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「大丈夫ですか?
しばらくは視線も気になるでしょうが、あと少しの辛抱ですから」
心配そうに振り返ってくれるシェイマスに、ネリーは微笑んだ。
「大丈夫です。
もう見られたって、気にしませんわ。
なんだかスッキリとして……かえって気分が良いくらいなんです」
とネリーは言いながら、シェイマスの後について、のろのろと動く馬車の列を軽やかにすり抜けて歩く。
こんなに晴れやかな気持ちになるのは久しぶりだった。
「不思議ですね。
前までは、人目を気にして、とにかく目立つのが苦手だったのに。
今はもう、なんでも構わないという気がしています。
マーティといたおかげで、注目されることが増えたから、人に見られるのに少しは慣れたのかしら……。
そうだとしたら、彼のおかげですね」
そう言うと、シェイマスは目を丸くした。
「そんなふうに言えるなんて、すごいですね。
彼のことを恨んではいないのですか?」
「恨む……」
ネリーは少し考えてから、首を横に振った。
「いいえ、恨んではいません。
まあ、多少は怒っていましたけど……それも、さっきの二人の顔を見たら吹き飛んじゃいましたよ!」
クスクス笑うネリーにつられたのか、シェイマスも小さく笑うのが聞こえた。
ひとしきり笑ってから、ネリーは、ふうっと息をついた。
「でも、やっぱりアリス様には適わなかったですね。
上辺だけでもマーティと上手くやっていけたらいいな、とは思っていたんですけど……結局、我慢しきれませんでした」
「それはそうですよ。あんなところを見せられてはね」
「そうですよね。マーティったら、すごいことをしますよね」
もう何台馬車を追い抜いてきただろう。
気が付けば、あと少しで屋敷の敷地から出られる、というところまで来ていた。
しかしそこでネリーは、ふと、自分の名を呼ぶ声に気が付いて、足を止めた。
「ネリー!?」
振り向いてみれば、驚いた表情でこちらを見ていたイーディスと目が合った。
彼女の婚約者であるジンの馬車で帰るところなのだろう。
彼の姿をイーディスの奥に見つけて、ネリーは軽く会釈した。
「どうして歩いているのよ?馬車はどうしたの?」
イーディスに聞かれて、ネリーはどう答えるべきか悩んだ。
適当に答えて誤魔化そうと考えたわけではない。
もちろん彼女には、起こったこと全てを話すつもりである。
しかしここで一から説明をしていれば長くなるし、さらに周りの視線を集めることになるのは分かり切っていた。
そこでネリーは
「ちょっと色々あったのよ。
今度詳しく話すわね」
と言うに留めておいた。
それでもイーディスの方も気になったのだろう。
窓から顔を出すと、小声で
「マーティ様とは大丈夫だった?」
と訊ねてきたのだったが、そこでようやく、ネリーの後ろに立つシェイマスに気が付いたらしい。
口をぽっかりと開けると、そのまま固まってしまった。
けれども、そのおかげで、何かが起こったのだと理解したのだろう。
イーディスは
「やっぱり、今は話さなくていいわ」
と頷いたのである。
「ええ」
ネリーも小さく頷いてから、小声で付け加えた。
「でも、とにかく全部片付いてスッキリしたわ!
それだけ先に言っておくわね」
「そう。それなら良かった」
イーディスは自分のことのように喜んで、微笑みながらも
「今度詳しく聞かせてよね」
と、しっかりと言い添えることは忘れなかった。
そして、ひらひらと手を振った。
物わかりのいい友人で、本当に助かる。
「じゃあね」
と再び歩き出したネリーの背中に、イーディスの声が追いかけてきた。
「馬車に引かれないように気を付けてねー!」
ネリーはちょっと振り返って、小さく手を振って見せる。
そして、シェイマスとともに、進んでいったのだった。
しばらくは視線も気になるでしょうが、あと少しの辛抱ですから」
心配そうに振り返ってくれるシェイマスに、ネリーは微笑んだ。
「大丈夫です。
もう見られたって、気にしませんわ。
なんだかスッキリとして……かえって気分が良いくらいなんです」
とネリーは言いながら、シェイマスの後について、のろのろと動く馬車の列を軽やかにすり抜けて歩く。
こんなに晴れやかな気持ちになるのは久しぶりだった。
「不思議ですね。
前までは、人目を気にして、とにかく目立つのが苦手だったのに。
今はもう、なんでも構わないという気がしています。
マーティといたおかげで、注目されることが増えたから、人に見られるのに少しは慣れたのかしら……。
そうだとしたら、彼のおかげですね」
そう言うと、シェイマスは目を丸くした。
「そんなふうに言えるなんて、すごいですね。
彼のことを恨んではいないのですか?」
「恨む……」
ネリーは少し考えてから、首を横に振った。
「いいえ、恨んではいません。
まあ、多少は怒っていましたけど……それも、さっきの二人の顔を見たら吹き飛んじゃいましたよ!」
クスクス笑うネリーにつられたのか、シェイマスも小さく笑うのが聞こえた。
ひとしきり笑ってから、ネリーは、ふうっと息をついた。
「でも、やっぱりアリス様には適わなかったですね。
上辺だけでもマーティと上手くやっていけたらいいな、とは思っていたんですけど……結局、我慢しきれませんでした」
「それはそうですよ。あんなところを見せられてはね」
「そうですよね。マーティったら、すごいことをしますよね」
もう何台馬車を追い抜いてきただろう。
気が付けば、あと少しで屋敷の敷地から出られる、というところまで来ていた。
しかしそこでネリーは、ふと、自分の名を呼ぶ声に気が付いて、足を止めた。
「ネリー!?」
振り向いてみれば、驚いた表情でこちらを見ていたイーディスと目が合った。
彼女の婚約者であるジンの馬車で帰るところなのだろう。
彼の姿をイーディスの奥に見つけて、ネリーは軽く会釈した。
「どうして歩いているのよ?馬車はどうしたの?」
イーディスに聞かれて、ネリーはどう答えるべきか悩んだ。
適当に答えて誤魔化そうと考えたわけではない。
もちろん彼女には、起こったこと全てを話すつもりである。
しかしここで一から説明をしていれば長くなるし、さらに周りの視線を集めることになるのは分かり切っていた。
そこでネリーは
「ちょっと色々あったのよ。
今度詳しく話すわね」
と言うに留めておいた。
それでもイーディスの方も気になったのだろう。
窓から顔を出すと、小声で
「マーティ様とは大丈夫だった?」
と訊ねてきたのだったが、そこでようやく、ネリーの後ろに立つシェイマスに気が付いたらしい。
口をぽっかりと開けると、そのまま固まってしまった。
けれども、そのおかげで、何かが起こったのだと理解したのだろう。
イーディスは
「やっぱり、今は話さなくていいわ」
と頷いたのである。
「ええ」
ネリーも小さく頷いてから、小声で付け加えた。
「でも、とにかく全部片付いてスッキリしたわ!
それだけ先に言っておくわね」
「そう。それなら良かった」
イーディスは自分のことのように喜んで、微笑みながらも
「今度詳しく聞かせてよね」
と、しっかりと言い添えることは忘れなかった。
そして、ひらひらと手を振った。
物わかりのいい友人で、本当に助かる。
「じゃあね」
と再び歩き出したネリーの背中に、イーディスの声が追いかけてきた。
「馬車に引かれないように気を付けてねー!」
ネリーはちょっと振り返って、小さく手を振って見せる。
そして、シェイマスとともに、進んでいったのだった。
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