やっかいな幼なじみは御免です!

ゆきな

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「そうか……分かった」

エドウィン男爵は、渋々といった様子ながらも、頷いた。

「2人がそこまで言うなら仕方ない。
それにこの手紙からすると、どう謝っても、ネリー嬢との婚約破棄を取りやめることは出来ないようだしな」

と、男爵は手にしていた、ネリーの父親からの手紙をひらひら振った。

「しかしマーティ。
ネリー嬢との婚約が、いかに重要かは話しただろう?
彼女と結婚出来なくなったということは、もちろん、これからかなり大変になる。
その覚悟はあるんだな?」
「もちろんです」

間髪入れずに力強く頷くマーティに、思わずアリスは嬉しくなった。

これだけ彼が頼もしく見えたのは、初めてだ。
この分なら、マーティとの結婚もそんなに悪くないかもしれない、なんて思えて、内心ほくそ笑む。

しかし、続けて男爵が

「アリス嬢にも話はしてあるんだろうな?」

と言うと、今度は急に、マーティの声に元気が無くなってしまった。

「えーと、それは……」

マーティは口籠もってこちらを見た。

「実はまだなんだ」
「なに!?
こんなに重要な話をせずに、婚約の話を進めているのか!」
「で、でも大丈夫、これから説明するよ!
それに彼女は、『マーティがいれば何もいらない』と言ってくれたんだから」

そしてマーティは再び自信たっぷりな笑顔を浮かべて、こちらを見た。

「そうだよね、アリス?」
「え、ええ……もちろんよ」

そう答えたものの、なんだか雲行きが怪しくなってきた。
より一層暗い表情になる男爵を見ていると、ますます不安が膨らんでいく。


いったい『重要な話』とは何なのだろう。


「じゃあ、ちょっと話をしよう。
長くなりそうだから、とりあえず座って」


アリスは促されるまま、ソファーに腰を下ろした。
正面に座った男爵とマーティが、まっすぐこちらを見つめてくる。
心配そうに細められた目と、能天気に輝く目を見比べながら、アリスは居心地悪そうに、もじもじと指を動かした。


「実はね、アリス。
うちは今、ちょっとだけ……経済的な余裕がないんだ」

アリスは目をパチクリさせて、マーティを見つめた。
突然始まった話に、頭がついていかなかったのである。

「ちょっとではない。
かなり危機的状況だ、と言った方が良いだろうな」
「お父様!
そんなふうに言ったら、アリスが驚くじゃないか!」
「だが婚約し、ゆくゆくは結婚するんだろう?
妻になるのだったら、今から状況を把握しておいて貰わなきゃならないだろう」
「まあ……そうか。
それもそうだね」

重々しいため息を吐き出した男爵の横で、何故か顔を輝かせるマーティ。

「妻かあ……。うん、そうだよな。
僕たち、夫婦になるんだから……」

こんなに重要な話をしているというのに、たかが『妻』というワードに夢見心地になっているらしい。
すっかり青ざめながら、アリスは、少しでも彼を頼もしいと思ったことを後悔していた。
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