孤島の丘

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番外編2駿隆視点※

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「知ってるか?フラミンゴってご機嫌な鳥なんだぜ。幸せの象徴なんだ。その、幸せの象徴をあげよう。あなたにもきっと幸せが訪れる」

そう言ってフラミンゴのヌイグルミを押し付けてきた男はひどく酔っていた

面差しが白く、整った優しい顔で清潔感がある

女にもモテるのだろう

どこか品の良い男は、清瀬綾継と名乗った

当時の置かれていた立場は酷く微妙で妾腹である自分に周囲の風当たりは強かった

父親が亡くなったところで跡目争いが勃発し、遺産を取り上げられ母が追い込まれ自殺し、弟達も殺され、自分の身も危うい

危険な中、全てがどうでもよくなって1人で出掛けた

その日は、最後の同腹の兄弟が恐らく他殺だが事故死し、この寂しい葬式に血縁者が自分しかいなくて堪らなくなった

バイクはやめろと、だから言ったのに。ブレーキの線は切られていた。たったそれだけの事で元気で無邪気なあの子がこんなに寂しく

俺も1人、このように死ぬのか

虚しくなり、葬儀の後1人で抜け出した。ふと入ったのは今まで行った事がない居酒屋。春日家の息子が行くようなところではないと教え込まれていた

初めて入る居酒屋に俄かに禁止事項をやぶる高揚感があったと覚えている

そこでは大学生が宴会をしており、酔った男達に囲まれその輪にあっという間にいれられた

ケバい女や楚々とした女が群がるのを、綾継が蹴散らしてくれた

そして件のヌイグルミをくれたのだ

「幸せの象徴というが、それは他人の概念だろう。概念とは、こうしなければならないという他人の意に沿う事だ。そのような概念の幸せに意味などない。ならばこの象徴は…」

自分もかなり、酔っていたのだろう。フラミンゴのヌイグルミにぶちぶちと文句を言えば、綾継は両肩を掴んできて首を振った

「かたいし、こえーわ!ご機嫌な鳥っつてんだろ。難しいことはいらないんだよ。ソーハッピー、心で感じて」

そう、自分で言って大爆笑する

「…でも、そんな事を言うくらい自分の幸せが決まってるんだなあ。いいなあ。俺、就職あぶれたしな~」

ふにゃりと笑う綾継に目が釘付けになった。なんて穏やかに笑うんだろうか

ああ、いいなあ、お前といるのはとても幸せだろうーひとりで、こんなところで、しにたくないー

ふと浮かんできた自分の考えにハッとする

完全に、おちた。今までにない感覚

男が飲んでいたハイボールの飲みさしを奪って飲む

綾継の全てが欲しくなった

綾継は再び大爆笑し、潰れてしまったが

必ず、必ず綾継とはまた会う

「……また、会いたいなら、手段を選んでいては会うことも出来ない」

そして、それは偶然に身を任せないことだ

居酒屋を1人で出たところで、付き人の早瀬がいた

黙って開けられた高級車の後部座席に乗り込むときゃんきゃん吠えてくる

「今は危険なんですよ!一人で出歩くなんて!殺してくださいと言ってるようなもんじゃないですか!」

「別にそれでもいいと思っていたが、気が変わった」

フラミンゴのヌイグルミを持つ手に力が籠もる

相手と同じ土俵に立たねば勝負にすらならず、怪物と対峙するならば怪物にならねばならない

そこまでしなければならないなら、このまま身を任せよう。それでもかまわないと思った。生きるというのは、相手と同じ化物になってまでやりたいことではなかった。しかし

目を閉じる


幸せになりたくなった

「花田商事に行け、傘下にしてやる。叔父の顧客全て奪い取るぞ。あの解体趣味の変態ジジイどもにアポをすぐとれ。変態どもと手を組んでやる。無人島を用意して豪華なステージに叔父さまを招待してやろう。急いで叔父の口座を凍結しろ、あと寝返った裏切り者をリストアップしろ。全員事故に見せかけてやれ。みせしめろ。早瀬、今すぐ使える料理人を本家に呼べ。裏切り者を同席させろ」

