へっぽこ勇者と色情狂いの王様

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間話 ヴァイス視点

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飢えて飢えて仕方がない

小さな頃から何でも出来て、王族特有のアルファ性の中でも特別な優勢アルファ

跡取りに据えられ、カリキュラムもすべてこなしていく王の器

ただ、取り巻く環境は、9歳の時に一変した

父王が崩御し、これはかなり暗殺されたのではないかと勘繰るほど怪しかったが、祖母である皇太后が主権を握った。しかし、我の不幸は皇太后と父王は血が繋がっていなかった事だ

だから、皇太后は孫である自分が可愛いわけではない

すぐに皇太后の兄の娘、ネフィを皇后としてあてがわれ即位すると同時に実権を全て皇太后に奪われた

王妃であるネフィ、側室達に色に溺れたが、自分でもわかっていた。自分は優勢アルファ性、どんな勢力も誰も本当に望む事を止められないと

ただ、誰を抱いても誰といても、乾きと飢えが常にあり、景色は色をなさなかった

そんな中、突然に運命が目の前に現れた

運命が目の前に現れた時、飢えは更に強くなり、景色が色づき、胸が痛かったのを覚えている

運命は、皇太后の兄、王妃ネフィの実家、アルサンブル家の政敵、ナード家の子息だった

なんて綺麗な名前なんだろう。甘美な響き名前を口の中だけで押し留める。喉から手が出るほどウールが欲しい

眩しい笑顔に緊張した面持ち、彼は輝いて見えた。身体の芯からゾクゾクと怖気が走る

今すぐ衣服を剥ぎ取り、組み敷きたい

白い項に噛みつき、その体を好きに暴きたい

求めるようにウールにも自分を欲して欲しい。運命に気づいてほしい

枯渇した中で水を求めるようにウールを渇望する。ふわふわ漂う甘い甘い匂いに狂わされそうだ。恍惚とウールに釘付けになる一方で、ウールが特別だとネフィや皇太后にバレるわけにはいかない

何故ならば、ウールは他の側室とは違う。ナード家の子息なのだ。人質以上に意味を持たない輿入れ、それも16迄の人質

そのあとは、ウールの妹が輿入れ人質になる予定で2人を絶対に孕ませてはならないと皇太后に厳命されている

オメガ男性は、今まで興味すら持たなかったのでウールは安全牌の人質だった

16歳で此処を出て、他の者に嫁ぐなんて絶対に許せない。あらゆる手を使ってでもウールの相手を多分殺してしまうだろう

運命の番、自分の半身

しかし、この気持ちを誰にもバレてはいけない

ウールを出迎えながら、丁寧に歓待しているように見せかけて、その実、小さな腕や腰を撫で、手についたウールの匂いで死ぬほど盛った

ウールはまだ小さいから、運命に気付いていないようで歯痒い

いや、焦ってはいけない

どのみち、あれは手に入れる。もう、自分のものなのだから

それなのに、ウールは勇者だと名乗り出た次の日に行方不明になった

あの日見た、ウールが最後にいたというパチパチと火が燻る高原の光景を忘れられない。火の中に勇者の剣を発見して臓腑が冷たくなっていくのを感じた

剣に縋りついて、果てしない喪失感に絶望する

まだ、手の内にいるから我慢できた

ああ、これもそれも全部、あのくだらない年寄りや、狡猾なだけの王妃の言いなりになっていたせいだ

ウールを戦いに出すなんてとんでもなかった

あの日、あの場にいた者全て殺してウールを自分の部屋に連れて帰れば良かったのだ

後悔しても仕切れない
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