やっかいな幼なじみは御免です!

ゆきな

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「……え?」

アリスの顔から、みるみる血の気が引いていく。
すっかり青白くなりながら、困惑したように首を振った。

「冗談でしょう?
マーティが一方的に言い寄ってきているだけで、私はこれっぽっちも好きじゃないのよ!」

そして凍り付いているマーティを押しのけて、馬車を降りると、窓越しにシェイマスへと囁いた。

「私が好きなのは、あなただけなの……信じて」

ダメ押しとばかりに、涙でいっぱいになった瞳を潤ませる。
長いまつ毛が動くと同時に、涙が頬を伝い落ちていった。

男性なら誰でも、こんな顔を見たら心を引き付けられるだろう、とネリーは思った。
しかし、すでにシェイマスの心は決まっていたらしい。

彼は眉一つ動かすこともせずに、アリスを見据えたまま、淡々と答えたのである。

「もう今更、そんな嘘はつかなくても良いよ。
きみが僕のことを本気で好きなわけじゃないことくらい、分かっているさ」

そして、ぎょっとして目を見開いたアリスに向かって、冷たく付け足した。

「マーティとのことだってそうだ。
気を持たせるようなことばかりしていたアリスにも、責任はある。
今日で、きみとの婚約も、それから『仲のいい幼なじみ3人組』もおしまいだ」

これにはアリスも、唇を噛みしめたまま、何も言えなくなってしまったようだった。
茫然と馬車と馬車の間で棒立ちになっている。

向こうの馬車の中では、マーティがうなだれたまま、
こちらを見ようともせずに、じっと床に視線を落として動かない。

この気まずい空気の中で、ようやく落ち着きを取り戻したネリーは、そこら中の視線がこちらに向いていることに気が付いた。

馬車が列をなして止まっている中で、これだけの騒ぎを起こしたのだから、注目を集めぬはずはなかったのである。
ただ、興奮しすぎていたせいで、そんなことを意識している余裕がないだけだったのだ。

今更になって恥ずかしくなったのは、アリスも同じだったらしい。
普段の彼女からは考えられぬほど、怒りの表情を浮かべながらも、早足にマーティのいる馬車へと駆けこんでいった。

それでも、あちらからもこちらからも好奇の目が追いかけてくる。
ネリーな思わず身を縮めるのと、シェイマスが声を上げるのが、ほとんど同時だった。

「おい、マーティ。僕らはここで降りて、歩いて帰ることにするよ。
良かったら僕の馬車は使ってくれても構わないから、好きにしてくれ」

この『僕ら』に自分も入っていることに、手を取られるまで、ネリーは気づかなかった。
シェイマスは、まるで何事も無かったかのように、いつも通りの余裕たっぷりな笑顔に戻って、こちらを見ていた。

「まだ当分馬車は動かないようです。
ここにいると、視線が気になりますし……思いきって、歩きませんか?」

そう言われて、ネリーはすぐに頷いた。

馬車を降りれば、やはり沢山の視線を感じる。
ネリーは思わず俯きそうになったものの、思い直すと、姿勢を正して胸を張った。

隣の馬車では、マーティとアリスが、こちらを見ようともせずに、少しでも視線から逃れようと、体を縮めている。

その情けない姿に、自然と笑い声がこぼれた。
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