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間話2 ヴァイス視点
しおりを挟むそのあとは勇者の剣に縋って力強く柄を握ると、パチパチと火花が散る中、勇者の剣は鈍い光を放ち、ウールの時よりも一層強い光で輝き始めたのだ
眩いまでの光に、自分の手に剣が馴染んでいく
妙な気分のまま城に帰って自室に籠った
ウールと共にいたゴルディの首が見つかり、ウールはまだ見つかっていない。パンという少年は無事発見され、その父親と回復士と闘士は蛮族と国境で戦っていて無事だった。でもウールだけが見つからない。ウールがいなくなって寂しい。寂しくて寂しくて狂ってしまいそうだ
自室にある隠し扉を押すと、巨大な本棚が動き隠し扉が現れる
重厚な木の扉を開けて、中に入るとウールの匂いが微かにする
匂いが完全に消えてしまったら困るから、舐めるのは週に一回、下着だけとウールがいなくなった日に決めていた
ウールの匂いがするものに、べったりと自分の匂いをつけるのは好ましい
今まで集めたウールのコレクションたち。下着類から歯ブラシ、入浴中のウールを記憶した記憶石達
メイド姿や剣を素振りする姿、夜寝ているところを指先から髪の毛一本一本、余すところなく舐めしゃぶられながら魘されている姿
ウールが寝起きしていた離宮の部屋そのままをここに移設したのだ
部屋の真ん中で勇者の剣を再び握り直し、あの焼け野原から救助された男の言葉を思い出す
『ウール様の光方は鈍かった。勇者様の番なので光っただけなのだろう。眩いまでの光方は文献にある。陛下が勇者様だ』
そう言われた。何気なく剣を掲げると凄まじい光と白い血脈ようなものが広がり、血脈のようなものが広がった部分は腐敗して崩れ落ちて灰のように崩れていく
「なんて事だ…大事なコレクション達が…」
絶望に打ちひしがれながら、無事だったコレクション、特に下着類を避難させる
ウールの幻想を追いながら、ウールのいない日々をこのまま過ごしていくのだろうか?
恐怖が肚のそこから込み上げてくる
だから、あんな馬鹿な提案を受け入れたのだ
勇者ならば魔王を討伐しに旅に出なくては
王宮に我が座っていようがいまいが、皇太后やその兄、王妃がいれば今は関係ない
全員、ベータ性なので成長した優勢アルファ性の敵ではなくなるのは明らかだ
王妃はしぶったが、皇太后とその兄は大賛成だった。自分達がいくら暗殺しようとしてもどうにもならなかったのだ
魔王討伐で死んでくれたら万々歳というところか
最後の魔王城のそばにある街、旅の終盤にマダールーの街で、再び運命に出会う
運命は、ホワイトドラゴンに乗っていた
元々、クインやミルディコの仲間だったというゴルディ
首だけ見つかっていたのだが、そいつが魔人として首だけ挿げ替えられて現れたのだ
そしてホワイトドラゴンを捕まえに行って、驚いた
脳を痺れさせる匂い、愛おしい番、犬の口枷を被り、怯えたように白い肌、腹を捩らせながら、口枷から手ずからつけた拘束具が覗いていた
小ぶりなツンとした薄桃色の乳首、申し訳程度に巻かれた白い腰布からは長い脚が伸びており膝がピンク色で卑猥で襲いかかりそうになったが、再び犬の口枷を見て、胸が締め付けられる
あの子は、まだほんの小さかった筈だ。ゴルディのように魔人に首を挿げ替えられているのだろう。なんで惨いことを。
それを証拠に運命が発情期を迎えてもおかしくない年頃なのに、アルファフェロモンを受容しない
思わず抱き締めた身体は非力で、容易く胸に押さえつける事が出来た
「さあ、ウール…行こう…」
やっと、ウールを檻の中に連れて行けることに、ぞくぞくしていた。
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