51 / 53
分離と包囲網と
しおりを挟む「魔人化に失敗したから、脳味噌もバグってるから廃棄しかないよ?ただクルクルの肉体は捨て難いから、正常化して頭挿げ替えたいけど」
ニコニコしているアスモにクルクルは頭を擦り付けて、くぅんくぅん言ってる
クルクル、血も涙もない相手に…
目頭が熱くなりそうだが、早く、ぼくをクルクルから取り出してもらわないといけないし、クルクルはどうにかならないと、ぼくも助からない
「あ、アスモ!なんとか、ぼくを取り出してクルクルはクルクルのみ、ミルディコはミルディコのみにできない?」
見えないが、ぼくの言葉にアスモは思案したように沈黙している。なんか不安だな、これ。もう、もれそうだし
「ウール、これは取り引き?契約?それをしたらウールは何をしてくれるの?」
静かなアスモの声に息を飲む。アスモが魔王だってことを忘れてはいけない
「……駄目なら、いいや」
そして、足元を見られない事が大事である。クルクルの今後がかかっているけど
「駄目とは言ってない。例えば、そう。ウールが一緒に添い寝してくれるとか、少し体を触らせてくれるだけていい」
アスモの提案に悩む。正直、魔族にはアルファ性やオメガ性は存在しない
だからオメガ性であるぼくは、当然のようにヴァイスに一番惹かれるし、恐らくあの感じは他のアルファ性と違うから運命の番なのだろう
そうでなければ幼少期のヴァイスのあれこれが説明つかない。ヴァイスに稚児趣味があったなんて聞いたことないし
それに側室であるし、違う男性と同衾なんて、とんでもない
とんでもないんだけど膀胱が限界で添い寝くらい、いいんじゃないかとすら思えてくる
脂汗まで出てきた
「一日だけなら、添い寝するから早く出して!」
もうなりふり構ってられない
「だから!クルクルはクルクルのまま!ミルディコにも触らないで!」
叫ぶように言うと、アスモがグイッとクルクルを持ち上げたようだ
「約束だぞ。違えるなよ」
クルクルから覗くアスモの目にぞくりとする。バース性でのなんやかんやとは別に、アスモには親愛の情はあるんだけどな
それよりも、早まっただろうか?尿意に負けて約束をしてしまった
魔族の約束は人との約束とは質が違う。必ず守らなければならないし、違えると命のやり取りになる
アスモだからヴァイスと違って許可なく触ってきたりしないと踏んでるのもあるけど、不安だな
「ウール、添い寝なのだから、後ろから抱きしめるのは有りか?少し唇が肌に触れるくらいはいいだろうか?」
ぷぎゃー!ぷぎゃあああああ!!!!!
ぼくからは見えないけど、地下に連れてこられてカチャカチャ何か物音がする。クルクルがすごい雄叫びを上げている中でも、アスモは嬉しそうに聞いてくる
「あの…いくらなんでもクルクルが可哀想だから、麻酔とか…ないかな?あ、腕が動く…」
「すぐ終わるから。クルクル、お前はすぐ治るんだからいいだろう。じっとしてろ」
クルクルが可哀想に思わないでもないけど、暫くしてから、ずるりとクルクルから、ぼくは取り出された
真っ裸で
血塗れだから、あれだけど、不思議とヴァイスの拘束具や、アスモの腕輪もない
父親から貰った首輪以外消えていた
「色々とクルクルの消化器で消化されたみたいだね。良かったね?もう少しでウールも消化されるところだったよ。腕輪はあとで、あげようね。あれ?ウール?」
ずるりと体の力が抜けて動けない。痺れているようだ
目の前でクルクルが、ふんふん鼻息荒く怒りながら毛のない皮膚を毛繕いをしていた
ひょいとアスモが抱き上げて、お風呂に連れて行ってくれるようだ
アスモの赤い胸に頭を預けていると、アスモが嬉しそうに抱き寄せてきた
「最近は嫌がってたのに…昔、お風呂入れてあげてたの思い出すなあ。怖いから着いてきてって、ふふ…」
「早く洗って、おしっこしたい……」
ぐったりとしたまま、アスモが洗ってくれて、ようやくトイレに座らせてくれた時は、この世の天国かと思った
そして深夜、アスモに背中から抱きつかれながら眠りについた
「サティ、サティ……会いたい、サティ…」
ぼくの肩に唇を付けたまま、アスモが呟く
これは昔からで、最初は誰のことかわからなかったが、恐らくアスモの弟の名前なのだろう
アスモの頭を撫でていると、横で寝ていたクルクルが鼻を鳴らした。クルクルは、完璧に犬になったわけじゃないのかも。クルクルの頭も撫でたら、プイッとそっぽ向かれた
30
あなたにおすすめの小説
ノリで付き合っただけなのに、別れてくれなくて詰んでる
cheeery
BL
告白23連敗中の高校二年生・浅海凪。失恋のショックと友人たちの悪ノリから、クラス一のモテ男で親友、久遠碧斗に勢いで「付き合うか」と言ってしまう。冗談で済むと思いきや、碧斗は「いいよ」とあっさり承諾し本気で付き合うことになってしまった。
「付き合おうって言ったのは凪だよね」
あの流れで本気だとは思わないだろおおお。
凪はなんとか碧斗に愛想を尽かされようと、嫌われよう大作戦を実行するが……?
