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騎士団の寮
しおりを挟む騎士団の寮は整理整頓はされていて高級感ある室内や廊下だったが、流石にアルファ性の匂いで満ちていた
鼻を押さえながら、シーツを変えていると油断するとフェロモンの香りが鼻をつく
なるべく息を止めながらシーツを変えていると、ふわりと花のような香りがする部屋があった
正直、これで外に出られるなら、使用人をして月に100万オンスの給金よりもパンとクエストをこなす方が儲かるのだが
いやダメかな、と考えなおす。あの日のヴァイスの様子を思い出して、ぶるりと身震いがきた
人を人とも思わない王様は正直に言えば恐ろしい
それに月に100万オンス稼げるならば、出費は50万オンスなので持参金に手をつけずに過ごす事ができる
清潔なシーツを伸ばしながら、ふと外を見ると、騎士団達が模擬訓練をしている
窓に凭れながら外を眺めていると、バチリと何故か騎士に混じって訓練をしているヴァイスと目が合った
「……やべ!なんでここに!?」
先日の恐怖が蘇り、慌てて窓から隠れる
心臓がドキドキしたが、そろりと再び窓を覗くと、ヴァイスはもうすでにいなかった
少し残念に思いながら、シーツかけに戻る
先程のヴァイスは、上半身裸で逞しい胸板や腹を惜しみなく露出していた
汗で濡れた黒髪をかきあげて赤くなった目元が妙な色気が漂っていた
「あー、やめやめ、ぼくとは関係ない人なんだから!男がお嫌いみたいだし…」
ぶつぶつ言いながら次の部屋にかかろうとすると、ガンと大きな物音と共に、扉が閉まる
何事かと固まっていると、ヴァイスが息を切らせて扉の鍵を閉めるところだった
「えっ…?陛下?」
手にしていたシーツを取り落とすところだったが何とかキャッチし、まじまじと部屋に侵入してきたヴァイスを眺める
汗に濡れた褐色の肌の体は彫刻の様に美しく、今日はウェーブのかかった長い黒髪を後ろに括っている
絶世の美貌だと誉めそやされている美しい顔は、今は何故か憂いを帯びており、不思議な色合いの瞳が細められた所で、我に帰った
やばい!見つかった!!?
冷宮であった虐殺を思い出し、血の気が引いた
顔を慌てて伏せて、その場に跪く
「へ、陛下、ご無礼をおゆるしください」
床に目線を落としたまま、暫く見つめ合ってしまった痛恨のミスを奪回すべく謝罪を口にする
「…お前が何故ここにいる?」
硬く、冷たい低い声に怒りが含まれていて、ますます顔を上げられない
「…お、おゆるしください、陛下」
ぶるぶると膝まで震えてくる
「後宮から出ることは許されぬ。戻るぞ」
ゆっくりと近づいてくるヴァイスに恐怖がこみあげてくる
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