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ヴァイスとの再会
しおりを挟むパンがミルディコをクルクルから引き剥がそうと躍起になっていると、街の中から、ずるずると何かを引き摺りながら男が歩いて来る
急に空気がないだような気がした
灰になったクルクルの犬の軍団達を踏みしめながら、抜き身の勇者の剣を引き摺りながら、その大きな人は歩いて来た
黒髪に、褐色の肌、戦場においても絵になる美貌を輝かせ、きっちりとした白い軍服に身を包み、美少年から大人の美形の男にすっかり様変わりしたヴァイスだった
どう見ても、ヴァイスだ。ああ何故、こんな所に
ぽかんと口を開けていると、ヴァイスと目が合った気がした
慌ててバルデモニウムの背中に隠れて、目だけ出して眺める
こんなに見えるのは、クルクルを一応、回収しようとしてくれているのかバルデモニウムが低空を旋回してくれているからだ
「ゴルディ……うまく魔人に首をすげ替えられてるな。自我は?ゴルディなのか?魔人ならば早く処分しろ」
にべもなく言うヴァイスを、ミルディコがきっと睨む
「ゴルは!!ゴルディは…僕のせいで、こんな事になったんだ!絶対に傷付けさせない!」
クルクルの前にミルディコが立ち塞がりながら叫ぶ
ミルディコに庇われているクルクルは、茫然自失しているようだ
何かをぶつぶつと呟きながら、ミルディコをぼんやりと見つめている
「あああ、どうしよう、どうしよう…バルデモニウム、クルクルが正気じゃないよぅ…」
「ふん。あいつは、いつが正気なのかわからんだろう。勇者の剣が厄介だな。あれは私でも物理攻撃が通ってしまう。あいつがいない時にクルクルを奪還しよう。おい、離れるぞ。クルクル回収は隙を見てだ」
「う、うん。とりあえず殺されはしなさそうだからそうする。クルクル…何が起こったんだろ…」
バルデモニウムが高度を上げようとすると、ぎっといきなりヴァイスがこちらを見上げた
色のない瞳に、捕食者のような悍ましさで、ゾッとする
「わわ、バルデモニウム!こっち見てるよ!急いで、早く上にあがろう!」
「待て…何か魔法をかけられたっぽい。速度が…わたしの羽根が…」
あたふたしていると、ヴァイスが地面を駆け上がるようにして、目の前に現れる
バルデモニウムの背中に降り立つと、ヴァイスは髪をかき上げた
ぼくに勇者の剣を向けながら、すっと目を細めると、ぼくの首に視線を落とす
久しぶりに近くで見るヴァイスは美しくて、肌は瑞々しく筋肉質で、切れ長の目元にはホクロがありセクシーに見える
冷酷に見えたヴァイスの表情が、みるみると驚愕に変わり、勇者の剣を下ろす
「なるほど……これは、殺せない」
何かを呟くとヴァイスは魔法無効化を、ぼくにかけたかと思うと抱っこして、抱きしめてくる
踠こうとしたが、背中に回ったヴァイスの腕が震えていて泣いているようで抵抗をやめた
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