「最後の晩餐に相応しい相手を」

長年つとめる早瀬の顔つきが変わる。駿隆は聞き直されるのが嫌いだ。要求を全て頭にインプットしていく

「お前には報酬をたっぷりとやる。まずは、仕事だ」
「かしこまりました」

「ことが明るみになったら、葬儀屋を明日、本家に呼ぶ手配をしろ。至急、よろしく」

駿隆が最後になった理由は、早瀬がガードしているからという理由も大きいが、理屈っぽく荒事は、なにも出来ない人物だと評されているからに他ならない

ならば、行動は迅速に急襲で

相手に対策を取らせてはならない

「死ねば、何にもならない」

駿隆は目を開く

フラミンゴのふかふかのヌイグルミが手の中にある

そこには、幸せの象徴があった

☆*:.。. .。.:*☆

俄かに騒がしい本家の邸宅では、葬儀が行われていた

フグ毒の犠牲になった本家の本妻と息子は、駿隆の腹違いの兄弟たち、本家血筋の者が死ぬたびに宴会を開いていたらしい

昨夜、系列の社長お抱えのシェフに振舞われたふぐ刺しに、あたったそうだ

葬式は盛大で、駿隆の周りには引っ切り無しに挨拶が来る

宴会の場では、花田商事の社長が分厚い手を揉みながら、駿隆にすりよってきた

「それでは、春日社長が跡目を継がれるんですね!いや、目出度い!」

「愛人の息子など…」

花田社長の言葉を遮ったのは、本妻の兄である叔父であった

なので厳密にいえば駿隆とは血の繋がりはないがそう呼ばされていた

本家を乗っ取り居座っているのは知っている

「春日の血縁者でもない叔父さまが口出しできる事ではないでしょう。まさか、ご自分が跡目に座る気ですかなっ!?」

花田社長の言葉に鼻白み、顔を真っ赤にして席を外した叔父を見送り早瀬に耳打ちする

早瀬は叔父の後を付いて行った

「花田社長のご趣味には合わないでしょうが如何でしたか?」

「いやはや手際の良さに感心しきりです。まさかフグとは。それに社長が作った見事なドーム!あれは、我々のハートをキャッチしてます。なんでも協力しますよ!始業が楽しみですな。初めはもう誰かきまっているんですか?知り合いなら、尚お金を積んでも観覧したいですな!」

花田社長の言葉に、今しがた出て行った叔父の方向を見る

「……それは、それは。しかし希望としては、若い女子も入れて欲しいですがな!」

大声で笑う花田社長に、ある写真を渡す 

「これは、また綺麗な若い女ですな…」

「四潮花音と申します。弟が死ぬ前に、最後に会った人なんです。バイクのブレーキが、きかなくなる前に…」

にっこりと駿隆が微笑むと、花田社長が身を乗り出す

「では、あの無人島プランとコレ、合わせてみませんか?ロマンがありますよ!我々は、無人島プランは結構ですが、女子が無人島で不安に過ごし、最後は、というのは興奮します」

「叔父が終われば、社長のお好きにしていただいてかまいません。ところで、この者を採用していただきたいのですが。私のところだと何かと未だ不都合なんです。いずれ迎えに行きますが」

