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皆が出て行き、カトリーヌとスチュアートだけが残された室内は、しんと静まり返ってしまった。
まだ活発に動き続けている心臓の鼓動を感じながら、いつになく優しげなスチュアートの瞳をそっと見つめる。
スチュアートに聞きたいことはたくさんあった。
しかしどれから聞けば良いのかすら分からないほど、頭の中はゴチャゴチャだ。
それでも、スチュアートが静かにソファーに腰を下ろし、カトリーヌを誘うように隣をポンポンと叩いてくれるのを見れば、徐々に心も落ち着いてきた。
促されるまま隣にちょこんと腰をかけ、カトリーヌは口を開いた。
「レイラではなく、私の方が妹だと知っていたのですか?」
「……ああ」
「では初めから、本当に私に結婚の申し込みをして下さっていたのですか?」
「そう言っただろう」
確かに先程も聞いてはいたのだが、カトリーヌにはまるで信じられなかったのである。
まるで他人の話をしているかのように、フワフワとした手応えのなさを感じていたのだ。
しかしこうして改めて、スチュアートの眼差しをまっすぐに受け止めながら聞いていると、やっと、本当に自分の話だったのだと実感が出来た。
じわじわと喜びが心に染み込んでいくのが、分かるようだった。
それでも、まだまだ頭の中はハテナマークでいっぱいだ。
そもそも彼が自分の事をどうして知っていたのだろう。
それにレイラが本当は姉で、カトリーヌの方が妹だと何故知っていたのか、ということも不思議だった。
これは今までだって決して隠していたわけではない。
しかしレイラはいつだって当然のように妹のように振る舞っていた為、自然と皆が勘違いしていたのである。
カトリーヌももう否定して回るのも面倒で、途中からは何も言わなくなっていた。
親戚や家族でさえ、そんなことどちらでも良いと思っていたのか、いつもカトリーヌは姉として扱われていたほどである。
カトリーヌはスチュアートを見上げて、おずおずと訊ねた。
「あの……どうして私に結婚の申し込みをして下さったのですか?
接点など何もなかったような気がするのですが……。
それに私が妹だとなぜご存知だったのかも、不思議です」
「ああ……」
スチュアートは呟きながら顔を上げると、遠くを見るような目つきになって続けた。
「幼い頃に、会ったことがあるんだ。
キミたちは覚えてはいないだろうが」
「え?」
予想外の言葉に、カトリーヌはポカンとしてしまった。
しかし慌てて記憶を辿ってみても、それらしいものは何一つ思い出せない。
困惑した顔をしていると、スチュアートは小さく笑い声を上げた。
「やっぱり覚えていないだろうな」
「ご、こめんなさい」
「いや、かなり前のことだから当たり前だ。
それに遠縁の親戚の結婚式の為に滞在していた、たった数十日の間のことだったのだから」
そんなことがあっただろうか。
カトリーヌは何とかして思い出したいと、必死に記憶の糸を辿っていく。
しかしやはり思い出せずにいたところで、スチュアートが不意に、わきの花瓶から花を一輪抜き出すと、カトリーヌに差し出したのである。
「でもそのたった数十日で十分だった。
すっかりキミのことで頭がいっぱいになってしまった私は、この子と結婚すると、その時決めたんだ」
まだ活発に動き続けている心臓の鼓動を感じながら、いつになく優しげなスチュアートの瞳をそっと見つめる。
スチュアートに聞きたいことはたくさんあった。
しかしどれから聞けば良いのかすら分からないほど、頭の中はゴチャゴチャだ。
それでも、スチュアートが静かにソファーに腰を下ろし、カトリーヌを誘うように隣をポンポンと叩いてくれるのを見れば、徐々に心も落ち着いてきた。
促されるまま隣にちょこんと腰をかけ、カトリーヌは口を開いた。
「レイラではなく、私の方が妹だと知っていたのですか?」
「……ああ」
「では初めから、本当に私に結婚の申し込みをして下さっていたのですか?」
「そう言っただろう」
確かに先程も聞いてはいたのだが、カトリーヌにはまるで信じられなかったのである。
まるで他人の話をしているかのように、フワフワとした手応えのなさを感じていたのだ。
しかしこうして改めて、スチュアートの眼差しをまっすぐに受け止めながら聞いていると、やっと、本当に自分の話だったのだと実感が出来た。
じわじわと喜びが心に染み込んでいくのが、分かるようだった。
それでも、まだまだ頭の中はハテナマークでいっぱいだ。
そもそも彼が自分の事をどうして知っていたのだろう。
それにレイラが本当は姉で、カトリーヌの方が妹だと何故知っていたのか、ということも不思議だった。
これは今までだって決して隠していたわけではない。
しかしレイラはいつだって当然のように妹のように振る舞っていた為、自然と皆が勘違いしていたのである。
カトリーヌももう否定して回るのも面倒で、途中からは何も言わなくなっていた。
親戚や家族でさえ、そんなことどちらでも良いと思っていたのか、いつもカトリーヌは姉として扱われていたほどである。
カトリーヌはスチュアートを見上げて、おずおずと訊ねた。
「あの……どうして私に結婚の申し込みをして下さったのですか?
接点など何もなかったような気がするのですが……。
それに私が妹だとなぜご存知だったのかも、不思議です」
「ああ……」
スチュアートは呟きながら顔を上げると、遠くを見るような目つきになって続けた。
「幼い頃に、会ったことがあるんだ。
キミたちは覚えてはいないだろうが」
「え?」
予想外の言葉に、カトリーヌはポカンとしてしまった。
しかし慌てて記憶を辿ってみても、それらしいものは何一つ思い出せない。
困惑した顔をしていると、スチュアートは小さく笑い声を上げた。
「やっぱり覚えていないだろうな」
「ご、こめんなさい」
「いや、かなり前のことだから当たり前だ。
それに遠縁の親戚の結婚式の為に滞在していた、たった数十日の間のことだったのだから」
そんなことがあっただろうか。
カトリーヌは何とかして思い出したいと、必死に記憶の糸を辿っていく。
しかしやはり思い出せずにいたところで、スチュアートが不意に、わきの花瓶から花を一輪抜き出すと、カトリーヌに差し出したのである。
「でもそのたった数十日で十分だった。
すっかりキミのことで頭がいっぱいになってしまった私は、この子と結婚すると、その時決めたんだ」
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