やっかいな幼なじみは御免です!

ゆきな

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「ネリー……」

伯爵夫人が呟いて、ネリーの肩をさすってくれる。
それでも頭を上げられずにいる彼女に、伯爵が言った。

「確かに勝手な事をしたのは、間違いだったな」

その言葉に、ネリーの手が思わず震える。
しかし、その後に聞こえてきた彼の声は、思いがけず優しいものだった。

「そういうことに悩んでいたのだったら、勝手に婚約破棄を宣言する前に、私たちに相談すれば良かっただろう。
そうすれば、結局は婚約破棄をするにしても、もっと上手く事を進められたんだ」

伯爵はネリーの頭に手を置いた。
彼女が顔を上げると、いつになく優しい眼差しの伯爵が、目を細めてこちらを見ていた。

「もう何も心配することはない。
今からでも、私が上手く話をつけよう。
そもそもマーティが、そんな男だと知っていれば、婚約などさせなかったものを……すまなかったな」
「いいえ……そんなこと……」

きっと怒られるとばかり思って覚悟していたというのに、思いがけず優しい言葉をかけられて、ネリーは胸がじんとしてしまった。
ほっとしたせいで、すっかり気が緩んでしまう。

しかし伯爵は逆のようだった。

「私の可愛い娘を馬鹿にするとどうなるか、しっかりとマーティには理解してもらわないとな」

と独り言のように呟くと、拳を握ったのである。

「では、私は書斎に行ってくる。
急いでマーティの両親に手紙を書き、明日の朝一番に届けさせなければ」

声には怒りが滲んでいた。
そして彼はそのまま部屋を出て行ってしまった。

ネリーと伯爵夫人は顔を見合わせた。

「あんなにお父様が怒っているのは、初めて見たわ」
「そうね。特にあなたには、怒ることなんて、ほとんど無いものね」

伯爵夫人に言われて力無く笑ってから、ネリーは息を吐き出した。

「ネリー……婚約破棄のこと、心配しているの?」

こくんと頷く彼女に、伯爵夫人が微笑んだ。

「そうよね。でもまあ……大丈夫よ、きっと。
今回の場合、悪いのはマーティの方なのは分かりきっているし」
「ええ……」

スムーズに全てが上手く行くことを願って、そっと目を閉じる。

「まあ、彼のご両親は、どうにか破棄しないように粘ってくるでしょうけど。
今回の婚約だって、あちらがかなり強く頼み込んできたことだったんだものね……」

ネリーは瞼を開いた。
伯爵夫人が呟いた言葉が、引っかかったのである。

「え?それってどういうこと?」

ネリーが尋ねると、伯爵夫人は目をパチパチっとした。

「あら、言ってなかったかしら。
マーティのご両親はね……」

その全く初耳の話に、ネリーはただただ目を丸くするばかりであった。

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