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そんなことがあってから、ひと月が経った頃だった。
相変わらず人目を引く3人組を、あちらこちらで見かけることはあったが、あれから言葉を交わすことはないまま、時が過ぎた。
彼らは、もう自分たちのことなど覚えているまい、とネリーは胸を撫で下ろしていた。
あの時の出来事は、予想外な注目を浴びたと言う点では苦い記憶だったが、今となっては良い話の種になったとさえ、思い始めていたのだ。
それなのに
「ネリー。お前の婚約が決まったぞ。
相手はエドウィン男爵家の次男、マーティだ」
突然の父親の言葉に、ほとんど消えかけていたマーティの笑顔が、鮮明に蘇った。
「……急なお話ね」
と、かろうじて言うのが精一杯。
下唇を噛んで、ディアス伯爵の次の言葉を待った。
「そうかい?以前から相手を考えてはいたんだが、お前に話したことはなかったから、そう思うのかもしれないな。
それに、実はエドウィン家からは、もう随分前から熱心に婚約の申し出を受けていたんだよ」
こくん、とネリーは首を縦に振る。
いつかは、この時が来ると分かっていたはずなのに。
いざ来てみると、どうしても冷静ではいられなかった。
「マーティは男爵令息だから、身分としては格下ではあるが……よく話し合いをして、お前に有利になるように取り決めをしておいた。
安心しなさい」
ディアス伯爵はニッコリと微笑んだ。
「ええ。感謝致します、お父様」
「顔合わせは来月だ。新しいドレスでも仕立てておきなさい」
「はい」
ネリーはそう言うと、ディアス伯爵の返事も待たずに、踵を返して退室した。
そして、身支度もそこそこに馬車に乗り込むと、一目散にやって来たのはイーディスの住む屋敷であった。
「マーティ様との婚約が決まったですって!?」
ネリーが婚約のことを報告すると、イーディスは、ぽっかり開けた口を手で押さえた。
その目はキラキラと輝いているが、当の本人のネリーはといえば、ぼんやりとした、うつろな目である。
「そうなのよ。もちろん、そのうち私にも、そういったお話があると覚悟はしていたけれど……まさか、よりにもよってマーティ様だとは思わなかったわ」
ネリーはため息をつきながら、カップを持ち上げた。
「マーティ様は、地味な私とは正反対のタイプだもの。
上手くやっていける気がしないわ」
用意された紅茶はとても良い香りだったが、それを楽しむ余裕は、今のネリーにはなかった。
今後のことを考えただけでカラカラになる喉を、一刻も早く潤したかったのである。
相変わらず人目を引く3人組を、あちらこちらで見かけることはあったが、あれから言葉を交わすことはないまま、時が過ぎた。
彼らは、もう自分たちのことなど覚えているまい、とネリーは胸を撫で下ろしていた。
あの時の出来事は、予想外な注目を浴びたと言う点では苦い記憶だったが、今となっては良い話の種になったとさえ、思い始めていたのだ。
それなのに
「ネリー。お前の婚約が決まったぞ。
相手はエドウィン男爵家の次男、マーティだ」
突然の父親の言葉に、ほとんど消えかけていたマーティの笑顔が、鮮明に蘇った。
「……急なお話ね」
と、かろうじて言うのが精一杯。
下唇を噛んで、ディアス伯爵の次の言葉を待った。
「そうかい?以前から相手を考えてはいたんだが、お前に話したことはなかったから、そう思うのかもしれないな。
それに、実はエドウィン家からは、もう随分前から熱心に婚約の申し出を受けていたんだよ」
こくん、とネリーは首を縦に振る。
いつかは、この時が来ると分かっていたはずなのに。
いざ来てみると、どうしても冷静ではいられなかった。
「マーティは男爵令息だから、身分としては格下ではあるが……よく話し合いをして、お前に有利になるように取り決めをしておいた。
安心しなさい」
ディアス伯爵はニッコリと微笑んだ。
「ええ。感謝致します、お父様」
「顔合わせは来月だ。新しいドレスでも仕立てておきなさい」
「はい」
ネリーはそう言うと、ディアス伯爵の返事も待たずに、踵を返して退室した。
そして、身支度もそこそこに馬車に乗り込むと、一目散にやって来たのはイーディスの住む屋敷であった。
「マーティ様との婚約が決まったですって!?」
ネリーが婚約のことを報告すると、イーディスは、ぽっかり開けた口を手で押さえた。
その目はキラキラと輝いているが、当の本人のネリーはといえば、ぼんやりとした、うつろな目である。
「そうなのよ。もちろん、そのうち私にも、そういったお話があると覚悟はしていたけれど……まさか、よりにもよってマーティ様だとは思わなかったわ」
ネリーはため息をつきながら、カップを持ち上げた。
「マーティ様は、地味な私とは正反対のタイプだもの。
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今後のことを考えただけでカラカラになる喉を、一刻も早く潤したかったのである。
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