もう一枚の写真を渡す

「ほー、これまた解体しがいのありそうな若者ですな」

「その人は違います。私の…大切な人です」

花田社長はその手の話も好きなのだろう、顔を真っ赤にして女子のようにきゃあきゃあ騒ぐ

「なら、一緒に遭難プランはいかがですかな!?きっと絆も深まります!」

早瀬が1人で戻ってきて目で相槌をうつ

首尾良く叔父を捕らえたようだ

目を瞑ると、絆も深まりますというフレーズがいたく気に入った

「では、花田社長プロデュースのプランを楽しんでみましょう」

外に出ると、強い風が吹いた

夜空を見上げる

曇り空の切れ間に星が輝いていた


☆*:.。. .。.:*☆


海が騒ぐ

完備された無人島には虫すらいない

蒸し風呂のような熱帯夜、汗ばむ体に冷んやりとした身体の感触を楽しんで寝入っていた駿隆は目を覚ました

寝汗で目覚めは最悪だが、横にあるはずの感触がなく、再び辺りを見渡す

ここは無人島で、やけに張り切った花田社長が手配したプランだった

何が起こるかお楽しみ!とはしゃぐ花田社長を恨めしく思ったのは花音が現れてからだ

目の前が真っ赤になった
綾継の、あの態度ーでれでれとしてーー

今思い出しても忌々しい。嫉妬ですぐに綾継をぶち犯してやろうかと思った

それは、ともかく綾継だ

身体を起こして洞窟から出ると、静かな夜だった

大八木達の場所も火の位置からして大分遠い

ひとまず安心してから、まずは温泉に向かった

上半身は裸なので、夜風が心地良い

温泉にもいない綾継に嫌な予感がする

まさかとは、思うが花音に会いに行ったのではないだろうか

胸にカッと怒りとドス黒い感情が渦巻く

もしも、そうだったら

弟だけでなく、綾継まで奪うつもりか

麻袋とロープとローションを手に取る

鉈を腰に下げて、ゆったりと花音のいる入江に向かう

健康的な青々とした木々に満月の月明かりが照らされている獣道を静かに歩く

もしも、花音のところにいたら、綾継の意思など関係ない

どろどろに、何も考えられないぐらい無茶苦茶にしてやる

そして、駿隆が目にしたのは浮かれた表情の綾継だった

入江に続く道で、月を見上げている

その横顔はきれいで、可愛くて、色気があっていつも駿隆を誘う

男好きする身体の癖にーー

うっすら筋肉で隆起した胸にはうすいピンクのちくびがあり、腰も削いだように細い

なにより、白い面はどこかえろい

綾継は男の劣情を煽る

焦がれるような横顔に、もう我慢が出来なかった

こんなところに来て、綾継も犯されたかったに違いない

駿隆の行動は早かった

後ろから綾継に麻袋を被せて、腹を殴り両手をしばった

馬乗りになると体格差もあり、綾継は簡単におさえこめた

今までで、一番興奮した


「うわぁあああ!やめっ!やめろ!!」

綾継の叫びも意に介さず、スラックスとボクサーを脚から抜き身体を撫でる

白くうっすら隆起した胸は震えており、蹴りを繰り出してくる脚を掴み身体を脚の間に滑り込ませた

そのまま、ローションの蓋をとり綾継の窄まりへ指を差し入れローションを中に入れる

熱く、きゅうと締まる窄まりに早く突き入れたくて息が上がる

ぐちゅぐちゅと指で窄まりの中のシコリを扱けば、綾継が腰をくねくねさせて逃げようとする

良いに違いない

「ぁああ!んっ…やぁ…そこ、だめ、ぁあああ」

逃げようとする腰を押さえ、何度かそこばかり弄れば、身体を震わせて綾継が達した

尻で気持ち良くなってやがる

もう我慢が出来なかった

綾継の脚を持ち上げ、挿入する

媚肉が嫌がるように駿隆のものを受け入れていく様に理性が焼き切れた


「……はぁ、…はぁ…んぁ!!!!やぁ!!ダメッ!!入れないぅう!いれ…抜い…てぇ!!」

暴れる綾継に思う

気持ちいいくせに、何を言う

びくんびくんと体は跳ねているし、乳首をしこらせて何を言う

全て収めると、綾継の中は、収縮し駿隆を喜ばせようとしている恍惚した溜息を吐いて

思いっきり抜き、腰を打ち付けた


「ぐっ…ぅぁっ…まだっ…まってぇ…」

身体を仰け反らし、綾継はぷるぷると震え身体を真っ赤にしている

収縮する其処は、まだ慣れていないのだろう

初物を蹂躙する喜びは駿隆だけのものではないだろう

この震えは、射精を我慢するつもりなのだ

ならば遠慮することはない

駿隆が再び腰を打ち付け、ぐりぐりと前立腺を抉る

「ひぃいいぁああああ!たすけ……はや…隆ぁああぐ…ぁあ、ん、ん」

綾継から出た言葉に、ドス黒いものが霧散する

いま、綾継は自分の名前を呼んだ

綾継のぷるぷる震える陰茎は萎えておりそれを手に取り、扱く

今までは、わざと外していた善がるところをねちっこく攻めてやる

ぴくんっと綾継の体が跳ねた

「ここか」


「……は、は…やたか?ぁああん…んく、ひぅ……」

急に動き、綾継の顔に被せられていた袋をとった

涙でぐちゃぐちゃになった顔に尚更興奮する

まるで、桃のように色づいた唇にむしゃぶりついた

甘い

「あっ…やっ…駿隆、なんでぇ……」

涙ぐみながら、駿隆を睨む綾継にますます荒ぶり大きく隆起する

「……なんでぇって、こっちが言いたいよ。綾継、なんで?どうしちゃったのかなあ?」

ピンとたった乳首をこねくりまわし、唇を吸う

無意識に自分で腰を振っていることに綾継は気付いていない

やらしい

激しく腰を動かしてやれば、口の端から涎を垂らし、口元は微笑みすら浮かべている

最早、綾継は快楽を感じ自分からも楽しんでいるのだ

「綾継、こんな時間にこんなところに来たんだから…手を縛られたのは、可哀想だったけど、だけど、されてもしょうがないな。全部あの雌豚が悪い。どうしようか?あれが消えればお前も目を覚ますか?やっぱり豚は豚らしく屠殺しないと…豚のくせに…綾継ぐを誘惑して…くっ…」 


直接中に腰を打ち付けて中で射精すれば、綾継は、わっと泣き出した

「………ぁ、なま……?やだ…やだ…いやぁ…!!」

びゅくびゅくと中に出される感触に自らも腰を振っていっている

駿隆は笑みを深めた

「気持ちいい…生に決まってるだろ。生のが気持ちいい癖になに言ってるんだ…ほら、腰まで動かして……」

まだまだ治らない下半身に苦笑いしながら綾継の中を楽しむ

まずは、体から

可愛い、好き、愛してる

何度とない性交に意識を失った綾継を揺さぶりながら何度も中に注ぎ込む

夜が明けてもずっと繋がっていた

綾継が、自分を好きになってくれたらどんなに幸せだろう

でも当面はーー

眠っている綾継の髪を撫でて、瞼にキスをしたら身じろいだ
シーツがどろどろになっていたので苦笑いして、新しいシーツを綾継に巻きつける

このまま、一緒に来ている世話人に渡しても良いのだが、洗い物をしようと外に出て
腹立たしい入江を睨む

携帯を取り出し短縮を押す

「もう満足されましたか?それはよかった。では、さっさと終わらせてください。あと、綾継の同僚の栄という人物も、回してください。いや、不安要素は全部取り除きます」

どんな事をしてでも、幸せになると決めた

綾継が、自分を生かしたのだ。責任をとってもらって幸せにしてもらう

あいにくフラミンゴのヌイグルミは今、手元にない。

しかし駿隆は、この孤島の丘で幸せの象徴を手に入れた

fin
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