やっかいな幼なじみは御免です!

ゆきな

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所詮は、好きでもない相手と結婚をしなくてはいけない、政略結婚だ。
自分の他に、好きな人がいるのは仕方がない。

問題なのは、マーティが、アリスを好きだという感情を表に出してしまうことだ。


ネリーは、分かりやすくコロコロ変わるマーティの表情を思い出しながら、紅茶をひと口飲んだ。
感情を読み取られないように、いつでも顔色を変えず、笑顔を浮かべるように教え込まれるのは、貴族なら当然のことである。
マーティだって、もちろん同じことを言われて育てられてきたはずだ。
それにしては……

「マーティ様は素直すぎるのよね……きっと」

ネリーはカップを置いて、目を伏せた。

イーディスの皿にあったはずのスコーンは、早くも消え去っている。
たっぷり用意してあったジャムが、なくなりかけているのに気がつくと、ネリーは目を丸くした。

「可愛いじゃなーい!」

突然イーディスが声を上げたものだから、ネリーはビクリと肩を揺らした。

「可愛い……?」
「そうよお。貴族で、そこまで素直な人っていうのも珍しいわ」
「まあ、それはそうね」

素直というよりも、馬鹿正直と言った方がしっくりくるような……とはさすがに言わなかったけれど。
ネリーは、イーディスのこの明るさにはいつも助けられるわ、と思いながら、微笑んだ。

「それに、アリス様とシェイマス様は婚約されたんだし……そこにマーティ様も加わったら、三角関係ってことでしょ?
あんなに見目麗しい方々の三角関係なんて、まるで小説みたいだわ!
あ、待って!ネリーが入ったら四角関係になるのかしら」

イーディスは早口になって、はしゃいでいたが、ひとしきり話したところで、真面目な顔になった。

「まあ、そうは言ってもね。
本当にマーティ様がアリス様を好きだとしても、婚約者であるネリーを裏切ろうとまでは、思っていないと思うわよ。
そういうものでしょ」
「そうね……心の中でどう思っていても、表向きは上手くやってくれれば問題ないんだけど」
「そうよ、そうよ。
それに、そのうち心の中でも、ネリーのことを好きになってくれる日がくるかもしれないしね」

イーディスは明るい声で言ったが、ネリーは眉一つ動かすでもなく、

「まあ、そこまでは期待していないし、ならなくても一向に構わないんだけれど」

と言い切った。

「えええー!
でもせっかくだから、できるものなら相思相愛になりたいじゃない?」
「政略結婚の相手に、そこまで求めるのは酷じゃないかしら」

クッキーに手を伸ばすネリーを、イーディスは呆れたように眺めていた。

「冷めてるわねえ、ネリーは!」
「そう……かしら。
だったら聞くけど、イーディスとジン様は相思相愛なの?」
「え?ああ、まあ……私たちはそうじゃないことくらい、見れば分かるじゃない?」

イーディスはいかにも残念そうに肩を落とすと

「だって、私がいくら話を続けようとしても、ジン様ったら、聞いてるかどうかも分からないし……。
はあ、やっぱり私に興味ないみたいなのよね。
12も歳下だし、単なる小娘だとしか思ってないんじゃないかしら」

と、大きく息を吐き出していたが、ふと顔を上げると、急にニヤリとした。

「でも、私と違ってネリーには、まだチャンスがありそうよ」
「なぜそう思うの?」
「だって、ほら」

イーディスがクルリと目を向けた先を、そっと見ると、ネリーは思わずギョッとした。
使用人に連れられて、こちらにやってくるマーティの姿が、そこにあったのである。

「ね?」

ニンマリと笑うイーディスに、ネリーは返す言葉もなかった。
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