分かっていたのである。
せっかくここまで、着々とジュリアを揺さぶって、ダニエルに不信感を抱かせてきたというのに、これでは台無しである。
ダニエル本人に出て来られては、ジュリアの目に自分など簡単に映らなくなってしまうだろう。
いや、もうすでに映ってはいないに違いなかった。
「さて、ではどうするか……」
ケインは長い足を優雅に組み替えながら、ため息をついた。
するとそこで、ルイーズが口を開いたのである。
「1つ良い考えがあるのよ。
私とあなたで手を組めば、きっと上手くいくわ
」
「良い考えね……。
それ、本当に上手くいきそうかい?」
「大丈夫よ。
ダニエルより余程頭の回るあなたがいれば、必ず……ね」
おだてられてもケインは肩をすくめるばかりで、笑顔を浮かべようとはしなかった。
しかしすぐに片手を挙げると
「分かったよ。
じゃあ、『良い考え』っていうのに、乗ろうじゃないか」
「本当?」
途端に目を輝かせて身を乗り出してくるルイーズ。
けれども、それを追い払うかのように手を振る仕草をしながら、ケインは苦々しく笑った。
「本当だよ。
でも頼むから、もう色仕掛けは無しだ。
いいな?」
「あ、当たり前でしょ!
頼まれたって、もう二度としてあげないわよ!」
「それから……」
ケインはピンと立てた人差し指を顔の前に上げた。
「条件が、1つある」
「条件……ね。なんなの?」
「今まで3人でやって来たことについては、ジュリアには絶対に言わないこと、だ。
まあダニエルが何をしてたかバレたって構いやしないが、とにかく僕が加担してたことは黙っててくれ」
「あら……そんなこと。
もちろん黙っているわ、大丈夫よ」
ルイーズはあっさり頷いたものの、手を唇に当てるとクスッと笑った。
「そんなことが条件だなんて。
あなたまで、あの子には本気なのね」
「当たり前だ。
もう何度もそう言っているだろう?」
「それはそうだけれど。
改めて言われると、なんだか……」
不意にルイーズの顔から笑顔が消えた。
目はうつろになり、真っ直ぐにケインに向けられているはずなのに、明らかに彼を見てはいなかった。
「なんだか、とっても嫌な気分だわ。
なによ皆して、あの子のことばかり」
ケインはゾクリとした。
媚を売ったり、怒り狂っている彼女は見たことがあっても、こんな顔をしているルイーズを見たのは初めてのことだった。
ルイーズは、もうケインがそばにいる事など忘れてしまっているかのように、ぼんやりとしながら、ブツブツと何か言い続けていた。
「絶対……絶対許さないわ。
私を捨てて、自分たちだけ幸せになろうなんて。
……絶対に許すものですか」
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