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なんだ、やっぱり覚えてなかったんだ。
相手は婚約者だというのに、忘れられたことに対して、ネリーは大してがっかりもしなかった。
有名人から見れば、自分のような地味な娘は覚えていなくて当然だ、というくらいの気持ちだったのである。
そこで、すぐに気を取り直して笑顔を浮かべると
「初めまして、マーティ様。
ネリー・ディアスですわ」
と、深くお辞儀をした。
「なんだか、急に婚約だなんてことになってしまいましたね。
まあ、いつかはこんな日が来るんだろうな、とは思っていたんですが……。
でもこうして、いざ来てしまうと、少し照れてしまいますね」
そう言いながら、透き通るような金髪を揺らして、マーティは頭をかく。
彼も自分と同じことを感じていたのだと思うと、少しホッとした。
「本当ですわね。
緊張しているものですから、何か失礼なことをしてしまったら、すみません」
「いえいえ、私の方こそ」
と、マーティは笑ってから、少しネリーの方に体を寄せて、小声で言った。
「それにしても、お相手が優しそうな方で良かった。
感じの悪い方だったらどうしようかと、内心不安だったんですよ」
「まあ!そうおっしゃって頂けると嬉しいですわ。
でも……」
思ったよりも、マーティが話しやすい雰囲気だったものだから、ネリーはつい、思ったままを言葉にしかけてしまって、慌てて口を閉ざした。
「『でも』なんです?」
「あ、いえ……」
「何でもおっしゃって頂いて大丈夫ですよ」
マーティは優しく微笑んだ。
「これからは婚約者になって、いつかは夫婦になるんです。
ネリー様とは、何でも言い合える関係になりたいと、そう思っています」
ま、眩しい……。
ネリーは思わず目を細めた。
こんな笑顔を向けられれば、娘達が黄色い声を上げるのも無理はない。
でも今日から自分は、マーティの婚約者になるのだ。
少しでも油断すれば、目が眩みそうだけれど、なんとか耐えて、少しでも慣れていかなければ。
せっかく、地味な自分にも対等に向き合ってくれているのだから……。
ネリーは必死に目を開けた。
そして、適当に誤魔化して話を変えよう、と思っていたはずなのに。
動揺していたからだろうか。
マズイと思った時には、もう、思ったままの素直な言葉が口から飛び出してしまっていたのである。
「マーティ様のような素敵な方だったら、私みたいな地味な感じの女性よりも、もっと華やかな女性の方が本当はお似合いでしょうにって、思っただけです。
例えば、アリス様のような……」
相手は婚約者だというのに、忘れられたことに対して、ネリーは大してがっかりもしなかった。
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「初めまして、マーティ様。
ネリー・ディアスですわ」
と、深くお辞儀をした。
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でも……」
思ったよりも、マーティが話しやすい雰囲気だったものだから、ネリーはつい、思ったままを言葉にしかけてしまって、慌てて口を閉ざした。
「『でも』なんです?」
「あ、いえ……」
「何でもおっしゃって頂いて大丈夫ですよ」
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「これからは婚約者になって、いつかは夫婦になるんです。
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ま、眩しい……。
ネリーは思わず目を細めた。
こんな笑顔を向けられれば、娘達が黄色い声を上げるのも無理はない。
でも今日から自分は、マーティの婚約者になるのだ。
少しでも油断すれば、目が眩みそうだけれど、なんとか耐えて、少しでも慣れていかなければ。
せっかく、地味な自分にも対等に向き合ってくれているのだから……。
ネリーは必死に目を開けた。
そして、適当に誤魔化して話を変えよう、と思っていたはずなのに。
動揺していたからだろうか。
マズイと思った時には、もう、思ったままの素直な言葉が口から飛び出してしまっていたのである。
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例えば、アリス様のような……」
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