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分離と包囲網2
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目が覚めると、まだ窓の外は薄暗く遠くに魔王城が見えた
ここは、郊外の魔族の城なのだろう
真っ赤な肌の筋肉質な腕が腹に周り、アスモは眠っていて、ベッドの下でクルクルが巨大な体を丸めて鼻をスピスピさせながら寝ている
再び、うとうとしていると遠くの魔王城が燃えているように空が赤い
もぞもぞと身動きするとアスモも目を覚ましたのか、ぎゅうと抱き枕のように抱きしめてくる
「まだ、寝よう…ウール…」
眠そうなアスモの声に、それどころじゃなさそうなくらい魔王城が燃えてるんだけどと言い辛く、口をぱくぱくさせていると、伝令で来たのかアスモの側近のバルミューダという烏の羽と真っ黒な肌の魔族が飛び込んできた
「た、た、た、大変です!!アスモ閣下!勇者と兵が囲むように城に乗り込んできま……し…た…ぐっ……ぶ、べっ…」
バルミューダが言い終わらないうちに、白い血脈がバルミューダの黒い肌に広がっていき、皮膚が膨れ紫になり、目玉が飛び出すように膨張してサラサラと灰になり崩れていく
「ひっ……」
短い悲鳴をあげるとアスモが庇うように、ぼくの前に立ちはだかる
ぼくも何も身につけていないけれど、アスモも真っ裸だった
アスモの背中越しに見える大男は、黒い髪をかきあげながら、ずるずると大きな剣を引き摺りながら美しい褐色の肌の美丈夫が灰になったバルミューダを踏みつける
ヴァイスが、どうしてここに…??
驚いてぽかんとしながら見つめていると、ヴァイスの目線が、ぼくを捉え上から下まで視線を走らせて首のところで止まると、先程までの気怠げな雰囲気は鳴りをひそめ、みるみると怒りに表情を曇らせていくのがわかった
アスモの、ぼくの腰に回されている手に、ぎりっと歯噛みをする音が聞こえる
「クルクル、ウールをバルデモニウムのところまで連れていけ」
ヴァイスがゆっくりと、ぼくに近づいてくる
「……ウール、怖かったね?こっちに来なさい」
怒りを讃えた目のまま優しげに微笑みながら手を差し伸べてくるヴァイスに迷っているとクルクルが、ぼくの首輪を咥えて窓から飛び出した
「ぐ、ぐぇえ、くび、くびが、しま!くるぐる!」
ぼくの叫びも虚しく、クルクルは命令に忠実にバルデモニウムのところへ、ぼくを連れていく気のようだ
飛び出してきた窓からは白い血脈が窓から広がり、アスモを振り返る
「アスモ!!アスモ!!!」
ぼくが叫ぶと、白い血脈の広がりが止まる
窓からヴァイスが物凄い形相で、ぼくを見つめていた
「アスモを殺さないで!!」
泣きながら叫ぶと、ヴァイスが後ろにいるであろうアスモをゆっくりと振り返る
その間に跳躍したクルクルが中庭にいたバルデモニウムの背中に飛び乗り、バルデモニウムが怒りながらかなり上空に飛び立つと、地上からはアスモの髪の毛を掴んでアスモを引き摺り、返り血で血塗れになっているヴァイスが、ぼくらを見上げていた
「ひぃいい、どうしよう!これ一族郎党斬首コースだよね!?怒ってるよ、魔族に与したと思われてる!しかも、ぼく裸じゃん!!!」
クルクルを揺さぶりながら叫ぶと、バルデモニウムが耳を押さえながら、上空を旋回する
「魔王城が囲まれてるな…アスモ閣下は…、思ったより下等生物が大事なのだな。いつまでも私も飛び続けるわけにもいかないし、どうしたものか…閣下はなんと?」
バルデモニウムがクルクルに聞くが、クルクルは首を傾げている
どうしてこうなったかもわかっていないようだ
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