やっかいな幼なじみは御免です!

ゆきな

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「つまりね、ネリーと結婚して、彼女の家に援助をしてもらう約束だったんだよ。
まあもちろん、代わりに、うちからも色々渡す条件はあったんだけど」
「色々って……細かいことも全て説明しただろう?」

父親に突っ込まれると、マーティはムッとしたように唇を尖らせた。

「いや、確かに聞いたけど、なんだか難しかったから……。
それに、今アリスに細かい話をしても頭がこんがらがっちゃうだけだしさ」

呆れて言葉も出ないらしい男爵だったが、アリスも全く同じ思いだった。
適当な言い訳をしているが、彼はどうやら全てを把握していなかったらしい。
その上それを、今の今まで話してこなかったなんて。

アリスは目の前で笑っているマーティが信じられなかった。

「とにかく、まさに家の為だけの政略結婚だったのさ。
これで、ネリーと僕の間に愛なんて無かったんだと分かるだろう?
でもきみとなら、違う。
愛のある結婚が出来るのが、本当に嬉しいよ」
「ちょ、ちょっと待って、マーティ」

アリスはズキズキと痛む頭を振りながら、マーティを見た。

「私……そんなこと聞いてないわ」
「そうだね。今、初めて言ったんだから」

あっけらかんと言い放つマーティ。
その隣では、男爵が心配そうな顔でこちらを見ているのが分かっていたけれど、アリスは気持ちが抑えられなかった。

それに、ここではっきり言っておかなければ、一生貧乏暮らしに甘んじなければならなくなる。

「申し訳ないけれど、そんなことを聞いたら、あなたとは結婚できないわ」
「え?」

マーティは、笑顔のまま固まった。
男爵は、やっぱりそうかというように、目をグルリと回して天井を見上げている。

「ど、どういうこと?
だって……」
「あなたが私と結婚したいと言ってくれたのは、嬉しかったわ。
でも、私はお金に困った毎日を送るなんて、嫌だもの。
私の両親だって、そんな相手と結婚するのは反対するに決まってるわ」
「で、でも……僕がいれば何もいらないって言ってくれたじゃないか」
「そんなの言葉のあやよ」
「そんな……でも僕たち、愛し合っているじゃないか!」

もはや涙目になっているマーティには構わずに、アリスは立ち上がった。
そして冷たい視線を彼に向けると

「だから、なに?」

と言い放った。

「だ、だからって……」

とうとうマーティは、小さく呟いたきり、顔を伏せてしまった。
男爵はというと、始めから、こうなることを予想していたのだろう。
もう言葉を挟むことさえせずに、ぼんやりと息子を眺めている。

その隙にアリスは足早に歩いていくと、扉のノブに手をかけたが、ふと思いついて振り返った。

「そうだ、マーティ。
私もひとつ言い忘れていたことがあったわ」

何か良い話だろうかと期待するように、勢いよくマーティが顔を上げる。
アリスは期待に輝いた彼の目をまっすぐに見下ろしながら、冷たく言った。

「私、あなたのことなんて好きじゃないわ。
愛してるなんて言ったのも、全部、嘘よ」

そして、とびきりの笑顔を浮かべると、さっさと部屋を出て行ったのだった。

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