ざこてん〜初期雑魚モンスターに転生した俺は、勇者にテイムしてもらう〜
キノア9g
BL
「俺の血を啜るとは……それほど俺を愛しているのか?」
(いえ、ただの生存戦略です!!)
【元社畜の雑魚モンスター(うさぎ)】×【勘違い独占欲勇者】
生き残るために媚びを売ったら、最強の勇者に溺愛されました。
ブラック企業で過労死した俺が転生したのは、RPGの最弱モンスター『ダーク・ラビット(黒うさぎ)』だった。
のんびり草を食んでいたある日、目の前に現れたのはゲーム最強の勇者・アレクセイ。
「経験値」として狩られる!と焦った俺は、生き残るために咄嗟の機転で彼と『従魔契約』を結ぶことに成功する。
「殺さないでくれ!」という一心で、傷口を舐めて契約しただけなのに……。
「魔物の分際で、俺にこれほど情熱的な求愛をするとは」
なぜか勇者様、俺のことを「自分に惚れ込んでいる健気な相棒」だと盛大に勘違い!?
勘違いされたまま、勇者の膝の上で可愛がられる日々。
捨てられないために必死で「有能なペット」を演じていたら、勇者の魔力を受けすぎて、なんと人間の姿に進化してしまい――!?
「もう使い魔の枠には収まらない。俺のすべてはお前のものだ」
ま、待ってください勇者様、愛が重すぎます!
元社畜の生存本能が生んだ、すれ違いと溺愛の異世界BLファンタジー!
言い逃げしたら5年後捕まった件について。
なるせ
BL
「ずっと、好きだよ。」
…長年ずっと一緒にいた幼馴染に告白をした。
もちろん、アイツがオレをそういう目で見てないのは百も承知だし、返事なんて求めてない。
ただ、これからはもう一緒にいないから…想いを伝えるぐらい、許してくれ。
そう思って告白したのが高校三年生の最後の登校日。……あれから5年経ったんだけど…
なんでアイツに馬乗りにされてるわけ!?
ーーーーー
美形×平凡っていいですよね、、、、
「これからも応援してます」と言おう思ったら誘拐された
あまさき
BL
国民的アイドル×リアコファン社会人
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
学生時代からずっと大好きな国民的アイドルのシャロンくん。デビューから一度たりともファンと直接交流してこなかった彼が、初めて握手会を開くことになったらしい。一名様限定の激レアチケットを手に入れてしまった僕は、感動の対面に胸を躍らせていると…
「あぁ、ずっと会いたかった俺の天使」
気付けば、僕の世界は180°変わってしまっていた。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
初めましてです。お手柔らかにお願いします。
才色兼備の幼馴染♂に振り回されるくらいなら、いっそ赤い糸で縛って欲しい。
誉コウ
BL
才色兼備で『氷の王子』と呼ばれる幼なじみ、藍と俺は気づけばいつも一緒にいた。
その関係が当たり前すぎて、壊れるなんて思ってなかった——藍が「彼女作ってもいい?」なんて言い出すまでは。
胸の奥がざわつき、藍が他の誰かに取られる想像だけで苦しくなる。
それでも「友達」のままでいられるならと思っていたのに、藍の言葉に行動に振り回されていく。
運命の赤い糸が見えていれば、この関係を紐解けるのに。
【BL】捨てられたSubが甘やかされる話
橘スミレ
BL
渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。
もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。
オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。
ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。
特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。
でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。
理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。
そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!
アルファポリス限定で連載中
二日に一度を目安に更新しております
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる